ITバブル期の楽天を支えた著者による「絶対目標達成」の仕事論

ITバブル期の楽天を支えた著者による「絶対目標達成」の仕事論




 こんにちは、ひとはです。

 日本で成功を収めているIT企業は数多くありますが、その中でも楽天は、最も成功している企業の一つと言えるでしょう。

 今や国内でのEC取扱高は3兆3千億円、グローバルでは13兆円近くとなり、従業員数も1万5,000名を超える大企業ですが、著者の小林史生氏が楽天に入社された2000年は、まだ従業員が100名にも満たない会社だったといいます。

 そして16年間の在籍期間中、いわゆるITバブル期の楽天の成長を内部から見てきたと言っておられるとおり、本書を読めば、著者が会社の成長の最前線を走ってこられたことがよく分かります。

 本書は、小林氏が楽天で学んだ目標達成に必要なエッセンスを「7つの鉄則」という形にまとめておりますが、いわゆるハウツーものとは少し趣が異なり、著者の実体験を基にしたエッセイのような読み物になっています。

 いわゆるITバブル期の楽天に営業担当として入社したのち、米国法人の社長を経験、帰国してECの事業部長となり、降格も経験するなど、著者が楽天の成長とともに学んだ多くのことが本書の中には詰まっています。

 それは単なる自慢話や、楽天礼賛の話ではありません。今は独立してコンサルタントをされている著者が、仕事を通じて多くのことを教えてくれた三木谷社長をはじめ、上司や先輩たちへの心からの感謝の念として書かれているため、読む人の心にも深い印象を与える一冊となっています。

 楽天という急成長を遂げてきた企業で学んだ「仕事の鉄則」は、どんな業種の、どのようなポジションの方でもストンと腹落ちし、ハッと目を見開かされることでしょう。

 今回は、本書の中から、私の心に響いた印象的なフレーズをご紹介します。

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①知識や経験は奪えない

 お金やモノは奪われるかもしれない、でも頭の中にある知識や体得した経験は誰もあなたから奪えない。

 著者が米国駐在時代に上司から教えてもらった言葉として、前書きの中で紹介されています。

 恐らく慣れない米国でのビジネスで大変な思いをされたのだと思いますが、そんな苦労も吹っ飛んでしまうような、救いのある言葉ですね。

 仕事における人間関係の大切さについても伝わってきます。

②既存のやり方がすべてではない

 目的は一つ、手段は無数。既存のやり方だけがすべてではない。

 いかにもIT企業らしい、現状を打ち破るような力強い言葉です。過去の例や既成概念に捉われることなく、新しいやり方をもっともっと考えろ、と言われているような気がします。

 本書の冒頭には、目標達成の秘訣は「努力と工夫の掛け算」だという言葉もあります。楽天で成果を出し続けている人は、がむしゃらに動くのではなく、努力の仕方を工夫するところが優れていて、それぞれの方が独自のノウハウを身に付けているのだそうです。

③面白いアイデアは小さく試す

 面白いアイディアがあればまずは小さく試す。

 楽天の社内用語でCUOSというのがあるそうです。小さく(C)生んで(U)大きく(O)育てる(S)という日本語のローマ字標記の略語です。英語化の進んだ今の楽天で使われているかどうか分かりませんが、こうした言葉が社内で普通に使われると、それが企業の文化として根付いていくのでしょう。

 失敗を恐れずどんどん前に進む姿が目に浮かびます。実際、楽天スーパーポイントのように成功した事例も多くある一方で、うまく行かずにボツになった企画も数多くあるそうです。

 まずは小さくスタートして、挑戦する数を増やすことが重要なのでしょう。

④ビジネスを因数分解せよ

 「因数分解」を徹底して様々な打ち手を繰り出す。

 「因数分解」とは、ビジネスを構成している要素をバラバラに分解することです。たとえばネット販売の売り上げを2倍にしたいと考えたとき、その売り上げの構成要素を考えます。

 「アクセス人数×転換率(サイトを訪問した人が購入する確率)×客単価」というように分解すると、売上を2倍にするなら、この3つの要素のうちのどれかを2倍にするか、それぞれの要素を1.3倍にするかなど、幾つかの対策が考えられます。

 そして対策が決まったら、アクションプランを考え、PDCAで回すことで目標を達成するのです。



⑤「不安」を「心配」に変えよ

 著者が国際部に異動した初日に、ノルウェー企業との合弁会社を作るプロジェクトを任されたそうです。それまで国内のグルメ商品を扱うECコンサルタントだった者が、いきなり外国企業との合弁のリーダーとなるというところも楽天らしさなのかもしれません。

 新しい仕事に戸惑っていた著者に上司が教えてくれたのが、「不安」と「心配」の違いです。「不安」とは見えない恐怖を感じている状態で、「心配」は何にびびっているか分かっている状態。自分が何に不安を抱いているのかを明確にすれば、不安は心配に変わり、心配は、その対策を考えて実行すれば解消する、ということです。

⑥コンフォートゾーンから抜け出せ

 優秀な人材はコンフォートゾーンから抜け出す。

 「コンフォートゾーン」とは仕事に慣れ、成果も出て、前向きに仕事ができで心地よい状態のことを指しています。米国では3年〜5年でキャリアチェンジを考えるのが普通であり、それはコンフォートゾーンから抜け出すこと、つまり成長鈍化の状態から自らの意志で脱するということなのです。

 日本でも、楽天のように急成長する企業では、同じところに留まることなく、常に新しいことにチャレンジすることが求められるのでしょう。以下の言葉も紹介されています。

 「生き残るのは強いものでも賢いものでもない。唯一生き残るのは、変化できるもの」である。

 社会の変化、環境の変化、技術の進歩、そういった会社や個人を取り巻く変化にいかに対応するかが大切なことなのです。

⑦ビジネスとスポーツの違い

 著者が29歳の時、グルメ事業部長に昇格したものの、期待したパフォーマンスが出せていないという理由で、10か月後に降格を言い渡されてしまいます。その直後、楽天の三木谷社長が毎週火曜日の朝8時から行っている全員朝会で、次のようなお話をされたそうです。

 スポーツは終了の時間があり必ず勝ち負けが明確になる。でもビジネスは自分が諦めるまでは終了のホイッスルが吹かれることはない。つまりビジネスにおける成功の秘訣は勝つまでやることだ。

 「1回の失敗でくよくよしないで、何が自分の課題かを考え、諦めずにやり続ければ、結果を出すことはできる」と。会社のトップからこう言ってもらえれば、たとえ降格しても次はがんばろうと思えるでしょうし、失敗を恐れずにチャレンジすることができますよね。

⑧褒めるときは「ヒト」に、
叱るときは「コト」に

 これは人のマネージメントに関して、楽天の創業メンバーの方から学んだ言葉として紹介されています。

 その方は、新しい鞄を持ってきた人に対して「その鞄は素敵ですね」とモノを褒めるのではなく「その鞄を選んだあなたのセンスが素敵だね」というように伝えるのだそうです。

 仕事の場合には「目標達成すごいね、おめでとう!」という言葉だけでなく「土俵際でも諦めない姿勢がすごいね!」というように、コトではなくヒトを褒める言葉を付け加えます。

 このようなちょっとした一言が人の気持ちを引き付けて、マネージメントする上では重要な要素となるのです。

 本書の中から書評子の心に残った言葉やエピソードをご紹介しましたが、本書の中にはまだまだ示唆に富む言葉が数多く記されています。それら一つ一つに付箋を付けながら読み進めたら、50か所以上に付箋がつくことになりました。

 この原稿を書くためにもう一度読み返してみましたが、付箋をつけたどの箇所も、二度目でありながら新鮮な刺激を与えてくれましたし、はじめは気がつかなかったことにまで思いを馳せる箇所もありました。

 楽天という大企業の中での実体験ゆえに、一つ一つの言葉やエピソードに重みと深みがあります。この先も、ときどき本棚から取り出して、付箋のついたところを読み返せば、きっとその時の悩みに応えてくれる言葉が見つかることでしょう。

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ひとは
会社勤めの中で開発から管理から国際ビジネスまで、随分と長い道のりを歩いてきました。 その間、本から得た知識や教えが支えてくれたのは間違いありません。

だけど本当は純文学が大好き!ビジネス書も奥深い名著を紹介したいと思っています。




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