『仕事2.0』人生100年時代に向けて私たちは働き方をどう変えるべきか?

『仕事2.0』人生100年時代に向けて私たちは働き方をどう変えるべきか?




 「ちょっと働き方を変えてみませんか?」

 これは、NewsPicks編集部副編集長・佐藤留美さんの著書『仕事2.0 人生100年時代の変身力』の冒頭にある言葉です。なぜ、このような提案から本書は始まるのでしょうか。それは、現在が「仕事1.0」の時代から「仕事2.0」の時代へと移行している過渡期であり、働き方を変える必要性が高まっているからです。

 「仕事1.0」とは、簡単にいうと「サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし」という働き方ができた時代のこと。新卒で入った会社で定年まで働き、仕事の内容もどこで何時間働くかも、将来のキャリアプランも会社任せ。仕事は何よりチームワークが大切で、副業など会社の「和」を乱す行為はしない。主たる稼ぎ手は夫で、子どもは基本、妻が育てる…そんな昭和型の働き方が当たり前だった時代です。

 一方「仕事2.0」は、自分のやりたいことを、どこでどう実現するか、自分でクリエイトしていく時代。一つの会社で一生を終えることは不可能となり、時代のニーズに合わせて自分の専門性をアップデートしたり領域を広げたりして、職業寿命の変化に対応しながら、新しい自分を獲得していける者だけが生き残る時代です。

 というのも、少子高齢化によって年金や医療費などの社会保障を維持できなくなり、長寿化が進んで、今の現役世代の多くが100歳以上生きるようになる時代では、60〜65歳で定年退職して悠々自適と引退生活を送るような昭和型の生き方・働き方を続けることはできないからです。

 ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏は、共著書の『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』にて、国連の推計データをもとに、「50歳未満の日本人は100年以上生きる時代を過ごすつもりでいたほうがいい」と語っています。

 人生100年時代に向けて、わたしたちは今、どのような準備をする必要があるのでしょうか。

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現役期間を延ばす

 本格的に高齢社会に突入し、100歳まで生きることを考えた場合、かなりの老後資金を確保する必要が出てきます。

 佐藤さんは、今から老後に備える上で一番重要かつ現実的な選択肢として、「現役期間を延ばす」ことを挙げています。寿命が延びているのに引退年齢が変わらなければ、ほとんどの人は長い引退生活を送るために十分な資金を確保できません。

 だからこそ、これまでのような「教育→仕事→引退」という3ステージで人生を考えるのではなく、「仕事」のステージを延ばして、変化に対応しながら多くのステージを経験していく必要があるのです。

 グラッドン氏はこれを「マルチステージ・ライフ」と呼んでおり、たとえば仕事を長期間中断したり、転身を重ねたりしながら、生涯を通じて様々なキャリアを経験する生き方を勧めています。

有形資産より、無形資産を蓄えよ

 では、現役期間を延ばし、長く働いていくためには、何が必要となるのでしょうか。グラットン氏は、NewsPicksの取材で「有形資産より、無形資産を蓄えよ」と語っています。

 「有形資産」とは、お金やモノのこと。「無形資産」とは健康や仲間、変化への対応力など「より長く働くための資産」のことを指します。寿命が延びると、お金を蓄積するよりも「無形資産」を蓄積することの方が重要というのがグラッドン氏の主張です。

 無形資産は、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つからなるといいます。以下、具体的に説明します。

  • 「生産性資産」…生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。構成要素はスキル、知識など。
  • 「活力資産」…肉体的・精神的な健康と幸福のこと。健康、友人関係、パートナーや家族との良好な関係などが該当。
  • 「変身資産」…人生100年時代を生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験する、それに対応するために自分をよく知っている、助けてくれる人的ネットワークがある。また、新しい経験に挑戦する意欲があるといった要素。

 グラッドン氏は、なかでも「変身資産」を貯蓄することが重要だと言います。

 なぜなら、「教育→仕事→引退」の3ステージの人生では、誰もが同様に、ロックステップ式(密集行進式)に人生のステージが変わっていきましたが、「マルチステージ・ライフ」では、自分が一体どうなりたいのかを自ら選択しながら、自分自身で変化を制御することが求められるからです。

 具体的には、自分自身に対する深い理解や、変化を助ける多様なネットワークを持つことが重要で、変身できることそれ自体がこれからは資産になっていくといいます。

3つの働き方

 『LIFE SHIFT』では、長い職業人生を送るための手段として、以下の3つの働き方が提唱されています。

  • 「エクスプローラー(探検者)」…職業に就く前段階。1ヵ所に腰を落ち着けるのではなく、様々な場所を巡って視野を広げて、自分の適性や適職を見つけようとする人。
  • 「インディペンデント・プロデューサー」…小さくても自分のビジネスを立ち上げ、企業と新しい形のパートナー関係を作る人のこと。
  • 「ポートフォリオ・ワーカー」…複数の仕事や社会的立場を持ち、様々な活動を同時並行で行う人のこと。

 「マルチステージ・ライフ」の世界においては、このような3つの「変身」を遂げることが当たり前になると、グラッドン氏は主張します。

 とはいえ、昭和の働き方が染み付いている世代にとっては、グラッドン氏の提案をそのまま実践するのはなかなかハードルが高いでしょう。

 これまで会社一筋の生き方をしてきた方たちが、「仕事2.0」の時代に向けて、今から現実的に取りうる選択肢として、佐藤さんは次の3つを挙げています。

  1. 専門性の更新と、領域の拡大、テクノロジーへの対応。
  2. 生息するコミュニティを広げて、ときには副業へ挑む。
  3. (家族がいる場合は)夫婦で働いて、収入源を増やす。

 ①については、「タグを掛け算する」ことが有効だといいます。タグとは、その人が持つ能力やカバー領域、機能などのキーワードのこと。たとえば、「新規事業開発×プロジェクトマネジメント×英語」などのように、自分のタグを3つ以上掛け算することで、希少性をグッと増すことができます。時代のニーズに合ったタグを増やしていくことができれば、長い職業人生を生き抜きやすくなります。

 ②は、職業寿命が変質し、会社や職そのものを替えざるを得ないケースが増えてくる時代においては、複数の「コミュニティ」を持っていることが極めて有効になるという話です。勉強会に参加したり、大学院に通ったり、自分の得意なことを教える講座を開設したりして、複数のコミュニティを持つと、スキルのアップデートができるだけでなく、人とのつながりが生まれて、新しい仕事や職場との出会いのきっかけが得られることもあります。

 また、親しい友人グループがもつ情報には重複があるのに対し、それほど緊密ではない知人のグループ「ウィークタイズ(弱い絆)」は、新しい情報を持っているため、「多様性に富んだ人的ネットワークは、変身の基盤をつくり出す」とグラッドン氏は述べています。

 ③は、長寿化社会の資金設計として、共働きで世帯収入を上げるということです。ただし、従来のように夫が一家の大黒柱で、妻は育児を主としながら、家計をサポートするためにできる範囲の仕事に就く、という形ではなく、「夫婦ともにキャリアと家庭の両立を目指す」というものです。たとえば妻のキャリアが重要な局面に来た時期は、夫が育児に注力し、夫がキャリアで勝負をかけたい時期が来たら、妻が家事育児を主に請け負う、のように、両方が交互に大黒柱になるシーソーのような関係です。

 ただし、これを実現するには、主に男性側の意識の変革や、男性が育児休暇を取得しやすい組織の風土作りなどの課題があると佐藤さんは指摘しています。

まとめ

 ここまで、少子高齢化と長寿化による影響で、今後は人生100年時代生きる覚悟が必要であること、また「マルチステージ・ライフ」では、「無形資産」、中でも「変身資産」が重要であることについて述べてきました。

 人生を楽しみながらサバイブするためには、今何をするべきなのか興味が出た方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

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