LINEやFacebookなどのSNSが普及するにつれて、プライベートでメールを使う機会がほとんどなくなってきました。最近では、親しい友人のメールアドレスを知らないということも珍しくないでしょう。
それでも仕事関連の連絡では、未だにメールを使っている会社がほとんどだと思います。しかし「メール術を完璧に取得している」と自信を持って言える人は、それほど多くないのではないでしょうか。
実際、仕事のメールで、こんなことに困ったことはありませんか。
- メールで伝えたと思っていたことが、正しく伝わっていなかった。
- 頼みごとのメールを送ったが、返事が返ってこない。
- メールでアポイントをとったが、会ってみるとなぜか機嫌が悪い。
これ実は、あなたの送ったメールが原因になっているかもしれません。
また、メールに慣れていない学生だと
- メールでの言葉遣いがわからない。
- 署名のつけ方がよくわからない。
- 伝えたい内容を、メールでどう表せばいいのかわからない。
のような基本的な部分が分からず、送る前に困ってしまうこともあると思います。
気づかないうちに失礼なメールを送ってしまっていたり、ビジネスメールのいろはを知らなかったりする人には、『イラッとされないビジネスメール 正解 不正解』がおすすめです。
著者の平野友郎氏は、一般社団法人日本ビジネスメール協会の代表として、ビジネスメールの研修やコンサルティングをなされているビジネスメールのプロです。
そんな平野氏による、相手を不快にさせないメール術について詳しく見ていきましょう。
相手を不快にさせないメール術
本書では、大きく5つのテーマに分けてメールのテクニックが紹介されています。
- CHAPTER1 メールの書き方・送り方の基本
- CHAPTER2 メール本文を書く前の準備
- CHAPTER3 わかりやすい本文の書き方
- CHAPTER4 イラッとする表現を避けるための注意点
- CHAPTER5 印象のよいメールを書くための気づかい・心づかい
1.メールの書き方・送り方の基本
本項では、1通のメールにどれくらいの情報量までなら書いてもいいのか、To、Cc、Bccを使う際に、誰をCcにして、誰をBccにすればいいのかといった、メールを送る際の基本的な情報がまとめられています。
例えば、メールの情報量は1通につき1用件が基本となります。あまりに多くの要件があるときは、多少まとめることが必要な場合もありますが、基本的には、1つのプロジェクトに複数のタスクがあれば、タスク・用件の数だけメールを送るようにした方が、受け取り側の混乱を防ぐことができます。
他にもHTMLを使うと、環境によって同じ装飾のメールを見られないことがあるため、相手のメールを見る環境がわからないのであれば、テキストメールの方が確実だとされています。
このように今までの自己流のメール術を見直すよいきっかけになる情報に富んでいる章になります。
2.メール本文を書く前の準備
普段、メール本文を書く前に、どのような準備をしていますか? 人によっては何も準備せず、いきなり書き始めるという人もいるかもしれません。
平野氏によれば、はじめは時間がかかったとしても、伝えたい内容などをメモしながら構造化した上で書くほうがよいそうです。
具体的には、メールを書く前に次の5つのステップを行います。
- 書く内容をあらかじめリストアップしてまとめておく。
- メールを書く目的を明らかにする。
- 読み手が、どのような立場の人か、どの程度業界のことを知っているか想定する。
- 必ずしも必要のない情報を削って、要点を絞る。
- 送る手段を、添付ファイルにするのか、テキストですべて書くのか決める。
これら5つのステップをすべて踏めるほど、メールに時間を割けないと思われるかもしれません。しかしはじめこそ時間がかかるものの、慣れてくればメモも必要なくなり、結果として以前よりわかりやすいメールをすばやく書けるようになります。
新入社員の方など、ビジネスメールに慣れていない場合は、こうした基礎的なことから丁寧に実践してみるのも良いのではないでしょうか。
3.わかりやすい本文の書き方
わかりやすい本文の書き方というと、接続詞の使い方や語彙力など文章そのものに目が行きがちです。しかし平野さんは、レイアウトなどの見やすさを意識して書けば、わかり易い文章の8割は合格だと言います。
ダラダラ長い一文を書くのではなく、短い文を組み合わせて書くことや、空白をうまく取ることで、見やすくなっていきます。おおよその目安として、1行20文字から30文字で改行するようにしたり、段落ごともしくは、5行以内に1行程度の間隔で行空けを入れたりすると見やすくなります。
また伝えたいこと、論旨をいちばんはじめに書くなどメールの構成にも気を配ると、より読みやすく、わかりやすい文章になります。
4.イラッとする表現を避けるための注意点
面と向かって話すときには、話す内容だけでなく身振りや表情などからも情報を得ることができます。しかしメールだと、文章でしか情報を伝えることができないため、自分にそんなつもりがなくても、上から目線とか敬意がないといった誤解を与えてしまう可能性があります。
また専門用語やあいまいな言葉を使うと、伝えたい内容が正しく伝わらないことがあるなど、相手をイラッとさせずに伝えたいことを正しく伝える表現についてまとめられています。
5.印象のよいメールを書くための気づかい・心づかい
印象のよいメールとは、相手のことを気づかい、少しでも相手の負担を減らすように考えられたメールのことです。メール術の締めくくりとして、相手のことを想って、配慮が十分行き届いたメールにするための、ちょっとした心配りが紹介されています。
お礼をしっかり言うことであったり、環境依存文字(文章を読む場合に文字化けしてしまう可能性のある文字)を使わないようにしたり、そういうあたりまえを大切にすることもまたメール術には必要だと気づかされます。
すぐに実践できる配慮として、「心を込める一言」を付け加えるとよいかもしれません。いつも同じようなやりとりをしていると、単調なメールになったり、テンプレートをコピーするだけになったりしてしまいます。それ自体は悪いことではありませんが、テンプレートに一言「いつも夜遅くまで、お疲れ様です。お体にはお気をつけください」と付け加えるだけで、印象がガラリと変わってきます。
毎回付け加える必要はありませんが、たまに自然体の言葉で書いてみるとよいでしょう。
本書の特徴の一つとして、「Before/After」の形式で説明されている部分が多いという点があります。間違い探しのように、このメールでイラッとさせている部分はどこか探してみる。そして解説を読む。そんな流れで読み進めていくとより多くの学びが得られると思います。
付録として、「シーン別の文例集」が載せられており、社会人・学生問わず、ビジネスメールの教科書として手元においておく価値のある1冊になっています。