【要約】『21 Lessons』未来に向けて今考えるべき4つのテーマとは?

【要約】『21 Lessons』未来に向けて今考えるべき4つのテーマとは?




 こんにちは、ヒイラギです。今回は、遅ればせながら読んでみて衝撃を受けた『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』をご紹介します。

 本書は「絶対に読むべき現代人の必読書」というのが正直な感想です。そこまで言い切る理由は、本書に書かれていることを知っているかどうかで、未来に対する心構えが大きく変わると思ったからです。本書を読まずに未来を迎えるのは危険と言っても過言ではありません。

 著者は、世界的ベストセラー『サピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏。人類の歴史をさかのぼり、そこから現代の問題を紐解くと同時に、鋭い先見の明で未来を見据えて現代人に警鐘を鳴らす天才です。

 本書では、ハラリ氏が21世紀に生きる私たちに向けて、世の中で今何が起きているのかを21のテーマ別に解説しています。その上で、「人間の存在価値は何か」「あなたはどう生きるか」を問うています。

 ここでは、未来に向けて考えておくべき4つのテーマを抜粋してご紹介します。

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未来に向けて考えておくべき4テーマ

①幻滅

 ハラリ氏によれば、私たちは自由主義の物語の中に生きているといいます。個人のあらゆる自由が認められ、市場の自由化、アイデアやお金が自由に世界中を駆け巡る世の中は素晴らしいと、多くの人は信じています。

 しかし2008年のリーマン・ショック以降、素晴らしいと信じてきた自由主義の物語に人々が幻滅しはじめているというのが、本書でハラリ氏が最初に投げかけているテーマです。

 トルコやロシアといった国が非自由主義的な独裁制を進めるにとどまらず、移民や貿易協定への抵抗感からイギリスではEU離脱が是認され、自由の国アメリカでもメキシコとの国境に壁を築くと宣言したトランプ氏が大統領選に当選しています。

 金融危機により人々が不安を募らせた結果、人々が自由に国境を越えることや、自由市場に制限が必要だという意識が世界中に広がっているのです。トランプ氏の「アメリカ・ファースト」のように、世界各国が自国第一主義を宣言するようになったら、世の中はどうなってしまうのでしょうか。

 ハラリ氏は言います、「今日、中国共産党が歴史の流れに逆行していると自信を持って言い切れる人はほとんどいないだろう」。政治面、経済面だけでなく、近年のITとバイオテクノロジーの驚異的な発展により、私たち人間の心や体レベルでも、自由主義の問題は複雑に絡み始めています。

 自分たちの知らないところで個人情報が売買され、インターネットにつなげばオススメ商品のバナーが視界に飛び込んでくる世界。個人情報を企業が使用することに、より厳しい制限は必要ないのでしょうか。

 またバイオテクノロジーによる生命の操作についてはどうでしょう。自由に寿命をコントロールできる世界、私たちは望んでいるのでしょうか。

 自由主義に対する幻滅、あなたはどう考えますか。

②雇用

 AI革命により、多くの労働者がいずれ職を失うと昨今よく話題になります。しかしハラリ氏は、さらにその先にある問題に警鐘を鳴らしています。

 テクノロジーに仕事を奪われるという脅威は、何も今に始まったことではありません。20世紀初頭に存在していた仕事の多くは、機械化が進んだことで消滅しました。文明が発展するたびに、なくなる仕事、新たに生まれる仕事があり、そうした歴史の中で私たちは生きてきたのです。

 しかし私たち人間は今、新しい仕事を生み出せずにいます。人間だけが持っているはずの認知的機能、いわゆる学習や分析、意思疎通、感情の理解といったものも、AIの方が上手に使いこなすようになってきているためです。

 それどころか、ハラリ氏が指摘する本当の脅威は、雇用者としてだけでなく、消費者としても人間は不要になりつつあるというこです。

 コンピューターは、アイスクリームを買っても味わうことはできません。しかし多くの企業は、商品を実際に口に運ぶ人間よりも、Googleの検索アルゴリズムをより重視するようになっています。商品を売るためには、まずアルゴリズムに好まれなければ、人間の目を引くこともできないからです。それはつまり、アルゴリズムに興味を持たれなかった商品は、私たちの手に届くこともないことを意味しています。

 身の回りを見てみてください。そこにあるものは、本当に自分自身で選んだモノでしょうか。それともアルゴリズムが選んだモノでしょうか。

③ナショナリズム

 人間が集落を作り、村を作り、そして国家という大きな共同体を構築したのは、小さな集団では対処できないような難題に直面してきたからだとハラリ氏は説きます。だからこそ、水路ができ、ダムができ、橋が作られ、文明が発展してきたのです。

 つまり、現在私たちが直面している大きな問題、グローバルな問題は、グローバル規模で解決しなければ、今後も発展し続けることは難しいということです。

 しかし先述したようにロシア、イギリス、アメリカをはじめ各国がナショナリズムに基づく孤立を望むようになっています。恐ろしいことに、こうしたウルトラナショナリズム、つまり超国家主義が、狂信的とも言える排外主義を生み出し、第二次世界大戦は起きています。

 核の問題、環境破壊の問題、テクノロジー面の問題、少なくともこれら3つの問題は、グローバル規模で取り組まなければ解決しないとハラリ氏は訴えます。

 本当に自国を大切に思うナショナリストならば、広い心を持ったグローバリストとなって、世界の国々と手を取り合うことが自国を守ることにつながると考えるはずです。

 結果的にそれがサステイナブルな未来を子どもたちに残すことにもつながると思うのですが、理想論でしょうか……。

④教育

 私たち人間の未来には、難題が山積しています。では、未来を生きる子どもたちに今、本当に教えるべきことは何なのでしょうか。

 ハラリ氏いわく、教師や親が子どもに情報を与えることは無用な行為だといいます。Googleで検索すれば簡単に得ることができる知識を、わざわざ教室で先生から聞く必要はありません。

 子どもたちに必要なのは、情報の意味を理解する能力、重要なものとそうでないものを見分ける能力、そして大量の情報をつなぎ合わせて世の中を幅広く捉える能力です。

 近年、日本でも小学生のうちから英語やプログラミング教育に力を入れる動きがありますが、それらはすでに時代遅れかもしれません。子どもたちが大人になる頃には、外国語を話すことも、プログラムを書くことも、AIが人間よりはるかに上手にやっている可能性が高いからです。

 未来を見据えた教育を行うのであれば、学校は専門的な知識、技能に重点を置かず、汎用性のある生活技能を教えるべきだといいます。

 なかでも最も重要なのは、変化に対処し、新しいことを学び、馴染みのない状況下でも心の安定を保つ能力になるだろう。(p.339)

 「人間であること」の意味すら変化しそうな未来を生き抜くために、いま子どもたちに何を学ばせるべきなのでしょうか。

どう生きるべきかを考える

 様々な角度から私たちに警鐘を鳴らしてきたハラリ氏自身は、これから生きる上で大切なものは何だと考えたのでしょうか。

 正直、あまりにも意外で驚いたのですが、著者の答えは「瞑想」です。

 これはあくまでも著者がたどり着いた答えであり、重要なのは、自分の心を理解する術を見つけることにあります。

 このまま情報テクノロジーが発展すれば、私たちの心の状態に関係なく、アルゴリズムが私たちの代わりにあらゆる選択、決定を行うようになります。

 また心の準備ができているか否かにかかわらず、目を見張るようなバイオテクノロジー革命は、私たちに新たな命の誕生や延命の選択を迫ってくるでしょう。

 そうした時に重要なのは、いかに自分を理解できているかです。アルゴリズムに人生の選択を委ねるにしても、そこに自分の意思があるのか否かでは大違いです。

 テクノロジーに操作してもらう人間になるか、テクノロジーを利用する人間になるか。これは、どちらかに正解があるものではありません。個人の自由です。

 本書には、他にも「コミュニティ」「戦争」「ポスト・トゥルース」など、様々なトピックが著者の鋭い視点から解説されています。厚みのある本書を手に取ることに少し躊躇してしまうかもしれませんが、読み始めれば冷や汗と興奮が止まらず最後まで一気読みしてしまうはず。

 年末年始のお休みを使ってぜひ読んでほしい、おすすめの一冊です。

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