20年後の未来はどんな世界?
ビジネス書の良書や著名人から学びを得ながら、「IT×教育」分野での起業をめざすリアルタイム成長ストーリー企画、「吉田ももみ起業物語」。
4冊目に紹介するのは『未来化する社会』です。
本書は、未来学者のアレック・ロス氏が、今後20年で私たちの生活を大きく変えるといわれる5つの産業ーーロボット工学、ライフサイエンス、金のコード化、サイバーセキュリティ、ビッグデータについてまとめた一冊。
起業して成功を収めるためには、未来の変化に敏感でなければなりません。今流行っているけど5年後には廃れてしまうビジネスよりも、今はまだ注目されていないけれど、10年後には確実に世の中に浸透しているビジネスに目を向けた方が多くの果実を得られるはずです。
未来を的確に言い当てることは困難ですが、テクノロジーの進化に目を向ければ、イノベーションとグローバル化の波によって私たちの国や社会がどのような影響を受けるのか予測することは可能です。
もし1960年代に「グローバル化によって世界がどうなるのか」がわかっていれば、もし1980代に「インターネットとデジタル化によって世界がどうなるのか」がわかっていれば、変化の波に飲み込まれることなく、生き延びることができた企業はたくさんあったはず。
だからこそ、20年後の社会に大きく影響を及ぼす産業について教えてくれる本書は、企業、個人問わずこれからの時代を生き残るために必読の一冊と言えます。
今回は、5つの産業のうちロボット産業についてピックアップしてご紹介します。
10年後はロボットとの生活が当たり前に?
これからの10年で人はロボットと暮らす術を学び、社会は大きく様変わりすると予測されています。
特に日本は、国民の平均寿命が世界で最も長く、高齢者の比率が最も高い課題先進国なので、社会的にも経済的にもロボットイノベーションの必要性が高く、近い将来、生活に当たり前のように浸透していくことは間違いありません。
厚生労働省によると、2025年には介護する人が400万人必要になると見積もられているものの、現時点では149万人しかおらず、圧倒的に足りていない状況です。さらに介護職は、重労働の割に報酬が低いこともあり、離職率が高いことも労働力不足に追い打ちをかけています。
こうした課題を解決するべく、2013年には、日本政府はロボット介護機器の開発・導入促進事業に23.9億円の予算がつけられました。
日本企業はイノベーションが起こりづらく、世界に遅れをとっていると思われがちですが、実はロボティクスの世界では抜きん出ていて、中国、アメリカ、韓国、ドイツと並びビッグ5として知られています。
これまで日本のロボットは、自動車や電子産業などの大企業を中心に、生産プロセスの自動化のために活用されてきましたが、こうして培ってきた機械工学のノウハウを次世代ロボットに活かすことで、産業ロボットから高齢者介護ロボットへの転換が進んでいるのです。
トヨタの「ロビーナ」やホンダの「アシモ」など、言葉と身振りを使って人とコミュニケーションをとることができたり、家事手伝いや、病人の介護、楽器を演奏するロボットも出てきています。
ロボット産業は、日本が直面する社会的課題の解決に向けて、非常に有効な手段の一つとなりうるのです。
ロボットに人間の世話ができるのか?
では、果たして本当にロボットに人の世話などできるのでしょうか。介護の仕事の大変さを知る人からすると、疑わしく思われるかもしれません。
技術上の問題からいえば、被介護者の入浴や歯磨きを安全に補助できるロボットの設計は非常に難しいと言われていますし、また被介護者は本当にロボットと心を通わせることができるのかという、精神的な面での疑念もあります。
しかしこうした課題への答えも、これからの10年で早晩わかってくるだろうと言われています。
これまでのロボットはごく限られたデータにしかアクセスできず、筺体内のハードウェアとソフトウェアにできることしかできませんでした。しかし今や、クラウドを通じて膨大なデータに継続的にアクセスし、それまでの経験を共有することで、かつては人間にしかできないと思われていた状況認識や文脈の理解、人の判断力が求められる仕事についても、できるようになりはじめています。
ロボット同士が相互に結びつき「ネットワーク化」することで、他のロボットの経験も自分に取り込み、ものすごい速さで「学習」することができるようになっているのです。
想像してみてほしい。われわれ人間が、ある日突然、地球上のすべての人たちの知識と経験に直接つながったとしたら。何か決定を下すときに、自分のだけでなく、何十億という人々の知識と経験を瞬時に参照できるとしたら。
日本がロボットで世界をリードできる理由
日本がロボット産業で世界をリードすることが期待されるのは、社会的な要請が強いことや技術的な優位性だけではなく、文化的な素地が関係しているといわれています。
というのも、西洋と東洋ではロボットのとらえ方が大きく異なるからです。西洋文化では、ロボットは魂のない、たんなる機械として見られる一方、日本では、物でも人でもあらゆるものに魂が宿ると考える「アニミズム」が根づいているため、ロボットを人間のパートナーと同じように受け入れられる文化があります。
ロボットの時代にどこまで成功できるかは、その国の文化–人が暮らしにどこまでロボットを受け入れられるのか–にかかわってくる。(中略)無生物でも生きているもののように感じることのできる文化では、ロボットは道具でも脅威でもなく、社会の一員になれる。
他の先進国でも、程度の差こそあれ少子高齢化が社会問題となることは間違いので、もし日本が介護ロボットによってこの問題を克服できたとしたら、世界中が市場となって経済的に大きな恵みを得ることができるでしょう。
文化的にロボットを受け入れやすい素地がある日本は、世界的なロボットイノベーションの拠点となるポテンシャルを秘めているのです。
ロボットに仕事が奪われる?
ロボットの議論になると必ず言われるのが、「人の仕事が奪われる」というネガティブな影響に対する懸念です。
しかし「みんなやりたくないけど、誰かがやらなければならない仕事」というものを、ロボットが担ってくれるようになれば、それだけ人間はより生産的で、より満足度が高い、人間にしかできない仕事に専念できるようになります。
あるいはロボットを使って価値を生む仕組みを考えることで、人間が手を動かさなくても富を生み出すことが可能になるかもしれません。
テクノロジーの進歩に伴い、ロボットは多くの職を葬り去りますが、同時に、新しい職をつくり出したり、莫大な価値を生み出したりもするのです。
著者のロス氏は「全体としてロボットは恵みであり、人間をもっと生産的なことに向かわせてくれる」と説いています。
ただしそのためには、ロボットの浸透により予想される混乱に備えて、自分たちの職場や、社会・経済をつくりかえていかなければなりません。
個人としてできることしては、将来ロボットに置き換えられることが確実な分野のスキルを磨くことではなく、今の(やりたくもない)仕事をロボットやってくれるとしたら、自分はどんな仕事がしたいのか、あるいはロボットにその仕事を奪われるとしたら、自分には何ができるのかについて、真剣に考えてみることです。
まとめ
メタップスCEO・佐藤航陽さんの著書『未来に先回りする思考法』でも、未来を予測するためには、テクノロジーの現在地を知り、進化の行く先に目を向けることが大切であると語られています。
今回紹介した『未来化する社会』では、現在、世界で注目されている主要産業のテクノロジーについて、それぞれを章立てしてかなりのボリュームで語られています。
まだ多くの人が気づいていない10年後、20年後の未来を見据え、先回りして動くことは、ビジネスで成功を収めるためには必須の視点です。気になる方は、ぜひ手にとって読んでみてください。
モデルプロフィール
・名前 :吉田ももみ
・生年月日 :1995.09.21
・出身 :大阪府
・職業 :大学生
将来の夢 :IT×教育分野で起業、東南アジアでアパレルブランドを立ち上げる
・Twitter :@moo3oom_
・instagram :@moo3oom_
ご協力いただいたお店
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