齋藤孝『読書する人だけがたどり着ける場所』要点まとめ!

齋藤孝『読書する人だけがたどり着ける場所』要点まとめ!




 こんにちは、マイト(@maito0405)です。

 突然ですが、質問です。みなさんは、読書とネット上の文章を読むことの違いは何だと思いますか?

 また、本を読んでその内容を取り入れられる人と、読んだだけで終わってしまう人の違いは何だと思いますか?

 これら2つの疑問に対して、齋藤孝さんは、著書『読書する人だけがたどり着ける場所』にて、情報(文章)との「向かい方」に違いがあると述べています。

 そして、これからの社会に必要なのは、表面的な部分から話を広げたり深めたりすることのできない「浅い人」ではなく、読書を通じて本質的なものを見出し、かつ相手にとって実りのある発言ができる「深い人」であると主張しています。

 齋藤先生はこれまで数々の本を世に送り出してきました。特に読書に関しては、『読書力』『大人のための読書の全技術』など複数の著書を執筆されており、その造詣の深さでも知られています。

 本書でも読書の効能について書かれていますが、本や文章との「向かい方」について大きく取り上げたのは、初めてだと思います。読書に関する本は、様々な著者の方が出版されていますが、本書ほど、本を読まないことに対して危機感を与え、読書の必要性をわかりやすく説いてくれる本を私は知りません。

 齋藤先生は、情報化社会に生きる私たちが抱える大きな問題を提示し、その解決に読書が役立つことを示してくれているのです。

 今回は、「読書する人だけがたどり着ける場所」へ、どうすれば行けるのか。その「向かい方」について3つのポイントをご紹介します。

  1. 「消費者」になるのをやめる。
  2. 読むときの「構え」を変える。
  3. 深まる体験をしてみる。

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①「消費者」ではなく「読者」になる

 冒頭でお伝えした情報(文章)との「向かい方」の違いとは何でしょうか。

 齋藤先生は、ネット上の情報を読むのと読書とは、そもそも違う行為だと割り切っています。そして両者の違いを理解しないと、本を読んでも何も得られない、と主張しています。

 今や、ネット上の情報は膨大になり、日々様々な情報が更新されています。忙しい中、情報全てを読むことはできません。多くの人は、見出しや文章や画像をパッとみて「面白い」「つまらない」などの評価をし、どんどん次の情報をチェックしているのではないでしょうか。

 そのときは「へぇ」とか「ほぉ」といった反応をするかもしれませんが、そこに留まる時間はごくわずか。つまり、ネット上の情報に対しては、「読む」というより「判断」をしており、向き合う時間が短くなっているのです。

 齋藤先生はこのことを次のように表現しています。

 ネットで文章を読むとき、私たちは「読者」ではありません。「消費者」なのです

 読書よりネットの文章に接する機会が増えると、私たちは気づかぬうちに「消費者」のまま本を読んでしまいます。それはもはや「読書」というより、「処理」に近いものです。

 目の前に出された情報への判断をすることはできても、そこから何かを得ようとする自分発の行動意識が薄くなってしまう。つまり、読んだだけで終わってしまい、自然と一つ一つの考えや行動が浅くなってしまうのです。

 処理能力を高めることは必要な能力ではありますが、その分野で人間はAIに勝つことはできません。私たちが高めたり、深めたりするべき領域はそこではないはずです。

 ネット上の情報を見る(処理をする)ような姿勢ではなく、しっかりと本と向き合う姿勢で読書しなければ、「読者」になることはできないということです。



②読むときの「構え」を変える

 では、実際に本を読むときには何を心がければいいのでしょうか。

 それは「構え」を変えることだと齋藤先生は述べています。①で紹介したとおり、読書は早く見て、判断する行為ではありません。むしろ、著者の話をじっくりと聞き、意見を言ったり一緒に考えたりするような姿勢が必要となります。読書をするときは、ネット上の情報を読むときとは、「構え」を変える必要があるのです。

 そのためには(少し面倒かと思いますが)読書の時間や環境を意識的に作る必要があるといいます。具体的な行動として、齋藤先生は一日のやることを終えたあと、寝る前に一時間でも時間を作って、読書にあてることを勧めています。難しければ、朝起きてからの15分や、朝の空いている喫茶店など、ライフスタイルに合わせた設定で始めてみましょう。

 コツは文章に長く、何度も接することです。最初は「面白くない」「疲れた」と感じることが多いかもしれません。しかし重ねていくと、次第に「処理脳」から頭が切り替わり、様々な発想や考えが浮かんでくる感覚が生まれてきます。

読書の効能とは?

 ちなみに齋藤先生は本書の中で、読書をすることで得られる効能を数多く紹介しています。

 以下、特に重要だと感じた「認識力」「著者の目」について説明します。

 「構え」が変わることで、同じ文章(情報)でも、受け取り方に幅や深みが出てきます。それは、隠された(表現されていない)意図や背景が読み取れるようになるからです。これが「認識力」です。「認識力」が高まると、これまで読んできた文章はもちろん、長文や難解文、身近な出来事の中から、新しい発見が生まれます。その発見が、読者をさらに成長させてくれるのです。

 同様に、異なる視点への気づきも生まれてきます。本というのは、自分とは違う生き方や考えを経た著者によって書かれています。違う存在なのだから、違和感があって当たり前なのですが、情報処理的な姿勢で読むと、「違う」「自分とは合わない」と片付けてしまいがちです。

 しかし、「構え」を変えた読み方をすることで、「相手の視点」や「相手の立場」になった場合の結論を体感することができます。そこから、自分一人では得られなかった気づきが得られるのです。

 齋藤先生はこの現象を「視点が重層的で多角的」になる、と表現しています。これまで意識してこなかった方は、ぜひ読書の「構え」を変えることから始めてみてください。

③思考を深堀りする

 ここまでご紹介した方法を実践していただくと、自分の内面に深みが加わっていくことが実感できると思います。しかし冒頭で触れた「深い人」になるためには、これだけでは足らず、読んだ後の「思考の深堀り」が重要になってきます。

 読んだだけで終わっているかどうかは、「感情が動いているかどうか、それを表現できているかどうか」で判断できると齋藤先生は述べています。

 「感情が動く」というのは、共感や感動、違和感といった自分発の感情のこと。「何に気づいたか」「何を感じたか」ということに思考を向けることが、文章の筋を理解しただけでは到達しない「深み」へとつながっていくのです。

 ここで大切なのは、感情が動いた後に、どれだけ「思考の深堀り」ができるかということ。たとえば夏目漱石の『こころ』を読んで、「友達を裏切るのは良くないと思いました」なんていう感想だったとしたら、それは全然思考力を働かせていないという話になると、齋藤先生はいいます。

 確かにこの感想からは「感情の動き」は読み取れても、それについてどう思考したか、という形跡は見られません。では、どうすれば、思考を深められるのでしょうか。

 齋藤先生は思考を「動かす」ことが必要だと述べ、そのために「対話」を勧めています。「本を読んだら人に話す」ということです。話し始めると思考が動き始め、考えや見方が深まっていくからです。

 もし話す相手がいなければ、口コミや書評(レビュー)に対して感情を動かしてみましょう。そこから同意や反論などの主張をもって、思考を深めていくのです。最近は読書会が全国各地で行われており、対話の機会が増えています。思考を深めるために、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 ちなみに、上記の感想について「思考の深堀り」をするとしたら、登場人物の側に立ってみる、自分だったらどうすると考えてみる、といった視点が考えられます。

 たとえば「そもそも友達とは何だろう」と(いったん)文章から離れ、別の視点からもう一度物語を体感する、という深め方が浮かびました。みなさんは、どんなことが浮かびましたか?

 「思考の深堀り」ができれば、自然と表現も変わっていきます。すると、表現した反応が自分に返ってきます。返ってきた反応を吸収し、また「思考の深堀り」をしていく。それが積み重なっていくことで、いつしか自分の目の前の景色が変わっていく。

 それを体感できれば、「読書する人だけがたどり着ける場所」に到達したのかもしれません。

最後に

 本書は、ご紹介した内容以外にも「知識を深める」「人格を深める」「人生を深める」本の読み方について書かれています。

 いずれも、情報処理的に文章を読むだけではたどりつけない領域が示されています。

 齋藤先生は「知性は万人に開かれている」といいます。そこに、能力の有無や年齢は関係ありません。

 ぜひ、読書を通じて「深まる」体験をしてみてください。

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