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- アップルやグーグルなどの欧米企業に日本市場が席巻されているのは、日本企業の経営に「デザイン」の視点が足りていないから。
- 表層的な意匠だけではなく、商品・サービス開発の全てのプロセスを、企画段階から一気通貫して設計、計画することが重要。
- 「なぜその商品を作るのか?」という根本的な問いから始めて、企業の長期的な戦略や哲学、思想を具現化することを目指そう。
なぜデザインの視点が求められているのか?
日本経済の停滞が叫ばれて久しいですが、依然として抜本的な解決の見通しは立っていません。
アップルやグーグル、ダイソンのような欧米企業の革新的な商品に市場を席巻され、衰退の一途を辿っているように見える日本企業に、いま必要なものとは何でしょうか。
この点について、「デザインの視点」を経営の根幹に据える必要性を説くのが本書、『デザインマネジメント』です。
なぜなら、これら欧米企業の商品と日本企業の商品との間の、「言葉ではなかなか説明できない決定的な違い」を生む本質的な要因こそ「デザインの視点」にあるからです。
今回は、「デザインマネジメント」とはどのようなものなのか、その必要性と考え方について紹介します。
“デザイン”は色や形だけを指すものではない。
「デザイン」というと、美術学校や専門学校で学んだ人が色や形のような外観を作り込むもの、とイメージする人が多いかもしれません。
しかし意匠表現は「デザイン」のほんの一部に過ぎず、本来そこには「設計、計画、構造的仕組み」といった複合的な意味が含まれています。
経営の根幹にデザインの視点を据えるというのは、「プロジェクト全体を設計、計画して戦略的にマネジメントする」ということなのです。
経営者の中には、「私はデザインが分からないので」「私には感性がないので」と一歩引いた立場からデザインに接し、デザイナーに丸投げしてしまう人も多いでしょう。しかし、それは狭義のデザイン(色や形といった表層的な意匠)でしか捉えられていない証拠です。
意匠に限ればデザイナーの腕次第でカッコいいモノはできるかもしれませんが、それでは一過性の効果しか得られず、企業の根本的な課題を解決することにはなりません。
物質的に豊かな現代では、デザインが優れていることはもはや当たり前となっており、それだけではその企業の商品を継続的に購入する理由にはならないからです。
現代の人々がもつ「物では決して満たすことのできない欲求」に応えるには、「ロジカルな思考はそのままに、驚きや感動、喜びといった感性的なアプローチ」ーつまりデザインマネジメントが必要なのです。
“なぜ作るのか?”から始めよう。
デザインマネジメントとは、先述の通り「デザインを経営の根幹に据えた経営手法」のことで、具体的には「商品・サービス開発の全てのプロセスを、企画段階から一気通貫して計画、設計すること」を言います。
そこではまず、プロジェクトの本質を明確にすることから始める必要があります。
本来、新商品とは「企業の長期的な戦略を具現化することを目的に作るべきもの」のはずですが、多くの企業は「なぜ作るのか?」「何を作るべきなのか?」を熟慮することなく、モノを作ること自体が目的となっています。
多くの人は、本質を探る前に、すぐに「何を(What)」「どのように(How)」という方法論を探ろうとする。しかしそれでは抜本的な解決には結びつかない。重要なのは方法論ではなく、「なぜ?」を自身に投げかけることで本質に触れ、正しく目標設定をすることなのだ。
ただでさえモノがあふれている時代、「メーカーだから毎月新商品を出さないといけない」と企業都合でモノを作っていても、消費者の期待に応える商品を生み出すことはできません。
「なぜ作るのか?」という根本的な問いに納得のいく答えが得られて初めて、そのプロジェクトをスタートする意義が生まれます。
デザインマネジメントによって得られる効果。
デザインマネジメントの効果の一つに、「ビジョンが明確になる」というのがあります。
「なぜこのプロジェクトデザインを行うのか?」「何ためにこのプロジェクトは立ち上げられなければならなかったのか?」のように「なぜ?」を突き詰めて本質に迫ると、企業のビジョンも明確になります。
また、それをチームで共有することで、一体感が高まるだけでなく、場当たり的な対応や唐突な方針変更を避けることができ、企業の戦略やビジョンに適ったモノづくりが可能になるのです。
「新商品を生み出すことがどのようにビジョンに結びつくか」というシナリオが明確であれば、それに沿って実行する全てのプロセスは、全社的に波及効果およびシナジーを与えることができます。
デザインマネジメントを実践すれば、経営理念の投影から始まり、エンドユーザーとの対話の仕方までを一貫した戦略として組み立てていくことが可能となる。
いまデザインに期待されていることは、意匠面でのスキルやテクニックのような短期的で対症療法的なソリューションではなく、「全体をまとめる編集能力」なのです。
では、具体的にどのような流れで一気通貫したマネジメントを行えばよいのでしょうか。
デザインマネジメントのプロセス。
デザインマネジメントがカバーできる範囲は、「経営の対象範囲全て」に及んでいます。
デザインは経営のごく一部分のみを担う機能ではなく、デザインと経営はほぼ全ての領域にわたって分ちがたく重なり合っているからです。
以下、各プロセスを一部要約して紹介します。
1. 組織・チームのデザイン
最初にデザインの対象となるのは組織・チームです。ミッションの設定や人選、付与する権限、どれくらいの時間軸でミッションの達成を求めるかなどをデザインします。一見、デザインと呼ぶべきではないと思われがちですが、それをデザインするという「創造的な意図」が大切なのです。
2. コンセプトのデザイン
ユーザーの観察やインタビューなどを通じてユーザー意識に自らをシンクロさせ、ユーザーインサイトを深耕していきます。どのようなコンセプトの商品を開発するのか、その商品を通じてどのような体験を提供し、ユーザーの生活にどのようなソリューションを提供したいのかを徹底的に考えます。
3. モノのデザイン
多くの場合に狭義のデザインとされている領域です。定めたコンセプトをモノの形やグラフィック、機能や質感などに落とし込んでいきます。ここで基本設計をそのまま具現化することの難しさに直面しますが、安易な割り切りに逃げ込むことなく、時間をかけ、ぶつかり合い、矛盾を止揚する解決策を探していくことが大切です。
4. ユーザー接点のデザイン
ユーザーがモノについての情報を耳にし、手の取るまでの全ての接点をデザインします。パッケージのグラフィックや質感、店頭などの売り場の世界観や接客スタイルにはじまり、マス媒体での露出の仕方のデザイン等、デザインすべき接点は多岐にわたります。それぞれの接点の間に不整合がないよう、途中で別のランナーにバトンを渡して丸投げすることなく、一気通貫してマネジメントする必要があります。
5. 体験・ソリューションのデザイン
コンセプト段階で設計されたユーザー体験・ソリューションを、あらゆるアプローチを通じて実際に具現化していきます。コンセプトが実現させているかを検証し、両者にズレがあればチューニングを繰り返し、モノが提供する体験・ソリューションを積み上げながら、最終的には、社会的課題への貢献にまでつなげていきます。
もちろん、実際のプロセスではこの流れで一方向に進行するわけではなく、何度も立ち戻ったりしながら、それぞれのプロセスを煮詰めていく必要があります。
このように、プロジェクトの徹頭徹尾全部を対象として、それらを一気通貫で統括することが「デザインマネジメント」なのです。
まとめ
あらゆる場面で「デザイン」が必要とされている今、『デザインマネジメント』は、経営者やデザイナーだけが学べばいいというものではありません。
どんな部門の所属であれ、目の前の仕事が「一気通貫のデザイン」のどの部分を担っているのか、自分の仕事は全社的に考えると戦略上どんな役割があるのかという視点をメンバー全員がもっていなければ、デザインマネジメントは実践できないからです。
全てのビジネスパーソンが、自らの仕事にデザインの視点をもって取り組むべきでしょう。
本書後半では、著者によるデザインマネジメントの実践事例について、非常に細かく解説されています。
デザインマネジメントの本質を理解し、その必要性を感じた方は、ぜひ具体的な実践方法も合わせて学んでみて下さい。
モデルプロフィール
・名前 :四方花林
・生年月日 :1990.1.10
・出身 :兵庫県
・職業 :フォトグラファー
・将来の夢 :宝塚や映画のポスターのアートディレクションと撮影を手がけること。仕事で世界を飛び回りたいです。
・ブログ :「花林カメラ」
・instagram :http://instagram.com/karinkamera
ご協力いただいたお店
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