文章が読みづらい・わかりづらいと言われたことはありませんか? 自分でも自覚しているけど、どうすれば読みやすく、わかりやすい文章になるのかわからない。
そんな方におすすめしたい本が『短いは正義─「60字1メッセージ」で結果が出る文章術』です。
本書では、とにかく「短く書く」ことが、読みやすい文章を書くための鉄則だと説いています。
著者はコピーライターの田口まこさん。コピーライターは、「短く書く」ことが求められる仕事です。なぜなら広告とは、読んでもらえない、見てもらえないことが前提だからです。
これはあなたの書いた文章にも当てはまります。あなたが”仕事のために書いた文章”には、読みたい人はいないと考えたほうがいいでしょう。
その上で、どうすれば「読まれる文章」になるのかを学ばなければなりません。読む気のない相手に向かって書くからこそ、創意工夫が必要となります。
その答えが、「一文を短く書く」ことです。
短く書くことを心がけるだけで、書くのが嫌い、上手く書けない、伝わらない……そんな悩みから解放されると田口さんは言います。
リモートワークが普及した今、これまで口頭で済ませていた連絡や報告も、すべて文章で伝えなければいけなくなりました。メールや企画書、商品資料など、書く仕事は増える一方です。しかも、読むのはスマホの小さな画面。
そんな時代に、短く書く技術は、誰もが身につけておきたい重要スキルです。
この記事では、本書で紹介されている「短く書く」ためのテクニックをご紹介します。
「短く書く」ための基本文字数
目指すは「一文60字」以内
”短く書く”ための鉄則とは、「一文60字以内」です。これさえ守れば、誰でもわかりやすい文章を書けるようになります。
シンプルで短い文は、メッセージをスムーズに伝えられ、書く読む双方の負担を減らします。
たとえばスマホの1行は、たいてい20〜30字。60字以内であれば、3行以内に収まり、読みやすく理解しやすい文章になります。
この記事も「一文60字以内(スマホで見た時に3行以内)」を意識して書きました。
もちろん、どうしても60字を超えてしまう場合もあるでしょう。それを絶対ダメだと言っているわけではありません。
大切なのは、「60」という文字数を意識しながら一文を短くすることです。
タイトル・見出しはさらに短く「20字以内」
企画書やウェブ記事などのタイトル・見出しについては、より短く「20字以内」を目指します。
本書では、20字以内のタイトルの例として、以下の雑誌の見出しを紹介しています。
- 「しなくていい」ダイエット(『サンデー毎日』 2021年7月4日号)13字
- 梅雨バテ夏バテは脳を冷やして解消(『AERA』 2021年6月28日号)16字
- 部屋に、美しい物、かわいいものを。(『&Premium』 2021年8月号)18字
- これか納品枚数なお人生が変わる 大人の目元革命(『美的GRAND』 2021年7月号)18字
広告のキャッチコピーはさらに短く、15字以内のものが多いそうです。広告を立ち止まってじっくりみる人はほぼいないため、数秒で読み切れる文字数にしているのです。
資料や企画書の見出し・タイトルも、じっくり読ませるものではありません。20字以内で、おもしろそう、なんだろうと、瞬時に興味をひくものを考えましょう。
文章ならワンセンテンス60字以内、タイトル・見出しなら20字以内。まずは、この基本文字数を覚えてください。
「短く書く」ための絶対ルール
「短く書く」ためには、以下の2つの絶対ルールを守ることです。
1.ワンセンテンス・ワンメッセージ
ワンセンテンスが長くなる最大の原因は、伝えたいメッセージをいくつも盛り込んでしまうことです。
一文が長く、読みづらいと感じる場合は、たいてい多数の情報が混在しています。
複数の要素を一文に盛り込むと、文章が長く複雑になり、結局どのメッセージも伝わらなくなります。
文章の基本は「一文一意」。ワンセンテンスで語るメッセージは一つに絞りましょう。
一文60字以内を目指すために、「ワンセンテンス・ワンメッセージ」を常に意識しましょう。これさえ守っていれば、読みやすく短い文が必ず書けます。(p.33)
①メッセージごとに文を小分けする
「Aであり、Bであり、Cでもある」のように、一文に複数の情報を詰め込むとわかりづらさが増します。
多くの情報を伝えなければならない場面でも、一文に1つずつ分けて書きましょう。
「Aです。Bです。Cです」のようにメッセージごとに小分けすると、それぞれの内容が瞬時に理解できます。
ただし、文末表現が重複すると、文章のリズムが悪くなるので注意が必要です。「体言止め」を挟んで文章のリズムを整えましょう。
「体言止め」とは、「です、ます」や「だ、である」で終わらず、文末に名詞や代名詞を持ってくること。体言止めを挟むと、文にリズムが出て、後ろの分への受け渡しがよりスムーズになります。
体言止めが続きすぎると、今度はぶっきらぼうな印象になり、文の流れが悪くなることもあります。ほどよく混ぜ込むことを心がけてください。
②「いらない情報」を見極める
「ワンセンテンス・ワンメッセージ」が身についたら、次は「文章全体のメッセージの取捨選択」をします。
いくらワンセンテスを短くしても、文章全体にメッセージが盛り込まれすぎていては、結局読み手に伝わりづらいままです。
少しくらい省いて伝えても、人はわかってくれるもの。書かなくても伝わる情報は、積極的に削っていきましょう。
といっても、頭の中で情報が散らかっている状態では、あれもこれも大事に思えて、すべて伝えなければと思いがちです。その結果、記憶に残っている順番に、情報をパラパラとつなぎ合わせて書いてしまいます。そうやって書いた文章は、たいていまとまりがなく、わかりにくい長文になります。
まずは全体の情報を整理することが大切です。情報を整理し、不要な情報を排除する。それだけで、詰め込みすぎてわかりづらい文章から脱することができます。
頭の中だけで文章を組み立てるのは大変な作業です。面倒に思えても、情報を箇条書きにしてアウトプットすることが勧められています。目の前に並べてみることで、必要な情報を選びやすくなります。
2.文の贅肉を徹底排除
ワンセンテンスが長くなるもう一つの要因は、「余分な言葉」です。
不要な言葉は文の贅肉。排除してスッキリさせなければいけません。
本書では、文につく贅肉のなかで、代表的なものを3つ紹介しています。これらを意識的に排除するだけで、あなたの文章は印象はガラリと変わるでしょう。
①“ていねい沼”に溺れない
余計な言葉の代表的なものが、「ていねいすぎる言葉」です。
相手に失礼があってはいけないと考え、「〜させていただき」「〜させていただけますと」をどこもかしこにもつける人っていますよね。
しかし、あまりに丁寧すぎる言い回しは文の流れを悪くし、いたずらに文字数を増やすだけ。読みづらく、わかりづらい文章になります。
もちろん「いただき」を使わなければならない場合もあります。しかし基本は「いただき」は削ったほうがわかりやすいと覚えておきましょう。
とくに、ワンセンテンスに複数の「いただき」があると分が長くなり、見た目から読みづらさを感じます。絶対やめましょう。
他にも、「〜してあげる」「〜してくれる」や、「〜のほう」など、 余計な言葉の代表的なものが紹介されています。
これらは、なくても問題なく意味が通る場合が多いので、意識的に排除して、文をスッキリさせましょう。
②クセワードの二台巨頭「という」「こと」
「という」と「こと」。この2つは、なぜか文章につけてしまう”いらない言葉”の筆頭です。
「という」は文を冗長にする上、ほとんどの場合で省いても意味が通じます。書いた文に「という」が出てきたら、試しに削ってみましょう。それで問題なく通じるなら、その「という」は必要ありません。
日程が変わったということを知りませんでした。
⇨日程が変わったことを知りませんでした。
リモートワークが増えているということもあり、部署内での連絡方法を変更したいと思います。
⇨リモートワークが増えていることもあり、部署内での連絡方法を変更します。
また「こと」は、何度も出てくると、回りくどく煩わしい文章になります。入れたほうがよいときもありますが、多くの場合、別のスマートな表現に言い換えられます。
日程が変わったことを知りませんでした。
→日程の変更を知りませんでした。
リモートワークが増えていることもあり、部署内での連絡方法を変更します。
→リモートワークの増加もあり、部署内での連絡方法を変更します。
「こと」抜きのほうが、断然スムーズでわかりやすい文章になっているのがわかるでしょう。よりスマートな表現になるよう、積極的に削っていきましょう。
③接続詞の9割はいらない
接続詞は、うまく使えば、読み手を迷子にさせない案内板の役割を果たします。
しかし多すぎると流れを遮り、読みにくい文章となってしまいます。
仕事の文章においては、文を長くする贅肉とみなし「極力少なくすべき」です。
その基準は、「接続詞がなくても通じるなら省く」です。なくても意味が通る接続詞はたくさんあります。
前期は、新規顧客獲得の目標数が未達となりました。ですので、今季はよりネットでのプロモーション活動を重視します。したがって、早急に活動内容を精査してください。
不要な接続詞によって文章が断ち切られ、スラスラと読み続けられません。
上記の文章では、接続詞がなくても意味が通りますし、削ったほうが文も短くなりスッキリします。削って意味が通じるなら取る。これを心がけてください。
一方で、接続詞を入れたほうが良いケースもあります。それは、「逆接」の接続詞と「添加」の接続詞。
「しかし」「ところが」といった「逆接」の接続詞は、読み手がその先の分の展開を予測しやすくなるという役目を果たします。
調査結果を反映して商品をリニューアルしました。しかし、売り上げは目標を下回りました。
「しかし」があることで、その先の結論が予測でき、内容が頭に入ってきやすくなります。
「さらに」「しかも」「そして」「そのうえ」「それどころか」など、前の内容に、さらに内容を付け足すときに使う「添加」の接続詞も役に立つことがあります。
B社は研究力に強みがあり、営業力も抜きん出ています。
⇨B社は研究力に強みがあり、そのうえ営業力も抜きん出ています。
「そのうえ」をつけたことで、後半の文章が強調され、より印象に残ります。
ただし、後ろのメッセージを強調する意図がなく、文全体をスッキリさせたい場合は省いたほうがいいでしょう。
まとめ
私は一文で複数の情報を伝えようとする癖があります。そのせいで文が長くなってしまうことを自覚していました。
改善しようと意識してはいるものの、これがなかなか難しい。
過去の記事を確認したところ、スマホで見た時に4〜5行になることが多々ありました。
しかし「一文60字以内」という具体的な指標があると、より意識して改善しやすくなります。
一文が短いほど読みやすくなることは実感しているので、継続して矯正していこうと思います。