こんにちは、ノイエです。今回は、前田裕二さんの新刊『メモの魔力』を読んでみました。
以前、『NewsPicks Magazine vol.2 Autumn 2018』に掲載されていた「ニューエリートの必読書500」という記事を読んで知ったのですが、前田さんは、なんと年間400冊以上の本を読む生活を10年以上続けているというのです。
わたしも大の読書好きのため、読書に関するメモの取り方の参考にしたいと思い、この本を手に取りました。
前田さんは本に限らず、映画や演劇、テレビ、ネットコンテンツから街で見かける看板まで、様々なものに対してメモを駆使して考察をされているそうです。
この記事では、前田さんの考えるメモの意義や効果と、具体的なメモの取り方について紹介します。
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知的生産のためのメモとは?
前田さんによると、メモには2種類あるそうです。一つは「記録のためのメモ」、もう一つは「知的生産のためのメモ」です。
「記録のためのメモ」とは、その名の通り、情報や事実をそのまま記録するためのメモです。この作業は、極論すると人間がこなすべきタスクではなく、ロボットにでもできてしまう単純な情報伝達のためのメモです。
一方、「知的生産のためのメモ」とは、新しいアイデアや付加価値を自ら生み出すことを強く意識して書くメモのことです。こちらは人間にしかできません。たとえばふだん無意識にスルーしてしまいそうなことに目を向けて、それらを「言語化」することで生まれるのが知的生産としてのメモです。
「人間にしかできないこと」に集中するために、「記録」のためではなく「知的生産」のためにメモをとることが重要だと前田さんは指摘します。
「知的生産のため」と言われると、少し難しそうだなと感じる人もいるかもしれません。わたしもその一人です。
しかし頑張ってメモを取り続ければ、次の5つのスキルが身に付けることができるので、実践してみる価値は十分にあります。
メモによって鍛えられる5つのスキル
①アイデアを生み出せるようになる(知的生産性の向上)
メモによってアイデアを出し、付加価値を作ることを常に意識している状態となるため、おのずと知的生産性が向上します。
②情報を見過ごさなくなる(情報獲得の伝導率向上)
情報獲得の伝導率とは、自分にとって重要となる情報をキャッチし、しっかりメモに残せる割合のことです。
きちんとメモをとる習慣を身に付けると、自分にとって有用な情報をキャッチするための「アンテナの本数」が増えます。常にアンテナがマックスの状態を維持しておけば、いつ何時でも、重要な情報を漏らさずにキャッチすることができます。
前田さんは、メモはできるだけたくさん取ったほうがよいと言います。「聞いたことをすべて書き取る」という気持ちで、超集中して、ゾーンに入って(超集中状態で)、メモをとることで、情報獲得の伝導率を高めることができます。
③相手の「より深い話」を聞き出せる(傾聴能力の向上)
PCやスマホで「ありもの」の資料を見せられるよりも、紙媒体のメモを利用して、相手にとってわかりやすいように図を描いて説明したり、相手の話すことをメモしたりする方が、なんとなく心が近づき、熱やポジティブな空気が漂う感覚があります。
結果として、より深く相手の気持ちを聞き出せるかもしれません。
④話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
構造化能力とは、議論の全体像を常に俯瞰して、今どの話題を、どんな目的で(何に向かって)、どこまで話しているのか、ということを(なるべく瞬時に)把握する力です。この能力が身に付くと、メモが上手に取れるようになります。
また人は何かを話すとき、必ずしもその内容を(頭の中で)十分に構造化してから発するわけではありません。そこで、聞き手がメモを取りながら議論を再構築する癖をつけると、さらに建設的な議論に導けるようになります。
⑤曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)
メモをとるには言語化は必須です。メモを習慣づけるためには、感覚や思いを言葉にすることからは逃げられません。自家発電的に「言語化の強制力」を一人でも作り出すことができるのがメモの力だと前田さんは言います。メモを取る習慣を身につければ、言語化能力は必然的に上がっていくということです。
メモとは、誰にでもできる簡単な作業に見えて、実は奥が深く、脳を100%活用させる創造的な作業であると感じました。
前田さんは「メモは姿勢である」と強調しています。
何らかの目的を持って、日々、あらゆる情報に対して、毛穴むき出し状態でいられるかどうか。身のまわりのあらゆる情報にアンテナを張り、そこから何らかの知的生産を行う意識を持てているかどうか
このようなたゆまぬ知的好奇心と、知的創造に対する貪欲なスタンスこそが、メモ魔として最も大切にすべき基本姿勢であり、単なる型以上に身に付けてほしい素養であると前田さんは述べています。
「ファクト→抽象化→転用」という最強のフレームワーク
では、いよいよ具体的なメモの取り方をご紹介しましょう。まずはノートを1冊用意します。そして、原則「見開き」で使います。
左ページの左端から5分の1くらいのところに縦線を引いて「標語」のための列を作ります。残り5分の4は「ファクト」の列にします。
右ページは半分に分けて使います。左に「抽象化」、右に「転用」の列を用意します。
こうすることで、左から、「ファクト→抽象化→転用」という一連の流れができあがります。
- インプットした「ファクト」をもとに、
- 気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、
- 自らのアクションに「転用」する。
左ページの「ファクト」に客観的な事実を書きます。「標語」は、ファクト欄に書いたことをグループに分けて、「要は何の話か」をまとめて一言で表現したり、豊かな表現かつ覚えやすいネーミングにしたりしたものです。
右ページの左側に「抽象化」した要素を書きます。さらに、抽象化した気づきを別の何かに適用して実際に行動を変えるため、右ページの右側には「転用」の要素を書いていきます。
本書では、前田さんが運営するSHOWROOMというビジネスの誕生を事例のひとつとして取り上げ、「ファクト→抽象化→転用」の例を紹介しています。
前田さんは幼くして両親を亡くしたこともあり、生計を立てる一つの手段として、小学生の頃から駅前でギターの弾き語りをしていたそうです。
ファクト
- カバー曲を歌うと、オリジナル曲のときよりも立ち止まってもらえる。
- 立ち止まってくれた人のリクエストに応えると、ぐっと仲良くなれる。
- そうして仲良くなったあとにオリジナル曲を歌うと、もっとお金がもらえる。
抽象化
- 仲良くなるには、双方向性が大事。
- 人は「うまい歌」ではなく、「絆」にお金を払う。
転用
- 双方向性があり、絆が生まれる仕組みをネット上に作る。※それによって、アーティストが自分の力で(リアルよりも効率的に)ファンを増やし、お金を稼ぐことができるようになる。
大切なのは、「ファクト」を書きっぱなしにしないことだと前田さんは言います。
最初のうちは、ついついファクトばかり記入し、ノートの右側のページが空欄になりがちかもしれません。しかし、どこかのタイミングで必ず一度は自ら書き出したファクトを振り返るようにします。そして内省によって得た気づきを「抽象化」し、アクションに「転用」していく。
この一連の流れを作ることが大切なのだそうです。抽象化というと難しく感じるかもしれませんが、「他の分野にも応用可能な気づきを得よう」というつもりで考えるとよいそうです。
また、メモの本質は「振り返り」にあると前田さんは述べています。「ファクト」を「抽象化」して、それをどういう風に自分に「転用」してアクションするのか? そこまで導き出して初めて、メモとしての意味が出てくるのです。
まとめ
最初は単純に読書メモをとる上で役に立つ情報がないかと思い手に取った本でしたが、読み進めるに従い、メモをとることの奥深さが明確になってきました。
特に「ファクト」から「抽象化」したものをどう「転用」し、どうアクションしていけばいいのかについてはとても参考になりました。
今後は、読書ノートを作って、読んだ小説や新書、ビジネス書などから「ファクト」「抽象化」「転用」に分けてノートをまとめようと思います。
本書の第2章では「抽象化」をさらに深堀り、第3章以降ではメモを通した自己分析により、夢を叶えることをテーマに論じられています。
あなたも『メモの魔力』に取りつかれてみませんか?