佐渡島庸平が考える「持続可能なコミュニティ」に必要な3つの要素とは?

佐渡島庸平が考える「持続可能なコミュニティ」に必要な3つの要素とは?




 「孤独は、周りに人がいるかどうかではない。心のつながりの問題だ」

 これは、株式会社コルク代表の佐渡島庸平さんが書いた本『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』の冒頭にあることばです。

 今やLINEやSNSのおかげで、常に誰かとつながっていることが普通になりました。しかし常時つながっているはずなのに、孤独感は増しているという不思議な現象が起きています。

 ハーバードビジネスレビューでも、「職場の孤独 企業に広がる”病”にどう対処するか」という特集が組まれ、「孤独の問題」が注目を浴びてきています。

 たくさんの人に囲まれているはずなのに、なぜ孤独を感じるのか。それは、これまでコミュニティの機能を果たしていたはずの会社や地域社会とのつながりが薄れている一方、インターネット時代におけるコミュニティのあり方がまだ確立されていないからだと佐渡島さんは考察しています。

 本書は、「現代の孤独」を癒すのはインターネット時代にアップデートされた「コミュニティ」であるとして、その作り方について深く考察された一冊です。

 この記事では、ビジネス的な視点に絞って、コミュニティづくりに重要なポイントをご紹介します。



持続可能な経済圏としてのコミュニティ

 佐渡島さんが考えるコミュニティとは、「持続可能な経済圏」としてのコミュニティです。

 モノがあふれる現代において、私たちは何かを欲しいという欲望を自発的に持てなくなっています。しかし「好きなこと」を中心にしたコミュニティに所属すると、メンバーとのコミュニケーションを通して欲望がゆるやかに喚起され、非論理的なもの(なくても困らないものや役に立たないもの)が欲しくなることがあります。

 購入したときの喜びを共有できる仲間がいるからこそ欲しいと思うようになるし、実際にそれを購入することで心が満足します。

 こういった「経済圏」が生まれることが、「持続可能なコミュニティ」には必要不可欠だといいます。

 たとえば、Amazonは「定期便」や「Prime会員」、「Amazon Now」などを導入して、顧客の「買う」という行為を便利にしています。一方、同じEC業界の楽天は、サイトが雑多なため欲しい商品を探すのが大変で、使いづらいというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。

 しかしながら、実は楽天では店舗や商品を中心としたコミュニティが作られており、そのコミュニティの力が売上を支えているそうなのです。

 佐渡島さんは「Amazonはショッピングモール、楽天は商店街だ」とたとえています。たとえば自分が欲しいものがわかっていない人にとっては、商店街の顔見知りの店員さんからのお薦めやコミュニケーションを通して、自分の欲望を発見する、といったことがあります。

 モノをコミュニケーションの中で買うという体験があるからこそ、顧客は店舗に対して愛着が湧き、「持続可能な経済圏」としてコミュニティができあがっていくのです。

 もしAmazonよりも「便利」なサービスがあれば、顧客は乗り換えてしまうかもしれません。しかし楽天は、顧客との間に生まれるコミュニティを軸にしているので、競合に代替されづらく、売り上げが落ちにくい仕組みになっているんですね。

 良質なコミュニティが代替されづらい理由については、SHOWROOMを運営する前田裕二さんの本を紹介した記事で詳しく書いていたので、参考にしてみてください!



「安全・安心」を確保することの重要性

 では、良質なコミュニティを築き、拡大するためには何が必要なのでしょうか。

 よく言われるのは、「立ち上げた人の強い想い=熱狂」です。しかし佐渡島さんは、強いコミュニティを作るためには、「熱狂も大事だけど、それより先に安心・安全の確保が必要」だといいます。

 たとえば、あるメンバーの想いが強すぎて、周りと温度差が生じてしまったり、逆に温度感が合わずに辞めてしまったりすることってありますよね。「熱狂だけ」では、コミュニティが拡大してもトラブルや批判につながり、内側からの崩壊を招いてしまうのです。

 これを防ぐために大切なのが、参加する一人一人の「安心と安全を確保する仕組み」です。本書で紹介されている中から3つご紹介します。

コミュニティの「安心と安全」を創る方法

  1. 情報は、1人ひとり手渡しで渡す
  2. リアクションの設計
  3. 役割・イベントを設計

 ①は、何か面白い企画を思いついたときに、いきなり全体に告知して熱心に動いてくれる人を集めるというやり方ではなく、まずは一人を誘うことから始め、次にそれぞれが一人ずつ、同じモチベーションで動いてくれる仲間を引き入れていく、という考え方です。信頼関係は一気に複数の人と同時に築くことができないため、いきなり多数を集めてしまうと、空中分解しやすくなってしまうからです。

 ②は、新しく入った人が迷わずに、すぐ行動できるような設計をするということです。「入ったはいいけど、なにするんだ?」となることをなくします。

 コミュニティに入ったときに何をやるのかがわからないと、人は動くことができないのだ。多くの人にとって、「なんでもできる」は「なんにもない」と同じだ。(p.185)

 ③はどんな簡単な役割でもいいので、参加者がコミュニティに貢献できる仕組みを設計するということです。人によって、関わりたい度合いや本気度は異なるもの。そこで、それぞれにあったレベルの役割があると、どんな人でも参加しやすくなります。

 以上3つのポイントを押さえると、長く続くコミュニティを作ることができるといいます。

 コミュニティを運営したい人にとっても、その力をサービスの成長に活用したい人にとっても、「安心と安全」を確保することの重要性は理解しておくべきだと感じました。

 「#コミュニティを考える」で皆さんも発信して、議論に参加してみましょう!






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