『ドラッカー5つの質問』成功する企業と失敗する企業の違いとは?

『ドラッカー5つの質問』成功する企業と失敗する企業の違いとは?




 こんにちは、ひとはです。
 
 ピーター・ドラッカーといえば「マネジメントの父」と呼ばれるほど世界中のビジネスパーソンから信望を集めている人物。亡くなってから10年以上経ちますが、彼の残した多くの著作は今でもロングセラーを続けています。

 日本では、『もしドラ』をきっかけにその名を知った人も多いでしょう。

 本書はドラッカーの数々の著書の中からエッセンスを抽出し、経営者が考えなければならない「5つの質問」としてまとめられた一冊です。その内容は組織をマネジメントする上で普遍的といえるものばかりなので、企業経営のみならず、学校や地域社会など、どのような組織にとっても参考になるはずです。

 著者の山下淳一郎氏は、ドラッカー理論を実践することで企業を支援するコンサルタントとして活躍されており、本書も理論的なことよりも実践に即した視点で書かれています。

 それでは早速、マネジメントの神髄を見ていきましょう。

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経営者が考えるべき「5つの質問」

 成功を収めている企業とそうでない企業との違いについて、ドラッカーは次のように言っています。

 成功を収めている企業は「われわれの事業は何か」を問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによって成功がもたらされている。

 つまり企業の存在意義を、自らに問うということです。事業環境が刻々と変わる中で、企業を永続的に発展させることは並大抵のことではありません。その経営のかじ取りの指針としてドラッカーの理論は助けになるはずです。

 本書のタイトルにもなっている「5つの質問」とは、「われわれの事業は何か」の答えを求めるときのガイドであり、それらの質問に対する答えを見出すことで、結果的に優れた会社経営ができるようになるのです。

 「5つの質問」とは、次の通り。

  • 第1の質問 われわれのミッションは何か
  • 第2の質問 われわれの顧客は誰か
  • 第3の質問 顧客にとっての価値は何か
  • 第4の質問 われわれの成果は何か
  • 第5の質問 われわれの計画は何か

 本書はこの5つの質問を軸にドラッカーの言葉を交えながら、実際の企業で起きている事例と合わせて解説を進めています。

 ドラッカーは言います。

 人間のつくるものに永遠のものはない。特に、今日では、永続しうるものさえほとんどない。事業の定義も、やがては陳腐化し実効性を失う。

 企業も組織も、変わらなければマンネリや驕り、油断が生じて衰退の道を歩んでいくことは、例を挙げるまでもなく過去の歴史が語っています。特に技術革新のスピードが速い現代では、「築城3年落城3日」ということも言われます。

 ドラッカーのマネジメント理論とこの5つの質問は、経営者に限らず、どんな立場の人に対しても新しい気づきを与えてくれることでしょう。



第1の質問「われわれのミッションは何か」

 「ビジョン」「ミッション」「経営理念」、これらの違いを明確に説明できるでしょうか。本書では、以下のように定義しています。

  • 経営理念とは、社会に対する根本的な考えを言い表したもの。
  • ミッションとは、社会で実現したいことを言い表したもの。
  • ビジョンとは、ミッションが実現した時の状態を言い表したもの。

 つまり経営理念は「想い」であり、ミッションとは「行動」であり、ビジョンとは「結果」に相当するということです。こう言われると非常に分かりやすいのではないでしょうか。

 ここで一つの実例が紹介されています。

 アメリカのインディアナ州で薬屋を営んでいたある男のお店に小さな女の子がやってきて「ミラクルください」と言った。それはどんな薬なのかと聞くと、女の子はこう答えた。「ミラクルという薬があればママの病気が治るってお医者さんが言うの」。

 その男は女の子に病院へ連れて行ってもらうと、その医者と話をすることができた。女の子の母親は末期がんで余命3か月だった。医者は女の子にショックを与えないように話をしたが、女の子は「ミラクルという薬があればお母さんは3か月で治るんだ」と理解したらしい。

 これがきっかけで、この男は薬を売る仕事から薬を作る仕事へ転身した。この男の名前はイーライ・リリー、彼の会社は現在、売上高世界第9位の製薬会社になった。

 この世から不治の病を無くしたいという「想い」があって、薬を作るという「行動」が生まれ、家族を早く亡くすことのない世界という「結果」が実現しました。経営理念、ミッション、ビジョンが極めて明確であったからこそ、大きな成功を収めることができたのです。

第2の質問「われわれの顧客は誰か」

 「我が社が満足させるべき人は誰なのか」を明らかにすること、それが第2の質問です。ドラッカーは言います。「使命と目的を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である」と。

 ここでも一つの事例を紹介しましょう。

 1970年代、ドイツにいた日本人留学生が通訳のアルバイトをしながら生計を立てていた。日本人の観光客から美味しいものが食べられるお店を紹介して欲しいと言われることがよくあり、時には一緒に来て欲しいと言われることもあった。

 そこでその学生は、自分でツアーを企画すればたくさんのお客が集まるのではないかと考え、お店と交渉し値段を下げてもらい、日本人の泊まるホテルではツアーのパンフレットを配ってもらい、成功報酬を支払うことにするなどの工夫をしてお客を集めた。

 観光客は喜び、お店も繁盛し、ホテルのフロントマンには手数料が入る。みんながハッピーになれる事業は必ず成功するという確信を得て、彼は事業を拡大し、今では売上高6000億円の旅行会社へと成長させた。

 これはH.I.S.を創業した澤田秀雄氏の話です。顧客を明らかにし、お客様中心の経営をしたからこそ、これほどの成功を得ることができました。

第3の質問「顧客にとっての価値は何か」

 ここもドラッカーの言葉から紹介しましょう。

 顧客は製品を買ってはいない。欲求の充足を買っている。彼らにとっての価値を買っている。

 つまりお客様が買っているのは商品そのものではなく、商品を通じて自分が得たい「何か」であるということです。たとえばキャデラックを買っている人たちは、車という「移動手段」を買っているわけではなく、成功の証、安全、資産という「満足」を買っていると言えます。

 その「何か」を知るためには、「顧客にとって重要な価値は何か」という問いに答えを出さなければなりません。

 ドラッカーはこのようにも言っています。

 憶測してはならない。顧客のところへ行って答えを求める作業を体系的に行わなければならない。

 重要なのは、お客様が望んでいることを勝手に想像するのではなく、お客様の姿を目で見て、耳で聞くことなのです。



第4の質問「われわれの成果は何か」

 企業の成果は、売上でも利益でもなく、お客様の満足を得ることです。病院であれば患者さんが元気になることであり、学校であれば、生徒が学んだことを活かせるようになることです。

 もちろん売上や利益が重要なのは言うまでもありません。ドラッカーはこう言っています。

 経済的成果が上がらなければ、マネジメントは失敗である。

 売上と利益が上がらなければ事業は失敗します。しかしドラッカーはこのようにも言っています。

 財務上の収支だけを成果の測定尺度として活動の目的とするならば、長期にわたって繁栄することはもちろん、生き残っていくことも覚つかなくなるに違いない。

 売上の額だけしか見ていなければ、何を改め、何を工夫し、何をはじめていいか、わからなくなります。するとお客様は離れていき、会社は生き残ることはできなくなります。

 著者は、ドラッカーの5つの質問とは「思想」ではなく、「行動」を決定するものであると述べています。これまでの4つの質問を通して考えてきたことを「明確な目標」に落とし込み、行動に移す、それが最後の質問となります。

第5の質問「われわれの計画は何か」

 計画を立てただけで満足し、その意図が社内に十分伝わらなければ、人に動いてもらうことはできません。つまり成果も上がりません。

 成果をあげるには、上司・部下・同僚にアクションプランを理解してもらうことが必要なのです。

 ドラッカーは「5つの質問」の狙いについて「その狙いは、組織のエネルギーと資源を正しい領域に集中することである。したがって、検討の結果もたらされるべきものは、具体的な目標、期限、担当を含む実行計画である」と述べています。

 つまり、誰が、何を、どうするかが明確になっている状態でなければ、成果には結びつかないということです。これがマネジメントの神髄と言えるのではないでしょうか。

 組織力を高めるためのマネジメントがしっかりできているかどうかーーこれこそが成功を収める企業とそうでない企業を分ける分水嶺であり、それを知るために「ドラッカーの5つの質問」はあるのです。

 ここでは5つの質問の大項目のみをご紹介しましたが、その下に更に細かい質問が用意されていますので、是非、本を手にとって内容を確認してみてください。

 本書の最後に紹介されているドラッカーの言葉は以下のようなものでした。

 この問いを怠るとき、直ちに、事業の急速な衰退がやってくる。

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ひとは
会社勤めの中で開発から管理から国際ビジネスまで、随分と長い道のりを歩いてきました。 その間、本から得た知識や教えが支えてくれたのは間違いありません。

だけど本当は純文学が大好き!ビジネス書も奥深い名著を紹介したいと思っています。




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