日刊書評メールマガジン『ビジネスブックマラソン』の編集長として、1日1冊「仕事と人生に役立つ良書」を紹介している土井英司さん。
2004年から続いているこのメルマガは、2019年11月20日時点で、5400号を超える発行部数となっています。
元Amazonのカリスマバイヤーであり、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』のプロデューサーでもある土井英司さんの新刊、『「人生の勝率」の高め方』には、どのようなことが書いてあるのでしょうか。気になって本書を手に取ってみました。
土井さんは「選択」した時点で結果はほとんど決まっているとして、選択の質を高めることが「人生の勝率」を高めることにつながると説いています。
「EDiT」読書ノート
「選択」した時点で、結果は決まる?
ビジネス書評家として、さまざまな本を紹介している土井さん。彼の紹介した本が数多くベストセラーになっているのを見ると、「土井さんが紹介すればベストセラーになる(それだけ影響力を持った人なんだ)」と考える人もいるかもしれません。
しかし土井さんは「ベストセラーになる素材を選んで書評を書いている」だけであって、その可能性がない本を、土井さんの書評によってベストセラーにしているわけではないといいます。
人間はうまくいったことの理由を個人の能力や努力に求めがちですが、実際は「選択した時点」で結果はほとんど決まるというのが土井さんの考え方。大切なのは「売れるものを選択する力」なのです。
勝つか負けるか、成果が出るか出ないかは、選択した時点で、ほぼ決まっていると言っていい。したがって、「何をするか」「どこでするか」「誰とするか」「いつするか」を正しく見極めることが不可欠です。(p.19)
昨今の情報化社会では、ますます「選ぶ」ことの難しさが増しており、だからこそ「選ぶ力」の価値も高まっています。
どうすれば「選ぶ」能力を身につけることができるのでしょうか。
イケてる人から選択肢を与えてもらう
秋田県の過疎地域出身である土井さんは、小学生の頃の夢は「父親の仕事を継ぐ」ことで、中学を卒業したらすぐに働くか、地元の工業高校へ進学しようと考えていたそうです。
しかし中学生の頃に先生から「小さな環境にとどまっていると、夢まで小さくなってしまう」と教えられ、自分の学力に合った高校を受験する選択肢を奪われたことで、秋田県トップの県立高校を受験することになりました。この選択があったからこそ、その後ギリシアに留学したりニューヨークんに住んだりといった世界での活動につながったそうです。
「イケてない自分の選択」は、いつもイケてない。だからイケてる人から選択肢を与えてもらって、その中から選べばいい。これが土井さんが中学時代の経験から学んだ、人生の勝率を上げるための選び方です。
選択するときの2つのポイント
どれだけ選択する力を磨いたとしても、当然ながら「100%成功する選択肢」というものは存在しません。選択するときのポイントとして、土井さんは以下の2つを挙げています。
- 確率の高いものを選ぶ。
- 試行回数を増やす。
100%成功する選択肢が存在しないのであれば、「成功する確率が高い選択肢をたくさん用意しておけばいい」ということです。
たとえば、LVMHグループ(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループ)は、ルイヴィトン、ロエベ、セリーヌ、フェンディ、ブルガリといった世界的に有名な「70の高級ブランド」を傘下に置き、どれが買われてもLVMHが儲かるようになっています。CEOのベルナール・アルノーは「ブランドには流行り廃りがあるため、どれが当たるかはわからない。けれどブランドをたくさん持っていればどれか当たる。全部を当てる必要はない」という考えで事業を展開しているのです。
LVMHグループは、成功する確率が高いものを選び、試行回数を増やすという、上記2つのポイントを両方とも満たしていることがわかります。どのブランドも超一流で「当たる確率」が高いものばかり。だからこそ全体の成功確率が高くなるのです。
選ばなかったことによる自信喪失を防ぐ
成功確率の高い選択をするとは言っても、「選択」すること自体、ストレスのかかることでもありますよね。
今の時代は少しインターネットで検索するだけで膨大な情報や選択肢があふれているため、選択肢が多すぎて「選択を見送る」という選択をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし選択を見送ると、潜在意識下では「今回、自分は選択ができなかった」という自意識を覚えるようになり、「選択ができなかった自分」に自信が持てなくなってしまいます。選ばなかったことによって、自信を喪失することがあるのです。
土井さんは、「自信こそ、生きる上で一番大事なエネルギー」であり、生きていく上で、自信を失うことが一番怖いと言います。自信があれば、たとえ失敗しても次にまた頑張れますが、自信をなくすと、人は意欲を失ってしまうからです。
だからこそ正しいか正しくないかわからなくても、どんどん選択したほうがいいと土井さんはいいます。
選択において大切なのは、正しさよりも、速さです。正しいかわからなくても、ひとまず選択をする。間違いに気づいたら、やり直せばいい。(p.64)
以上のことから、次の2点を覚えておきましょう。
- 選択肢を過剰に増やさない。
- 選ばなかったことによる自信喪失を防ぐ。
「即断即決、即行動」をすることで「自信を失わない」ことが、人生の勝率を高めるためには大切なのです。
成功確率を上げる選び方のポイント
先ほど「成功確率の高いものを選ぶ」ことが大切だとお伝えしましたが、どうすれば「確率の高いもの」を選べるのでしょうか。
以下、2つピックアップしてご紹介します。
①バリュー投資
一つ目は「バリュー投資」の考え方をもつことです。これは「価値が高いのに値段が安くなっているもの」に投資する考え方で、現在の株価がその企業水準などから判断して「割安」になっている銘柄を買う投資方法です。
土井さんは、目の前に10の選択肢があったとしたら、その中から基本的に
- 魅力的じゃないもの
- 難易度が高いもの
を選ぶそうです。これらは多くの人が手を出さないため、割安になっていることが多いからです。
本業や自信のあるジャンルであれば「難易度が高いもの」を、本業ではないジャンル(知識のないジャンル)であれば「魅力的じゃないもの」を選ぶ。そうすることで、リスクを抑えながら成功確率の高い選択肢を選ぶことができます。
できる人というのは、いつだって不況のときにお金を使っています。誰もが悲観したときに割安で株を買い、上昇したら売る。だからこそ儲かる。これに対して、損する人というのは、いつも逆を行っています。
②少数の目利きを頼る
二つ目は「少数の目利き」の情報を当たるといことです。
たとえば「おいしい魚が食べたい」と思って食べログで検索をすると、たくさんのお店が出てきます。ランキングも掲載されていますが、このラインキングは多くの人の評価を総合したものであり、それぞれの食への詳しさにはバラつきがあります。
土井さんは、ランキングの評価を鵜呑みにせず、自分と食の感性が合いそうな「カリスマレビュアー」を参考にするそうです。
ビジネスでも同じように、各ジャンルに存在する「少数の目利き」を押さえておくことが大切です。
土井さんの場合、最新テクノロジーだったら伊藤穰一さん(MITメディアラボ)やミチオ・カクさん、投資に関しては藤野英人さんを参考にしているそうです。
信頼できる目利きの人の条件は、有名無名に関わらず「現場を持っていること」だといいます。本当の目利きは現場を経験している人の中にしかいないからです。
終わりに
成功確率を上げるためには、「選択」のポイントを押さえるだけでなく、「運」を戦略的に呼びこむことも重要です。
この方法については、本書の最終章で紹介されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
何をもって成功や勝ちとするかは人それぞれですが、選択する力を磨くことでよりよい人生を送れるとよいですよね。本書はその一助となるかもしれません。
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