カリスマじゃなくてもチームを育てて成長させる「協調型」リーダーの技術とは?

カリスマじゃなくてもチームを育てて成長させる「協調型」リーダーの技術とは?




 みなさんはチームで仕事を進めている中で、一部のメンバーに業務が偏ってしまったり、メンバーの協力がうまくいかなったりして悩んだことはありませんか。

 こうした課題を解決するのがリーダーの仕事ですが、リーダーに必要とされる知識や能力、求められる役割というのは多岐に渡るため、非常に学ぶことが難しい領域だと思います。

 そうした悩みの助けになるのが、今回紹介させていただく本『スモール・リーダーシップ チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー』です。

 リーダーと聞くと、カリスマ的な存在感をもって何千、何万という人たちを率いることができる人や、誰にも思いつかないようなアイデアでイノベーションを引き起こす人を思い浮かべるかもしれません。しかし世の中の大半の仕事現場を回しているのは、もっと小さなチームを率いる、「小さいリーダー」たちです。

 本書では、そんな小さなチームを率いる「スモール・リーダー」の手引きとして、具体的かつ包括的なノウハウを教えてくれます。

 メンバー1人ひとりが達成すべき目標に向かって、何をするべきかを主体的に考え、互いに相談しながらゴールに向かうーーそうしたチームを率いるリーダーは、メンバーの多様性を尊重し、コミュニケーションを通じて全員の意思を統一しながら進める人物で、著者はそれを「協調型」リーダーと呼んでいます。

 この記事では、「協調型」リーダーとしてチームの成長を促すために、知っておくべき基礎的な知識について紹介させていただきます。



プレイヤーであった自分を変える

 まずリーダーは、一人のチームメンバー(プレイヤー)であった自分を変えることが、リーダーとしての最初の一歩であると著者は言います。

 「自分で手を動かした方が速く仕事ができる」「その仕事をよく理解している人間がやった方が失敗がない」ーーそう考えて、目の前にある作業を自分で終わらせてしまった経験はありませんか。1プレイヤーであればそれでよかったかもしれませんが、リーダーの仕事はチームのミッションを達成させることです。

 リーダーが個別の作業に対して手を動かしてしまうと、時間や集中力を割かれてしまい、リーダーとしての活動が全うできなくなるだけではなく、他のメンバーがその作業についての知識を学ぶ機会を奪ってしまうことにもなります。

 リーダの活動と、日々の作業とはまったく次元が異なりますので、いかに作業から手を離し、その作業ができる人を増やして、自分がリーダーとしての本来の仕事に割ける時間を作り出すかが重要です。

 では、どうすれば「できる人」を増やすことができるのでしょうか。



チームとしての学びを創出する

 チームにおいて「できる人がやる」という状態を克服するためには、メンバー間に存在する「知識量のばらつき」をなくすことが何より大切です。そして新しい知識を学びながら、その知識をチームに展開していくという循環を作っていかなければなりません。

 本書では、知識を「形式知」「暗黙知」「スキル」の3つに分けて解説しています。

「暗黙知」を「形式知」に変える

 まず「形式知」とは、「言葉になっている知識」です。業務マニュアルや書籍のように具体的な形になっているため、形式知の伝達は計画的に行うことができます。職場での研修などは、必要最低限の知識(形式知)を伝えるための仕組みであるといえます。

 一方、「暗黙知」は「言葉になっていない知識」であり、「普段は意識しないけれど、質問されれば言葉になるもの」から「特定の状況に置かれて初めて意識するもの」まで、きわめて幅広いものです。暗黙知は、本人の経験と強く結びついているため、同じ経験をしたことのない相手に伝えるのは簡単ではありません。「実際に仕事を経験して覚えてもらう」というやり方には、こうした暗黙知を自分なりに身につけてほしという意図があるのです。

 「スキル」は、知っていることを繰り返し行うことで「身体化された知識」で、「できるかどうか」がポイントとなります。たとえば「適切な資料の作り方に関する知識」を形式知として知っていたとしても、できるかどうかは別の話です。「知ってはいる」ことを時間をかけて繰り返し行うことで「できる」ようになって、初めて「スキル」となります。

 この3つの知識の形のなかで、チーム内で共有できるのは「形式知」だけです。つまり「暗黙知」を「形式知」にしていくことが、チームでの知識の偏りをなくすための解決策なのです。「できる人がやる」という価値観では、できる人の中にだけ、「暗黙知」と「スキル」が蓄積していき、他のメンバーとの能力の差がどんどん広がっていってしまいます。

「暗黙知」を「形式知」にするための武器は「言葉」

 個人の中にある暗黙知を形式知に変えて、チーム内に共有していくためには、暗黙知を「言葉」にすることが必要です。しかしながら、暗黙知を言葉にすることは容易ではないと著者は言います。暗黙知は、一言でいえる言葉がないからこそ暗黙知なのです。

 そのためこの手助けをするのもリーダーの重要な仕事となります。具体的には、できる人に

  • 「あなたはその仕事をうまく進めているけど、何かコツがあるんですか?」
  • 「どうすればそういうことができるんですか?」

のように問いかけて、その質問に「言葉」で答えてもらうことを繰り返します。

 質問を受けると、問われた側は答えるために言葉を探さざるを得ないため、何かしらの言葉が紡ぎ出されます。最初から「形式知」として的確な言葉が出てこなかったとしても問題ありません。そこから「それはつまりこういうことかな?」のように掘り下げていくと、お互いに理解できる共通の言葉が見つかるようになると著者は言います。

 このように「言葉になっていないものを言葉にする」行為を繰り返すことによって、チームの言葉が豊かになっていき、新しくチームに入ったメンバーも、すぐに知識を習得できるようになります。

 リーダーが最終的に目指すべきなのは、「自分がいなくなっても、自律的・主体的に回っていくチームを作ること」であり、誰かの指示に従って動くのではなく、共有された言葉を中心に回ることこそが、協調型リーダーが目指すべきチームの姿なのだと著者は言います。

まとめ

 本書を読んで、特に印象に残ったのは、「言葉を共有すること」でした。私の好きな言葉に、山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」があります。

 私自身、他のメンバーの仕事ぶりを見ながら学ぶこともありますが、それだけでは相手のもっている知識をきちんと理解できているかはわかりません。自ら教えを請い、言葉にしてもらうことで、はじめてできる人のノウハウを吸収することができるのだと気づきました。

 私もチームの一員として、自分が学んだことは言葉を省かず他のメンバーに共有していこうと思います。

 本書ではこの他に、チーム内での価値観の違いに目を向け、多様な意見を活かす方法や、仕事が回るサイクルの作り方など、リーダーだけではなくメンバーとしても知っておくべき知識や考え方が詳しく解説されています。

 チームがうまく機能せずに目標達成ができないという悩みを抱えている方は、一度手に取ってはいかがでしょうか。






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