みなさんこんにちは、マイト(maito)です。
書店やネットで本を探す際、自分の好きなジャンルや著者を中心に探す人は多いと思います。
好きな本を選ぶのなら「ハズレ」を引くことも少なく、ストレスなく読み進められる確率が高いですから、ついつい同じような本ばかり選んでしまいますよね。
しかし私たちは、どこかで1日に数ページや数行しか読めないような「難解本」に挑戦するべきです。
楽に読める本を読むことは、今の自分の確認作業であり、自分の成長や目的の達成にはつながりません。自分の読解力や理解力をはるかに超えた「頂きの本」を手に取り、「限界を超える読書」のチャレンジすることで、人は成長していくのです。
今回ご紹介する『良質読書』の著者・名越康文さんは、「本は自分を成長させる存在」と位置づけています。大切な箇所を太字にしたり、章ごとに「まとめ」を用意してくれるような「親切な本」より、1日数行しか読めないような「不親切な本」こそが成長には必要なのだといいます。
名越さんは精神科医である一方、マスメディアでのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、様々な分野で活躍されています。
ところが30歳までは読書をせず、情報は映画と漫画で得ていたそうです。今でも集中力が続かないため、多読が苦手なのだとか。
失礼ながら、読書法について書かれた方としてはちょっと驚きのプロフィールでした。
しかし本書を読んでみたところ、読書が好きな方はもちろん、苦手な方にも非常に有用だと感じました。
特に、これまで色んな本や読書法を読んでみたけど、上手く取り入れられなかったという方に是非読んでもらいたい内容です。
今回は『良質読書』に書かれた読書法を段階別に紹介します。
Step1:「散漫読書」のススメ
前述の通り、名越さんはご自身を集中力がない人間と分析しています。(カウンセリングのお師匠さんからも言われたそうです)
しかしそれがきっかけで、自分に合った読書法を見つけたそうです。
それが「散漫読書」です。
- 1冊を根気よく最初から最後まで読むのではなく、違う本をとっかえひっかえ読んでいく。
- 飽きたら無理せず他の本へ。
- ページ数を意識しすぎない。10ページだけまず読んでみる、くらいのつもりで読む。
もちろん「一気に読める」と思ったら読み進めて大丈夫です。
実際に試してみましたが、飽きたり疲れたりする前に次の本へ切り替えることで、新鮮な気持ちで読書に臨むことができました。
名越さんは、読書は「つまらない」と思ったらやめていいと言います。
多くの人たちは読書を、冊数やページ数で測りがちです。大量に読んで大量に情報処理していくことを読書だと思っている。
「読書が苦手です」という人の特徴は、「自分は早く読めない」「理解力が足りない」「深く読み込むことができない」と思い込んでいる点です。
しかし「読書する」といっても、さまざまなかたちがあるんだ、ということを理解すれば、そのような思い込みから解放されるのではないでしょうか。
1日1冊読めることはもちろん素晴らしいことですが、1日1ページでも立派な読書。恥じることも、怖がることもありません。
読書という行為は、量だけではない様々な読み方を含んでいるのです。
早く読むことも、じっくり読むことも、迷いながら読むことも、同じだけの価値があるということを覚えておいて欲しいと思います。
Step2:感覚を刺激する読書
近年、「情報を得るため」「問題解決のため」など目的を明確にした読書を勧める声が増えていますが、読書とは本来、目的なく読んだとしても、感情を刺激してくれるものです。
そして難読本を読む上では、この「感動」こそが読書の原動力になると名越さんは言います。
たとえば、自分が予備知識のない専門分野の講演会に行った際、話の内容は理解できないけど、講師の熱量の高い話によって「感動した」「あの講師の話ならまた聞きたい」「今はわからないけど、もっと勉強してわかるようになりたい」と感じたことはありませんか?
この熱っぽく語る講師には強烈なエネルギーがあるため、一度話を聞いただけでは理解できないけど、また話を聞きたくなったり、そのテーマについて興味が出て、勉強したくなったりするのです。
読書をする上でも、まさにこの感覚が大切だと言います。
そのときわからなくても、エネルギーを本能的に感じ、「いつか理解したい」という気持ちこそが、読書を続ける動機のひとつになるからです。(p.73)
つまり高揚感が「わからなさ」を埋めてくれ、少し先回りしてわかった気になれるのです。そしてわかった気になって聞いたり読んだりしているうちに、だんだん本当にわかってくる。
このように「わかってないのにわかった気になる」ことが、知の世界に旅立つ最初の一歩なのだと言います。
わからないものはわからない、わかるものはわかると逐一整理しながら聞いている人よりも、わからないなりに、面白みを感じている人のほうが、より高い次元までジャンプしている気がするのです。(p.75)
名越さんは、わからないテーマについて面白く聞けることや、面白く読めることは、立派な能力(スキル)であり、難しい本を読むことで得られる高揚感は、自分の限界を超えられた感覚、壁を突破した感覚にもつながっていくといいます。
今は理解しきれなくても、興味関心がある限り、とりあえずそのテーマに接し続けてみましょう。頭で考えて選別するより多くのことを取り入れられているはずです。
本を選ぶ際には、読みやすさやわかりやすさ以外に「面白みを感じられるか」という視点を入れてみると、さらに選ぶ幅が拡がると思います。
また、最近は音読や聴読(オーディオブックや朗読会)など、視覚以外の感覚を使った読書手法が広まってきています。他の感覚を利用することで、本の内容がさらに理解できるようになると、名越さんは薦めています。是非、試してみてください。
Step3:「頂の本」への挑戦
Step1でもご紹介したとおり、名越さんは読書の優劣を読んだページや冊数だけで決めつけるべきではないと述べています。
そしてStep2でご紹介したとおり、「わからなくても面白いと思えること」は自分の幅を大きく拡げることにつながります。
この2つの要素があれば、これまで以上に読書が楽しくなるはずです。
Step3では、自分の成長や未来を拡げるために、「頂の本」に挑んでみましょう。「頂の本」とは、古典といわれる作品や、名著と呼ばれる本など、今の自分の読解力や教養では理解できなさそうな本、いわばさまざまなジャンルの頂点に位置するような本のことです。
名越さんにとっては空海の原著などがそれにあたるそうで、いつもカバンに忍ばせておき、「よし!」と思ったときにチャレンジしているそうです。
こうした「限界を超える本」は、一回に数ページ、あるいは数行しか進まないものの、数行を何分間かでも一心に読んでいると「あ、なるほど!」という瞬間があって、それが読書の醍醐味なのだといいます。
他にも、植谷雄高氏の『死霊』やG・I・グルジェフ『ベルゼバブの孫への話』、密教教典『大日経』など、名越さんには読了したいと思いつつも、その分厚さや難解さから読み切れていない本が何冊もあるといいます。
本当に読みたい本だからこそ、たとえ今は読めなくても、心の糧となる。それが読書欲を刺激して、読むためのエネルギーになり、自分の壁を突破するきっかけになるのだそうです。
Step1でもお伝えした通り、1日1ページも立派な読書です。成果を気にせず、まずは本を開くことから始めてみましょう。
チャレンジすることによって、少しでも「限界を超えた」という感覚が得られれば、それは今後の人生を生きてゆく力になっていくといいます。
「頂にある本」に挑戦し続け、いつか自分の限界を超える感動を味わえたとき、読書がもっと好きになるでしょう。
まとめ
本を読む人が減っていると言われていますが、読書は目に見えないところで自分の人生を豊かにするために必要なことだと思います。
その一方で「自分にとっての良書と的確に出逢うスキルを身につけておかないと、プラスにならないどころか、自分の才能を潰すような知識を身につけてしまいかねません」と名越さんは警鐘を鳴らします。
『良質読書』では、今回紹介した手法以外にも、様々な本の読み方や選び方が紹介されています。馴染みの薄い手法が多いかもしれませんが、試してみると有用なものばかりなので、ぜひ本書を読んで、取り入れてみてください。