こんにちは、ヒイラギです。
今回は、次世代リーダーとして様々なメディアで注目されている落合陽一さんの『日本進化論』をご紹介します。
落合さんは、1987年生まれの東京大学大学院卒で、デジタルネイチャー(コンピュータと非コンピュータにより世界は再構築できる)という独自の考えに基づき、アートから政治の世界まで幅広い分野で活躍しているメディアアーティスト。二児の父でもあります。
本書は、そんな落合さんが、2018年7月に衆議院議員の小泉進次郎さんと開催した「平成最後の夏期講習(社会科編)-人生100年時代の社会保障とPoliTech」というニコニコ動画の番組の内容をベースに再編集した一冊です。
少々堅めの内容ではありますが、少子高齢化の日本が抱える様々な問題は、今後、ミレニアル世代が中心となって解決していかなければなりません。
この機会に、落合さんと一緒に日本の未来について考えてみませんか?
ポリッテックって何?
「ポリテック」とは、政治(Politics)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、「テクノロジーで何ができるのか」という観点を政治・行政の中に取り入れていくことを指します。
本書では「ポリテック」が重要なキーワードとして位置付けられています。
なぜなら、社会問題を解決するには、テクノロジーと政治の力の掛け合わせが必要だからです。今の日本では、法律が時代遅れなために、新しいテクノロジーが生み出されても私たちの生活に浸透しない歯がゆい現状があります。そこで落合さんは、小泉進次郎さんと動画配信を通じてポリテックの重要性を訴えているのです。
「ポリテックで人手とお金をセーブする」ーーこれが、落合さんの掲げる「日本進化論」の基盤となる考え方です。
では、ポリテックによって日本の社会問題はどのように解決することができるのでしょうか。以下、6つのテーマについて、落合さんの考えを紹介していきます。
- 1. 新時代の「働き方」はどう変わる?
- 2. 「超高齢社会」への対応策とは?
- 3. 「孤立化した子育て」の解決策は?
- 4. 日本の教育、今のままで大丈夫?
- 5. 日本の財源、本当に大丈夫?
- 6. 人生100年時代、スポーツが重要な理由は?
1. どうなる、新時代の「働き方」
すでに実感している方も多いと思いますが、これからは職場環境のAI化と高齢化がどんどん進み、私たちの働き方は大きく変わっていきます。
機械的作業はAIに取って代わられる一方、人手不足はますます深刻化していく中で、私たちは今後どのように働いていけば良いのでしょうか。
ここで押さえておくべきなのが、以下の3つのキーワードです。
- 「限界費用ゼロ化」
- 「インフラ撤退社会」
- 「ダイバーシティの実現」
①限界費用ゼロ化
「限界費用」とは、商品やサービスを生産するとき、ある生産量からさらに一単位多く生産するのに伴う追加的費用のことを指します。落合さんは、テクノロジーによりこの費用を限りなくゼロにすることができると言います。
たとえば、YouTubeやSNSといったプラットフォームを利用すれば、初期費用をかけずに、誰でも気軽に動画やテキストといったコンテンツを消費者に届け、金銭を得ることができます。
企業に属して給与をもらうという働き方だけでなく、明日からでも、自宅にいながら簡単にネット上でコンテンツ屋さんをオープンすることが可能な時代になっているのです。
②インフラ撤退社会
今後、少子高齢化がさらに進むと、過疎地のインフラ縮小・撤退が始まります。人が集まらない地方にはインフラを維持管理するためのコストを投じてもらえなくなり、都市部ばかりに集中するようになるのです。
しかし、心配ご無用! 先ほど「自宅で」簡単にビジネスができる時代になっているという話をしたように、ネットワークインフラさえ確保できれば、日本のどこにいても働くことができるようになるからです。
またテレプレゼンス(離れた場所にいる相手とも対面しているかのような臨場感を提供する技術)などが発展すれば、今後は物理的に人が移動する必要が減ってくと言われています。
そうすると、仕事は自宅で済ませ、安い家賃や新鮮な食材、豊かな自然といったメリットが多い地方での田舎暮らしを楽しみたいという人が増えるかもしれません。
③ダイバーシティの実現
これはテクノロジーの発展によって、性別、人種、年齢、障害など、幅広い人間の多様性が社会に受け入れられるようになるということです。
腕力が足りないだとか、外国語が話せないだとか、そういった不自由さは、テクノロジーによるサポートで、徐々に補えるようになり始めています。
つまり、障害がある人も、外国籍の人も、高齢層の人も、その他多くの人と何ら変わらず働くことが可能になるのです。様々な特性を持つ人たちが、テクノロジーの力を借りつつ、お互いに協力し合う職場。そんな温かく優しい環境で働きたいものです。
2. 超高齢社会、どうしたらいい?
近頃、高齢者ドライバーによる悲惨な交通事故が目立っています。多くの幼い命が犠牲となっている現状に、胸を痛めている方も多いでしょう。
高齢者の免許返納率はわずか5%程度。どうすれば高齢者による交通事故を減らすことができるのでしょうか。免許を強制的に取り上げるしか、解決法はないのでしょうか。
落合さんは、「ドライバー監視技術」「自動運転技術」「コンパクトシティ化」で高齢者ドライバーの問題は解決できると言います。
まず1つ目の「ドライバー監視技術」。これは、ドライバーが適正に運転できる状態かどうかをチェックするシステムのことです。すでに「ドライバーステータスモニター」という商品が開発されており、ドライバーの顔をカメラで撮影し、運転中の不注意やわき見、居眠りなどを検知することが可能になっているそうです。
2つ目の「自動運転技術」は、最近よく車のCMなどで耳にしますよね。車に搭載された優れたコンピュータにより、危険が察知されると警告が出たり、自動ブレーキが作動したりすることで、高齢者ドライバーによる事故率は大きく低下すると期待されています。
3つ目の「コンパクトシティ化」は、車ではなく、街のあり方を変えることで、高齢者が車を運転しなくても不便なく暮らせるようにしようというアプローチです。落合さんは、極端な例としてショッピングモールに病院や老人ホームを併設する案を挙げています。
生活に必要な施設をギュッと集めてコンパクト化すれば、インフラ維持費の節約にもなりますし、高齢者に限らず、障害がある人や小さい子どもがいる世帯にとっても住みやすい街になりそうですよね。
高齢者ドライバー問題を解決するためのアイデアは、その他の超高齢社会の問題にも応用することが可能です。アイデアを実現させるためには、法的整備もテクノロジーの発展に併せて早々に着手する必要がありそうです。
3. 孤立化した子育て、どうしたらいい?
「子どもは可愛いけど、子育ては大変」、よく耳にするフレーズです。
落合さんは、「子育てが特に大変なのは子どもが6歳になるまでの6年間」であるとしています。確かに、子どもが小学校に上がるまでの時期は、食事にトイレにお風呂にと何かと手が掛かり、1人で遊ばせていても目が離せません。
これまでは、祖父母や親戚の力を借りて子育てすることが一般的でしたが、現代は核家族化が進み、親ばかりに子育ての負担が極端にのしかかるようになっています。
たとえばお馴染みの「サザエさん」で考えてみると、未就学児のタラちゃんの面倒を、親であるサザエさんとマスオさんの他に、波平さん、フネさん、カツオくんにワカメちゃんの総勢6人で見ています。もし磯野家が核家族化した場合、マスオさんが仕事に出ている日中、サザエさんは一人でタラちゃんの面倒を見ることになります。
こういった日本の現状について落合さんが提案するのは、インターネットサービスを活用した「手が空いている人に子どもの面倒を見てもらえる仕組み」です。最近は、近隣エリアにいるベビーシッターを簡単に探すことができる「キッズライン」のようなマッチングサービスが増えてきています。
そして、もう一つ著者が提案するのは、「隣人たちと共同で子育てに携われる地域コミュニティの再構築」です。
「隣人たち」とは誰のことを指しているのでしょうか。ずばりそれは、人口の多くを占めている高齢者の方たちです。これからは、子育て世代を高齢者に支えてもらう時代だと落合さんは言います。テクノロジーによって子育てを自動化するのは難しい。そういう場合はテクノロジーじゃなくて、高齢者層の力を借りよう! というわけです。
いずれの方法も、これからの時代は「社会全体で」子育てをすることが重要であることを意味しています。みんなで日本の子どもたちを育てる。そういう意識が当たり前になれば、日本の未来も明るい気がします。
4. 日本の教育、今のままで大丈夫?
日本の教育というと「詰め込み教育」のイメージを抱く方が多いと思います。
九九の暗記に始まり、歴史上の出来事の年号を語呂合わせで覚えたりと、テストに向けてひたすら情報を詰め込んでいた記憶がありますよね。
こういった日本の教育方針の成果もあって、義務教育修了時の15歳児の知識や技能力は世界でもトップクラスだそうです。(2015年実施の「OECD生徒の学習到達度調査」より)
しかし、2019年の「THE世界大学ランキング」を見ると、100位以内にランクインしている日本の大学は東京大学(42位)と京都大学(65位)のみ。15歳児の時はトップクラスだったのに、一体どうしたのでしょうか。
落合さんが問題視しているのは、誰かに「これを学びなさい」と言われて学ぶ日本の教育スタイルです。大学に入るまでは基礎知識を「詰め込み教育」で蓄えたとしても、その後は学習スタイルを一変し、「Ph.D(博士学位)的な学習」をするべきだと言います。具体的には、「自分は何を学ばなければならないのか」を客観的に考えて学習することが大切だということです。
またこれからの時代は、学ぶ手段も大きく変わっていきます。いわゆる一般教養はオンラインでAIなどから学び、専門分野のみ大学教授やその道のプロに学べば、時間、お金、労力を効率よく使うことができるようになります。
最近は、ハーバード大学やスタンフォード大学といった有名大学のコースもオンラインで気軽に受講できるようになっています。他にも、「オンラインサロン」などのコミュニティに参加し、特定の分野の専門家から学ぶスタイルも身近になってきました。
何を隠そう、本サイト「美女読書」にもライティングスキルを磨くための有料オンラインサロンがあります。興味がある方は是非チェックしてみてください。
さて、次はちょっとシビアなお金の話です。
5. 日本の財源、大丈夫なの?
日本がすでに1000兆円を超える巨額の借金を抱えていることはニュースなどで頻繁に報じられています。
このような状況でさらに少子高齢化が進めば、社会保障費はどんどん増大し、ミレニアル世代は年金がもらえないのではないか、それどころか日本は財政破綻に陥るのではないかとの見方をする専門家もいます。
しかし、落合さんの予測は少し違います。2000年突入当初と異なり、対GDP比で将来の社会保障費をみると、今後は緩やかに伸びていくとの見方をしています。
また社会保障費の内訳を見ると、特に医療と介護の費用が増加傾向にあることから、「テクノロジーの配備」や「労働力の拡充」によってそれらの費用を抑えることができれば、社会保障費の増加を食い止めることが可能だと言います。
まず「テクノロジーの配備」とは、どういうことでしょうか。著者が提案するのは、例えば電動車イスの普及です。すでにVRやAI技術が搭載された車イスが開発されており、これにより車イス1台につき介護職員1名という非効率さが解消できるようになると言います。
車イスを利用している高齢者は、車イスという媒体を介して人とのつながりを求めているのではないかと思っていたのですが、実際は、電動車イスの試運転に参加した方の評価は高いそうです。介護業界にありがちな、機械による処置を嫌う雰囲気を変えていく必要がありそうです。
もう一つの「労働力の拡充」とはどのような方法なのでしょうか。ここでも期待したいのは、やはり高齢者の力です。最近は外国籍労働者の受け入れも進んでいますが、超高齢社会に突入している現状を考えると、高齢者にも働いてもらえるかどうかが、今後の日本の生産性を左右すると言います。
人生100年時代と言われる今、年齢による雇用差別は時代遅れかもれしません。
テクノロジーにより医療・介護分野の自動化が広がれば、大きなコストダウンになり、省人化も進みます。さらにそこに高齢者の力が加われば労働力も増え、日本の対GDP比でみる社会保障費額はそう不安を煽るものではなくなるかもしれません。
6. 人生100年時代のスポーツ
最後だけ、少し性質の異なるテーマです。なぜ、落合さんはスポーツに注目したのでしょうか。
それは、スポーツが「Well-being」につながると考えるからです。「Well-being」とは、肉体的・精神的・社会的、いずれの面においても幸福で健康な状態、という意味です。
落合さんは、スポーツによって「ストレスの解消」、「コミュニティの形成」、「病気の予防」が叶えば、自然と「Well-being」になるはずだと言います。
さて、10代から70代のうち、最も運動できていないのはどの世代でしょう。答えは、30代と40代です。平成29年にスポーツ庁が調査した結果によると、週3日以上運動する30代・40代は2割に満たないそうです。
その原因はとてもシンプル。「仕事や家事が忙しいから」です。これを解決するためには、企業や組織がもっと積極的にスポーツをする時間を確保するべきだと言います。福利厚生としてフィットネスクラブと契約してる企業は多いですが、従業員に行く時間がなければ意味ないですよね。なので、企業の方で運動する時間を1日のタイムスケジュールに組み込んでしまうくらいの強引さが必要だそうです。
もちろん、ここでもテクノロジーを活用しない手はありません。最近、アミューズメント施設などでVRを使ったアトラクションゲームをよく見かけます。落合さんは、それをスポーツにも応用すべきだと言います。VRやARの技術を使えば、ビルの一室であっても、体育館で運動するのと同じくらいの運動量と開放感を得ることが可能になるそうです。バーチャルの世界で好きな時に好きなスポーツをする未来、想像するとワクワクしませんか。
人生100年時代、いつまでも元気でいたいですよね。そのためには運動が欠かせません。また、運動する機会を通じて社会的なつながりが構築されれば、精神的な健康も維持することができます。
先述した働き方や育児などの問題は、健康な体と心があってこそ向き合うことができます。だからこそ著者は、日本で生活する私たちが元気であることがまず大切だと考えているのではないでしょうか。
おわりに
落合さんは最後にこう述べています。
「平成の次の時代の僕の目標は、ポリテックを推進し、過去ではなく、未来に投資できる社会を創ること」だと。
国の負債や、介護等の社会保障費のやりくりに追われる時代ではなく、ミレニアル世代が国をリードする時は、今よりももっと自由で伸び伸びと暮らせるようになっているといいですよね。
みなさんも未来のために、次世代のリーダーと一緒にポリテックで新しい時代をつくっていきませんか。