【要約】電通Bチームが提案する『ニューコンセプト大全』

【要約】電通Bチームが提案する『ニューコンセプト大全』



「電通Bチーム」とは?

 「電通Bチーム」という名前を聞いたことがあるでしょうか。広告業界最大手の電通社内に部署として存在する特殊クリエイティブ部隊です。

 「Bチーム」の「B」には、以下2つの意味があるそうです。

①「B面」を持った社員が集まっている。

 電通社員としての本業(=A面)以外に、私的活動、すごい趣味、前職、大学の専攻が特殊だったなど、個人的な側面(=B面)を持つ社員がネットワークされているということ。

 たとえばDJ、小説家、AIエンジニア、旅人、インスタグラマー、釣り人、教育者、e-sportsプレーヤー、ビールブロガー、漫画書評家など、1人1つ得意ジャンルを常にウォッチし、情報を収集、みんなで共有しているそうです。

②「Plan B」や「Approach B」のB。

 もう一つは、今までと「違う方法」を世の中や企業に提供しているということ。これまで通りのものや見たことのあるものではなく、今までと違う方法のみを採用して、新しい価値観や方法論、プロジェクトを発表しているそうです。

 Bチームの方針は、「Curiosity First」。つまり好奇心第一で、「自分がいいと思うから」「自分の興味をそそられたから」提唱することが重視されています。個人的な感覚、経験、直感、思いといった「パーソナルなこと」から、世の中が良くなる新しいコンセプトを生み出しているのです。

 本書では合計50個のコンセプトが、以下4つのチャプターに分けて紹介されています。

  • CHAPTER1「個人的」が生むニューコンセプト
  • CHAPTER2「壁」を超える&壊すニューコンセプト
  • CHAPTER3「逆」を行くニューコンセプト
  • CHAPTER4「既存」を最高に生かすニューコンセプト

 ここでは各チャプターから1つずつ、面白い・役に立つと思ったもの紹介します。

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「個人的」が生むニューコンセプト

 CHAPTER1では、個人的な感情、感覚、誰かを助けたいという思い、怒り、夢、閃きといった「個人的なこと」を発端としたコンセプトが紹介されています。

「編集」から「偏愛」へ

 最近、「ひとつ」のものにフォーカスし、「偏愛」的にこだわって濃い価値を生み出すビジネスが注目を集めています。

 たとえば

  • 白Tシャツだけを何種類も売る、千駄ヶ谷の店「#FFFFFFT(シロティ)」
  • 3種類の食パンだけを扱い行列ができるパン屋
  • 文房具マニアの小学生の夏休みの宿題が出版された文房具本『文房具図鑑』

など多彩なジャンルで、徹底して絞った視点によって強い差別化につなげている事例があります。

 それはあるジャンルを集めて「編集」的に扱うセレクトショップ型のビジネスとは違う、「偏愛のビジネスモデル」と言えます。

 銀座・青山にある「セントルザ・ベーカリー」では、食パンへの偏愛が圧倒的な価値を生んでいます。一見、種類が多いパン屋のほうが人気が出そうですが、「食パンだけを3種類扱う」という従来と異なるコンセプトによって、連日行列ができる人気店となっています。

 「食パンは日本一食べられているパンであり、市場は大きい。1種類のパンに、素材や製造環境を注力する圧倒的においしい食パンができ、それは強い差別価値を持つ」──これがセントルザ・ベーカリーを経営するル・スティル社の代表取締役、西川隆博氏の考えです。

 セントルザ・ベーカリーでは、以下のように、すべてが食パンを楽しむための偏愛体験設計となっているそうです。

  • テイクアウトで焼きたてのパンの湿気がこもらないよう煙突状に開けた包装で渡され、温もりとパンの香りが漂う設計になっている。
  • 店内では3枚の食パンを3種類のバターとともに食べ比べるメニューがあり、比べることで、より味に敏感になり、形やテクスチャーが違う食パンとバターが並ぶ様子を楽しめる。
  • 食べ比べる食パンを焼くために、何種類ものトースターが用意され、焼き方の個性も楽しめる。

 ひとつのことに「偏愛」的に特化することは、働く職人さんたちを食パンの世界に没頭させ、他を圧倒する食パンづくりにつながるというメリットもあります。そうしてさらに差別価値が高まっていく、という好循環が生まれるのです。

 似た条件下で効率を優先した「編集」をすると、どうしてもその傾向は似通ってきてしまいます。そして傾向が読めるものは、最終的にAIでも代替ができてしまいます。だからこそ、今の時代は「偏愛」が価値を生み、人の心を掴むようになっているのです。

 「偏愛」は人間ならではものだ。気になることを、どこまでも突き詰めてしまう。偏愛とは、機械化、均質化する世界で、ユニークなものを生み出すための、人間の強みを生かした方法論ではないだろうか。(p.28)

「壁」を超える&壊すニューコンセプト

 CHAPTER2では、今までの方法で壁に当たり続けることをやめて、壁を乗り越えたり、壊したり、くぐったり、そもそもの壁という定義自体を変えたりして、壁の向こう側に行くためのコンセプトが紹介されています。

BUZZサーフィン理論

 世の中に生まれた話題をキャッチし、企業がある方向からレスポンスすることで、大勢の人を巻き込む大波を起こすのが「BUZZサーフィン理論」です。

 例に挙がっているのは、日清食品の「10分どん兵衛」。芸人のマキタスポーツさんがラジオで「どん兵衛は規定時間の5分で食べるより10分で食べたほうがうまい」と発言し、そのネタがじわじわと話題になりました。

 日清食品はその波をキャッチし、企業からの「おわび」というリアクションをとったところ、話題の波が急速に拡大したのです。

 その波にさらにたくさんの人々が乗り、10分で食べるどころか、20分で食べたり、0分(お湯を注がず食べる)や10時間で食べたりする猛者も登場。スーパーやコンビニの棚からどん兵衛はどんどんなくなり、商品は発売以来40年間で最高の売り上げを記録したそうです。

 このように、ユーザーの間で小さく始まった話題に、企業がうまく乗っかることでさらに拡散し、大きなPR効果を生む現象が昨今増えてきています。

 ただし、これは企業と消費者が同じ波を見て、同じ文脈を共有しているからこそ成立するもので、企業がPR目的の下心丸出しで参入して来ても反感を買うか無視されるのがオチでしょう。

 本項では、サーフィンする際の注意点として2つ紹介されています。

  • 企業のキャラクター性を理解し、海の仲間たちから愛される乗り方をすること。
  • 海のルールを学び、マナーを弁えた乗り方をすること。

 消費者が暗黙のルールのもと、楽しく遊んでいる海に、企業が入ってきて自分勝手に悪ノリしていると、総スカンを食ってしまいます。企業は消費者と同じ海に入り、同じ波に乗り合うサーフィン仲間だと考え、ルールとマナーを学び、正しく海に入らなければいけません。

 また「BUZZサーフィン理論」を活用するとしたら、小さい波では小さい結果(拡散)しか生まれないので、大きい波を捕まえることが重要です。多くの人が知っている波(文脈)をとらえるからこそ、大波を起こすことができるのです。

「逆」を行くニューコンセプト

 CHAPTER3は、みんなが向いている方向と逆に目を向けてみるというコンセプトです。時代が順調でないときこそ、「逆」が有効となるので、今こそ注目すべきコンセプトと言えます。

並と特上のススメ

 「性能・価格が高い順に3つの選択肢を提示されると、人は真ん中を選びがち」という現象を、行動経済学で「フレーミング効果」と言います。

 しかし最近、「上」は「中途半端」として選ばれず、「並」か「特上」のどちらかが選ばれる傾向が強くなっていると言われています。「とりあえず真ん中」はもう古くなっているのです。

 ラインナップの「並と特上化」は、大きく2つのパターンに分けられます。

  1. 日用品など安価な商品カテゴリーに高付加価値品を投入するケース(並にプラス特上)
  2. 車や宝飾品など高価な商品カテゴリーに廉価版を投入するケース(特上にプラス並)

 つまり、「並の商品カテゴリーに特上をプラス」することで特別感を出して目を引く方法と、「特上の商品カテゴリーに並をプラス」することで敷居を下げるという方法があります。

①「並+特上」

 「並+特上」で販売数を伸ばしている事例として、兵庫県のパン屋さんレトワブールの「XO食パン」(1斤6,500円)や、高知県の望月製紙が販売する3個5,000円のトイレットペーパー「羽美翔」が挙げられています。

 「XO食パン」は、食材にこだわり抜き、美容にいいとしてクレオパトラや楊貴妃も愛用したと言われる真珠子が3グラム配合されており、セレブな女性の心をくすぐっています。

 「羽美翔」は、シルクのような柔らかさで、どこでカットしても上品かつお洒落に見えるようにデザインされた優雅なイラストがプリントされており、1ロール1ロールに皇室献上品であることがわかるシールが貼られ、京都のワシ職人が手作業で作ったストックボックスに収められています。

 「ハレの日」の需要で、特上商品をまず買ってもらう。そして商品の魅力に目覚めさせ、「ケの日」にも同ブランドの並の商品を選ばせる。これが「並+特上」の戦略です。

 競争の激しい安価な商品カテゴリーで、ブランド特色をもたせて顧客を囲い込めるうえ、特上で覚えたスペシャル体験から、並の商品も他のブランドより高めの価格設定でも売れるというメリットもあります。

 尚、並の商品カテゴリーで特上の商品が売れるのは、SNSの普及が関係しています。多くの人がSNSで注目されるネタを日常的に探しています。超高級食パンも超高級トイレットペーパーも、話題性が高く、SNS映えする絶好のネタと言える上、超高級品とはいっても手が届く範囲の価格なので、反感を買いにくいというのもポイントとなっています。

②「特上+並」

 逆に、高級車や宝飾品など「特上」商品を取り扱うブランドで、「並」の品質・価格設定の商品を投入するケースもあります。これは若者を囲い込む狙いがあります。

 少子高齢化によって若者の需要の取り合いになっている今、特上ブランドとしては早い段階から将来の顧客を囲い込みたい。そのために、本来ターゲット外の若い顧客向けにエントリーモデルを販売するのです。

 たとえばメルセデス・ベンツのコンパクトクラスや、結婚指輪の「ケイノウ」が提供するDIYジュエリーなどは、特上商品の敷居を下げることで若者を引き込んでいる好例です。

 消費者をその瞬間の属性で切り分け、ターゲット外と切り捨てるのではなく、成長する将来の顧客として長い目でマーケティングする、という戦略をとっているのです。

 無難に上を注文することを前提につくられたメニューだな、と思いながらも上を注文するよりも、作り手のプライドを持った商品の二者択一を迫られるほうが絶対に楽しい。(p.167)

「既存」を最高に生かすニューコンセプト

 「既存」のものよりも、「新サービス」「新技術」の方が注目されがちです。しかしイノベーションは「既存の異なる情報の新結合」なので、既存のものにこそ新たなチャンスが眠っています。

 このチャプターでは、既存を生かすコンセプトが紹介されています。

見立てイノベーション

 日本古来の「見立て」によって、新しいアイデアを生むというコンセプトです。

 「見立て」とは、「あるものを別のものと仮にみなして表現すること。なぞらえること」をいいます。

  • 「新幹線はコミュニケーションメディアである」
  • 「年賀状は贈り物である」

など、自分のサービスや商品を「○○は、△△である」と何か他のものにみなして言っているものに、成功事例がたくさんあります。

 たとえば城崎温泉では、街全体を1つの旅館と「見立て」ており、城崎温泉駅は宿の玄関で、道路は宿の廊下とされています。

 また東京茗荷谷の和菓子の名店「一幸庵」では、冬には、白いきんとんを「雪です」と出し、春にはピンクのきんとんを「桜です」と出しているそうです。両方とも原材料はほぼ一緒ですが、「見立てる」ことで、受け手の味覚を含めて感覚を変えているのです。

 見立てのコツは「言い切り」と「距離感」。AはBである、と自信を持って言い切ること、そしてAとBが遠すぎると意味が分からなくなってしまうし、逆に近いと、そのまんまになってしまい、想像力も好奇心もゼロになってしまうため、遠からず、近からず、そのバランスが大事だそうです。

まとめ

 本書には、電通Bチームのメンバーの個人的な気づきをもとにした50のコンセプトが図解で紹介されています。

 ここで紹介した4つのコンセプトが参考になった方は、ぜひ残りのコンセプトをチェックして、お仕事に役立ててください。

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