あなたは答えられる?ハーバード・スタンフォード流『へんな問題』

あなたは答えられる?ハーバード・スタンフォード流『へんな問題』




 今回は『ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題』という本をご紹介します。

 著者は、子どもの考える・伝える力を伸ばす「考える力 イニシアティブTHINK-AID」を主宰し、慶應義塾大学講師も勤める狩野みきさん。

 一流大学で出題されている「へんな問題」とはどのような問題だろうと思い、本書を手に取りました。

 世界経済フォーラムの予測では、今後以下のようなスキルが必要とされるようです。

  • 1位…複雑な問題解決力
  • 2位…クリティカル・シンキング
  • 3位…クリエイティビティ

 AIの存在が当たり前の環境では、他の人と同じスキルや答えは簡単にAIにコピーされてしまいます。今後必要とされるスキルは「人間だからこそできるスキル」と言えるでしょう。

 では、人間にしかできないことは何なのでしょうか。『へんな問題』は、他の人とは違うオリジナルな答えを出すための「考える力」をトレーニングするための本です。

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考える力を鍛える「疑問」の作り方

 本書ではルネ・マルグリットの『心の琴線』という絵画と問題が示されています。『心の琴線』は、自然風景の中に巨大なグラスと雲のようなものが描かれている不思議な絵です。画像検索して、ぜひあなたも考えてみてください。

  1. 何が見えますか。「事実」をできるだけたさん挙げてください。
  2. 一体何が起きていると思いますか。「実は◯◯が起きていると思う、なぜなら××」という風に、根拠も考えてください。
  3. 1と2を回答した上で、頭に浮かぶ「疑問」を最低1つ挙げてください。
  4. ❇︎注意 この問題に「正解」はありません。

 事実、根拠、疑問は浮かびましたか? この問題は、ハーバード大学の教育プロジェクトから生まれた思考メソッドが使われているそうです。

 早速、問題の解説を見てみましょう。

事実を「できるだけたくさん」挙げる。

 この問題に10個以上答えられた人は、「見て、理解する力」がかなりあるといえるようです。

 しっかり見る(聞く・読む)ことは「考える」ことの基本です。なぜなら、しっかり観察しないと理解できないからです。

 よくわかっていないことに対して意見のようなことを言う人がいますが、本来よくわからないものについては「よくわからない」としか言えないはずですよね。

 「考える」ということは、何らかの意見を持つということです。意見を持つからには責任を持たなければなりません。自分の意見に責任を負えるよう、まずは対象となるものをきちんと観察し、理解することが大切なのです。

何が起きているのか説明する。

 本書で紹介されている小学生の解答例の一つは以下のとおりです。

 グラスと雲は、この村のシンボル。まったく雲のなかった村に史上初めて飛んできた雲を、記念すべきシンボルとした。

 回答した小学生の頭の中ではおそらく、「なぜらこんなにグラスが大きいの?」「どうしてグラスの上に雲が載っているのだろう?」という謎があったのでしょう。そして、その謎解きのカギとして「シンボル」という視点を思いついたのだと思います。

 大人になると、何か面白いアイデアをひらめいても、「うまく説明する自信がないから言わないでおこう」としり込みしてしてしまいがちですよね。

 しかし大事なひらめきを、「説明できないから」という理由で葬り去ってしまうのは実にもったいないことだと思います。

 マグリットの絵の「不思議」を論理的に説明する力は、自分のひらめきを職場などでプレゼンする力につながっていくと著者は言います。

疑問を挙げる

 さて、最後の問題、「疑問」はどのように考えればよいのでしょうか。

 著者によると、絵を見てどんな些細な「わからない」ことでも列挙し、「わからないこと」をそれぞれ質問に変換することで「疑問」が作れるそうです。

 疑問・質問の原点は「わからない」という気持ちなのです。

 最近は、SNSなどで大量に流れてくる情報を早く多く受け取ろうと必死になるあまり、目の前の情報を理解しているかどうか、自問しなくなっている若者が増えているようです。

 「わからない」ことをそのままにすると、そもそも「なんでだろう」と思うことが減っていきます。子どもの頃、わからないことに対して純粋に「なんで?」と口に出していたように、大人になってからも「なんでだろう」と疑問に思うことは大切だと著者は言います。

 なぜなら「なんでだろう」が、独自の考えの素になり得るからです。たとえば、「なぜ電話にボタンが必要なんだろう」と思ったことで、iPhoneのような操作方法が生まれました。

 「普通そういうもん」を疑うことで、独自の視点が生まれるのです。



説得力のある「根拠」の作り方

 疑問のほかに大切なのが「根拠」です。どんなにすばらしいアイデアも「なぜそのアイデアなのか」という根拠が弱いと相手を説得することはできないですよね。

 ある意見を述べるときには、根拠(理由)をできるだけたくさん挙げましょう。

 たとえば、「日本人は英語を勉強すべきだ」の根拠として以下の根拠を考えたとします。

  • a.グローバル対策のため
  • b.視点が増えるから
  • c.転職や海外移住など生き抜くスキルになるから

 では次に、この根拠にツッコミを入れてみましょう。例えば、

  • a.機械翻訳がもっと発達したら英語力は要らなくなるのでは?
  • b.英語以外の言葉でも視点は増やせるはず
  • c.生き抜くためには英語以外のスキルも必要

 今度はツッコミを見て、納得がいくか考えてみましょう。aとbは「そうかもしれない」と思うかもしれません。cはどうでしょうか。

 cは、英語以外のスキル「も」必要ということは「英語は必要だ」と認めていることになります。ツッコミが弱いということは、元の根拠が強いということになります。

 説得力の有無を見極める方法は他にもあります。根拠Aと結論Bがあった場合、以下のように考えてみましょう。

  • 「Aが正しかったとして、B以外の結論を思いつくか」
  • 「Bという結論の根拠として、Aよりも良いものを思いつくか」

 この2つの問いに対する答えがいずれも「いいえ」であれば、Aは強い根拠となります。



「へんな問題」で考える力を身につける

 この記事では、自分で「答え」を見つけ出す考え方の基本をご紹介しました。

 本書では、他にも

  • ルールを見つける
  • 「根拠力」を持つ
  • 言語化の力を養う
  • 常識・自分の理解を疑う

といったテーマについて、さまざまな「へんな問題」が紹介されています。

 私も本書を読みながら考えてみました。一筋縄ではいかない問題ばかりでしたが、どれも普段使っていない部分の脳を使わせるユニークな問題で充実した時間でした。

 みなさんも「へんな問題」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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