こんにちは、ノイエです。
今回は、輝きベビーアカデミー代表・伊藤美佳さんの『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』という本を読んでみました。
わたし自身、4歳の娘と2歳の息子を育てる2児の母であるため、子どもの才能を伸ばすためには、幼い頃にどのような接し方をするべきなのか、非常に気になっていました。
この本で一番大切であると掲げられているのは、「親は子どもの能力を引き出す存在」であるという点です。
本書のテーマである「モンテッソーリ教育」とは、イタリア初の女性医師であるマリア・モンテッソーリにより提唱されたもので、その根本には次のような考え方が流れていると言います。
「親は子どものそばに寄り添い、見守る存在でいることが大事。決して手を貸したり、世話を焼いたりする存在ではなく、子どもの能力を引き出す存在である」
「子どもの自立心を養う」ことがモンテッソーリ教育の特徴であり、自分の頭で考え、自分で人生を選択できるように育てるという方針なのです。
そのためには、赤ちゃんの頃から好きなことに夢中になれる環境をつくってあげることで、自らの才能を存分に発揮して、何かをやりきったという成功経験をさせてあげることが重要だと言います。そうして自信を培っていくと自己肯定感が高まり、人生でつまずくことがあっても、すぐに立ち直り、新しいことのチャレンジしていくことができるようになるからです。
伊藤さんは、これまで1万5,000人以上の乳幼児を教え、9,000組の親子と接してきた経験から、群を抜いて成績の良い子、スポーツで素晴らしい実績を出す子、大人になって仕事で活躍する子というのは、親から抑圧されず、自分の意志を尊重してもらった経験があると指摘します。
そのためモンテッソーリ教育を実践している幼稚園では、通常の幼稚園のように「あれをしましょう」「これをしてはいけません」と先生に決められることがなく、子どもたちを自由にさせる環境が整っているそうです。
今回は、モンテッソーリ教育の考え方に加えて、具体的な才能の伸ばし方として、ハーバード式の「多重知能理論」を応用した育児方法についてご紹介します。
モンテッソーリ教育の考え方
教育熱心な親ほど、「この月齢では、ここまでできないといけない」「他の子よりも先取りして覚えさせたい」のように、つい子どもの発達段階を二の次にして何かをやらせようとしてしますよね。
わたし自身、子どものために、良かれと思って、4歳の娘にひらがなの練習をするように言ったり、2歳の息子におまるにまたがるよう促したりしていました。
しかしモンテッソーリ教育では、本能的に子どもが伸ばしたいと思っている能力を思う存分発揮できるように、親が環境を作ってあげることが大切だという考え方です。
子どもは自分の能力をわかっているので、いま必要なことだと思えば、自分から積極的に手を出しますし、逆に「いまではない」と判断したものには、関心を示さないと伊藤さんは言います。
実際、子どもに何かをやらせようとしても、たいてい言うことを聞かずに、別の遊びを始めてしまうんですよね。
伊藤さんによると、「人間は発達に応じて、必要な能力を順々に身につけていくようにプログラミングされて生まれてくる」ため、それぞれを身につけるための旬な時期に、その能力を身につけるための環境を与えてあげることが大切なのだそうです。
子どもの成長過程にある「この時期に、この能力が発達する」という旬の時期のことを、モンテッソーリ教育では、「敏感期」と呼んでいます。
年齢的には6歳までが敏感期とされ、特に将来の人格や人生の土台となるような発達の敏感期は、3歳までに最も強くあらわれるといわれています。赤ちゃんは、敏感期にさまざまな遊びを通じて、体の動かし方や人とのコミュニケーション能力を学んでいくのです。
では、親として敏感期にはどのように接するのがよいのでしょうか。本書では、敏感期に伸びる代表的な能力として「運動」「感覚」「言語」の3つを挙げています。
「運動」の敏感期
たとえば赤ちゃんは、手足をばたつかせたり、しきりにて指を動かしたりするなど、誕生した瞬間から「運動」を学んでいきます。運動の敏感期は0歳から6歳まで続き、この時期に適切な運動をさせてあげることで、筋力や体幹を鍛えることができ、運動能力が発達しやすくなるといいます。
「感覚」の敏感期
「感覚」の敏感期に、五感を通じてさまざまな経験をした子は、感受性が豊かで、表現力のある大人へと成長していくそうです。
たとえば6色や12色ではなく、24色のクレヨンを与えることで、色彩豊かな絵を描けるようになったり、美術館に行って色彩豊かな芸術に触れさせたりすることで、子どもの「視覚」の才能を引き出すことにつながるといいます。
また小さい頃からクラシックのような質の高い音楽を聴かせることで、「聴覚」が発達しやすく、音楽の才能を引き出したり、言語を聞き分ける能力が高くなったりするそうです。
「言語」の敏感期
「言語」の敏感期は、0歳から3歳にあらわれる「言葉を話したくてしかたない時期」のことです。この時期に、親が積極的に話しかけている赤ちゃんは、言語を早く話せるようになり、理解が早い傾向にあるといいます。
ちなみに「◯◯でちゅね〜」のような赤ちゃん言葉よりも、大人が使う言葉を使ったほうが、言葉の理解が早くなるそうです。
旬の時期がいかに重要な時期かを痛感させられます。親の大事な役割は、旬の時期に必要な環境を用意することなんですね。
わたしも、育児書などを読みながら、今この子の月齢だと次はこれ、次はあれと、ついつい先回りして、オモチャを与えたり、遊び方を誘導したものでしたが、この本を読んで、子どもの遊びは子どもの本能に任せればよかったんだな、と思い返しました。
「9つの知能」で子どもの能力をとらえる
モンテッソーリ教育に加えて、伊藤さんが多数のベビースクールや保育園を運営するにあたって重視しているのが「多重知能理論」です。
多重知能理論は、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱しているもので「個人によって、長所や短所は異なり、人によってある知能が高かったり、ある知能が低かったりする」という考え方です。
「知能」というと「IQ(知能指数)」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、たとえば将棋の藤井聡太さんや野球の大谷翔平選手は、ともにすぐれた能力を発揮しているものの、2人をIQというひとつのモノサシで比較することはできませんよね。
子どもの能力は、ひとつの側面だけではなく、多角的な視点からとらえ、伸ばしてあげる必要があるのです。
「多重知能理論」では、言語的知能、論理数学的知能、音楽的知能など、人が持つ「8つの知能」をモノサシにしていますが、伊藤さんはこの理論をベースにして日本人向けにアレンジし、独自に1つの知能をプラスした「9つの知能」を構築しています。
どんな人でも生まれてきたときから、以下の9つの知能を備えており、特定の知能が傑出するのは、それらの知能が磨かれやすい環境だったからといいます。
- 体
- 言葉
- 数
- 絵
- 自然
- 感覚
- 音楽
- 自分
- 人
多重知能理論がすばらしいのは、子どもが潜在的に持っているけれど、まわりの大人が気づいていない能力を「見える化」させられる点です。
たとえば子どものイタズラや一見理解しがたい行動について、9つの視点から観察すると、「この子は、今こういう才能を伸ばそうとしているんだ」と考えられるようになり、子どもと過ごす時間を積極的に楽しめるようになるといいます。
では、9つの知能の概要について、1つずつ見ていきましょう。
①体の知能-運動神経のいい子を育てるには?
「体」の知能を育てるには、身体の発達段階に合わせて、その時期に必要な運動や動作をさせることが必要です。
「うちの子は、他の子よりも歩き始めるのが遅い」などと成長の速度を心配する親は少なくありませんが、成長のスピードを気にし過ぎてはいけません。体の成長プロセスを考えれば、必ずしも速く歩かせることがプラスになるとはかぎらないのです。
②「言葉」の知能-表現力に優れた子を育てるには?
乳幼児期は、音を聞き分ける能力に長けているため、「まだ言葉がわからないから」と決めつけるのではなく、積極的に話しかけることが大切です。小さい頃から言葉をインプットする機会に恵まれていると、それらが結びつき、ある日、突然言葉を話したり、読めたりするようになり、みるみる言語能力が発達していくと言います。
またインプットと同じくらいアウトプット(話す、読む)することも大事です。アウトプットがなかなかうまくいかないときは、子どもが興味のあることと関連づけて教えてあげたり、外に出かけていろいろと経験させることによって、インプットされた知識を現実のものに結びつけ、アウトプットしやすくしてあげたり、インプットと同時にアウトプットできる環境をつくってあげることが大切です。
③「数」の知能-ロジカルな子を育てるには?
1、2、3(イチ、ニ、サン)と口に出して数えるだけでは、本当の意味で数の概念を理解することはできないそうです。「数」を数えるには①数唱(イチ、ニ、サンという呼び方)、②数量(具体的な現実)、③数詞(1、2、3という数字そのもの)の3拍子をそろえることが大切なのです。
たとえば、どんぐりの実物や絵を見せると同時に、数字を見せながら「どんぐりがイチ、ニ、サン」と発音するのがいちばん効果的だそうです。
④「絵」の知能-クリエイティブな子を育てるには?
空間認識力を伸ばすには、積み木や折り紙などが最適だといいます。さまざまな形の積み木を手でつかみ、積み上げていくことによって立体でとらえる能力が培われます。また折り紙も、紙という平面から立体のものをつくりあげていく過程で、空間認識力が高まっていきます。
「絵」の知能を伸ばすには、美術館などで一流の絵画作品やデザイン、彫刻などに触れることです。色づかいや構図、線の強弱などを実際に目にすることによって、子どもは大人がびっくりするほどたくさんのことを吸収していくといいます。
⑤「自然」の知能-「感じる心」が豊かな子を育てるには?
「自然」の知能とは、自然や人工物の種類を識別する能力のことです。子どもは好奇心旺盛なので、自然の小さな変化や違いにもよく気づきます。
実際に、自然を五感で楽しみ、じっくりと観察することで、子ども達はさまざまな発見をし、刺激を受けます。そうした体験を積み重ねることによって、「感じる心」が磨かれていきます。
⑥「感覚」の知能-センスのある子を育てるには?
伊藤さんは自らの経験から、五感でさまざまなことを感じ取る体験をしてきた子どもほど、センスがよく、表現力が豊かな大人に成長する傾向があるといいます。「あの人は何をするにもセンスがあるよね」と評される人は、乳幼児期から五感をフルに使う経験を積み重ねてきているからこそ、まわりが一目置くような選択ができるのです。
また「感覚」の能力が秀でている人は、人の気持ちの変化にも気づきやすく、コミュニケーション力が高いという特徴も見られます。
美しい絵や音楽に触れさせてあげたり、できるかぎり自然に近い味を食べさせてあげたり、いろいろな花や植物の匂いを嗅がせてあげたり、触らせてあげたりして、幼い頃から五感を使う経験をさせてあげることが大切です。
⑦「音楽」の知能-リズム感のある子を育てるには?
「音痴」になるのは乳幼児の経験が関係しているそうです。赤ちゃんの頃からさまざまな音楽を聴いていた人は、リズム感が身についているので、大人になってからも歌ったり、演奏したり、踊ったりすることが得意になります。
朝は落ち着いたクラシックの曲を流し、片付けや掃除をしているときはポップな音楽を流すというように、生活に音楽を取り入れるだけでも身近な存在になるそうです。
⑧「人」の知能-コミュニケーション能力の高い子を育てるには?
小さい頃から他人と関わる経験を重ねてきた子どもは、コミュニケーション能力が高いので、大きくなってからも人間関係でトラブルを抱えることが少なくなります。
「人」の知能を伸ばすのであれば、乳幼児期からさまざまな年代の人が集まる場に参加して、同年代の子どもだけでなく、さまざまな年代の人とコミュニケーションする機会をたくさん持つことが大切です。
⑨「自分」の知能-目標達成力が高い子を育てるには?
「自分」の知能は、自分自身の長所や短所などを理解したうえで、目標達成や動機付けなどを自律的に行う能力です。この知能が発達している人は、いわゆる「妄想タイプ」が多く、人の話を聞かずに、頭の中で深く考え、妄想が膨らんでいくため、「問題児」と誤解されることもあるようです。
特に、起業家は、この「自分」の知能が突出しているタイプが多いとされます。内省的によく考えているので、自分自身を客観的に理解することができ、自分の気持ちをきちんと表現できるのです。
まとめ
以上、「9つの知能」の概要を説明しました。乳幼児期は特定の能力だけではなく、バランスよく9つの知能を育てた方がよいようです。
複数の知能を育てるような遊びや体験をすることによって、応用力を身につけることができるため、大きくなったとき、どんな環境にも対応できる「土台」できあがります。
本書には、今回ご紹介した以外の、才能を伸ばす上で必要な「フロー状態」、子どもの能力を引き出す8つの心得、「9つの知能」それぞれを伸ばしていくための具体的なアクティビティについてなど、情報が盛りだくさんです。
子育てする上でたくさんの「気づき」が得られる一冊なので、乳幼児のお子さんがいる親御さんにぜひ手に取ってみてください。