こんにちは。40代会社員(エンジニア)のyabechonです。今回は、横山崇氏著『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』を読みましたので、ご紹介します。
最近、「Society5.0」「Industorie4.0」のような言い方が流行ってますね。これらは、これからやってくる社会変化に対応する「世代」の呼称です。少し異なりますが、「5G」も「第5世代通信」ということで同じ部類です。
この文脈から、本書『自己紹介2.0』もこれまでとは違う、新しい世代の自己紹介について書かれているんだろうな、と想像できます。
では、新時代の自己紹介とはどのようなものなのでしょうか。以下は、これまでよく聞いてきた典型的な自己紹介です。
「こんにちは。僕の名前は〇〇です。現在、●●という仕事をしております。これまで十年程●●に携わり、□□の重要性を肌で感じてきました。これからは自分の経験を活かし、△△が実現できる仕事をやろうと思っています。みなさん、どうぞよろしくお願いします。」
著者によると、このような自己紹介では、これからの社会で価値を創造していくことは難しいそうです。
本書は5章立てとなっており、全章、自己紹介力をアップさせるとても価値あることが書かれています。少し長いですが、章ごとにyabechon流の一言タイトルをつけて紹介していきます。
【第1章】自己紹介2.0の背景
〜社会の4つの変化〜
なぜ自己紹介をアップデートしなければならないのか、それは世の中が「組織の時代」から「個の時代」になりつつあるからです。
具体的には、以下の4つの社会変化が起きていることが、自己紹介をアップデートすべき理由として挙げられています。
- 組織構造が変わる。
- 企業価値が変わる。
- 働き方と学び方が変わる。
- 求められるスキルが変わる。
変化①:組織構造が変わる。
これは、
- 「ピラミッド型」組織から「プロジェクト型」組織へ
- 「役職思考」から「役割思考」へ
- 「重」から「軽」へ
という変化です。表で対比すると次のようになります。
ピラミッド型組織 | プロジェクト型組織 | |
---|---|---|
組織構造 | 垂直統合型 | 水平分業型 |
指揮系統 | 上意下達 | メンバーによる共創性 |
組織内力関係 | 年功序列。 役職重視。 |
フラット。 役割(ミッション)重視。 |
意思決定スピードや動き | 遅い/重い | 早い/軽い |
メンバー | 画一性 | 多様性 |
「ピラミッド型組織」と「プロジェクト型組織」、どちらも一長一短ありますが、昨今は「プロジェクト型組織」の方に注目が集まっているそうです。それはプロジェクト型組織が「新しい価値を生み出す」という点に重きが置かれているからです。
まったく違う価値観や視点をもった人間同士が集まることで、多様性が生まれ、イノベーションや新アイデアをもたらしやすくなります。そのためプロジェクトごとに集められるメンバーが変わり、組織が自在に変化する「プロジェクト型」の方が、イノベーションが生まれる可能性が高くなると言えるのです。
また著者は、自己紹介の際に「役職」ではなく「役割」を伝えよ、とも言っています。これは、役職(権威)は外に出たら何の役にも立たないのに対し、役割は「自分の貢献できることは何か」という視点をもつことで外との接点が生まれるからです。
変化②:企業価値が変わる。
今、世界の先端企業の経営戦略やブランディングの軸足が「プロフィット(利益)」から「パーパス(目的)」へと変化していると言われています。
従来のように事業利益ばかりを追い求めるのではなく、事業の目的や存在意義も大切にしていこうということです。
本書に掲載されている「ミレニアル世代の仕事に対する動機付け要因」の結果を見ると、トップは「社会やコミュニティに対する影響力」で、ワースト1位は「金銭的な報酬」になっています。
ミレニアル世代にとっては、すでに仕事への動機付けに金銭の占める割合は少なくなっており、パーパスを重視する人が増えているのです。
これは自分自身も、仕事に対する目的意識や価値観、職場での存在意義について、改めて考え直さなければならないと感じました。
変化③:働き方と学び方が変わる。
人生100年時代と言われる一方、会社寿命は30年と言われています。
「教育⇨仕事⇨老後」と、人生を3段階で考えた場合、必然的に仕事の期間が長くなるため、老後に入る前に会社が倒れてしまうということが起こり得ます。
つまりこれからは、「マルチステージ」や「マルチキャリア」が当たり前になるということです。とすれば、当然社会人としての学び直し、新たなスキル習得も必要となります。
近い将来、知識も人材も1つの場所やキャリアにとどまらず、「スラッシュ・キャリア」という、いくつもの顔を持って活動する人が増えてくると言われています。
変化④:求められるスキルが変わる。
ここでは、「BTC型人材」「T型人材」「H型人材」といった、いくつかの人材モデルが出てきます。詳細な説明は検索していただくとして、簡潔にいうと「今までのキャリアのように、1つの領域に特化していればよい、というのではなく、2つ以上の領域に精通している人材が希少性を発揮する」ということです。
これは「自立していく」ことでもあります。では、自立とは何でしょうか。ここでは、yabechonが非常に感銘を受けた文章がありましたので、そのまま掲載します。
東日本大震災のとき、エレベーターが止まり、5階の職場から逃げ遅れてしまいました。そのとき、ほかの人は「はしごを使う」「階段を下りる」など、逃げる手段としての依存先が複数あることに気付いたのです。一般的に、健常者は何にも頼らずに自立し、障害者はいろいろなものに頼って生きている、と考えられています。けれどその考え方は、選択肢(依存先)の数に起因しているのではないかと考えたのです。
私たちは「自立」の対義語を「依存」だと、考えがちです。自立という言葉を聞くと、「人に頼らず1人でやること」と思い込んでいます。しかしそうではありません。「依存先(選択肢)が少ないのが障害者の本質」であり、「自立とは依存先を増やすこと」です。
これは、新生児仮死の後遺症で脳性まひになり、以後、車いす生活を続けられ東日本大震災を経験した小児科医で作家の熊谷晋一郎さんの言葉です。
いかがでしょうか。「自立=依存しない」と考えがちですが、実はその反対で、「依存先(選択肢)を増やす」ことなのです。
つまり、何かあった時に信頼し合えるような、共創し合えるような、個と個の繋がりを増やし保つことがこれからは必要なのだと、yabechonは感じました。
【第2章】信用よりも信頼を
〜相手の期待を生み出そう〜
自己紹介の最大のミッションは、「良好な信頼関係を築き上げること」だと横山さんは言います。
ここで唐突ですが、質問させてください。あなたは「信用」と「信頼」の違いが分かるでしょうか? あるいは、その違いを意識してこれまで使ってきたでしょうか?(yabechonはこれまで使い分けていませんでしたが、本書を読んではじめて、その違いをイメージできるようになりました)
それでは、しばし、お考えください。
Thinking Time!!
さて、ご自分なりの答えは出ましたか?
本書では、こう書かれています。
- 「信用」…物理的な評価や判断。
- 「信頼」…右脳的で感覚的な曖昧さを含んだ関わり合い。
どうでしょうか。ピンときましたか? 本書を読み進めれば、理解できるようになりますが、この時点ではピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。もう少し具体的なシチュエーションを想定して、yabechon流に解説してみます。
例)上司が部下に抱く思いによる違い
- 「信用」:部下の過去の実績を買う
- 「信頼」:部下の未来への期待
→部下がこれまで仕事(報連相、仕事の手順/プロセスなど)をミスなくやっている実績があれば、上司は部下を「信用」する。
→部下を信用している上で、ある意味丸投げで仕事を任せても、期待以上の成果を残してくれると「信頼」する。
いかがでしょうか。少しでも分かり易くなった、と感じていただけたら幸いです。
本書では「信用」と「信頼」の違いについて、「名刺交換」と「自己紹介」というキーワードで解説しています。
- 「名刺交換」=「信用」の確認
→過去に基づいた自分を用いて、記憶してもらうことに注力。 - 「自己紹介」=「信頼」の創造
→自分と相手の未来を見据えて、自分に期待してもらうことに注力。
このように「名刺交換」と「自己紹介」とはまったく異なるものだそうです。これまで、名刺交換も自己紹介だと思っていたyabechonの考えは大きく否定されました。
上記の通り、「自己紹介」には「相手の期待を得る」という目的があって、それを達成するための手段なのです。
経営学者のピーター・F・ドラッガーは「コミュニケーションは期待である」と述べています。横山さんはそれを引用し、
期待こそがすべてのコミュニケーションの源泉なら、コミュニケーションの”はじまり”である自己紹介においても「期待を生み出せるか」どうかが明暗を分ける
と述べています。
相手の期待を得る方法とは?
では、相手の期待を得るためにはどうすればいいのでしょうか? ここでは、「AIMAS(アイマス)モデル」という自己紹介を5つのフェーズに区切ったツールが紹介されていますが、詳細は割愛し(ぜひ本著を手にとって読んでみてください)、3つの事例だけご紹介します。
- 事例1)相手に「心地よいノイズ」を与えよ
- 事例2)期待を生み出す「ギフト」で心をつかめ
- 事例3)「お願いごと」で人間関係を強化せよ
→相手の興味をそそるような、相手が思わず質問をしたくなるようなポイントを入れた「対話型」自己紹介。
→相手の琴線に触れるポイント(ギフト)を持ち、「期待のマネジメント」の主導権を握る自己紹介。
→人間関係は、恩の「貸し借り」で成り立っていることに注目し、よい貸し借りをしながら大きなコラボレーションへと発展させていく自己紹介。
とにかく、自己紹介は「信頼」を得て、自分に期待させるための手段であることを、心に刻んでおこうと思います。
【第3章】自己紹介の最強型で
相手との未来を創造せよ!
この章が本書の本丸です。自己紹介の「最強の型」について、「最弱の型」と比較しながら解説されています。
ここは事例を出した方が早いので、本書の具体例をそのままご紹介します。
はじめまして。わたしはマッサージ師の〇〇と申します。横浜にある小さな店で、10年ぐらい勤めています。将来的に、これまでのスキルを活かして、全国展開のマッサージ店の起業を視野に入れています
はじめまして。〇〇と申します。わたしは一瞬で相手のどこが疲れているかを見抜くことができます。なぜなら、マッサージ師として、この10年間で1万人以上の身体をほぐしてきたからです。もしよければ、ちょっと肩を診させてもらえませんか?
あなたはどちらの方に興味をそそられましたか? どちらのマッサージ師に診てもらいたいと思いましたか?
多くの人が「B」と答えると思います。横山さんによれば、Aが「最弱の型」、Bが「最強の型」だそうです。
2つの違いは何でしょうか? それは、話している内容の時系列の違いです。
- Aさん:現在 → 過去 → 未来
- Bさん:未来 → 過去 → 現在
Aさんは現在から話し始めているのに対し、Bさんは未来から話し始めています。相手との「未来」で「提供できる価値」を伝えることで、自分に期待してもらう自己紹介となっています。
Bさんのように「未来」から語ることができるかどうかが、最強の自己紹介への第一歩だと横山さんは説いています。
ここで、yabechonにとって「相手との未来」や「提供できる価値」とは何なのだろう…と思い、考えてみたのですが、ひとしきり考えたもののよい答えは浮かんできませんでした。
これを語るのはなかなか難しいぞ。これがこのページを読んだ時点でのyabechonの感覚でした。
しかし、この感覚はいい意味で裏切られました。
「未来は不確定ゆえに、未来を語ることや未来そのものに正解はない」「未来とは自分の信念」ーーこれが横山さんの回答です。
今すぐに思い浮かばなくても、以下のように考えることで、自己紹介2.0の型を手に入れることができるでしょう。
- 「未来」:I Believe that…
→「私はどんな未来をつくりたいのか。どんな信念をもっているのか。それはなぜなのか」 - 「過去」:I Make that…/I Change that…
→「その根拠は何か。今までどんな実績を残してきたのか」 - 「現在」:I Help that…
→「未来に向かうためには私はあなたに何を提供できるだろうか」
肩書きや所属に縛られずに、相手との「未来」で「提供できる価値」を語るーーこれが「自己紹介2.0」の醍醐味だと、横山さんは言います。
【第4章】自己紹介に深みを加える7つ道具
で自らを理解しよう
自己紹介をするためには、まず自分で自分を知る必要があります。本書ではそのためのツールとして、以下の7つの道具(ツール)が挙げられています。
- 自己分析シート
- 氏名の意味づけ
- ブランドイメージ
- 人生はドーナツ(マンダラート)
- キャリア・アルゴリズム
- 自分のハッシュタグ
- 仕事の意味を再定義(Whyステートメント)
詳細が気になる方は、ぜひ本書をチェックしてください。
【第5章】個の越境で新時代のイノベーションを創造せよ
最終章では、自己紹介2.0を使ってどのようにイノベーションを起こすべきかについて述べられています。
ここでのキーワードは「越境」です。現在は、個人の力で企業や社会といった大きな力を動かすことも、大きな力が個人の力に頼ることもできる時代です。
個の越境こそがイノベーションのカギであり、仲良しクラブでは価値は生まれないと横山さんは断言しています。
また、山口周さんの書籍を引用し、コモディティ化されてしまう「What(何をやるか)」ではなく、コモディティ化されない「Who(誰とやるか)」や「Why(なぜやるか)」を主体にした方法が注目されていると述べています。
うむ。エンジニアとして、製品のコモディティ化が進み、価格競争に陥った市場を肌で感じているyabechonにとっては耳の痛い言葉です。
よいアイデアがあっても、ヒトがいなければ実現できない。だからこそ、「自己紹介2.0」によって「期待」を生み出し、個の越境によってイノベーションを創造していくことが重要なんだ、とyabechonは解釈しました。
まとめ
少し長くなってしまいました。本書は、自己紹介と向き合う良い機会を与えてくれる、手元に置いておきたいと思える一冊でした。
自己紹介にも型があり、その型さえマスターしてしまえば、TPOに合わせて少しだけ肉付けすることで使い回せると感じました。これは、口下手なyabechonにとっては最強のツールとなるでしょう。
自己紹介とは、誰もが何らかの場面で経験するものです。
自分の自己紹介にしっくりきていない方、自己紹介がそもそも苦手な方、自己分析をしてみたい方、過去の自分を振り返ってキャリアを見つめ直してみたい方、その他、学生や多くのビジネスパーソンにとって、有益な一冊になること間違いなしです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。