こんにちは。ノイエです。この書評を読んでくださっている本好きの皆さんであれば、書斎に憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。
わたしもその一人です。実は様々な偶然を経て、春に向けて注文住宅を建設予定でして、そこで前々から夢だった書斎を作ることを検討しています。しかし何しろ家づくりも書斎づくりも初めてなので戸惑うことばかり。
そんなとき出会ったのが、『知的生活の設計――「10年後の自分」を支える83の戦略』(堀正岳・著)という本です。
タイトルが「知的生活」の「設計」ですから、書斎の作り方についても書かれているに違いないと思い手に取ってみたところ、SECTION03にまさに「パーソナルスペースとしての『書斎』設計」という見出しで書斎作りのポイントがまとめられていました。
この記事では「知的生活の設計」とは何か、そして家の中にパーソナルスペースとしての「書斎」を作る方法として「シェアする書斎」という考え方をご紹介します。
「知的生活の設計」とは?
「知的生活」とは「周囲にあふれている情報との向き合い方を知的にする生き方」をいいます。本を読むことでも、映画を観ることでも、趣味を追究することでも、そこに「新しい情報の積み上げ」があれば「知的生活」につながります。
たとえば面白い本を読んでも、読みっぱなしだと「消費」にすぎませんが、それを何らかの新しい情報とともにブログなどでアウトプットすると、新しい知的生産につながります。
どこにでもある情報との触れあいを、自分自身のオリジナルな体験としてスケールアップさせ、「新しい情報」として世の中にフィードバックさせていくことが、知的生活を送るということです。
では「設計」とはどういうことでしょうか。これは「知的生活」を維持するために、日常を「設計」するという意味です。
具体的にどのような環境づくりをすればよいのでしょうか。その一つとしてSECTION3で取り上げられているのが、パーソナルスペースとしての「書斎」の設計です。
なぜ「書斎」が必要なのか?
堀さんは「およそ知的な活動を持続し、なんらかの蓄積を行うためには『自分ひとりの部屋』、つまりはパーソナルスペースとしての『書斎』を獲得することが必要」だと述べています。
わたしには5歳と2歳の子どもがおり、記事を書くときはこども達もいるリビングのテーブルにノートパソコンと本を並べているため、「パーソナルスペースとしての書斎」というのは夢のような響きです。
なぜ、知的生活を送るためには「書斎」や「パーソナルスペース」が必要なのでしょうか。本書では「蓄積」と「知的自由」という2つのキーワードが挙げられています。
①蓄積
まず知的生活を送る上では、書籍や映画のDVD、音楽のCD、プラモデルやフィギュアなど、膨大な資料を使って思索するため、最低限の物理的な空間が必要になります。
情報は全てネットから集めていて、資料はクラウド上にあるという人でも、検索するためにはパソコンや机が必要です。
書斎に置かれているのは、自分が出会って選び取ったものだけであり、それらが蓄積されたコレクションは、世界にたった一つの情報の集合体です。
自分の知的生活のスタイルに合わせて書斎を設計し、ライブラリーを私有することが、知的生活を支えるのです。
②知的自由
書斎が必要なもう一つの理由は、それが「知的な自由」を与えてくれるからです。書斎という場所が確保されているからこそ、いつもの生活から知的生活へのスイッチの切り替えが可能となります。
書斎では、会社や社会的生活で求められている自分の姿とは異なる、本来の自分に回帰する時間を得られます。一旦、現実的な役割から解放されることで、知的自由を感じることができるのです。
本棚一つ、小さな机一つからスタート
「書斎」と聞くと、大作家が持っているような壁一面のライブラリーを思い浮かべるかもしれません。しかし堀さんは、「書斎」という言葉にそうしたイメージがあること自体が害であると指摘しています。
なぜなら多くの人がイメージする(上記のような)「書斎」の姿は、その作家が歳月をかけて育てた最終完成形であって、最初からその形だったわけではないからです。
堀さん自身、現在は8畳の部屋に5つの本棚と机を起き、約,3000冊の本がいつでも手に取れる空間となっているものの、大学生の頃は「机とセットで購入することで値引きしてもらった最初の本棚」と「本の重さにしなるいくつものカラーボックス」からスタートしたそうです。
一般的な住居に住み、時間をかけえささやかな知的生活を構築しようと考えている特に若い人にとっては、むしろ本棚一つ、小さな机一つから成長させてゆくのが、ここで設計したい書斎の姿です。
パーソナルスペースとしての書斎作りにおいては、
- まずは小さく、可能な範囲から始めること
- しかし10年先の目標を夢に描きつつ、空間への投資を計画すること
の2つが指針になると言います。
堀さんは、そもそも自宅に書斎用の部屋を確保することが困難な場合がほとんどという前提から、最初は本棚一つ、小机一つだけでも構わないので、「ここは自分の空間だ」と安心とともに宣言できる片隅に旗を立てることを勧めています。それから書斎づくりの旅が始まるのです。
では、具体的にどのように「書斎」を作ればいいのでしょうか。
「シェアする書斎」とは?
一人暮らしの人であれば、借りている部屋一室を書斎に割り当てることができるでしょう。家族と暮らしている場合でも、一室を書斎に割り当てることが理想ですが、我が家では建てる家の坪数や必要な部屋数の都合上、一室を自分だけの書斎に割り当てることがどうしてもできません。
そこで参考になったのが「書斎をシェアする」という考え方です。書斎を誰か一人が占有する場所ではなく、パートナー、もしくは家族と共有するアーカイブにするのです。
たとえば本棚を区切って棲み分け、それぞれ不可侵の領域にしておきます。一番上の棚はパパ用、二番目の棚はママ用、三番目の棚は子ども用のように。その棚はそれぞれのパーソナルスペースなので、どのような本をどのように置くかは各人の自由です。
机についても、横幅の狭いものを2台用意して、パートナーとの仕事空間を分けたり、昼間は子どもが勉強部屋として使って夜は仕事部屋として使ったりすることで、共有の仕方を工夫します。
また机の上を「共有型のパーソナルスペース」と考えて、机を使う人数分だけ、机の上に広げた本や書類を一時的に保管できる収納ケースを用意するという手も紹介されています。使い終わったら、机の上のものをすべて自分専用のケースに格納します。RPGでいうところの「セーブデータ」のようなものと言えばイメージしやすいでしょうか。
このように、共有と棲み分けを行うことで、家庭と書斎の両立が可能となります。
まとめ
本を読むことや文章を書くことが好きなわたしにとって、自分専用の書斎はかねてからの憧れです。
しかし今の部屋の広さには限りがあり、どうしてもパーソナルスペースを作れないのが悩みでした。
そんな中、ついに叶った注文住宅建設の夢。ようやく自分だけの空間が手に入るかも…! と期待していたものの、「わたし専用の書斎」は現実的に厳しいことがわかり、凹んでいました。
だからこそ「シェアする書斎」という考え方を知れてよかったです。
本書では、書斎を作る上で必要な本棚としてIKEA、ニトリ、無印良品それぞれの具体的な商品も紹介されています。
また本棚の物理的な空間を節約するために、本を断裁機で分解してドキュメントスキャナーで中身を読み取る、電子化の具体的なやり方についても紹介されています。
もちろん書斎のみではなく、「知的生活」を設計する上でたくさんのヒントを得られる一冊です。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。