こんにちは、ヒイラギです。
今回は、文化人として多くのメディアに引っ張りだこの齋藤孝先生による『読書する人だけがたどり着ける場所』をご紹介します。
本書の表紙に描かれた少年、どこかで見たことがあるような気がしませんか? 実は、2017年に漫画化されてベストセラーとなった不朽の名作『君たちはどう生きるか』のイラストを描いた羽賀翔一先生が、本書の表紙のイラストを担当しています。
そのため本書も、『君たちはどう生きるか』同様、少年少女向けに書かれたものだと思われる方がいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
齋藤先生は、「読書が人生の深みをつくる」という前提で本書を執筆しており、読書法を少し変えるだけで、誰もが今より「深い人」になれるとおっしゃっています。
何歳になっても、より良い人間になりたい、より意味のある人生を送りたいと望むもの。そこに年齢は関係ありません。
本書は、子どもの頃は本が好きだったのに大人になってから本を読んでいない人や、SNSのチェックばかりで読書がご無沙汰になっている人など、最近読書から遠ざかってしまっている方に特におすすめです。本書を読むと、久しぶりに本と向き合いたくなるはずです。
この記事では、読書によって「人生に深みを持たせる」ための5つのポイントをご紹介します。
まずは齋藤先生のいう「深い人」「浅い人」の違いについてついて知っておきましょう。
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「深い人」「浅い人」の差は
読書でつくられる
齋藤先生の言う「深い人」とは、「バラバラの知識を統合し、それを使いこなすことができる人」のことです。
単に知識があるだけでなく、それが人格や、その人の生き方に結びつき、教養として身についているものがどれだけあるか、それが「深い人」と「浅い人」の差をつくっているのだそうです。
私たちは日々ネットを通じて莫大な量の情報に触れていますが、ネットで文章を読むとき、私たちは「読者」ではなく「消費者」になってしまっていると齋藤先生は警鐘を鳴らします。
ネットで情報を得るのと本を読むのとでは、「向き合う姿勢」が違うのだそうです。きちんと本と向き合うと、それは「体験」として残るため、単なる「消費」とは違って、思考の深さを獲得できるのです。
この記事も、お伝えしているのはあくまで本書の要約情報ですので、これを読むだけでは単なる情報の「消費」に過ぎないということになります。
実際に本を手に取って、「読者」として向き合うことで、齋藤先生の考えを深く理解し、味わう体験ができるのです。
「深い人」は何が違うのか?
さて、読書によって今よりも「深い人」になると、どうなるのでしょうか。
世界が今よりも楽しくなるのだそうです。教養があれば、複雑な楽しみに気づくことができる。他の人は気に留めないようなことにも、「面白い」と感じることができるようになるのだといいます。
『バカの壁』の著者として有名な養老孟司さんの『骸骨巡礼:イタリア・ポルトガル・フランス編』を読んだことがありますでしょうか?
この本を読むと、「教養がある人」「人生の深みがある人」とは、まさに養老さんのような人のことを指すのだと感じます。
イタリアのとある宮殿を訪れた際、普通の人は「綺麗だなぁ」とただ眺めておしまいですが、養老さんは宮殿の美しさにゾウリムシの標本づくりにおける美を結びつけて考察したりするのです。
養老さんの著書を読むと、まさにバラバラの知識が統合されて新たな発見につながり、その積み重ねが人格、生き方に結びついていることがよくわかります。ちなみに、養老氏さんとてつもない量の本を読むそうです。
さて、ここからは、どうすれば「教養がある人」「人生の深みがある人」になれるのか、そのための読書法5つのポイントを具体的に紹介します。
「人生に深みを持たせる読書法」5つのポイント
①読書で認識力を身につける。
「認識力」とは、深く物事を捉える力のことです。本を読むと、著者の認識力に触れることができます。齋藤先生によれば、一流の認識力の持ち主が書いた本を読めば読むほど、読む人の認識力は磨かれるそうです。
特に、川端康成や太宰治のような文豪と呼ばれる方たちは大量の本を読んでおり、何百、いや何千人分の視点で物事を捉える力を持っています。なので、文豪の本を1冊読むだけでも、凄まじい数のものの見方を学ぶことができるのです。
読書によって認識力を身につけるためにオススメされている方法が、特定の「著者月間」をつくるというもの。
たとえば、来月は「ホリエモン月間」にして、彼の本をひたすら読みまくる。そうすると、堀江さんがどのような視点で物事を捉えるのか、その傾向がなんとなくわかってきます。そして、だんだんと「堀江さんだったら、こういう場面はこう考えるのだろうな」と、彼のように物事を捉えることができるようになっていきます。様々なタイプの人の本を読むことで、多種多様の認識力を手に入れることができるということですね。
②読書で思考力を磨く。
読書で思考力を磨くには、どうしたら良いのでしょうか。齋藤先生いわく、本を読む際は、文章を読解するだけでなく、もう一歩自分に引きつけて考えるようにするのがコツだそうです。そうすると、話の筋を理解しただけでは到達できない「深み」が見えてくるのだとか。
自分に引きつけて考えるためには、本を読んでいてハッとした部分を手がかりにすると良いそうです。そこに自分の経験とつながりのある何かが潜んでいる可能性があるからです。
他にも、「メモをしながら読む」「読んだ内容を人に話す」といった方法も思考力を身に付けるのに効果的だと紹介されています。
現役東大生が執筆したことで話題になった『東大読書』でも、著者の西岡壱誠さんが同じことを書いています。
何を隠そう齋藤先生も東大の出身。東大生たちは、こうして読書で思考力を磨いているのかもしれませんね。
他にも、本書の中では様々な「思考を深める方法」が紹介されているのですが、中でも私がオススメしたいのは「好きな文章を3つ選ぶ」というもの。
このシンプルな方法で、この本は自分にとってどんな価値があったのか、この本の魅力は何かなどを考える手がかりを得ることができます。
とても簡単なのに、思考を深める上で有効だと齋藤先生もイチ押ししています。
実際にやってみるとわかるのですが、「好きな文章を3つ選ぶ」ことを意識して本を読むと、一つ一つの文章にきちんと意識が向き、集中して読み進めることができます。
どんな本も、単に情報として読んでしまうと思考は深まりません。せっかく本を読むのであれば、少しでも実りあるものにしたいですよね。
③読書で知識を深める。
残念ながら、本を20冊、30冊読んでも知識はたいして増えないそうです。でも、ある一線を超えると、突然どんどんと知識を吸収しているような感覚が生まれてくるのだとか。新しい知識が古い知識と結びついていく感覚、知識同士の「つながり」が見えてくるのだそうです。
ここで齋藤先生がオススメするのは、特定のテーマについて5冊読んでみるというもの。難しくて理解できなくても最後まで読み切るのがコツです。「8割忘れたっていいや」くらいの気楽な気持ちで読んでみると、だんだんと理解できるようになってくるそうです。
5冊読み終わるころには、「けっこう詳しい人」になることができるといいます。20冊読めば、「スーパー詳しい人」になれるそうです。先ほどご紹介した『東大読書』の西岡壱誠さんは、あるテーマについて知りたいと思ったら、最低10冊はそのテーマの本を読んでみるのだとか。
なお、読むときは「つながり」を意識して読むと良いそうです。古い時代の本だったら、現代とのつながりを意識してみる。同じテーマについて、別の著者が書いた本とのつながりを探してみる。自分の生活とのつながりに注目してみる、等々。
このように「つながり」を意識して本を読むと、あとで知識を上手に取り出せるようになるそうです。
ちなみに、知識を深める上で、ベストセラーを読むことも効果的なのだそうです。理由は、その時代の空気感にマッチしているため知識として吸収しやすいから。流行に乗っかるのは嫌だなどとひねくれたりせずに、ぜひベストセラー本も読んでみてください。
④読書で人格を深める。
人格とは、知識、思考、感情、性格などが統合した個人のあり方のことです。
齋藤先生は、人格を深めるには偉人から学ぶのが一番だといいます。できることならば、孔子のような偉人が身近にいて、直接教えを乞うことができればいいのですが、それはなかなか難しい。
でも、本を利用すれば遠い異国にいる人にだって、大昔に死んでしまった人にだって、学ぶことができるのです。孔子にだって、『論語』を読むことでその教えに触れることができます。
また、人格を深める読書をするには、自分だけの名言を見つけるのが良いそうです。
文学には何らかの悩みを抱えている人が登場することが多いです。悩める登場人物たちが発するセリフにハッとするものがあれば、ぜひそれを自分だけの名言としてメモしてみてください。
いつかその名言が自分のあり方に大きな影響を与えるかもしれません。困難にぶつかったときの救いの手となったり、人生の指針となる可能性だって秘めているのです。
⑤読書で人生を深める。
多くの動物は、空腹が満たされていれば幸せです。しかし「物質的に満たされていることだけが幸福な人生である」と感じることができないのが人間です。
文学は空腹を満たしてはくれませんが、まったく別の次元の満足感を私たちに与えてくれます。
読書が私たちの心を満たし、人生を豊かにしてくれるのは、本を通じて違う人の生き方を体験できるからだと齋藤先生はいいます。
このサイトを訪れている皆さんのほとんどは、戦後の生まれかと思います。私たちは生まれた時から物資に恵まれ、飢えを凌ぐ辛さを味わったこともなければ、教育を受けさせてもらえない悲しみを経験したこともありません。しかし、戦争体験記や戦争小説などを読むことで、現代に生きながらも追体験をすることができます。
そして、著者が語る生きる意味や幸せとは何かを学び、考え、そして自分たちがいかに恵まれているかに気づいたりします。
人生は一度きり。でも、本を読むという体験を通じて様々な人生を知ることで、内面を磨き、心を満たし、人生を今より深めることができるのです。
最後に
本書では齋藤先生おすすめの名著がたくさん紹介されています。しかし、ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』や、シェイクスピアの『マクベス』など、少し尻込みしてしまいそうなものが目立ちます。
齋藤先生は、あえて難しい本に挑戦してほしいといいます。
なぜなら、易しい本を読むことは離乳食を食べるようなものだから。いくら食べてもアゴの力はつきません。内容がつかめないところや、もやもやする感じが残っても、とにかく最後まで読んでみる。そうすることで徐々に読書力が鍛えられます。
インターネットを使えば欲しい情報が瞬時に手に入ります。しかし、そういう時代だからこそ本とじっくり向き合うことで、読書という体験が人生に深みを持たせてくれることを実感できると思います。
読書によってたどり着ける場所は人それぞれです。
本を通じて今よりも深みのある人生を味わってみませんか。