落合陽一『2030年の世界地図帳』10年後、世界はどう変わる?【要約】

落合陽一『2030年の世界地図帳』10年後、世界はどう変わる?【要約】

 

 昨年はいくつもの大型台風が日本に押し寄せ、それに伴う停電被害などにより多くの人々の生活に支障が出ました。猛暑、熱波、豪雨などの異常気象も頻発しており、環境問題への対策が急務となっています。

 またAIやIoTの普及、自動運転技術の進化、ゲノム編集技術の実用化など、テクノロジーの急速な発達によって、現代人は生活環境が目まぐるしく変化する時代を生きています。

 10年後、わたしたちの暮らしはどうなっているのでしょうか。世界の潮流に取り残されて迷子にならないために、そして10年後に今の自分の行動を後悔しないために、未来について考えることはとても大切です。

 今回ご紹介するのは、落合陽一さんの『2030年の世界地図帳』

2030年の世界地図帳  あたらしい経済とSDGs、未来への展望

 持続可能な世界の実現のために定められた世界共通の目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」を軸に、これから世界がどう変わっていくのか、世界地図やグラフとともにわかりやすく解説されています。

 国内外の膨大なデータから未来を予測し、今後グローバル社会が直面するであろう問題や、その中で日本が進むべき道が導き出されており、非常に読み応えのある一冊となっています。

 ここでは、今さら人に聞けないSDGsをはじめ、今を生きるビジネスパーソンが知っておくべきトピックを抜粋してご紹介します。

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知らないとヤバいSDGs

 ビジネスシーンをはじめ、身の回りでもSDGsというワードをよく耳にするようになりましたが、あなたはSDGsをどれくらい理解していますか? 恥ずかしながら、わたしは本書を読むまでSDGsはCSR (Corporate Social Responsibility) のようなもの、という程度の認識しかありませんでした。

 これからのビジネスパーソンは、SDGsをより意識しながら働く姿勢が求められるようになります。今さら恥ずかしくて人に聞けないSDGsについて、ここで一緒に学びましょう。

 SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。より良い世界を目指すための国際目標で、2015年9月の国連サミットで採択され、2030年の達成を目指しています。17のゴールが設定されており、先進国も途上国も取り組むユニバーサル(普遍的)なもので、政府のみならず企業の役割も重視しているのが特徴です。

 SDGsの17のゴールは、以下の通りです。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任 つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

 残り10年で課題を解決すべく、急ピッチで世界は動き出しています。本書で落合さんがSDGsを手掛かりに2030年を俯瞰することを重要視しているのも、こうした状況からです。

 日本でも最近は、紙ストローの普及や買い物袋の無料配布廃止といった動きが進んでいます。これからは、今まで以上にSDGsを日々の生活の中で色濃く感じることが増えてくるでしょう。

 SDGsは、未来について考える上で重要な鍵となる世界共通言語です。つまり、SDGsを理解しているということは、世界各国の人々とディスカッションできるテーマを持っていることを意味します。だからこそ、ビジネスパーソンは絶対に理解しておくべきなのです。

「5つの破壊的テクノロジー」とは?

 ここでのキーワードは、「5つの破壊的テクノロジー」と「4つのデジタル・イデオロギー」です。いずれも未来について考える上で欠かせないトピックであり、SDGsの目標達成においても鍵となります。

 破壊的テクノロジー(Disruptive Technology)とは、それまでの価値観や社会のあり方を劇的に変化させる技術のことです。例としてわかりやすいのは、スマートフォンでしょう。スマートフォンが世の中に出回ってから、わたしたちの生活は驚くほど変わりました。この画期的なデバイスによって、これまでの常識はまさに「破壊」されたといえます。

 スマートフォンのように、社会に広くいきわたることによって日常の様相を一変させるような破壊的テクノロジーには、今後どのようなものが出てくるのでしょうか。落合さんが紹介する5つの破壊的テクノロジーをご紹介します。

①AI

 近頃は、オンラインショップのカスタマーサービスを始め、様々な場面にAIが導入されています。少子高齢社会に突入する日本では、特に自動化、省人化のための技術領域が発展することが予測されます。

②5G

 日本では2020年のサービス開始が予定されていますが、待ちわびている人は多いのではないでしょうか。

 それもそのはず、現行の4Gと比較すると、通信速度は10倍、接続端末数は100倍で、映画1本分のデータ転送にかかる時間は3秒ほどになると言われているのです。

③自律走行(自動運転)

 2019年は高齢者ドライバーによる悲惨な交通事故が、メディアで数多く取り上げられました。車の自動化が進めば、ヒューマンエラーによる交通事故が大幅に減少することが期待できます。

 とはいえ、日本では自動運転に関する法改正が間に合っておらず、実用化までは「10年以上」と予測されています。まずは、いち早く主流化しそうなヨーロッパ諸国の動向に注目です。

④量子コンピューティング

 2019年10月、Googleの研究チームが、現在のスーパーコンピューターでは1万年かかる計算問題を、量子コンピューターで3分20秒で解いたという論文を発表しました。

 まだまだ活用分野を模索している段階ではあるようですが、GoogleやIBM、東京大学など世界中の機関が量子コンピューターに期待を寄せています。

⑤ブロックチェーン

 ブロックチェーンというと、ビットコインを思い浮かべる方が多いかもしれません。金融取引などの記録をネット上で管理する技術ですが、落合さんは、これからもっとわたしたちの生活の中で活用されるようになるといいます。

 Facebookがブロックチェーン型の仮想通貨の導入を準備しているようで、今後の動きから目が離せません。

「4つのデジタル・イデオロギー」とは?

 続いて「4つのデジタル・イデオロギー」について。SDGsに加え、これからの世界の動向を予測する上で欠かせない考え方です。

 落合さんのいう「デジタル・イデオロギー」とは、地域によって異なるデジタルへの向き合い方の違いを指します。具体的には以下のとおりです。

①アメリカン・デジタル

 誰もが知る「GAFAM」はここに該当します。オープンソースなどを巧みに利用したイノベーティブな発展スタイルが特徴的です。

  • Google
  • Amazon
  • Facebook
  • Apple
  • Microsoftなど

②チャイニーズ・デジタル

 国家を後ろ盾にした資金循環と情報統制下でのイノベーションで急成長しました。まだまだ勢いは止まりそうにありません。

  • バイドゥ
  • アリババ
  • テンセント
  • ファーウェイなど

③ヨーロピアン・デジタル

 ヨーロッパの伝統と文化を背景としたブランド力が特徴です。IT分野ではアメリカや中国に圧倒されていますが、その他の分野では長い歴史の中で培われた素晴らしい技術力が今でも健在です。

  • LVMH
  • ロレックス
  • メルセデスベンツ
  • カールツァイスなど

④サードウェーブ・デジタル

 ここ何年かで、途上国から飛躍的な経済成長を遂げる国が現れています。インドやケニアなどがここに該当します。今後はその他のアフリカ諸国も、先進国とは異なる独特のスタイルでどんどん経済発展すると予測されています。

  • タタ・モーターズ
  • Mペサなど

 以上が2020年代のデジタル社会を支配するイデオロギーです。それぞれの今後の動きを予測することが、未来を予測することにつながるので、ぜひ押さえておきましょう。

他人事ではない「貧困」「格差」問題

新興国における「極度の貧困」

 SDGsでは、1日1.25ドル(日本円にして約130円)未満で暮らす人々を「極度の貧困」として、2030年までにこうした貧困問題をなくすことが目標の一つになっています。この「貧困」に該当する人々の多くは、アフリカ諸国で生活しています。

 ここで知っておくべきは、落合さんも注目するリバースイノベーション(新興国で生まれたイノベーションが、先進国に導入されて世界中に広がること)です。

 アフリカ諸国の多くは30歳未満を中心とした若者社会であり、その柔軟な知性が、先進国では考えつかないようなテクノロジーや、サービスを生み出す可能性を秘めているといいます。

 ご存知の方も多いと思いますが、ケニアでは電子マネー「Mペサ」が目を見張る勢いで普及しています。日本では未だに多くの人が現金を手放せずにいるのに、ケニアでは電子決済が主流となっているのです。

 テクノロジーによりアフリカは大きく変わろうとしています。貧困をはじめ、アフリカ諸国が抱えている問題を解決する糸口はテクノロジーにあるかもしれません。

先進国における「相対的貧困」

 尚、貧困の問題は途上国だけでなく、先進国も頭を悩ませています。日本を含め、先進国では物価が高く、ある程度の収入がないと「健康的で文化的な人間らしい生活」を送ることはできません。こうしたタイプの貧困は「相対的貧困」と呼ばれています。いわゆる「格差」問題です。

 所得が全世帯の中央値の半分以下の場合、「相対的貧困」に該当します。日本の場合だと、年収122万円以下が「相対的貧困」です。実に日本人の約6人に1人が該当します。

 先進国で問題視されている「相対的貧困」について考える上で知っておきたいのが、「ギグ・エコノミー」です。

 「ギグ・エコノミー」とは、インターネットを通じて単発や短期の仕事を受注する働き方です。今流行りのUberEats、ランサーズやクラウドワークスといった、クラウドソーシングサービスを利用した働き方が該当します。従来の終身雇用とは異なる新しいライフスタイルとして注目され、ギグワーカーは年々増えています。

 誰でも簡単に金銭を稼げるのが特徴ですが、本業とするには労働単価が低いことが多く、仕事の継続性も低いのが実情です。業務経験が蓄積されにくいという問題点もある「ギグ・エコノミー」には、はまり込むと低所得から抜け出せなくる危険性があります。

 また、日本ではシングルマザーの相対的貧困も問題になっています。シングルマザーの54.6%が該当する現状は看過できません。ブランド品に身を包み、おしゃれなレストランでランチを楽しむ人たちがいる一方で、決して少ないとは言えない数の人たちが生活保護で何とか暮らしているという格差問題は、どのように解決できるのでしょうか。

格差問題の解決策

 落合さんが提案するのは、「インターネット教育」です。貧困層の家庭で育った子どもでも、教育を受ける機会を逃してしまったシングルマザーでも、高等教育を受けることができれば、経済的な困窮から抜け出すチャンスを得られます。

 最近はあらゆる教育をeラーニングで受けることができます。「MOOC」という大規模公開オンライン講座サービスでは、ハーバード大学や東京大学などの講義コンテンツを無料で提供しています。たとえば、東京大学のホームページ上では、SDGsを学ぶための講座の動画が無料で配信されています(2020年3月3日時点)。

 他にも、スマホで気軽に小学校から高校までの学習ができる「スタディサプリ」というアプリも登場しており、受験生に人気が出ているそうです。

 モチベーションさえあれば、高額な費用を払わなくてもインターネット上で教育を受けられるシステムが整いつつあります。より多くの人々が豊富な知識や技術を身につけることが可能になれば、「格差」「貧困」問題の解決に向けて一歩近づくかもしれません。



環境保護に積極的じゃないと嫌われる?

 最近、スターバックスで環境問題に配慮した紙製のストローの提供がスタートし、話題になりました。トヨタのラグジュアリーブランドであるレクサスでも、来客に出す飲み物には紙製のストローを使用しています。

 GAFAMをはじめ、グローバル企業はなぜ環境問題に関心が高いのでしょうか。ここで知っておきたいのが、ESG投資です。

ESG投資とは?

 ESG投資のESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を指します。昨今、企業の長期的な成長には、この3つの観点が欠かせないと言われています。ESG投資とは財務情報だけでなく、社会貢献や環境保全にどれくらい熱心かといった点からも企業を評価して投資する手法です。

 SDGsと比べ焦点を当てている分野は限られていますが、企業へのよいプレッシャーとなっているようです。ESGに配慮しない企業は、消費者から嫌われるだけでなく、投資家からも嫌われてしまうのです。

 では、企業レベルではなく、国家レベルではどうでしょうか。やはり環境問題を軽視する国は嫌われるのでしょうか。

 地球はわたしたち人間に様々な資源を提供しています。海洋資源や原油といった地下資源、わたしたちが排出する二酸化炭素を吸収する森林資源など、人間は生活するために多くの資源を必要とします。

 落合さんによれば、日本の場合、今の生活を維持するには国土の7.1倍の資源が必要で、世界全体では、地球が1.7個分ないと全人口の生活を支えられないと言われているそうです。

 わたしたちは、今まで人類が吸ったことがない二酸化炭素濃度の空気を吸っており、地球温暖化が急速に進んでいることは紛れもない事実です。だからこそ、「京都議定書」や「パリ協定」などで世界各国が温室効果ガスの排出削減を目指そうと協議を重ねています。

中国の動向

 今、環境保護政策の鍵を握っているのはアメリカと中国です。2019年時点で、中国は世界第1位の二酸化炭素排出国となっています。2000年初頭は環境問題への関心が薄く、他国からバッシングされていました。

 しかし現在は、自動車の排気ガス規制をはじめ、化石燃料以外の割合の引き上げなど、国と企業が一丸となって環境問題に取り組んでいます。特に、太陽光発電には力を入れており、太陽光パネルの生産量は世界1位となっています。社会主義国家だけあり、方針が決まれば瞬く間にトップダウンで政策が浸透するので、二酸化炭素排出国1位の座を早々に譲るかもしれせん。

アメリカの動向

 一方アメリカは、2017年、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を国連に通告しました。この背景には、これまで採取は不可能と考えられていた、シェールガスの収集に成功したことが影響しています。シェールガスは化石燃料の中では、最も二酸化炭素の排出量が少ないという特徴があります。つまり、パリ協定から離脱したからと言って環境問題を関心を向けないというのではなく、アメリカ独自の方法でクリーンエネルギーを目指そうとしているのです。

 各国が一致団結して温室効果ガスの排出削減を目指しているとき、世界をリードするアメリカがそうした動きを全く無視することはさすがにできないですよね。

 環境問題に積極的でないと、企業も国もこれからの時代を生き抜くことはできません。逆に言えば、企業や国が成長するヒントはこの分野にあるかもしれません。



これからの日本の居場所

 SDGsは各国の達成状況がスコア化され、毎年ランキングが発表されています。なんと、2019年7月時点では10位までを西欧諸国が独占しています。ちなみに日本は15位です。

 こうした結果の背景には、戦後から始まった西欧の積極的な環境問題や社会保障への取り組みがあります。SDGsは長い年月をかけてヨーロッパ諸国を中心に進められた環境保護や人権保護の動きの成果なのです。言い換えると、SDGsはヨーロッパが得意とする分野、ルールで成り立っていると言えます。

 2030年の目標達成に向けて、世界はよりSDGsを意識した動きが強まります。それは、今後はヨーロピアン・デジタルが勢力的に世界を動かすと考えることができるかもしれません。

 アメリカン・デジタルにチャイニーズ・デジタル、さらにはヨーロピアン・デジタルも加わって、新しい時代に向かって活発に刺激し合うなか、日本の雲行きは怪しくなっています。

 日本の活路はどこにあるのでしょうか。どうしたら世界から取り残されずに済むのでしょうか。

「デジタル発酵」とは?

 ここでお伝えしたいのが、落合さんが提唱する「デジタル発酵」という考え方です。

 「発酵」とは、微生物の働きによって物質が(人にとって有益なものへと)変化することをいいます。「デジタル発酵」における微生物は、テクノロジー資源です。つまり「デジタル発酵」を起こすことで、テクノロジー資源が日本の独特の文化や技術、サービス、国民性などと掛け合わさり、新たな魅力や価値をもたらすことが期待できるのです。

 日本には長い歴史の中で培われた素晴らしい伝統文化があります。なので、スタイルとしてはヨーロピアン・デジタルのように、歴史と文化を背景としたブランド力をアピールしながら、高い付加価値をもつ産業を興すべきだと落合さんは言います。

 資源も人手も乏しい日本が、アメリカや中国のような歩み方をすることは困難です。でも、日本のユニークさとテクノロジーで「デジタル発酵」させれば、世界が驚くようなイノベーションが生まれるかもしれません。これが今後、日本が進むべき道となる可能性は大いにあると思います。



さいごに

 わたしたちの生活環境は急速に変化しています。本書は世界の流れから取り残されて、迷子にならないためのガイドブックです。読み終わる頃には、未来に対する不安が少し薄れていると思います。それどころか、持続可能な世界のために何か行動したいと意欲が湧き上がっているかもしれません。

 SDGsの理解を深めると、個人レベルでもできることがあると感じられるようになります。一方で、自分にはできないことがあることにも気づきます。SDGsのバッジを胸に付けたただけで世の中は変わりません。

 大切なのは、主体的に取り組めることを見つけたら、積極的に行動に移すことです。傍観者となる場合でも、目標と向き合っている主体者をサポートすることで関与することができると落合さんは言います。

 ここで紹介した以外にも、働き方や日々の過ごし方が一変するような刺激的なトピックが本書ではたくさん取り上げられています。より深く学びたい方は原著もぜひチェックしてみてください。

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