【要約】ディズニーCEO・ロバート・アイガーが実践する成功原則とは?

【要約】ディズニーCEO・ロバート・アイガーが実践する成功原則とは?




 2020年2月、ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOを15年間務めたロバート・アイガーが退任しました。実は彼は、ディズニー創業者の縁故者でもなければ、一流大学のMBAを持つわけでなもなく、テレビ局の下っ端雑用係からキャリアをスタートしたシンデレラ・ストーリーの持ち主です。

 テレビ局でスタッフのためにお弁当を用意していた青年が、どのような人生の旅を経て、ディズニーのCEOの座に就いたのでしょうか。その秘密を知ることができるのが、アイガー本人が執筆した『ディズニーCEOが実践する10の原則』です。

 この記事では、アイガーの半生を4つの時期に分け、その時々で彼が何を学び、働く上で何を大切にしてきたのかをご紹介します。



ABC下っ端時代

 大学卒業後、アイガーは全米ネットワークテレビ局であるABCの雑用係として働き始めます。給料はわずか週150ドル。仕事は、照明の設置やケータリングの手配といった単純なものばかり。とは言え、労働時間は長く、みんなからこき使われる過酷な労働環境でした。

 ABCのスポーツ局で、アイガーは「テレビ界の帝王」と呼ばれるルーン・アーリッジの下で働くことになります。新しい機器を次々と試し、古臭いフォーマットをどんどん壊すルーンを見て、アイガーはイノベーションの大切さを学びます。

 そんなルーンの口癖は、「もっといいものを作るために必要なことをしろ」でした。彼にとっては番組の質が何よりも大切で、番組を作る人への配慮は後回しでした。結果、多くの素晴らしい番組が生み出されましたが、多くの優秀な人材が彼のもとを去っていったのです。

 アイガーは、ルーンからリーダーの資質として「完璧への飽くなき追求」の重要性を学びましたが、ルーンのようにどんな犠牲を払ってでも完璧を目指すのではなく、「ほどほど」を良しとしない環境作りを大切にするようになりました。

 そして、部下の言い訳を一切受け入れず、仕事ができなければ誰でもバッサリ切るルーンを反面教師とし、アイガーは人と誠実に向き合い、すべての人に公平に共感を持って接することを心掛けるようになります。

 このようにアイガーは、上司の良いところだけでなく、悪いところもすべて自分の未来の糧にする力に非常に優れていました。

▼教訓▼
・イノベーションを起こす勇気を持つこと
・最高を追求すること
・公平であること

ABCスピード昇進時代

 ルーンの下、何度も辞めようと考えながらも、誰よりも汗水垂らして働き続けた結果、アイガーは34歳でスポーツ局のバイスプレジデントに抜擢されます。しかしその直後、ABCは弱小企業のキャピタル・シティーズ・コミュニケーションズに買収されてしまいます。

 新たにABCの指揮を執ることになったのが、天才経営者コンビのトム・マーフィーとダン・バークです。アイガーはリーダーとしての重要な要素をこの2人から学ぶことになります。

 トムとダンは飾り気がなく、いつも自然体でした。傲慢に振る舞うことも、逆にわざとらしく親し気に振る舞うこともなく、誰に対しても正直に、率直に話していたそうです。2人に出会い、アイガーは善良さと仕事上の有能さは共存できることに気づきました。

 また、ライバル企業に行けばもっと高い給料がもらえるのに、社員たちがトムとダンの下を離れないのは、彼らのこうした振る舞いが人々の忠誠心を強めていることを目の当たりにしました。以後、アイガーはトムとダンの振る舞いを手本とするようになります。

 そして1988年、トラブル続きの冬季カルガリー・オリンピックの番組放送を見事に成功させたアイガーは、トムとダンに認められてABCエンターテインメントの社長に大抜擢されます。アイガー、37歳の時でした。

▼教訓▼
・自然体であること
・誰に対しても誠実であること

ディズニー傘下時代

 これまでスポーツ局で働いてきたアイガーにとって、エンターテインメント部門はまったくの別世界でした。彼はハリウッドと仕事をすることについては無知だったのです。しかしトムとベンから学んだ教訓を胸に、自分を偽らず、謙虚に、周囲の人に1から教えを乞いました。

 アイガーは、優秀な制作チームを率いて大ヒットドラマを出す一方で、大コケして世間から批判を浴びることもありました。しかし、必ず失敗の責任は自分で取り、チームには最高の仕事をするよう励まし続けたそうです。

 そうしたアイガーの姿勢は周囲に認められ、エンターテインメント部門のトップになってからわずか5年で、キャピタル・シティーズ/ABC本社の社長兼最高業務責任者(COO)に就任しました。

 しかし、人生そう甘くはありません。就任後1年足らずで、ABCはディズニーに買収されてしまうのです。アイガーはCOOから一転、当時ディズニーのCEOだったマイケル・アイズナーから、屈辱的とも言えるディズニーのメディア部門長に任命されたのでした。

 ABCで一緒に働いてきた多くの仲間はディズニー傘下で仕事をすることを拒み、会社を去っていきました。しかしアイガーは、自分の下で働いていた多くのABC社員がディズニーで冷遇を受けないために、マイケルの下で働く覚悟を固めます。

 また、アイガーはいつの日かディズニーの経営者になるという野心も捨てませんでした。とは言え、いつかの未来を夢見て目の前の仕事をおろそかにするようなことはしません。アイガーは、どんな仕事でも与えられたら着実にやり遂げ、じっくり構えて出番を探しながら経営者への可能性を広げていくことを目指しました。そしてチャンスが現れた時に、自らの勤勉さとエネルギー、集中力を発揮し、上司から頼りたいと思われる存在になっていったのです。

 前CEOのマイケルとはずっと微妙な関係でしたが、長引く業績不振や一人で経営を切り盛りしてきたことでマイケルが心身の不調をきたすようになると、ついにマイケルはアイガーを頼り、彼をディズニーのナンバー2としてCOOに任命します。

 それでも、9.11同時多発テロや、ウォルト・ディズニー血縁者との訴訟問題など次々とトラブルが襲いかかると、マイケルは次第に悲観的になり、不安と疑心を露にするようになったそうです。すると、次第にディズニー社内に陰鬱な雰囲気が広がり、社員の士気は下がり、活力とひらめきが消えていきました。

 アイガーは苦しい時こそリーダーの前向きな姿勢が欠かせないことを痛感します。当たり前ですが、「後ろ向きなリーダーについていきたいという人はいない」のです。

▼教訓▼
・苦しい時ほど前向きであること

ディズニーCEO時代

 2005年にマイケルが退任し、ついにアイガーはディズニーのCEOに就任します。CEOになるにあたり、アイガーは3つの戦略的優先課題を定めました。

 なぜなら、リーダーが組織の優先課題をはっきりと誰にでもわかるように伝えることができないと、周囲の人たちは何に力を入れたらいいのかわからず、莫大なお金と時間が無駄になると考えたからです。CEOの重要なの役割の一つは、社員と経営陣にロードマップを示すことです。

 その時にアイガーが掲げた課題は次の3つ。

  1. 良質なオリジナルコンテンツを創り出すこと。
  2. テクノロジーを最大限に活用すること。
  3. 真のグローバル企業になること。

 これらは過去の失敗に焦点を当てたものではなく、すべて未来に向けた戦略でした。そして、3つの課題を解決すべくアイガーが着手したのが、世界的大ニュースにもなったディズニーによるピクサー買収です。

 ピクサー買収については、取締役会や投資家たちからクレイジー呼ばわりされ、猛反対されましたが、アイガーは自分の認識力と判断力を信じ、決断を下します。失敗すれば、CEOに就任して早々に自分の立場が危うくなることはわかっていましたが、リスクを恐れていては成功はないと考えたのです。

 ピクサーを買収したことで、ディズニー・アニメーションの立て直しに大成功したアイガーは、マーベルやルーカスフィルム、21世紀フォックスと次々と大型買収を成功させます。

 そして2020年、アイガーは自らCEOを退任します。世界中から権力者だ、重要人物だと祭り上げられても、物事が単純だった子どもの頃の自分、本当の自分を見失わないことがリーダーとして何よりも難しく、何よりも重要な原則だとアイガーは振り返ります。

▼教訓▼
・優先順位をつけて集中すること
・リスクを恐れず決断すること

アイガーからのメッセージ

 アイガーは、まさか自分がディズニーのCEOになることは夢にも思わなかったそうです。リーダーシップに欠かせない数々の原則も、後から思い返せば腑に落ちるものの、当時は具体的に理解できていなかったことも多いといいます。

 けれど、自分が大切だと思う働き方、生き方を信じ、自分なりのスタイルと原則に沿って人生を歩んできたからこそアイガーは大きな成功を成し遂げました。

 企業経営者を目指す人だけでなく、仕事や私生活で少し大胆になりたい人、もっと自信を持ちたい人たちに、自分が学んできたことを役立ててほしいとアイガーはいいます。

 本書には、他にもたくさんの教訓と、数々の刺激的なエピソードが紹介されています。ジェットコースターのようなアイガーの半生をより具体的に追体験してみたいという方は、ぜひ手に取ってみてください。




投げ銭でサポートする

当サイトは広告収入と寄付によって運営しております。もし可能でしたら、投げ銭によるサポートをご検討いただけますと幸いです。

LEAVE A REPLY

*




YouTube人気動画




殿堂入り記事