こんにちは、中塚美緒です。今回ご紹介する本は、鎌田浩毅さんの『読まずにすませる読書術 京大・鎌田流「超」理系的技法』です。
世の中には、本をたくさん読むことや、速く読むことを勧める本が数多くあります。しかし本書では、「いかに読まずに済ませるか」という視点から、「読むべき本は読んで、読まなくていい本は読まない読書術」を紹介しています。
これは地球科学を専門とする著者が、「ラクして成果が上がる」方法を追求するという理系的思考を、読書に当てはめたものです。
「毎月○○冊本を読む!」など、本を読むこと自体が目的となっている方は、本書を読んで、「自分が主体となって読む」ことの大切さを学び、「自分の人生にとって本当に必要な読書」を取り戻すことを目指してみてください。
この記事では、第3章「読まなくていい」を見抜く選書眼の養い方から、3つのポイントをご紹介します。
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「読まなくていい」本を見抜く選書眼の養い方
①「離見の見」で見るクセをつける
不毛な時間を積み重ねるだけの読書は、すごく無駄なものです。そこから抜け出すためには、「離見の見(りけんのけん)」が大事だといいます。
「離見の見」とは、客観的な他者のまなざしを自分で持つということで、現代心理学では「メタ認知」と呼ばれています。
たとえば自分の頭の上方に「心の眼」を据えて、自分を常に客観的に眺めてみる。こうすることで自己を知り、自分をチェックし、自己修正していく。この作業が、読書でも大切になってくると著者はいいます。
これは読書をするときに、自分を観察するもう一人の自分を持ち、「いま、本を読んでいる時間が自分にとって活きた時間になっているか」を常に問うということです。
たとえば、
- この本を読むことで、人生はどう変わるだろうか?
- この時間は、自分にとって活きた時間となっているか?
- 本当に必要だと思って自分はこの本を読んでいるのだろうか?
といった問いを、ときどきでいいので自分に浴びせていく。それによって、外部のノイズに惑わされることなく、自分なりの選書の基準ができるようになります。
その結果、いらない本を手に取ることがなくなり、読書疲れも減って、もっと本質的な読書ができるようになっていくと著者はいいます。
②2:7:1の法則で本と付き合う
これは、心理学にある「2:7:1の法則」というコミュニケーション理論を、読書にも当てはめようという提案です。
「2:7:1の法則」とは、対人関係で悩まないために、自分の周囲にいる人たちを、以下の割合で分類して付き合い方を変えるというものです。
- 最初の2割:何でも話すことができて、ケンカしてもほどなく仲直りできる「親友」のような人たち。
- 次の7割:礼節をわきまえて丁寧に付き合えば良好な関係が築ける間柄の人たち。ビジネス上の付き合いに多い相手。
- 残りの1割:何をどうやってもうまくいかない人たち。どんなに努力しても裏目に出たり、誤解されたりして関係性が気づけない相手。いわば「天敵」。
こう分類してから、それぞれの相手に対して付き合い方を変えます。最初の2割はそのままの関係を維持する。最後のどう逆立ちしても付き合えない人とは、付き合う努力をしないで思い切って距離をとる。その代わり、そこで使っていたエネルギーを7割の層の人たちとの関係構築に費やす。
このように相手によって付き合い方を変えることで、どんな人とも適切なコミュニケーションを取れるようになります。
これを読書に当てはめるのです。
- 最初の2割:スラスラ読めるし読んでいて楽しい本。どんどん読んでそこから世界を広げたり、好きな作家の全作読破をしたりしていく。
- 最後の1割:どう頑張っても読めない、「体癖」的に合わない本。たとえ世間の評価が高い本、人から薦められた本であっても、相性の悪い本を無理して読もうとしても苦痛が増すだけなので、ひとまず距離を置いておく。その時間とエネルギーを、7割の本をラクに効率的に読みこなすことに使っていく。
- 残りの7割:2割の本でも1割の本でもない、どちらにも属していない本。
この法則を枠組みのひとつとして持っておくと、読む必要のない1割の本を読む労力から開放されます。そうして浮いた時間と余ったエネルギーを、アウトプットの作業に活用すれば、より読書の効能を高めることができます。
私はこれまで本を読むときに、この「2:7:1」の割合などはまったく意識せずに、手に取った本をすべて1から10まで読んでいました。でも、自分が好きな本はその中で限られているし、これを読み進めてもあまり意味がないなと感じた本でも、「せっかく買ったんだし」とか「もしかしたら将来役に立つかもしれないし」と考えて、最後まで読み切ろうとする読書は苦痛でもありました。
この「2:7:1の法則」を意識して本を読むようにすれば、より効率的な読書ができると思います。
③世間の話題や広告より書評を吟味せよ
膨大な書籍の中からどの本を選ぶかという時に、一番着目するのは「書店員が選ぶ一冊」や「Amazonベストセラー1位」「累計30万部突破の大ベストセラー」といった文言ではないでしょうか。こうしたキャッチコピーがあるだけで「人気の本なんだ」と思い、手に取ろうとする方はすごく多いと思います。
しかし著者は、話題書はすぐ読もうとせず、「吟味」というワンクッション置くことが大切だと言っています。「話題書にはすべてを目を通す」といった本の選び方では、読まなくてはいけない本を増やしてしまうからです。
話題書を手に取る前に、まず書評に目を通してみることを著者は勧めています。新聞や雑誌に掲載されている書評の多くは、内容を的確にまとめているだけではなく、現代社会に溢れている問題点を鋭く指摘しているため、書評を読むことで、世の中の動向を知る参考になるからです。それを読むことで、本当に今の自分に必要な良書を見極めやすくなります。
私も本を選ぶ時に、電車の広告などの「累計30万円部突破」「40万部突破」という文言を見て、「これ人気なんだ。読んでみよう」と購入した本が何冊もあります。数えてみると8割とか9割ぐらいは占めると思います。もちろん面白かったと感じる本もたくさんありますが、正直、「話題書」という言葉に踊らされて買ってしまった本も多いので、これからは書評に目をつけて本を選ぶことも試してみたいと思いました。
ここで紹介した3つのポイント、ぜひあなたが本を選ぶときの参考にしてみてください。
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