書店へ足を運ぶと、売れ筋ランキングの上位にビジネス書が多く入っているのを見かけます。たくさんの本のタイトルを見ながら、「どれを選んだらいいかわからない」「いろいろ読みたいけど、時間がない」といった気持ちになる人は多いのではないでしょうか。
そんな方にお薦めしたいのが『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』です。
ベストセラー『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』の第2弾となっており、古典的名著から近年のベストセラーまで、30冊の書籍が登場。1冊のビジネス書についてポイントを3つに絞り、それぞれイラスト付きで要点を解説しています。
著者は株式会社学びデザイン代表取締役社長でもあり、書籍要約サービス「フライヤー」の取締役COOでもある荒木博行さん。教育者・ビジネス書執筆者・事業創造者・ビジネス書案内人に加え、イラストレーターでもある著者は、本書のイラストもご自身で手がけています。
もう1つ特徴として挙げられるのは、30冊の名著が著者の「誤読」によって独自にカテゴライズされていることです。たとえばマキアヴェリの『君主論』は、「キャリア」をテーマにした章にラインナップされています。この本にキャリアに関する直接的な考察は含まれていませんが、著者が『君主論』のメッセージを「誤読」することで、キャリア論に発展させているのです。
「誤読」とは、一般的に「誤った解釈をすること」という意味であり、ポジティブに語られる言葉ではありません。しかし本書でいう「誤読」とは「自由な解釈」のことをいい、著者のメッセージの本質を維持しながら抽象化して、読者の文脈に当てはめて解釈することを指しています。
本書は、ビジネス書30冊の要点が理解できるだけでなく、各書籍について荒木さんの「誤読」(その本の学びをいかに活かすか?)についても楽しめるようになっているのです。「積極的に誤読をすることで読書は楽しくなるし、応用範囲も広がっていく」と荒木さんは言います。
読書ノート
誤読の楽しみ方
では、どのように「誤読」を実践すればよいのでしょうか。以下、誤読の楽しみ方について、3ステップで紹介します。
STEP1 書籍のメッセージをストレートに理解する(具体)
最初のステップは、可能な限り著者の視界に寄り添って、意図をそのまま理解することです。特に「著者がどんな時代にいたのか」「何を見たのか」「何を訴えたかったのか」を理解できるように読んでいきます。
ここは意外と重要なポイントです。「誤読」=「自由な解釈」と聞くと、読解力など必要なく「著者の主張を誤って理解してもいい」と受け取ってしまう人がいるかもしれません。
しかし本書でいう「誤読」とは、著者の主張を「ストレートに理解する」ことが大前提としてあり、「著者の主張を誤って理解する」という(本来の意味の)誤読が推奨されているわけではない、という点は押さえておいた方がよいでしょう。
STEP2 メッセージの抽象度を高める(抽象)
2番目のステップからが重要です。著者のメッセージは、読者が持っている課題にはダイレクトに適用できないものが多く含まれています。
そのため、著者のメッセージの本質を維持しながら抽象度を高めていくことで、汎用性を持たせていきます。
STEP3 目の前の事象に当てはめてみる(具体)
メッセージを抽象化できたら、具体的な課題に適用していきます。抽象化した概念を、目の前の課題や事象に落とし込むことで、「書籍のメッセージを活用する」という醍醐味を味わうことができます。
何より大切なのは、「読書から得た示唆を放置せずに、活用して楽しんでみる」ということ。抽象化と具体化を繰り返すことで、自己流の学び取りができるのです。
ベストセラー『FACTFULNESS』はどう解説されている?
では、2019年に話題となり40万部を突破したベストセラー『FACTFULNESS』は、どのように紹介されているのでしょうか。
冒頭でお伝えした通り、本書では1冊のビジネス書について3つのポイントに絞って解説しています。各ポイントはイラスト付きで図解されており、書籍のメッセージをストレートに理解できるようになっています。
『FACTFULNESS』のポイントは以下の3つ。
- Point1:「10の思い込み」から成る “ドラマティックすぎる世界の見方”
- Point2:世の中は2つに分断されてなんかない
- Point3:世の中は悪くなってなんかない
Point1「10の思い込み」から成る “ドラマティックすぎる世界の見方”
「私たちを取り巻く環境が悪化しており、貧富の格差も広がりつつあり、資源も枯渇しつつある」ーーこうした極端に悲観的な世の中の見方(「ドラマティックすぎる世界の見方」)をする人たちの根幹には、「10の思い込み」があります。
これに対して「事実(ファクト)」に基づいて反論していく、という概要を伝えるのがPoint1です。
「世の中は分断されている」と主張する「分断本能くん」や、「世界はどんどん悪くなっている」と主張する「ネガティブ本能さん」のように「10の思い込み」をキャラクター化して、「ファクトフルネスくん」が事実に基づき反論を述べてやっつけていくという描き方がされています。
Point2:世の中は2つに分断されてなんかない
Point2で登場するのは「分断本能くん」。「世の中には大きな格差があって、埋めがたい溝がある」と主張します。
彼は、「正義か悪か」「自国か他国か」「富裕層か貧困」のように、何事も2つのグループに分けて考えて、その2つのグループに対立を求める傾向があります。
これに対しファクトフルネスくんは、以下のように主張します。
- 2つのグループの平均に差があったとしても大半は中央部分で重なり合っていないかチェックしよう。
- グループには最上位もあれば再開もある。極端同士の比較になっていないかチェックしよう。
- 高いところから見下ろすと、みんな一括りに低く見えてしまう。小さな差をチェックしよう。
Point3:世の中は悪くなってなんかない
Point3では「ネガティブ本能さん」が登場。彼女は世界が少しずつよくなっていることには目もくれず、センセーショナルな悲劇や事故ばかりを見つけてしまう癖があります。「昔はよかった」と過去を美化し、深く考えることなく、感じて判断してしまうのです。
これに対し、ファクトフルネスくんは次の3つの指摘をしています。
- 「悪い」と「よくなっている」という2つの考え方を共存させる。良くなっていることは数多く存在するのだ。
- 悪いニュースのほうが広まりやすいということを心得ておく。
- 歴史を書き換えない。過去をしっかり学ぶ。
このように簡潔にまとめられた3つのポイントを押さえることで、『FACTFULNESS』の要点を理解することができます。
その後の1ページで、著者による「誤読」(目の前の課題への当てはめ)を含めた解説を楽しめるようになっています。著者は本書で書かれている世の中の見方について、経営の単位に落とし込むことで、「ドラマチックすぎるマネジメントの見方」がいたるところに偏在していることを指摘します。
その上で、「うちの会社はこのまま行くと破滅する」「社員はみんな内向きな奴ばかりだ」といった過激で極端なモノの見方をしている人に対して、「ドラマチックすぎる世界の見方」に陥っていないか気をつけた方がよいと注意喚起しています。
本書では、名著や話題のビジネス書の要点を知ることができるだけでなく、著者の「誤読」を通して、本から得た知識をどのように自分事として活用すればよいのか、についても学ぶことができます。
みなさんも本書を参考に「誤読」を楽しんでみませんか?
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