10秒で要点チェック!
営業とは、お客さんに頭をさげて「買ってもらう」仕事ではなく、お客さんのために「売ってあげる」仕事である。
営業成績を確実に上げるための指南本!
「やりたくない仕事」として名前が上がりやすい「営業」という職種。ノルマに追われるのがイヤ、売上のために客先に頭を下げるなんてできないなど理由はさまざまでしょう。
しかしこうした理由で営業を毛嫌いする人は、営業という仕事の本質を誤解しています。営業とは、相手にお願いして「買ってもらう」仕事ではなく、相手のために「売ってあげる」仕事なのです。
今回紹介するのは、契約率99%という驚異的な数字を残すプロの営業マンである著者が、営業としての仕事哲学や売上をあげるための具体的なテクニックについてまとめた一冊、『営業マンは「お願い」するな!』です。
今回は、美容師でモデルの佐藤渚さんと一緒に、圧倒的な成果を出す営業に共通する考え方について紹介します。
「営業」の仕事とは何か…?
本書では、営業という仕事について次のように定義しています。
営業とは、
自分がよいと信じた物を
相手のために
断りきれない状態にして
売ってあげる
誘導の芸術である
なぜこうした定義をするべきなのか、そしてこうした意識をもつことでなぜ営業成績を上げることができるのか、営業の基本ともいうべき4つのポイントに分けて説明します。
1. 自分が売ろうとする”商品”に自信はあるか?
何よりも重要なのは、売る商品が「自分がよいと信じた物」であることです。営業成績が振るわない人の言い訳としてよく耳にするのが、「商品が悪い」というもの。自分はまったく魅力を感じていないけど、仕事だから売っているという営業マンは日本中にごまんといるはずです。
実際、商品のせいだと言いたくなる場合も多々あるでしょう。しかし、そもそも欠点が一切ない商品などこの世に存在しない以上、そのマイナスをあげつらうことは何の益にも、解決にもならないと著者は言います。
今夏にも世界販売台数が10億台に到達しそうだと言われているiPhoneでさえ、最初に日本で発売されたときは「赤外線がない、おサイフケータイが使えない、ワンセグがない」など、(ガラケーに慣れ親しんだ日本のユーザーからすれば)欠点だらけで、一部のイノベーターユーザー以外には見向きもされないところからスタートしています。
大切なのは「完全無欠の商品は絶対に存在しない」という事実を現実のものとして受け入れた上で、それでも欠点をはるかに超える長所の価値に、自分が心から共感できるかどうかです。
その一点に自信をもてれば、どんな商品でも「お客さんのために売ってあげる」という姿勢で営業することは可能です。
2. 先に相手を満たすことを考えているか?
ビジネスの基本は、まず相手に幸せになってもらうこと。先に相手を満足させる意識がなく、自分のメリット(売上・利益、営業成績)のために売ろうとしているようでは、相手はその下心を確実に感じとり、あなたにお金を払ってくれることはありません。
売るための秘訣は、「けっして自分のために売ろうとせず、ひたすら相手のメリットのために売ろうとすること」だと著者は言います。
人生とはまさに”山びこ”であり、相手を幸福にしてあげれば、結果としてこちらも幸福になり、相手を不幸にすれば、こちらもまちがいなく不幸になる。至極単純にして永遠普遍の真理です。
自分が商品に自信を持っていないと、「相手のために」という大義名分をもてないため、どうしても「買ってもらう」意識になってしまいます。
「この商品を使ったら、こんなメリットがありますよ」と教えてあげに来たのだと考えられれば、何らやましいことはなく、堂々と営業をすることができるのです。
3. メリットに「気づかせる」ことができているか?
商品のメリットを教えるといっても、営業マンが一方的に並び立てるようでは「押し売り」という印象を持たれかねません。
大切なのは、お客さん自身にその商品を買うメリットに「気づかせる」ことです。そのために有効なのは、お客さんに質問をすること。本書ではマンションの営業を例に次のようなトークを紹介しています。
「失礼ですが、いまどれくらいお家賃を払っていらっしゃいますか?」
こちらが聞けば、どんな無口なお客だって答えます。そうしたら、また質問する。
「それでは、もう何年ぐらいお家賃を払ってこられたんですか?」
「うわっ、じゃあ単純計算でもう200万円くらい払われてきたんですね。いま思えば、もったいないとは思いませんか?」
「失礼ですが、同じ八万円を払うなら、払い捨てのお家賃を払うのと、マイホームのローンを払うのと、どちらかというと、どちらのほうが気持ちいいなぁ〜と思われますでしょうか?」このように聞かれれば、お客は考えます。頭の中で計算します。払い捨ての家賃を払いつづけるデメリットにあらためて思い至ります。私が「家賃を払うのは損ですよ」と言わずとも、お客自身が気づきます。
「今どきこんな質問に素直に答えてくれる人なんていないだろ」と感じる人もいるかもしれませんが、重要なのは、「払い捨ての家賃を払うよりもマイホームのローンを払う方が得ですよ!」と営業する側が力説するのではなく、質問を通してお客さん側に気づいてもらうという点です。
「この商品にはこんなに魅力があるんです! いかがですか?」というアプローチでは、ほとんどの場合「結構です」と断られてしまいますが、質問であれば、相手は「断る」ことができないので会話がつながりやすく、メリットに気づいてもらいやすいのです。
4. 諦めない覚悟を持っているか?
「自分が売ろうとしている商品に自信を持っている」、そして「相手のメリットのために売ってあげようと考えている」ーーこの2点を前提とした場合、営業としてもっともやってはいけないのは「諦める」ことだといいます。
相手のためになると信じているから営業しているのに、相手の言い分を聞いて引き下がり、何も売らずに帰ってしまうのでは営業失格。相手には何も残らないし、むしろ無駄に時間を奪っただけになってしまいます。
ほとんどの人は、お客さんから抵抗されたら、「これ以上しつこくしたくない」「相手にも事情があるのだから引くことも大切だ」などと自分に言い聞かせて諦めるでしょう。
しかし著者は、それらはすべて自分への言い訳だと断じ、すんなりと諦めることは営業マンにとって決して善ではないと説きます。
なぜなら、相手に切り返されてすぐ諦めるということは、本当の意味で商品のことを信じられていない証であり、また相手のためになるという信念にも自信がもてていない証拠だからです。
言ったら言いとおす。すすめたらすすめとおす。それが営業マンの礼儀、責任です。どうでもいい話なら最初からしなさるな。
大切なのは、「しつこい」と「熱心」はまったくの別物であるということ。相手のことを思うがために勧め通しているからこそ、どれだけ時間がかかったとしても、それは「熱心だ」と評価されて、お客さんの心を動かすことができるのです。
まとめ
本書は1970年代に営業の世界に入り、不動産や学習図書の(主に訪問販売の)分野で実績を上げた著者の経験に基づいたものであるため、エピソードの時代背景が古く、「いまどきこんな営業の仕方したらクレームになるわ!」と思われる方も多いと思います。
実際、トーク例の部分だけを見ると、ほとんどの業界にとってそのまま転用することはできないでしょう。
しかし「契約率99%」という驚異的な成績を残した営業手法の背後にある論理には、現在の営業にも通じる学びがつまっていることは確かです。
本書の具体例を一段抽象化して咀嚼することができれば、どんな業界であってもその学びを生かすことはできるはず。圧倒的な成果を出す営業のプロがどのように考え、どのような手法で契約を取っていったのか、気になる方はぜひ手にとって見て下さい。
モデルプロフィール
・名前 :佐藤渚
・生年月日 :12.22
・出身 :新潟県
・職業 :merモデル、美容師
・Twitter :@nagisatoooo
ご協力いただいたお店
・店名 :「café 1886 at Bosch」
・住所 :東京都渋谷区渋谷3-6-7
・TEL :03-6427-3207
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