こんにちは、ヒイラギです。
今回は、19万部を突破したベストセラー『東大読書』や『東大作文』などの著者である現役東大生、西岡壱誠さんの『東大で25年使い続けられている「自分の意見」の方程式』をご紹介します。
本書は、こんな方にオススメです。
- 「自分の意見」を言うのが苦手な人。
- 会議などで発言すると、すぐ周りから突っ込まれてしまう人。
- 反論したいのに、相手の意見の問題点を上手く指摘できない人。
著者によると、「意見を言えないと、これからの時代を生き残れない」そうです。なぜなら自分の意見を持たず、マニュアル通りに作業するだけならAIやロボットにもできるから。考えることをせず、自分の意見を持たずに仕事をすることに慣れてしまうと、会社から必要とされなくなる時代がもうそこまで来ているのです。
とはいえ、自分の意見を言うのってなかなか難しいですよね。私も会議などで意見を求められると、いつもパニックになって突拍子もないことを口走ってしまいます。
本書では、4つのStepで「自分の意見」の作り方を学ぶことができます。著者が紹介する方程式を使えば、誰でも簡単に意見を作ることができるようになります。
私は、会議などで意見を言うと必ず上司にダメ出しをされるので、意見を言うのが本当に嫌でした。でも本書を読んで、意見は思いつくものではなく、方程式に従って作ることができるものだと気づかされた今は、会議で発言したくてウズウズしています。
あなたも、「君はどう思う?」という問いに即答できる人になってみたくないですか?
「EDiT」読書ノート
なぜ上手く「自分の意見」が言えないの?
「意見の作り方」を学ぶ前に、そもそも「自分の意見」とは何なのか、どうして上手く意見を言うことができないのかについて押さえておきましょう。
著者によれば、自分の意見を言うというのは「論理的に考え、まとめ、伝える」ことだそうです。
恥ずかしながら、これまで私は、自然と頭の中に浮かんできた考えを自分の意見として述べてきました。しかしこうした「考え」は、必ずしも「意見」ではないと言います。
なぜなら、「意見」には次の4つの要素が含まれている必要があるからです
「①事実(fact/evidence)」
+「②問題(problem)」
+「③自分、(view)」
+「④提案(advice)」
ずばり、これが「意見の方程式」です。
参考のため、著者のつくった意見を見てみましょう。
日本は諸外国と比べても高齢化率が大きく、それが日本の財政を圧迫している【事実】。これはこれからどんどん深刻化していく問題だと感じるので【問題】、私は、これからの日本のことを考えると【自分】、もっと日本が子どもを育てやすく、産みやすい国になるような施策が必要だと思う【提案】
自分の意見が上手く言えないのは、大抵この方程式に沿って意見が作られておらず、4つの要素の何かが欠けているために起こります。会議などで発言すると、いつも他の人から厳しいツッコミが入るという人も、原因は同様です。
「事実」が抜け落ちれば、「その話の根拠は何?」と疑われ、「自分」が足りなければ「それで、あなたはどう思っているの?」と突っ込まれます。
4つの要素が揃っていないと、意見はとてもお粗末なものになってしまうのです。
逆に言えば、この方程式のとおりに意見を作りさえすれば、人に反論の余地を与えない無敵の意見をつくることができます。
「自分の意見」の作り方
では、具体的な意見のつくり方を4つのStepで見ていきましょう。
Step①事実(fact/evidence)をつくる。
著者によれば、事実が含まれていると、人はその意見を信用するそうです。事実とは、誰が見ても納得できる根拠のことです。
例えば、
- 「ダイエットに成功しました」
- 「3か月でマイナス5kgのダイエットに成功しました」
では、後者の方が断然、真実味を帯びていますよね。何をもってダイエットを成功とするかは人によって様々ですが、誰しもが理解できる減量の値を示すことで正当性が生まれます。
事実は意見の客観性と具体性を担保してくれるのです。
では、どのように意見に事実を含めればよいのでしょうか。
事実として使いやすいのは、「出来事(イベント)」だそうです。過去実際に起こったことは、誰も否定することができない事実だからです。
「数字(データ)」も非常に強力な事実として、意見の信用度を高めてくれます。ただし、何のデータを引用するか、どうデータを使用するかで数字がもたらす意味は大きく変わるため、注意が必要です。
意外かもしれませんが、「感情(エモーション)」も事実として使うことができます。誰がどういう感情を抱いたかは誰にも否定することはできません。感情が動くこと自体は主観的な出来事ですが、同時に客観的な事実でもあるのです。
著者いわく、この「感情」こそ人を一番動かすことができる価値の高い要素だそうです。言われてみれば、理由は何であれ、相手に泣かれたりすると、相手の言い分を飲んでしまいがちですよね。
このように、意見に事実が含まれていると、相手は否定することが難しくなります。意見を述べると、すぐ周りの人に否定されてしまうという人は、「事実」をきちんと組み込むことができているか確認してみてはいかがでしょうか。
Step②問題(problem)をつくる。
「問題」とは、事実をどんな「切り口」で捉えているかを示します。
ある事実に対して賛成なのか、反対なのか、解決すべきと考えているポイントはどこなのかなど、意見の方向性を示す重要な要素です。
「問題」をつくるにあたって、著者が勧めるのはブレインストーミング。Step①で選んだ事実に対して、どのような問題が考えられるのか、できるだけ多くの案を出します。
例えば、「少子高齢化」という事実について、どのような問題が考えられるでしょうか。
- 年金制度が立ち行かなくなる。
- 地方都市の過疎化がさらに進行する。
- 労働人口が減ってGDPが下がる。
上手くブレインストーミングできないという人は、著者が教える以下のテクニックを使ってみましょう。
- Step①で「出来事」を選んだ人は「悩みの分化」
- Step①で「数字」を選んだ人は「価値基準」
- Step①で「感情」を選んだ人は「感想の多様化」
まず「悩みの分化」というテクニックですが、やり方は簡単です。Step①で選んだ「出来事」が適用される可能性のある「人」「場所」「状況」を3つずつ考えてみるとことで、どのような問題があるかを考えます。
著者の例がわかりやすかったので引用します。
出来事 | 【人】 | 【場所】 | 【状況】 |
---|---|---|---|
雨が降らない | 会社員 | 都会 | 今日 |
▷農家 | 田舎 | ▷今月 | |
若者 | ▷今月 | 今年 |
雨が降らないと、農作物が育たず、農家は大きなダメージを受ける。今年は日本全土で野菜の値段が高騰するだろう。
このテクニックを使えば、「人」や「場所」などを変えるだけで、1つの出来事に対して何通りもの問題を見つけることができます。
Step①で「数字」を選んだ人は、「価値基準」というテクニックでブレインストーミングします。数字を様々な切り口で切っていくことで、どのような問題があるかを探ります。特に次の3点に注目します。
- 「何を基準値にするのか?その理由は?」
- 「基準値または比べられるデータは?」
- 「基準値と比べて実際どうか」
ここでも著者の例を引用します。1.4人、これは日本の合計特殊出生率(女性が生涯で子どもを産む人数、厚生労働省による人口動態統計2018年度版より)です。
人口を増やすためには2.3人必要であるため、これを基準値とします。この場合、現在の出生率1.4人は少ないと言えます。また、同じ先進国のフランスの出生率は1.9人なので、比較するとやはり日本は少ないです。しかし基準を2005年の日本の出生率にした場合、当時は1.2人なので、現在の1.4人は多いと言えます。
このように、価値基準を変えるだけで、様々な角度から問題を見つけることができます。
Step①で「感情」を選んだ人は、「感想の多様化」というテクニックを使います。特定の感情を抱いたならば、それを「なぜ」「どこが」「何が」などの観点から掘り下げます。
例えば、高齢者ドライバーによる交通事故が起きたことに対して、「悲しい」という感情を抱いたとします。この「悲しい」という気持ちを掘り下げます。
- 「何の罪もない幼い命が奪われて悲しい」
- 「やむを得ず車を運転して事故を起こした加害者のことを思うと悲しい」
- 「社会的弱者同士の事故が起きてしまう社会であることが悲しい」
「高齢者ドライバーによる交通事故は悲しい」で終わってしまうと、それはただの感想ですが、「悲しい」という気持ちに根拠を添えると、立派な「問題」として意見に組み込むことができるのです。
意見にきちんと「問題」を含めることで、この後の③自分(view)と、④提案(advice)に「事実」がスムーズにつながります。
なので、面倒くさいと感じるかもしれませんが、じっくりとブレインストーミングするようにしましょう。
Step③自分(view)をつくる。
「自分をつくる」とは、意見に自分色を含ませるということです。
なぜ自分色を出す必要があるのでしょうか? 著者によれば、相手の「顔」が見えるような、相手の人間性がわかるような言葉があると、人は話を聞いてくれるからだそうです。「どんな意見か」ではなく、「誰の意見か」がより重要視されることは、意外に多いのだと言います。
言われてみれば、ミーハーなわたしは小泉進次郎さん贔屓なのですが、公約内容などではなく、小泉進次郎さんその人に賛同している気がします。なので、常識的に考えてよほど逸脱していると感じない限りは、小泉さんの意見に同意すると思います。
でも、小泉さんや現役東大生の著者のように、経歴や職業、立場などで自分色が出しやすい人は良いですが、わたしのようにこれといって特徴がない場合は、どうやって自分色をつくればいいのでしょうか。
ここでも著者は3つのテクニックを用意してくれています。どのテクニックを使うかは、前のStep②でどの方法でブレインストーミングをしたかによって異なります。
- Step②で「悩みの分化」を選んだ人は「立場」
- Step②で「価値基準」を選んだ人は「価値観」
- Step②で「感想の多様化」を選んだ人は「感情」
では、具体的に見ていきましょう。
まずは、「立場」というテクニックですが、これは誰でも理解できるような自分の立ち位置をアピールする方法です。例えば、年齢。意見の中に「現代を生きる60代として~」、「これからの未来を担う若者として~」などと一言加えるだけで、自分を立場を示すことができます。
次に、「価値観」を組み込むことで自分色を出すというテクニック。Step②で日本の出生率をフランスの値と比較しましたが、「なぜフランスと比較したか」を説明することで、自分色を出すことができます。同じアジア圏の韓国や、同じように島国のオーストラリアなどと比較することだってできるのに、あえてフランスをチョイスしたのは自分の個性、という考え方に基づいたテクニックです。
そして「感情」というテクニックですが、Step①でもお伝えしたように、人は「感情」によって動かされやすいものです。なので、「体が熱くなるほど興奮した」「悲しくて涙が止まらなくなった」のように、感情を意見に組み込むことで自分色を出すと、人は「この人の話を聞いてみてもいい」と感じるのだそうです。
Step④提案(advice)をつくる
いよいよ最後のステップです。著者によれば、「提案」とは「相手にどうなってもらいたいか」だと言います。人は、この「相手にどうなってもらいたいか」を伝えるために意見を持つのだそうです。
「提案」は意見の本質とも言える重要な要素です。しっかりと「提案」のつくり方をマスターしましょう。
「提案」のパターンは全部で3つです。
まず1つ目は、「推奨」。今あるものの価値を相手に理解してほしいときは、この「推奨」で提案を行うのが効果的だと言います。その際は事実をストレートに伝えるようにします。例えば、相手にメロンパンを食べてほしいのなら、「このメロンパン、めちゃくちゃ美味しくて感動した!食べてみて!」と、余計なことは言わず、シンプルに感動したという事実を伝えると、相手は耳を傾けてくれます。
2つ目は、「改善」によって提案を行うパターン。今あるものを、より良くしたいときに使います。「改善」を使う時というのは、何か問題が発生している場合が多いと思います。なので、きちんと「事実」と向き合い、「問題」を明確にして、「自分」なりの答えや仮説をもった上で提案を行うようにします。
そして3つ目は、「切り捨て/代替」です。現状をより良くするために、今あるものを切り捨てるときに使います。ただし、単に切り捨てるだけではなく、「新しいもの」とセットで提案することが重要です。このパターンでは「自分」の価値観が問われます。切り捨てることで何が得られるのか、守るもの(残すもの)は何なのかをきちんと理解するようにしましょう。
議論とは、より良い結論を導こうと意見同士を戦わせることだと著者は言います。現状に満足していることや、関心がないことに人は意見を持ちません。人は意見を出すことで世界をより良いものにしようとするのだそうです。つまり、「自分の意見」とは、「相手にどうなってもらえば世界はより良くなるのか」だと言います。是非このことを意識して、何を提案したいのか考えてみてください。
最後に
色々なテクニックやパターンが出てきましたが、Step①でどのタイプの「事実」を使うのかが決まれば、おのずとStep②と③も決まります。あとはどのパターンで「提案」を行うかを選べば、意見は完成です。
「自分の意見」の方程式を表にまとめましたので、おさらいしてみてください。
「意見」=「①事実」+「②問題」+「③自分」+「④提案」
事実 | 問題 | 自分 | 提案 | |
---|---|---|---|---|
意見のタイプ① | 出来事 | 悩みの分化 | 立場 | 推奨、改善 切り捨て/代替 |
意見のタイプ② | 数字 | 価値基準 | 価値観 | 推奨、改善 切り捨て/代替 |
意見のタイプ③ | 感情 | 感情の多様化 | 感情 | 推奨、改善 切り捨て/代替 |
人の意見を聞いていて、「何かおかしいな」、「何か物足りないな」というときは、方程式の要素のいずれかが欠けているはずです。それを見極めることができれば、上手く相手の意見の問題点を指摘できるようになります。
わたしは、会議などで意見を言うと必ず上司にダメ出しをされるので、意見を言うのが本当に嫌でした。でも、本書を読んで意見は思いつくものではなく、方程式に従って作ることができるものだと気づかされた今は、会議で発言したくてウズウズしています。
本書を読めば、きっと人前で意見を言うのが楽しくなると思います。
わたしのように意見の作り方を知らなかった人には必読の一冊です。
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