USJ再建のマーケター森岡毅『苦しかったときの話をしようか』

USJ再建のマーケター森岡毅『苦しかったときの話をしようか』

 

 みなさんこんにちは、マイト(maito)です。

 生活の様々な場面で、AIの技術が活用されるようになりました。これまで人間が行っていた仕事や作業がAIに代用されることで、効率化が期待される一方、人間の活躍の場がなくなってしまうのではないかという不安の声もあがっています。

 特に、雇用減少についてはニュースで取り上げられる機会が増えました。働き方が大きく変わりつつある今、私たちはどのように働いていけばいいのでしょうか。

 この疑問について、役に立つ考え方(フレームワーク)を提示してくれるのが、今回ご紹介する『苦しかったときの話をしようか』です。

 著者の森岡毅さんはマーケターとして独自の戦略理論を駆使し、経営危機だったUSJを再建。現在はマーケティング集団「刀」を設立し、数々のプロジェクトを推進しています。近年では「丸亀製麺」を展開する外食大手、トリドールホールディングスの業績回復に貢献したことで知られています。

 本書の内容は、もともとご自身の娘さんがこの先、将来や仕事のことで困ったときのために書き溜めていた「虎の巻」。「修正して取り繕った『よそ行き』のキャリア論にしてしまうと、伝わる力が弱くなってしまう」との考えから、娘さんに向けたオリジナルの原稿からそのまま抽出した文面となっています。

 厳しく残酷な指摘をする箇所もありながら、話しかけるような、呼びかけるような表現が、著者の温かみを感じさせます。

 2018年で最も売れた本『漫画 君たちはどう生きるか』のビジネス版、というとイメージしやすいかと思います。

 今回は『苦しかったときの話しをしようか』の中から、これからの「人生の選び方」に関するヒントをご紹介します。



基準となる「軸」を決めよう

 将来の仕事や働き方について聞かれて、うまく答えられなかった経験は誰しもあると思います。その理由として挙げられることが多い「やりたいことがわからない(見つからない)」について、森岡さんはこう指摘しています。

 自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。

 つまり、原因は自分の外(世界、社会)ではなく内側にあり、確かな「軸」を持つことが重要だということです。

 たとえば「生涯年収を増やしたい」や「自分の好きなことができれば、お金は最低限あればいい」のように、自分が何を望んでいるのか、どうなりたいのかという価値観を具体的に把握しているかどうかが、「軸」を持つ上でのポイントとなります。

 もし「軸」が定まらないのであれば、自分の中で、何がわからないのかが理解できていないのかもしれません。

 森岡さんは「わかる」ということについて、こう指摘しています。

 “ わかる ”ということは、何がわからないのかを、わかることである。考えたらわかることと、考えてもわからないことの境界が自分なりに納得できるようになることだ。

 わからないことが知識や情報であれば、調べることでかなりのことがわかるでしょう。しかし自分の価値観は、自分自身で見出すしかありません。森岡さんは、「最終的には、今の君の精一杯の価値観で、君が『軸』を決めるしかない」と述べています。

 自己分析によって「軸」を明確にすれば、行動すべきことも自然と浮かび上がってきます。就職先や働き方など、目の前にいくつもの選択肢が現れたときは、「軸」からブレないほうを選ぶこと。そうすれば、納得して力を注ぎ込めるはずです。

 いきなり具体的なこと(業種や職種、企業名)から入らずに、まずは自分の「軸」作り(探し)から始めてみましょう。

世界の実態を知っておこう

 自分の「軸」が見えてきた後、それに合致したフィールドを選ぶにあたって、森岡さんは様々な事実を突きつけてきます。たとえば「人間は平等ではない」ことや、「資本主義は無知であることと愚かであることに、罰金を科すこと」などです。

 中でも特に重要だと感じたのは「人の年収は職能を前提にして、どの業界のどの会社に就職するかを選んだ時点で、将来における年収はほぼ自動的に決まってしまう」という指摘です。

  • 自分の職能価値(代替できない存在かどうか)
  • 業界の構造(どれだけ働いても、同じくらいの年収しか得られないような構造になっていないか)
  • 成功度合いによる違い(年収が上がる基準点はどこにあるか)

 これら3点の内容によっては、自分が望んだ企業やそこでの仕事に魅力があったとしても、想定していた(望んでいた)給料を得られないかもしれません。

 実際、今の資本主義社会の本質は、サラリーマンを働かせて、資本家が儲ける構図になっており、より高い年収を得たいなら、株式投資などを行う資本家(自分の代わりに、労働者に働いてもらう)ポジションに身を置くことだと森岡さんは断言しています。

 ただし、これは「軸」(価値観)が「生涯年収を増やしたい」など、お金に重点を置いている人の場合です。やりがいや自己表現が第一、のように「軸」の基準が異なる人は、そちらを優先した選び方のほうが満足を得られると森岡さんは言います。

 森岡さん自身も、株の売買をしない理由について「お金より遥かに私を衝き動かす最大の『欲』は、知的好奇心を満たすこと」と語っています。

 自ら働く世界の外にも、働き方や生き方があることを知っておけば、将来へのイメージがより具体的になるでしょう。



自分の強みを見つけよう

 目標や夢に向かって戦略を立てるにあたり、よく言われるのが「自分の強みを見つけよう」ということです。

 これについて森岡さんは、“強み”とは、自分の「”特徴”とそれを活かす”文脈”がセット」で初めて発揮されると述べています。

  • 「特徴」とは得意としていることや、夢中になれること。
  • 「文脈」とはストーリー(エピソード)のこと。

 本書では、今まで自分が好きだった「~すること」を書き出すことから、強みを導き出すワークを紹介しています。大事なのは「名詞」ではなく「動詞」を書き出す出すこと。(「運動が好き」ではなく、「運動するにあたって作戦を考えるのが好き」のように、何をしている時が好きかまで落とし込んで書き出します)

 森岡さんは「重複してもいいから、最低は50個書き出すこと」を推奨しています。すると自分の「動詞」に傾向があることが見えてくると言います。

 その傾向は、大きく次の3つに分類されます。

  • Tの人(Thinking):考える力/戦略性が強みになる。
  • Cの人(Communication):伝える力/人と繋がる力が強みになる。
  • Lの人(Leadrship):変化を起こす力/人を動かす力が強みになる。

 見出した強みをもとに自己PRを作成したり、伸ばしたい職能を選んだりすれば、一本筋の通った自分を確立できます。

 本書には、自分の強みを活かしたマーケティングやブランディング手法も紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。

終わりに

 本書には、タイトルにある通り森岡さんの「苦しかったときの話」が収録されています。

 かつて森岡さんは、そのキャリアのなかで自己評価が極限にまで下がった時期があり、自分が故障したと自覚するほど疲弊していたといいます。

 「自分の価値を強く疑うとき、人は憶病になり、行動できなくなる」ーーそんな苦しみの中から、森岡さんはピンチを切り抜け、合同会社ユー・エス・ジェイに転職。当時窮地にあったUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させました。

 苦しんだ時期を振り返り、学んだことは2つあるといいます。

  • Congruency(信念と行動の一致)
  • ➡︎「軸」と現在の自分の行動がズレていると、自分でも気づかないうちに、心と体のバランスを崩していく。

  • 結果を出さないと、誰も守れない
  • ➡︎結果にフォーカスすることで、他の余計なこと(意地やプライド)を排除できる。

 ご本人が最後まで仕事を全うし、現在のポジションに到達したのは自分の「軸」に従ったから、と述べています。

 今回ご紹介したような悩みや戸惑いをお持ちの方、ぜひ本書を読んで、それらを払拭するきっかけにしていただければと思います。


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