ライフスタイルの変化に伴い、私たちの働き方も多様化しています。毎日エネルギッシュに働く皆さんの中には、「会社に頼らず自分の力で稼ぎたい!」「世界を舞台に活躍したい!」と考えている方も多いのではないでしょうか?
ただ、そうは言っても、「興味はあるけど、どうやってビジネスを始めればいいのか見当もつかない」「英語も満足に話せないのに、世界でビジネスなんてできるわけがない」とネガティブな気持ちが邪魔をして、はじめの一歩がなかなか踏み出せないものですよね。
そんな方にぜひ手に取っていただきたいのが、今回ご紹介する『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか? 世界を旅してビジネスを創る生き方』です。
現在、グローバルビジネスに興味がある方はもちろん、会社での自分の立ち位置に迷っている方、あるいはこれから就職しようという方にも、「自分らしい働き方」のヒントが詰まったおすすめの一冊です。
著者は、オンラインストア「世界の花屋」チーフバイヤーの小林邦宏氏。アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で成立させた経歴が注目され、NHK総合『世界はほしいモノにあふれてる』や『あさイチ』ほかメディアにも多数出演。そのたびに好評を博しています。
それらの番組でのイメージから、小林氏を「花屋」と捉えている方も多いと思いますが、実は単なる花屋ではありません。花だけではなく水産品や美容オイル、レジ袋など、さまざまな商材を世界中で扱っている「フリーランス商社マン」なのです。
大企業を飛び出して、世界へ
小林氏は、東京大学を卒業後、財閥系の商社に入社します。しかしそこは小林氏にとって「本当に自分が求める居場所」ではありませんでした。傍から見ると、エリート街道を順調に歩んでいるように見えますが、「常にオンリーワンでありたい」と考える彼にとって、組織の歯車のひとつとして働くことは本意ではなかったのです。
そして彼は、入社して5年が経った2005年の秋、それまでのキャリアをあっさり捨てて会社を飛び出します。これが小林氏の「フリーランス商社マン」としての第一歩でした。
とはいえ、その時点で、小林氏に明確なビジョンがあったわけではありません。大企業を辞めた途端、友人だと思っていた人たちが自分のもとを離れていき、小林氏はショックを受けます。そうした人たちは、小林氏を「大企業の社員」として評価していただけで、一人の人間として付き合っていたわけではなかったのです。
それでも小林氏は、自分の道を進むことを諦めませんでした。失ったものも多い反面、それまで求めていた「自由」が手に入ったからです。会社の名刺に頼らずに自分がどこまでできるのか、ここからが本当のチャレンジ。
父親の取引先だった香港のレジ袋会社を足掛かりに、仕入れ先やコネクションを広げるため、アジアを中心に海外を飛び回る日々が始まりました。
「1年以内に会社を黒字化せよ」
ところが、現実はそう甘くはありません。起業はしたものの、設立1年目でなんの実績もない会社に大金を投資してくれる銀行は日本にはありませんでした。そこで小林氏が目を向けたのが、海外の投資家たちです。
小林氏の魂をこめたプレゼンテーションが実り、ある香港の投資家が出資してくれることが決まります。ただし条件は「1年以内に会社を黒字化すること」。
大きなプレッシャーを感じながらも、小林氏はがむしゃらに働き、レジ袋の事業をなんとか黒字転換。その後もタイなど複数の国の投資家たちに支援され、小林氏は事業を軌道に乗せることに成功しました。
「自分が頑張っている姿を評価してくれる人は、世界のどこかに必ずいる」ーーこのときの経験は、小林氏にとって大きな心の支えとなったそうです。
「なぜだろう」は、ビジネスの種
小林氏の注目度を高めた「ケニアのバラ」との出会いは、まったくの偶然でした。
他の事業のヒントを探しに訪れた「農業フェア」で、会場の片隅に咲いているバラがたまたま目に入ったのです。その生産国の名前を見て、小林氏は驚きます。バラの生産国といえば、ヨーロッパのイメージ。ところがそのバラは、ケニアのバラだったのです。
「ケニア? なんでケニアでバラなんだ?」
この「なぜだろう」という好奇心が、小林氏のビジネスの原動力。世界中に散らばっている「なぜだろう」を拾い集め、その疑問を解決するために調べたり行動したりする中で、新たなビジネスの種が生まれるのです。
すぐにケニアへと飛び立った小林氏は、ひとつの花に多様な色が混じった「複色のバラ」に目をつけ、農園との二人三脚で唯一無二のバラをつくりあげます。
そして農園へのアプローチから3年後、ついに「ケニアのバラ」はビジネスとして形になりました。
真にリアルな情報は、現地にしかない
小林氏が世界中でビジネスをつくってこられた秘訣は、徹底した現場主義にあります。
レジ袋の輸入業から始まった小林氏の事業は、ウニや貝などの水産物、バラなどの切り花、美容オイル、有機野菜と多岐にわたっていますが、それらのビジネスはすべて、人とのつながりのなかから生まれたもの。実際に現地に出向き、顔を合わせて話し、信頼を築いていくのがビジネスのスタート地点だと小林氏は言います。
インターネットの普及により、世界の出来事をリアルタイムで知る機会が増え、海外がより身近なものになりました。入り口として、インターネットを使った情報収集は確かに有効です。しかし、本当にリアルな情報は現地にしか落ちていません。
だからこそ小林氏は、アフリカや南米、中近東など、他の人が行かないような「めんどくさい」「危ない」「遠い」国をあえて選び、ひと月に世界一周するような距離を飛び回っているのです。
言葉の壁は、思ったほどは高くない
「世界を舞台に仕事がしたい」と願う人が二の足を踏んでしまう大きな原因は、おそらく言葉の壁ではないでしょうか。
もちろん世界で仕事をするにあたって英語を話せたほうがいいのは間違いありませんが、英語が話せないからといって、世界に出るのを諦める必要はありません。「習うより慣れろ」という言葉があるように、言語は使いながら覚えていくのが最も効率的だと小林氏は言います。
現地の人と顔を合わせて、片言でもコミュニケーションがとれることがわかれば、言葉の壁はぐっと低く感じられるはずです。
これからの時代、世界で活躍する条件とは?
小林氏が現地主義に加えてもうひとつ意識しているのが、「人と同じことをやらない」ということ。
成功の確証がなくても最初から否定せず、とにかく行動する姿勢でいると、結果的にビジネスが広がりやすくなるといいます。
世界で活躍するために、小林氏が挙げる条件は4つ。
- 既存の価値観を壊していく。
- オンリーワンのゼネラリストになる。
- 守りに入らない。
- 失敗を恐れない。
いくつもの事業を成功させている小林氏ですが、当然ながら、すべての事業がうまくいっているわけではありません。それでも「チャレンジの1割が成功すれば、十分利益になる」と言います。大切なのは、どんなアイデアもビジネスになりうると考えること。
小林氏はこの本を、自分らしく働きたいと願う若い世代へのエールとして書いたといいます。ビジネスという荒波の中で生き方に迷う人々にとって、この本はまさに「羅針盤」となるでしょう。
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