企業が求める人材像で、かならず上位に挙がるのが「コミュニケーション能力が高い人」です。しかし、「コミュニケーションの取り方」について家庭や学校などできちんと習ったことがある人はいるでしょうか?
今回ご紹介する「PEP TALK(ペップトーク)」とは、スポーツの試合前のロッカールームで、監督やコーチがわずか1分ほどの時間で選手の心に火をつけるコミュニケーションのこと。簡単にいうと、相手を「励ます技術」のことです。
「技術」ですから、練習すれば誰でも身につけることができます。これまで「コミュニケーションの取り方」について教わった経験がない方は、ぜひ「ペップトーク」を学んでみてください。
やる気スイッチはどこにあるのか?
相手のやる気を湧き上がらせるためのポイントは、「自分には価値がある」と感じてもらうことです。そして自分に価値を感じる時というのは、大きく2つ、
- 承認欲求が満たされた時
- 貢献欲求が満たされた時
だと言われています。どうすれば、これら2つの欲求を満たすことができるのでしょうか?
相手のやる気を引き起こすためには、「存在のステージ」「行動のステージ」「結果のステージ」という3つの段階に分けて考えることが重要だと言います。
①存在のステージ
「”何かをしたから” 認める」のではなく、シンプルに存在そのものを承認することが重要です。
②行動のステージ
次に大事なのは、相手が頑張っていることに気がつくこと。そして行動を起こすことによってどんないい影響があるかを伝えることです。
③結果のステージ
最後に結果を認め、結果を出したことで周りにどんないい影響が起きているかを伝えます。
もちろん上っ面の言葉ではなく、全て「本気で」よくなって欲しいと心の底から願っていることが大前提です。
わたしは7年間学習塾で働いています。ひとりひとりの成長を願い、行動のステージでいう「宿題をやったこと」や「自習をすること」、結果のステージでいう「小テストで満点を取ったこと」や「目標点をクリアしたこと」については、かなり意識的に励ましてきました。
しかし本書を読んで、存在のステージを軽視してきたかもしれないと感じました。そしてそのせいで信頼関係がきちんと築けていなかったのでは…と反省しました。
「ペップトーク」4つのステップ
効果的な励まし方には、共通のパターンがあるといいます。それは「受容・承認・行動・激励」の4つのステップを踏むというものです。
①受容(事実の受け入れ)
まずは相手の感情や、状況をそのまま受け入れて共感します。
②承認(とらえかた変換)
次に、ネガティブな状況を「だからこそ〇〇」「とはいえ〇〇」のように捉え、発想の転換をします。
③行動(してほしい変換)
続いて、いきなり「結果」を求めるのではなく、本人がコントロール可能な「行動」について、ポジティブな表現で「してほしい行動」を伝えます。
④激励(背中のひと押し)
最後に、心に火をつける言葉を投げかけます。
これまで塾講師として、のべ300人以上の保護者の方と接してきて気づいたのは、成績が伸び悩む生徒の保護者は、子どもに対してネガティブワードを使う方が多いということです。
たとえば「いつも宿題しないね」「ミスしないようにしなさい」と声をかけるのです。子どもはこのような言葉を聞くと「宿題をしない自分」「ミスをしている自分」を無意識にイメージするようになり、現実にそうなってしまいます。
一方、成績が優秀な生徒の保護者は、自然と上記の4ステップを使いこなしています。たとえば、「今回はテストの勉強があまりできなかったみたいだね。不安や心配はたくさんあるね。とはいえ、いつもコツコツ学校の授業を受けていたじゃない! だから、自信を持ってテストに臨んで欲しいと思っているよ。大丈夫、あなたならできるよ」といった感じです。
まとめ
これまでの励まし方やコミュニケーションの取り方を変えることに、抵抗感を抱く人もいるかもしれません。しかしほんの少しだけ自分を変える勇気を持てば、相手はやる気を出し、想像以上の結果が生まれる可能性があるのです。これって、わくわくしませんか?
練習次第で誰でも身につけることができる励ましの技術「ペップトーク」。「人を元気づけたい」「やる気にさせたい」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。