意志力を磨いて人生を変える一冊。
自分を成長させるため、人は目標を掲げてその達成に邁進します。しかしその多くは道半ばで挫折して、そんな自分を「意志力が弱い人間」だと結論づけてしまいます。
こうした「思い込み」が成功を妨げ不要なストレスを生むとして、これまで抽象的な概念として見られていた「意志力」を鍛えるための方法を「科学的」かつ「実践的」に導き出してくれるのが本書、60万部突破のベストセラー『スタンフォードの自分を変える教室』です。
受講者の97%に影響を与えたというスタンフォード大学の一流講師による「奇跡の授業」を日本語で、それもわずか1,800円程度で受けられるだけでも本書は買う価値がありますが、そこで検証されている意志力を高める方法は、どれも説得力があり効果が期待できそうなものばかり。
今回は、本書の中から大きく2つ「10分待つ」と「未来の自分を身近に感じる」という方法について、なぜ有益なのか、どのように実践すればよいのかを紹介します。
なぜ人は目標を立てても挫折してしまうのか?
目標を立てても途中で挫折してしまう原因の多くは、「目先の利益」を優先してしまうことにあります。
ダイエットして健康的な身体を手に入れたい、それによって異性にモテたいと考えていても、目の前にごちそうが出されれば我慢できずに食べてしまったり、将来の収入を高めるためにスキルアップの勉強をしようと考えていても、友達から飲みに誘われたら断れずに受けてしまったり。
人間はそれがいかに不合理な選択かわかっていても、すぐに手に入る一瞬の満足のために、自分たちが本当に望んでいるものを自ら放棄してしまう傾向があります。
その原因の一つが「遅延による価値割引」の影響によるものです。これは「報酬を得るために長く待たなければならないほど、その報酬の価値は下がってしまう」というもの。つまり目標を達成した先の「将来の幸福」よりも、目先の満足や快楽を満たすことの方が価値が高く感じてしまうため、すぐにそれを手に入れようとしてしまうのです。
逆に言えば、今ものすごく欲しがっているものであっても、意図的に先延ばしにすることでその欲求を抑えることもできます。
1.「10分待つ」
いま自分が欲しているものを「10分待つ」。たったこれだけで、報酬に対する脳の受けとめ方は大きく変わると言います。脳はそれを「先の報酬」として解釈するため、報酬への期待がそれほど起こらなくなり、目先の快楽に飛びつくのに必要な「強烈な生物学的反応」が起きなくなるのです。目先の快楽といっても、本当に「すぐに」味わえるものでなければ、脳を乗っ取ってあなたの優先順位を覆すことまではできないのです。
ポイントは「もし10分経ってもまだ欲しければ手に入れても構わない」というルールにしてしまうこと。
一見「10分我慢しただけで手にしても良いのなら結果は変わらないのでは?」と思われがちですが、頭ごなしに「ダメ」とはねつけるよりも、ストレスが和らぎ自制心を発揮しやすくなると言います。ただし、10分待っている間には「誘惑に打ち勝った先に待っている長期的な報酬」を思い描くことが重要です。
また、誘惑になるものとは物理的に距離を置いたり、見ないようにすることでより効果を高めることができます。
禁煙や食事制限のような「やめる力」ではなく、トレーニングや勉強のような「やる力」に関する意志力の場合は、「10分経ったらやめてもよい」のような逆のルールにします。たとえ10分でやめるつもりであっても、一旦やり始めるとたいていは続けたくなるものだからです。
本書では禁煙を願う被験者が、次のようにルールをレベルアップしていったことで、タバコの量を減らすことができたのはもちろん、自制心も強くなっていったと紹介されています。
- 「10分後であればタバコを吸ってもいい」というルールをしばらく続ける。
- 「10分待っているあいだにタバコを吸えない場所に移動する」ようにする。
- 「最初の10分を我慢できたら、もう10分我慢して、それでもまだ吸いたいと思ったら吸ってもよい」ことにする。
このように、段階的に必要な意志力が大きいミッションに高めていくことで、次第に自制心も高まっていきます。これは禁煙に限らず、あらゆる意志力が必要な物事に応用できるでしょう。
2.「将来の自分を身近に感じる」
ほとんどの人は「未来の自分」を過大評価しています。未来の自分は常に現在の自分よりも時間もエネルギーもあって、意志力が強く、「今の自分」にはできないことでもできるはずだと思い込んでしまいます。
たいていはその未来が実際に訪れると、理想の自分などどこにも見当たらず、いつもの自分が決断を迫られることになり、さらにその先の自分へと先送りされていきます。このように未来の自分に重荷を負わせた結果、あとで後悔した経験は多くの人にとって一度や二度じゃないでしょう。
これを回避するには、将来の自分を身近に感じるようにすることが効果的と言います。将来の自分とのつながりが強くなると、「いま」できる限りの最高の自分になろうという意欲が湧いてくるためです。
では、将来の自分を身近に感じるにはどうすればいいのか。本書では「未来の記憶を作る」「将来の自分にメッセージを送る」などの方法が紹介されています。
前者は頭のなかで将来のことを思い描くことで、現在の選択が将来に及ぼす影響を具体的に考えやすくなり、欲求の充足を遅らせる効果があるというもの。「ただ将来のことを考えるだけ」でも効果があると言います。
後者は「フューチャー・ミー」などのサービスを使って、長期的な目標の達成に向けていま自分がしようと思っていることを、将来の自分に送ってみるというものです。
このように将来の自分をできるだけリアルに感じられたり、つながりが強くなったと感じられると、将来の自分が後悔しないような意思決定ができるようになるのです。
まとめ
オバマ大統領が禁煙に失敗していると言われるように、きわめて優れた自制心を持っているはずの人物であっても「意志力の問題」に悩まされています。これは個人の能力不足の問題ではなく、人間は誰でも誘惑や依存症に苦しんだり、物事を先延ばしにしたりしてしまう生き物だということです。
本書の冒頭にあるように、自己コントロールを強化するために最も基本となるのは、「自分がどのように、そしてなぜ自制心を失ってしまうのか」を理解することです。
「どういうときに、どういう場所で、どうして失敗するのか」について自覚的になり、自分自身でちゃんと分析してみましょう。そうして自分の選択を意識するようになると、いい加減な選択の数が減っていき、意志力は確実にアップしていくと言います。是非実践してみてください。
モデルプロフィール
・名前 :坪井安奈
・生年月日 :1988.11.3
・出身 :滋賀県
・職業 :OLタレント
・やってみたい仕事:(どんなモブキャラでもいいので)アニメ『咲-Saki-』の声優
・Twitter:@anchuuuuuuu
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