自分と誰かを「比べる」ことで、自信を失ってしまっているあなたへ。
周りから「比べられる」環境にいることで、批判ばかり受けているあなたへ。
この本を届けたいです。
ティム・クックという人物をご存知でしょうか?
現在アップルの最高経営責任者(CEO)を務めているとても偉大な人物です。
今回紹介する『ティム・クック-アップルをさらなる高みへと押し上げた天才』という本は、今までほとんど語られてこなかったティムの生涯が綴られています。
ほとんどの人にとって「アップル」と聞いて一番に浮かぶ人物は「スティーブ・ジョブズ」だと思います。そのスティーブ・ジョブズの後継者こそが、本書の主人公であるティム・クックなのです。
比べられる苦しみ。ティムの強さ
「誰もが認める偉大な成功者の後を継ぐ」ーーそれは、想像が及ばないほどに恐ろしく、大変なことだと思います。
スティーブ・ジョブズが亡くなった後、世間は皆、ティム・クックが「彼のコピー」となることを望みました。そしてそれは不可能であり、アップルは破滅の道をたどると誰もが考えていたのです。
人々は亡きジョブズとティムをことあるごとに比較し、ティムを批判しました。しかし、ティム・クックはこう言い切りました。
自分がなれるのは、自分自身だけだということを理解しています。私は最高のティム・クックになるよう努力しているのです。
ティム・クックはスティーブ・ジョブズになるつもりは微塵もなく、それこそが彼の何よりの強みでした。
「比べる」という行為は必ず片方に「苦しみ」を与え、より良い方向への成長や、自分らしくあり続けるための妨げになってしまいます。
しかし、自分と誰かを比べない人であったティムは、心無い「比較」を受けても決して屈することなく、そんな逆境をはねのけることができた人なのです。
そして、世間からの声とは裏腹に、アップルをきちんと守り抜き、さらなる高みへと押し上げていきました。
ティムは、常にスティーブ・ジョブズと比較される形で表現されてきました。
対照的な部分もかなり多くあるのですが、今回はティムをスティーブ・ジョブズとの比較ではなく、一人の存在として、その強さや良さを紹介していきたいと思います。
「素直に認め、謝る姿勢」
ティムは、製品や製造過程に問題が生じてしまった際に、速やかに問題のあることを認め、謝罪をすることのできる人物でした。
そして改善や改革をすぐに行いました。このような素直さは、立場が上になっていくほど、難しくなっていくことです。
ティムはこのような言葉を残しています。
私たちは正しいことをして、正直に、率直でいようと望んでおり、自分たちが間違っているときにそれを認め、変化する勇気をもっています。
素直に生きることは、生じてしまった傷を複雑にすることなく、早く癒やしてくれることをティムは知っていたのです。
そしてその姿勢は、彼の下で働く社員たちからの信頼を得ました。
「会社の運営能力にたけていた」
ティムはスティーブ・ジョブズの後を継ぐことが発表されるまで、紙面のインタビューを受けたことも、ビデオに出演したこともありませんでした。世間的には何も知られていない謎めいた存在だったのです。このことは、世間を混乱させ、ティムへの批判が大きくなった理由でもあります。
しかし冷静に考えてみれば、スティーブ・ジョブズが能力のある多くの人材の中から任命し、周囲もそれを良しとした時点で、彼に相当の魅力が備わっていたということがわかります。
実際に、CEOを継ぐ前から、スティーブ・ジョブズが病気の治療のために何度か会社を休んでいた時には全ての責任をティム・クックが担っていました。それほど、会社の運営能力に長けた存在だったのです。
彼がもたらした効率的なサプライチェーン・流通・財務・マーケティングはアップルのさらなる成長の大きな手助けとなりました。
あど
「多様性の受け入れ」
ティム・クックは同性愛者です。ティムはその事実を長年公にしてきませんでしたが、CEOになって3年目の2017年にはっきりと表明しました。アップルという大企業のCEOが同性愛者であると表明した、というその出来事は多くの人を勇気づけ、社会に大きな影響を与えました。
自身が同性愛者という立場であるということもあり、ティムは会社の人材の多様化や、様々な支援を積極的に行っています。提供する製品だけでなく、女性やマイノリティを含め、会社に勤める人々への配慮も欠かすことがないのです。
私自身、本書を通して同性愛についての知識が足りないことに気づかされました。恥ずかしながら、アメリカではそれらに対する差別はもうほとんどないものだと思っていたのです。歴史や現状をもっときちんと知りたいと思わせてくれるきっかけとなりました。
「慈善活動への積極的な取り組み」
「良いことをすることと、良い成果を上げること」のどちらをとるか悩んではいけない。
それはティムの一つの信念でもありました。自社の製品のことだけに重点を置くのではなく、環境のことも考え、積極的に活動を行いました。これは、ティムがアップルで行った大きな革新であると言えます。アップルは現在、ハイテク業界で最も環境に優しい企業として見なされています。
おわりに
人を安易に比較してはいけないこと、そして比較することは本当に何の意味も持たないということに改めて気づかされました。
一方の良さを伝えたり賞賛を送ったりするために、一方を蔑むような表現をする必要は全くないのです。
同じものは何一つとしてないし、同じになる必要もありません。それぞれに違った良さや強みがあって、どちらのことも大切にとらえる方が何倍も素敵なことです。
何かと比べて判断をするのではなく、かけがえのない一つの「個」として全ての存在を一つ一つ丁寧に見つめることのできる人になりたいと思います。
本書を読んだことで、ティム・クック率いるアップルが、今後どのような商品を世界にもたらしてくれるのかより楽しみに思うようになりました。
たとえ当たり前に使っているものであったとしても、どんな「もの」にも、私たちの手に渡るまでに本当に多くの人の努力と知恵と思いが詰まっていることを忘れずにいたいと思わされます。