私は今アルバイトをしています。出産前はバリキャリを目指し、一生懸命仕事をしていましたが、出産を機に、マミートラック(仕事と子育ての両立を目指す一方で、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコース)を歩むことを決意したことがありました。何を一番大切にしたいのか考えたとき、自分のキャリアは最優先事項ではなかったからです。
しかしそこで初めて、会社に合わせて働くことの窮屈さに気づきました。結果的に会社は辞め、今は会社だけに頼らない働き方を模索しています。
イギリス・オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が、「今後10〜20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」という見通しを発表したことはあまりにも有名です。
こんな時代に、どのような仕事ならば消滅せずに続けていけるのか。その答えが知りたくて、『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』を読みました。
著者のピョートル氏は、グーグルで人材育成や組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍された方です。ピョートル氏は本書の中で、何度も「ゼロから1を生み出す」ことの重要性を示し、これが今後生き残っていく人材に必要な能力であると説いています。
それが本のタイトルにある、「ニューエリート」です。ニューエリートとはどんな人で、どうすればなれるのか。そのヒントが本書に書かれており、私はこれからの未来に希望を持ち、わくわくしながら読みました。
この本は、私と同じように働き方に悩んでいる子育て中の方、お子さんがいらっしゃらなくても、今の働き方や仕事に疑問や違和感を抱いている方にぜひ読んでいただきたいです。
この記事では、本書のなかで特に心に刺さった2点についてご紹介します。
①自己実現=他者貢献
ピョートル氏のビジョン(見たい世界)は、誰もが自己実現できる世界です。自己実現とは他者貢献であり、他者に何らかの価値を与えることができれば、対価を得るかどうかに関わらず、それは「仕事」になると言います。
たとえば、子育てを通して子どもに価値を与えることができれば、専業主婦でも「仕事」をしていることになります。私が子どもに与えたい価値は、ジェンダー規範に縛られることなく、広く他者の価値観を認められるように、様々な体験をさせてあげることです。
それは日本をもっと子育てがしやすく、子供を産みやすい国にすることにつながり、ひいては女性が自己実現しやすい世の中に変わっていくきっかけになると考えているからです。
子供がいる家庭の男女の収入格差は大きく、女性の収入の方が低い場合がほとんどです。家事をする時間も女性の方が圧倒的に多く、昨年末、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」(男女格差の度合いを示す)で、日本は世界144カ国中114位と過去最低の結果でした。
今の日本では、子供を産むと女性の負担ばかりが増えるようになっているのです。ジェンダー規範に縛られない人が増えれば、こうした男女格差の是正が進みやすくなるはずです。
そのために、子供の前で「男の子だから◯◯」「女の子だから◯◯」と性別を理由にした話し方をしないことはもちろん、我が家では家事をきっちり分担するようにしています。産後から何度も衝突を繰り返し、夫も少しずつ理解してくれるようになりました。それでも女が子供の面倒を見て、男が外で働きお金を稼ぐのが普通だという意識は、なかなか変わっていないようですが…。
実際、夫は正社員で私はアルバイトなので、給料は夫の1/3以下。夫が働かないと、家族3人食べていくことができません。子どもの体調が悪くなる度に早退し、休んで病院に連れていくのは、話し合いの余地なく私の役目です。これでは私が夫と対等に稼ぐことは到底できません。
だからこそ、私は新しい働き方を模索しています。夫婦が対等に働き、対価を得、平等に家事を分担している姿を子供に見せることは、ジェンダー規範にとらわれない価値観を持ってもらうためにも重要だと思っています。
②今の時代の成功者は選択肢が
あるかどうか
この言葉を見たとき、頭を殴られたような衝撃を受けました。なぜなら今の私には、誰かに雇ってもらう以外にお金を得る選択肢がないからです。
今はSNSが発達し、他者に価値ある情報を発信することで、収入を得ている人がたくさんいます。でも私には、他者に価値を与えられるようなことは一つもありません。正社員として働いていたときは、責任ある仕事を任されることもありましたが、それは会社の中だけでの話。辞めてしまっては、何の役に立たないのです。
このことは本書を読む前から気づいており、会社を辞めてから数ヶ月の間は落ち込んでいました。そして今まで自分の価値を上げようとしてこなかったことを悔やみました。
でも、悔やむだけでは何も生まれません。これから他者に貢献し、自己実現していくなかで、自分の価値を高め、選択肢を増やしていくことが重要です。
本書では、現時点での能力にかかわらず、
- ビジョン(自分が見たい世界)
- ミッション(ビジョンの実現のためにやるべきこと)
- パッション(ビジョンを実現したいというエネルギー)
があれば、他者貢献(=自己実現)はできると言います。
私の見たい世界(=ビジョン)はまだ明確ではありませんが、大きくいうと、「様々な価値観をお互いに認め合い、敬うことが当たり前にできる世界」です。
特に自分の次の世代のために、より良い世界になっていくことを望んでいます。もちろん自分の子どもだけではなく、全ての子どもたちのために。
そのためにも、広く他者の価値観を認められる人が増えるように、自然に触れたり、博物館や動物園で本物を見たり、色々な国の人と交流したり、子供たちが様々な体験ができる機会を与えてあげることが、私のミッションだと考えています。