昔から「物語」には次世代に残したい史実や人生の格言などをわかりやすく伝える役割があったようです。
本書『大富豪からの手紙』でも物語の形式を採用し、「最高の人生を生きるための指針」を効果的に伝えることに成功しています。
主人公である大学生のケイは、大富豪の祖父・タイゾウの遺した手紙を読み、人生を自分らしく生きるために勇気を持って行動をしはじめます。さまざまな人との出会いや経験を通して、人生において本当に大切なことを学び、いくつもの気づきを得ていきます。
手紙の入った封筒には番号とタイトルが書かれており、それらが章タイトルにもなっています。以下の9つの手紙が、主人公が「読むときが来た」と感じたタイミングで順番に開封されていきます。
- 第1の手紙:【偶然】
- 第2の手紙:【決断】
- 第3の手紙:【直感】
- 第4の手紙:【行動】
- 第5の手紙:【お金】
- 第6の手紙:【仕事】
- 第7の手紙:【失敗】
- 第8の手紙:【人間関係】
- 第9の手紙:【運命】
多くの章が20ページほどなので、読みながらひと段落をつけやすく、それでいて内容は深く、きっと「この言葉は憶えておきたい」という場面に多く出会えると思います。付箋を貼って印をつけながら読むことをおすすめします。
ここでは多くの人の関心の的となるであろう第5の手紙「お金」について紹介します。
お金から自由になる方法とは?
第5章の舞台はチェンマイ。ケイは、タイゾウの親友であるソムチャイさんと出逢い「お金」についての教えを請います。
みんな毎日がんばっているのに、お金持ちになれないのは何故なのか。これに対するソムチャイさんの答えはシンプルで、「お金とちゃんと向き合っていないから」だといいます。
給料というのは、世間の相場に応じて払われるものです。これは「普通の生活ができる程度にもらえる」ということであり、逆にいうと「普通に生活に使ったらほとんど残らないぐらいの金額しかもらえない」ということでもあります。
多くの人は、収入が増えると、何も考えずに自動的に支出を増やしていくため、どれだけ収入が増えても、手元にお金は残りません。がんばって働いて、稼いだお金を楽しく使うのが人生だと信じてしまっているのです。
一度支出を増やしたら、簡単には生活レベルを下げられなくなってしまうので、どれだけ稼いでもお金から自由になれません。
大切なのは「誰かの役に立っているという実感」を得ることであり、いいお金の使い道は「自分とまわりの人を幸せにできる」という視点を持つことだとソムチャイさんは説きます。
誰かを幸せにするたびに、自分の器が大きくなって、お金から自由になっていくのです。
お金持ちになる方法とは?
では、お金持ちになるには、具体的にどんな方法があるのでしょうか。
ソムチャイさんは、次の3つの方法を挙げています。
- 「家族のお金を受け継ぐ」
- 「お金に働いてもらう」
- 「自分の才能を使って、仕事で稼ぐ」
①は、「自分の器」を超えたお金を持つことになるので、人生の真の楽しさを味わえないし、かなりの確率でお金を失いやすいといいます。また「自分で稼ぐ力」がないので、お金を減らすことがないように、保守的に暮らす傾向があります。
②は、不動産や株などに投資をして、キャッシュフローを得る方法です。日常的に働く必要がないため、理想的な方法に感じるかもしれませんが、元手となるお金が必要であり、リスクもあるため、誰もが成功できる方法ではありません。
つまり普通の人は、③の「自分の才能を使って、仕事で稼ぐ」という方法しかないということです。そこで売りものとなるのは、自分の「才能」です。
「持って生まれた才能を見つけて、どれだけ上手に使えるか」によって成功度が決まるとソムチャイさんは説きます。そのため「自分が持っている中で、いちばんの才能で勝負する」ことが大切だといいます。
自分の3番目や4番目の才能を使って成功した人に、私は会ったことがない。「キミが情熱的になれて、寝食を忘れるほど好きなこと」をやらなければ、成功できないんだよ。(p.169)
ソムチャイさん曰く、人類の95%以上が「自分の才能」を見つけられないまま、一生を終えてしまうそうです。
才能を見つけるためには、「まわりの人からの頼まれごと」を引き受けて、それをしっかりこなすことからスタートするように勧められています。
そういうことを地道にやって、はじめて「自分の才能の形」が、だんだん見えてくるようになるからです。
まったくのゼロから出発して、「自分のキャッシュポイント(才能がお金になる活動)」を見つけて、ワクワクしながら行動して、失敗して、成功して、また失敗して、それから、成功をつかむ。
それが「人生の楽しみ」だとソムチャイさんは説きます。
これはタイゾウの手紙にも同じことが書かれています。「自分の才能を見つけて、それを磨き、ドキドキしながらお金を受け取るプロセス」は、人生でもっとも楽しいことの1つだと。
大富豪だったタイゾウが、孫にお金を遺さずに手紙を遺したのは、「自分でお金を作り上げる楽しみ」を奪いなくなかったからだったのです。
まとめ
今、自分の経済状況に漠然とした不安をもつ方にとって、「大富豪の祖父の手紙」と、彼の友人たちがケイに語ることは示唆に富み、今後の羅針盤となることでしょう。
もちろん、この手紙を読んですぐにすべてを実行して人生を謳歌するのは、簡単なことではありません。それでも頭の片隅に、登場人物たちの言葉を遺しておくことで、どこかのタイミングfで大きく人生が変わるのではと期待してしまいます。
大富豪の教えを請いたい方は、ぜひ読んでみてください。