【要約】『入門 考える技術・書く技術』〜論理的でわかりやすい文章の書き方〜

【要約】『入門 考える技術・書く技術』〜論理的でわかりやすい文章の書き方〜

 「あなたの話には主語がない」──私の26年間の人生の中でおよそ300回は言われたであろう言葉です。(記憶がある小学2年生から月1回の頻度で計算)

 母にも学校の先生にも友人にも、たくさん言われてきましたが、そんな私が思っていたのは「言わなくてもわかるでしょ」でした。

 日本語の文章の約8割は、主語がないと言われています。主語がなくても相手が頭の中で補なってくれるため、問題なく伝わる場合が多く、主語の意識が極めて希薄なのです。

 しかしこれは、考えを正確に表現し、ロジカルに組み立てる際に大きなハンディキャップとなります。こうした日本語特有の問題に配慮し、論理的に考え、表現する方法を教えてくれるのが、『入門 考える技術・書く技術』です。

 本書は、1970年代にマッキンゼー初の女性コンサルタントとして活躍したバーバラ・ミント女史の『新版 考える技術・書く技術』で提唱された「ピラミッド原則」について、日本人の向けの実践ガイドとして解説されたものです。

 ピラミッド原則とは、論理的思考や文書作成における世界のグローバルスタンダードとなっている考え方です。

 この記事では、「なぜあなたの文章は読まれないのか?」を明らかにし、読まれる(わかりやすい)文章を書くための具体的な方法論を紹介します!

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なぜ、あなたの文章は読まれないのか?

 実用文やビジネス文書を書く上で、まず考えなければならないのは、「読み手の関心はどこにあるのだろう」「読み手はこの文章で何を求めているのだろう」という点です。

 読み手は忙しいので、自分に関係のない書き手側の関心事や思いつきに付き合っている暇はありません。自分が関心を持っている事柄について、いち早く書き手の考えを知りたいのです。

 そのためビジネス文書では、結論は冒頭に書くのが原則となります。「読み手の疑問に対する答え」こそが、ビジネス文書で伝えるべき考え(メッセージ)であり、それ以外のテーマについてどれだけ手間暇をかけて書いたところで、その文章は読んでもらえません。

 「読まれない文章」は、読み手が知りたいことに端的に答えていないのです。

 「読まれる文章」を書くためには、読み手の立場から主たるメッセージを絞り、考えを整理し、組み立て、文書に落とし込むという一連の流れを意識して実践する必要があります。

 「結論」を冒頭で明快に表現するだけでなく、結論を導く「判断根拠」を箇条書きでわかりやすく示すなど、全体として「メッセージ構成」が一目でわかるようにすることも大切です。

 そのためには文書を書き始める前に、伝えたい考えを明快に組み立てておかなければなりません。これは「書くプロセス」よりも「考えるプロセス」が重要ということです。

 具体的にどのようなメッセージを伝えようとしているのか。なぜそう言えるのか。そのような考えが明快に表現され、構成されていて初めて、わかりやすく、説得力のある文章となります。

 読み手の理解こそが、説得力のあるビジネス文書を書くための最重要ポイントであり、「読み手の関心や疑問を理解することは、ビジネス・ライティングの出発点となる重要なポイント」であると著者は説いています。

 では、どうすれば読み手の疑問に答える文章を書くことができるのでしょうか。本書では、「OPQ分析」という手法が紹介されています。

「OPQ分析」で読み手の疑問を明らかに

 「OPQ分析」とは、「Objective」「Problem」「Question」の頭文字をとった分析手法です。これによって読み手の疑問を明らかにすることができます。

 「問題を正しく定義できれば、問題の半分以上は解決できたようなものだ」と言われるように、文章を書く場合も、読み手の状況や疑問を正しく理解できれば、ライティングの半分は成功したようなものだと著者は説きます。

 「OPQ分析」とは、読み手の疑問を理解し、確認する「読み手分析」なのです。

 バーバラ・ミント女史の『考える技術・書く技術』では、「SCQ分析」(Situation:状況、Complication:複雑化、Question:疑問)が登場しますが、「OPQ分析」は、これをビジネスシーンでの問題解決に特化した簡易版です。

 以下、OPQ分析について簡単に説明します。

O:Objective

 「O」とは、読み手が目指している望ましい状況(Objective)です。読み手が考えている達成すべき目標や改善後の姿を指します。

P:Problem

 「P」とは、現状と「O」(望ましい状態) とのギャップ=解決すべき問題(Problem)のことです。「課題」や「問題」などの「困った状況」を指しているのではありません。

 現状に大きな問題はないけど、もっと上を目指したいという場合も、そのギャップは「P」となります。

 尚、「問題」とは、あくまで読み手にとっての問題を指します。

Q:Question

 「Q」とは、問題「P」に直面した読み手が、その解決に向けて自然に抱くだろう疑問(Question)のことです。ここでも読み手の視点をキープします。

A:Answer

 読み手の疑問「Q」に対する答え(Answer)が、そのまま文書の「主メッセージ」となります。

 大切なのは、「Q」に忠実に答えるということです。OPQの流れを無視するような答えを提示しないよう注意しましょう。

レール(トピック)

 「望ましい状況」と「現状」を比較する際には、必ず同じモノサシ(つまり同じレール上)で比べる必要があります。このレールが、文書のトピック(テーマ、主題)となります。

 OPQをつなぐレール(トピック)がずれてしまうと、読み手の疑問に対する適切な答えを提示することができません。

 以下、例題を見てみましょう。

レールがずれているケース

 まずはレール(トピック)がずれてしまっているケースです。

  • O(望ましい状況):「在庫を削減する」
  • P(問題):「売上が低迷しているのが問題である」
  • Q(読み手の疑問):「売上を増大させ、在庫を削減するにはどうすればよいか?」

 このOPQでは、「在庫を削減する」ことが「望ましい状況(O)」であるとしつつ、在庫が多い現状とのギャップとして「売上が低迷している」ことを「問題(P)」に挙げています。

 比較のレール(トピック)が「在庫」なのか「売上」なのかが明快でないために、「読み手の疑問(Q)」を明確にできていないことがわかります。

 これでは在庫削減について答えればよいのか、売上増大策について検討しなければならないのかわからず、具体的な答えを導き出すことができません。

 以下2つが修正例です。

修正例①レールを「在庫」とする場合

  • O:「在庫を削減する」
  • P:「在庫が急増した」
  • Q:「在庫を削減するにはどうすればよいか?」
  • A:「在庫削減のためには……するのがベストです」

修正例②レールを「売上」とした場合

  • O:「売上を増大させる」
  • P:「売上が低迷している」
  • Q:「売上を増大させるにはどうすればよいか?」
  • A:「売上を増大させるために……を提案します」

 このように読み手の問題が具体的になれば、答えも具体的になります。

 レールがずれていると、目標と現状を比較できないので、比較のレールが何かを明確に意識するようにしましょう。

 尚、設定したレールは、いま書こうとしているレポートのタイトルを導きます。修正例①であれば「在庫削減策」、修正例②であれば「売上増大策」といったものになるでしょう。

 一方、「悪い例」のようにQが曖昧な場合は、タイトルもつけにくいはずです。タイトルが付けにくいと感じたら、レールがずれていないかチェックしてみてください。



メッセージの構造を明らかにする

 さて、読み手の疑問に答える「主メッセージ」が決まったとしても、読み手はそれを読んですぐに納得してくれるわけではありません。

 たいていの場合、「なぜそんなことが言えるのか」「具体的にはどうすればよいのか」など、さらなる疑問を持つはずです。

 こうした疑問に対して、たとえば10の根拠をつらつらと並べても、数が多すぎて、読み手はすぐに全体を理解できず、混乱してしまうでしょう。

 ビジネス文書は、言いたいことが何なのか、全体としてどういう構造になっているのかが、ひと目でわかるものでなければなりません。

 それにはまず、書き手自身の手で考えの構造を整理しておく必要があります。

 参考、1956年にアメリカの認知心理学者、ジョージ・ミラーによる有名な論文「マジックナンバー7、プラス/マイナス2」です。この論文の中で、ミラーは「人間が短期記憶できる考えの数は7±2(すなわち5〜9)である」という研究結果を発表しています。

 すなわち、普通の人間が一度に理解できる(短期処理できる)考えの数は「7±2」が限度であるということです。ちなみに、ライティングの世界では、安全を取り、下限である「5」を限界の数とするのが一般的だそうです。

 人間は一度に理解できる考えの数に限界があるため、受け取った多くの情報をグループ化し(パターン化)し、理解可能な考えの数に収めようとするのです。

 とすれば、書き手があらかじめ情報をグループ化して伝えれば、読み手の負担をぐっと減らすことができます。

 たとえば「10の根拠」を示す場合、1つの主メッセージ(Qに対する答え)について、まず3つの大きな根拠(グループ要約)があり、各根拠について、3〜4ずつ詳細説明をぶらさげるという構造にすることで、読み手の理解を促すことができます。

 ピラミッド型に組み立てたメッセージは、そのまま文書の構造となります。これがわかりやすい文章を書く上での基本です。

グループ化と要約メッセージ

 最後に、文書の構造を明確にし、考えを組み立てるためのプロセスをご紹介します。

 これは「要約メッセージを探す」作業と、「グループを作る」作業の2つからなります。

①グループ化し、要約メッセージを探す

 複数のメッセージを1つのグループにくくり、そのグループを象徴する1つのメッセージ(要約メッセージ)を見つけ出す。

②メッセージに従って、グループを作る

 あるメッセージについて、その根拠や説明となるメッセージ(支持メッセージ)のグループを作り出す。

 どちらかだけでOKというものではなく、2つの作業で相互チェックをかけながら考えを組み立てていきます。

 たとえば、グループ化が曖昧だと明快な要約メッセージは作れませんし、曖昧なメッセージに従ってグループ作りをしようとしても説得力のあるグループはできません。

 「グループの要約メッセージを見つける作業は、グループを作る作業と同じ」であり、「グループ化」と「要約メッセージ」はピラミッドの要となります。

 尚、要約メッセージとは、グループ化した根拠、すなわちグループ内のメッセージ群に共通する「特定の意味」を拾い出すものです。

 この時、すべてをカバーできそうな包括的・抽象的な言葉を選ぶと、メッセージが単なる一般論(何かを言っているようで何も言っていないに等しい、聞くまでもないメッセージ)になってしまうため、注意しましょう。

まとめ

 本書は、わかりやすい文章を書くために必要な「ピラミッド原則」の知識やノウハウを、練習問題や具体例を通して体系的に学ぶことができます。

 バーバラ・ミント女史の『新版 考える技術・書く技術』よりもページ数が少なく、同著のエッセンスを短時間で習得することができるので、まさに「入門書」としておすすめです。

 ぜひ読んてみてください!

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