最前線で日本を守る人材を育成する防衛大学校。そこは、1ヶ月で脱落者が多数出るという、「日本一過酷な大学」。
完全全寮制、絶対縦割り社会など「厳しい指導」がタブー視される今の時代に逆行しているかのような環境で、学生たちは日々、徹底的に鍛えられながら成長していきます。
防衛大という組織の中で常に求められるのは、「気合」や「根性」のような場当たり的なものではなく、どんな状況でも、常に考え、行動を変え、結果を出し続けること。その積み重ねが「折れない心」をつくるのです。
そして、この「折れない心」は、防衛大に限らず、様々な問題を抱える今の日本社会で生き抜く上で重要なスキルとなるでしょう。
そんなストレスフルな社会で、日々もがき悩む人たちへ「折れない心」を育てるための行動や考え方を教えてくれるのが、『防衛大式 最強のメンタル』です。
著者の濱潟好古さんは、自身も防衛大出身。現在は、防衛大で学んだことをもとに、組織マネジメント・人材育成コンサルタントとして活躍されています。
今回は、どんな人でも「逆境を乗り切る」自分に変われるヒントを、著者の防衛大時代のエピソードを交えていくつか紹介します。
「編集者の寄稿企画」とは?
「目的」と「理想」を明確にする
職場や学校でうまくいかない時、「逃げ出したい」と思ったことはありませんか?
それは「目的」を見失っていることが原因かもしれません。
そんなとき時は、まず「何のために、誰のために」という目的を明確にしてみましょう。たとえばビジネスの場合、現状の売上など目の前の目標ではなく、「将来独立したいため」「親に苦労をかけないため」など個人的なものでもなんでもOKです。
「目的」が決まれば、次は「理想の自分」をイメージします。「目的を全うすることで、自分はどうなりたいのか」を自分自身に問いかけ、考えてみてください。
具体的に考える内容は、「目的に合った行動をするためには、今日一日をどんな思いでどんな行動をすればよいのか」ということ。著者は、次のことを書きだして、日々「理想の自分」に近づくための仕組みを整えていたといいます。
- 何のために仕事をしているのか(目的)
- 誰のために仕事をしているのか(目的)
- 目的に合った行動をし続けると、自分は将来どうなっているのか(理想の自分)
- 理想の自分になるために昨日やったことは何か(行動)
- 4をやった結果、どうであったか(振り返り)
- 振り返りの結果、今日やることは何か(行動)
- それをやることによって、明日の自分はどうなっているか(イメージ)
- そのイメージは自分が理想として掲げている姿か(確認)
毎日少しずつでも「理想の自分」に近づいていることを実感できれば、驚くほど活力がわいてくるはずです。
- 「目的」のある行動は、困難にぶつかった時に迷わず進むことができる。
- 「理想の自分」がある行動は、行き詰った時に強い味方となる。
この2つを忘れず、常にお守りのように意識していれば、日々の生活や業務でつらいことがあったとしても、そう簡単に挫けることはないでしょう。
「一人でやろう」を捨てる
たとえば、大きな仕事を任された時、最初は誰もが「自分で頑張ろう」と思うかもしれません。しかし自分で頑張ってみたものの結果がついてこない時、周囲に「力を貸してほしい」が言えるかどうかで、仕事の結果は変わってきます。
それが言えず、一人で黙々と頑張っているだけでは心も折れそうになり、決して良い結果は生み出せません。
著者も防衛大時代に、似たような苦い経験があったといいます。本来二人で行うべきベッドメイキングを一人でやったところ、明らかに自分のベッドだけが汚くなってしまい、連帯責任で全学生のベッドメイキングがやり直しとなる最悪の結果を招いてしまったのです。
この時、著者は「同部屋の同期の時間を使うのも何だか申し訳ない」と思って一人で行ったそうですが、結果的には全学生やり直しとなったため、一層同期たちの時間を奪うことになってしまいました。
著者はこの経験から、「一人でやろう」「一人で頑張ろう」などと考えても良い結果は生まれないと身を持って感じ、それからは同部屋の同期全員と力を合わせて防衛大生活を送るようになったそうです。
これは仕事でも同じことで、結果が出せず心が折れそうになった時は人の力を借りてみることです。そうすると、自身の気持ちも落ち着きますし、気力・体力を充実させることもできます。
もちろん、力を貸してくれた人には心の底から感謝をすることも大切です。しんどい時はお互いを助け合うことで、結果的にさらなる大きな成果を残すこともできるでしょう。
相手を認めつつ、嫌な部分は「受け入れない」
職場でも家庭でも、人とのコミュニケーションは欠かせません。しかし、どんな状況でも誰とでもうまく接するのは大変難しいことです。
そんな中、著者が防衛大時代に出会った同期で、誰とでも仲良くなれる留学生Sさんがいました。彼は、生まれ育った環境も全然違うのに、とにかく誰とでもすぐに仲良くなるのです。
ある日、著者が全く違う環境でも人とうまくやれるコツをSさんに聞いてみたところ、「人を認めること。そして、人の考え方はそれぞれだから、まずは受け止めること。そうすると自分のことも受け入れてもらえるようになる」という返答が返ってきたそうです。
つまり、相手の価値観に対して理解を示し、それに合わせようとすることです。とはいえ、時にはどうしても相手の価値観に共感できないこともあるでしょう。
そこで、Sさんはさらに次のようなアドバイスを著者にしました。「受け止めるのは誰でもできる。ただ、受け入れるかどうかは自分で決めたらいい。受け入れられないことは、真に受けず受け入れない。」
相手の全てを受け入れるのではなく、受け止めた後は自分で取捨選択して、嫌なことは受け入れなくてもよいのです。
これは仕事の現場でも有効です。管理職であれば、「自分の価値観を部下に押し付けるのではなく、まずは部下の価値観を受け止めてみること」、一般社員であれば、「上司や同僚の価値観をただ受け入れてストレスをためるのではなく、まずは受け止め、そして認めること」を意識するだけで、今までとは違う見方ができるでしょう。
人間関係で悩んでいる人は、まずはこの「認める」「受け止める」「自分が良いと思ったものを受け入れる」の3つを実践してみてはいかがでしょうか。
きっと自分にとっても相手にとってもストレスフリーな関係を築くことができるはずです。
どんな人でもメンタルを強くできる
本書は、「防衛大式」だからといって、ガッツのある人向けに書かれているわけではなく、どんな人でも「折れない心」を育てることができるテクニックが多数紹介されています。
仕事に限らず人生でうまくいかないことがある時、心が折れそうな時、『防衛大式 最強のメンタル』で紹介しているテクニックをぜひ一度実践してみてください。どんなに辛いことがあっても、どんなに過酷な環境であっても、「自分はやれる」とまずは思い込むことから始めることが大切です。
本書は、そんな現代社会で頑張る全ての人の背中を強く押してくれる一冊です。
(Written by Publisher’s editor)