田中泰延の文章術!『読みたいことを、書けばいい。』要点まとめ

田中泰延の文章術!『読みたいことを、書けばいい。』要点まとめ




 こんにちは、ヒイラギです。

 今回ご紹介する本は、『読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』です。

 文章術について書かれた本は数多くありますが、こちらの本はちょっと変わったテイストで、読むと文章の書き方ががらりと変わるかもしれません。ブログ、コラム、書評など、文章を書いている人にぜひおススメしたい1冊です。

 著者は電通の元コピーライター、田中泰延氏。現在はフリーランスとして映画、文学、就職など幅広いテーマで執筆活動をされています。

 この著者…とにかくクレイジー(もちろんいい意味で)

 読者のことは一切無視! 文章術の本なのにたい焼きの話をしたり、いきなり辛口コメントで読者を一撃したりと、最初から最後まで自分が書きたいことを好きなように書いているんです。

 それなのに、不思議と引き込まれ、ページをめくる手が止まらずに読み進めてしまう。しかも著者の伝えたいことが、きちんと伝わってきます。

 それは、著者が正直な言葉を書いているからだと思います。忖度せず、自分の気持ちに素直になって書いている。本書のタイトルからすでに察しがついているかもしれませんが、「自分が読みたいことを書く」、これが著者の文章術です。

 では、具体的にどうやって「読みたいことを、書けばいい」のでしょうか。5W1H(What、Who、Why、When、Where、How)に沿って見ていきましょう。

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①Whatーなにを書くのか

 ずばり、「随筆」を書きます。ネットで読まれている文章の9割は「随筆」だそうです。

 そもそも「随筆」とは何なのか、著者は「事象と心象が交わるところに生まれる文章」と定義しています。「事象」とは見聞きした事や出来事、「心象」は心の中に浮かぶイメージのことです。

 事象寄りの文章が新聞だとすると、心象寄りのものが小説や詩。そして、その間にあるものが随筆です。つまり、見聞きした事象について、思ったことや考えたことを書くのが「随筆」だということです。

②Whoーだれに書くのか

 これ、非常に重要です! 「自分」に向けて書くというのが著者の答えです。

 文章術の本を読むと必ずと言っていいほど、「読む人のことを考えて書きなさい」という教示があります。特にブログやSNSは、読む人に共感してもらえる文章を書きましょうというアドバイスが多いですよね。

 しかし著者の考えは全くの逆! 「読む人のことなど想定して書かなくていい」と言っています。

 自分が読んで楽しければ、それでいい。なぜなら、自分が楽しむために書いた文章は正直だからです。一方、読む人がどう思うかばかりを気にして書いた文章は、書き手の本音が見えず、どこか嘘っぽい。

 読んだ人から「いいね」をもらうために書こうとすると、自分の言いたいことをオブラートに包んだり、きれいな言葉に変換したりと装飾しがちです。その結果、薄っぺらくて相手に伝わらない文章になるのです。

 著者は言います。

 「また次もほめられよう」と思って書くと、だんだん自分がおもしろくなくなってくる。いずれにせよ、評価の奴隷になった時点で、書くことがいやになってしまう。他人の人生を生きてはいけない。(p.115)

 


③Howーどう書くのか

 「何を」「誰に向けて」書けばよいかがわかったところで、次は具体的に「どのように」書くかについてです。

 答えは簡単。調べて、書けばいいのです。著者いわく、「物書きは調べるが9割9分5厘6毛」だそうです。

 SNSやブログで書かれているのは「随筆」で、それは見聞きした事象(事実)について思ったことを書くことだと先述しました。実は、簡単そうで大変なのが事象(事実)を書くことなのです。

 例えば、「わたしは国産ワインが大好きです。日本でワイン造りを始めてくれた人、ありがとう!」と書いたとしても、読者は「あ、そう」で終わってしまいます。

 なぜなら、これは随筆ではなく、ただ自分が思ったこと言葉にしただけだからです。しかし、「わたしは国産ワインが大好きです。『日本のワインぶどうの父』と呼ばれている川上善兵衛という人、知っていますか? 彼の功績で今こうして国産ワインを楽しむことができるのです!」のように事象を含めて書くと随筆になり、「川上善兵衛って誰?」「何時代の話?」のように、興味を持ってくれる読者が出てくるかもしれません。

 ところで、この川上善兵衛は実在した人物なのでしょうか。本当に国産ワイン造りに貢献したのでしょうか。二次情報を鵜呑みにして信じた結果、知らず知らずのうちに自分がフェイクニュースの発信者になっていた、なんて事態は避けなければなりません。

 なので「調べて、書く」ことが重要なのです。

 具体的にどう調べるかですが、インターネットでWikipediaなどから情報を得れば十分だろうと考えている方、残念ながら大間違いです! 著者いわく、それでは調べたことにはならないそうです。

 なぜなら、インターネット上の情報は、また聞きのまた聞きが文字になっている場合がほとんどだからです。著者は、「一次資料に当たらなければ話にならない」と言います。一次資料とは、「ここがその話の出所で、行き止まりである」という資料のこと。

 では、一次資料はどうやって見つけるのか?

 図書館で見つけるのです!

 インターネット上に情報が溢れている時代だからこそ、加工や修正がされていない一次資料で事実を確認することが重要だと言います。

 わざわざ図書館に足を運んで調べものをするなんて面倒だと感じるかもしれませんが、これくらいきちんと事実を調べた上で書くからこそ、自分が書いた文章に責任を持つことができるのでしょう。

 そして、調べて書くのと同じくらい大切なのが、書く対象を「愛する」ということです。何も感情が揺れ動かない対象について書くことほど、退屈なことはありません。読む側にとっても、感動が中心にない文章はきっと憲法の条文のような味気ないものに映るはずです。

 どうしても対象を愛することができないときは、その素直な自分の気持ちを掘り下げて、なぜ面白くないのか、なぜ共感できないのかといった理由を書けばOK。

 そこに何らかの感情があるからこそ、書く意味があるし、読む人にとっても意味のあるものになるのです。



④Whyーなぜ書くのか

 著者の答えはこうです。

 事象に触れる。
 心象が生まれる。
 あなたは、なにかを書きたくなる。

 だから書く。つまり「自分が読みたいから、書く」ということです。

 本書の副題を覚えていますでしょうか。「人生が変わるシンプルな文章術」です。

 ライターとして活躍している著者ですら、長い文章を書く作業は苦しいそうです。でも、それを積み重ねているうちに、「書いたものを読んだだれかが、予想もしなかったどこかへ、わたしを呼び寄せてくれるようになった」と言います。

 「書いた記事について話をしてほしい」と言われて静岡へ行き、「〇〇について書いてほしい」と言われて東北を取材し、「本を書いてほしい」と依頼されて人と会い。そして著者は思うそうです、「文字がここへ連れて来た」と。

 自分が読みたくて、自分のために調べ、それを書き記すことで、人生が変わる。著者は、少しでも今の景色を変えるために、ここではないどこかへ行くために、文字を書くのです。。

 最後に、とても印象的な文章があったのでご紹介します。

 悪い言葉を発すると、悪い言葉は必ず自分を悪いところへ連れてゆく。良い言葉を発すると、良い言葉は必ず自分を良いところへ連れてゆく。わたしはそのことを知った。

 大手企業の電通を辞めてフリーランスで働き、こうして書籍を出版しているのですから、まさに著者の人生は文章によって変わったと言えるでしょう。

おわりに

 最後に「Whenーいつ書くのか」と「Whereーどこで書くのか」についても、著者は答えを用意してくれています。

 そんなものは決まっている。
 あなたは、いま、そこで、書くのだ。

 ちなみに各章の終わりには「文章術コラム」が載っているのですが、これがとても面白い! しかも、ただ面白いだけでなく、著者自身も「本書の中で唯一役に立つ部分だ」と書いているくらい、一読、いや、何度読んでもいいくらい価値がある内容になっています。

 特に「履歴書の書き方」というコラムは、著者のあまりにも独創的な考え方に度肝を抜かれながらも、マネしてみたくなるヒントがいっぱいでした。

 思うように文章を書けないと悩んでいる方…自分のために、自分が読みたいことを書くことが、実は一番の近道なのです。

 人にどう思われるかばかり気にして書くのはもう卒業しましょう!

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