マイクロソフトはどのように蘇ったのか?3代目CEOサティア・ナデラの戦略

マイクロソフトはどのように蘇ったのか?3代目CEOサティア・ナデラの戦略




 こんにちは。ノイエです。前回、『amazon 世界最先端の戦略がわかる』という本を紹介しました。今回は『マイクロソフト 再始動する最強企業』をご紹介します。

 「GAFA(ガーファ)」=(Google、Apple、Facebook、Amazon)のひとつとして影響力を発揮しているアマゾンに対して、マイクロソフトは最近、全盛期を去った印象がありました。本当のところどうなんだろう、という好奇心が湧いたのが本書を手に取ったきっかけです。

 この本はマイクロソフトの改革と、その知られざる全貌について日米幹部のインタビューを元に構成されています。大企業の変革や、AI、MR(複合現実)などマイクロソフト独自の技術について知りたい人には、非常にエキサイティングな一冊になっています。

 今回はChapter1の「12万人の10兆円企業をゼロから作り替える」に注目し、主に3代目CEOナデア氏の行った改革について紹介したいと思います。

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ソフトウェアからクラウドへの
大胆なビジネスドメインの変革

 全盛期を過ぎたと思われた巨大企業マイクロソフト。一度ダウントレンドに陥った巨大な会社が、近年、蘇ったとされています。

 その背後には、サティア・ナデラ氏というインド人の3代目マイクロソフトCEOの就任があります。就任時、ナデラ氏は47歳だったといいます。インドに生まれ、情報科学の修士号取得のため、21歳で渡米。アメリカ中西部やシリコンバレーでの経験を経て、1992年にマイクロソフトに入社しています。

 本書によると、「エンジニアとしてさまざまなイノベーションを主導してきたが、哲学的な信念を持ち、人々を鼓舞し、ミッションの達成を重視するリーダー」として、社内では知られていたそうです。

 2014年にCEOに就任したナデラ氏は、就任から間もないタイミングで、ビジネスのスタイルを変えていくと宣言しました。「ソフトウェア」から「クラウド」へのビジネスの大転換を図り、Windowsの無償化に踏み切ったのです。

 マイクロソフトは創業以来、ソフトウェアのライセンスビジネスによって売り上げを立ててきた。1台のパソコンにOSであるWindowsが入り、Officeをはじめとしたアプリケーションが入り、それらはライセンスの形で販売された。アップデートが行われれば、有償でライセンスが与えられた。アップデートの度に課金ができるというビジネスモデル。これが巨額の売り上げ、利益を生み出した。

 これまでマイクロソフトにとっては、ライセンスビジネスこそが売り上げの主軸でした。それを、「どれくらいマイクロソフトのクラウドを使ってもらい、コンサンプション(消費量)を獲得できるか」に変換したのです。これは「1回だけ売り込んで買ってもらえればいい」という商売から、「信頼関係を築き、さまざまな提案をすることで、長くたくさん使ってもらう」という商売に大転換することを意味します。

 こうしたマイクロソフトの決断の背景には、ナデラ氏が重きを置いた「グロースマインドセット」というキーワードがあります。



「グロースマインドセット」とは?

 「グロースマインドセット」とは、「すべてを成長という視点で捉えていこう」という考え方のことです。

 何か絶対に正しいものがあるのではなく、常にオープンでいろんなシグナルに対して前向きに取り組んでいく。自分をどんどん変えていく。チャレンジや変化を促進し、積極的に新しい取り組みをやっていこうというメッセージである。

 過去の成功にこだわらず、世の中の変化に応じて、ビジネスの在り方を柔軟に変化させていくーーマイクロソフトのカルチャー変革は、「グロースマインドセット」によって成し遂げられたものだったのですね。

コラボレーションする会社へ

 さらにナデラ氏は就任から1カ月ほどで、競合企業をはじめ、オープンソフトウェアの世界のエンジニアたちとも、次々と提携を結んでいきます。

 象徴的な例としては、長年のライバル、アップルと手を組んだことです。このことに対し、幹部は下記のように語っています。

 サティアになって変わったのは、iPhoneは我々の敵などではなく、マイクロソフトのアプリやサービスをたくさん使ってくれる素晴らしいデバイスだ、という発想です

 アップルだけではなく、Linuxもマイクロソフトのクラウドサービスの重要なパートナーになっています。さらにデータベースの世界で競合していたオラクルは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」事業にとってのパートナーとなりました。セールスフォース・ドットコムも競合でしたが、Office 365というクラウド事業で見ると、CRMと呼ばれる顧客管理システムの連携パートナーになります。

 これまでソフトウェアの世界で圧倒的な力を誇ってきたマイクロソフトは、競合他社と協力関係を結ぶことなく、自社製品ですべてまかなう道を選んでいました。そのマイクロソフトが次々と提携を結んでいく。ITの世界の人には驚天動地の出来事だったといいます。

 さらに、この提携は、競合から見ても非常にメリットがあります。マイクロソフトのソフトウェアを使っているユーザーは世界で10数億人おり、アップルにしてもiPhone上でOfficeが動くことは、ユーザーにとって利点となるため、双方がウィンウィンになるからです。

 では、マイクロソフトはどのように利益を出していくのか。それこそが、クラウドによるビジネスだといいます。クラウドサービスを導入してもらい、「たくさん使ってもらう」。そのトラフィックそのものをマネタイズしていく。使ってもらえば使ってもらうほど収益になる仕組みを作っているのです。

 かつてのマイクロソフトにはなかった、これら一連のオープンな動きは、世界中の皆が恩恵を受けることができる素晴らしい変革だと思いました。

まとめ

 今回は、『マイクロソフト 再始動する最強企業』から、Chapter1に焦点を当て、三代目CEOのサティア・ナデラの行った変革を紹介させていただきました。

 個人的に変革の最大の要因である「グロースマインドセット」という考え方に感銘を受けました。成長するためには変わることを怖れてはいけない、ということを改めて学ぶことができました。

 本書では、同社のカルチャーや世界観、組織体制、評価制度、人材育成の改革など、ナデラ氏が直接携わったこと以外についても説明されています。また、Chapter2以降では、知られざるマイクロソフトという企業の全貌についても詳しく説明されています。

 マイクロソフトという企業に少しでも興味がある方は、ボリューム満載で楽しめる本ですので、ぜひ手に取ってみてください。

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