大切な人が重病に冒されていたら、あなたはどんな選択をしますか?
私は、自分が重病にかかっていることを知ったときよりも取り乱すでしょう。とにかく治るように、少しでも良くなるように。そして長く生きることのできる治療方法を選択すると思います。どんなかたちでも生きていてほしい。「先生、どうか助けてください。お願いします」なんて言うかもしれません。衝撃を受けて何も考えられなくなり、説明を聞いたあと、最後には「先生にお任せします」と言うかもしれません。
こんな場面に問題提起をするのが、豊田剛一郎さんの『ぼくらの未来をつくる仕事』です。この本は日本の医療の問題点を指摘し、それを解消するための取り組みを記すととももに、読者に医療に能動的であれという強いメッセージを送っています。
豊田さんは脳外科医→マッキンゼーでコンサルタント→ベンチャー企業経営者と異色の経歴の持ち主。どうしたらこんな経歴になるのか、その過程を知りたいと思いました。また堀江貴文さんが寄せている「この時代に働く人の『レールの外れ方』の教科書みたいな本だ」という推薦の言葉にも興味を惹かれ、読んでみました。
豊田さんが共同代表を務める株式会社メドレーの具体的な取り組みについては、こちらの記事に詳しくまとまっているのでご参照ください。
医療に能動的ではなかった自分
私はこれまで、医師が決定した治療方法は絶対であり、そこに疑問の余地はない、疑問を抱いてはならないと思っていました。同じように思っている方も多いのではないでしょうか。
私には1才半の息子がいます。生後8ヶ月のとき、じんましんが出て血液検査をすると、乳アレルギーだと分かりました。1才になるまで乳製品は一切口にしないようにと言われ、私は素直にその医師の指示に従いました。この時、経口負荷試験を取り入れ、少しずつ食べてその食品に慣らすという治療を行っている病院に行くべきだったと、私は毎日後悔しています。
息子は今でも牛乳をが飲めません。別の病院に早く行っていれば、今頃息子は牛乳を飲めたかもしれません。能動的に医療を選択しなかったことを悔いているのです。
だからこそ、「医療に能動的であれ」という豊田さんのメッセージは強く心に響きました。
「ポジション」を取れ
本書では、医療業界の問題に対する取り組みだけでなく、豊田さんの仕事論についても書かれています。私が一番実践したいと思ったのが「ポジションを取る」ことです。
ポジションを取るとは、自分の意見を持ち、それを伝えることです。
私はもともと物事に無関心で、ほとんどのことはどうでもいいと思っていました。疑問を感じても深く考えない、どうせ現状は変えられない、考えても無駄だと思う。何も考えていなかったので、そもそも疑問を感じることもあまり多くありませんでした。
だからこそ、息子のアレルギーに関しても、1人の医師に言われたことをそのまま受け入れてしまったのだと思います。
また、私は会社員時代、会議では意見があっても絶対に発言しませんでした。間違いは許されないと思っており、くだらない発言をして、他人にばかだと思われることを恐れていたのです。
それは私自身が、的外れな発言や何も理解していないような発言をする人を、心の中でばかにしていたからこそでした。
この本ではポジションを取ることを勧めるとともに、ポジションを取ることをきちんと認める文化、雰囲気を作ることも大切だと書かれています。
思考停止状態のまま、ずっと目の前の問題から逃げて生きてきた私ですが、最近ようやく自分が思考停止だったことに気づき、自分の頭で考え、アウトプットする練習をしています。
妊娠してから、子どものことで頻繁に病院に行くようになり、以前と比べて医療との関わり方が大きく変わりました。親も高齢になってきましたし、自分も年をとりますので、これから私はますます医療と関わるでしょう。
そのとき、きちんと自分の頭で考えて、能動的な選択や行動ができるように、「美女読書」編集室でもポジションを取って、自分の意見を発信していきたいと思います。
医療への情熱が詰まった一冊
全体を通して、豊田さんの医療への情熱が伝わってきます。この情熱は「心のなかの火」と表現されています。
本書には、茂木健一郎さんも推薦の言葉を寄せています。
最高の知性と温かい心で医療を変える。日本の希望がここにある。
私もこの本から豊田さんの温かさを感じました。
豊田さんの心のなかの火が消えない理由や、疑問をそのままにせず、解決方法を探る原動力の根源とについては、ぜひ本書でご確認いただければと思います。