【要約】『Think CIVILITY』「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略

【要約】『Think CIVILITY』「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略




 あなたの職場に、すぐに怒鳴ったり人を見下した態度をとったりする無礼な人間はいませんか? またそうした人と仕事で関わって、ストレスを感じたことはないでしょうか?

 ある調査によると、職場で誰かから無礼な態度を取られると、以下のような悪影響をもたらすそうです。

  • 48%の人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
  • 47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
  • 38%の人が、仕事の質を意図的に下げる。
  • 80%の人が、無礼な態度に気を病み、そのせいで仕事に使うべき時間を奪われている。

 「無礼な態度」を取る人がいるだけで、その組織の生産性はガクッと落ちてしまうのです。

 逆に「礼儀正しい態度」は、周囲を良い気分にさせ、お互いに寛容な態度を取り合うようになるといった好影響を与えます。たとえば誰に対しても敬意を持って微笑みながら接している人を見かけると、それだけで良い気分になり、表情が明るくなりますよね。

 誰かの良い態度に接して良い気分になった人は、その後、良いことに注意が向きやすくなり、お互いに対して普段より少しだけ良い態度をとるようになります。また何か困っている人がいれば、互いに進んで助け合う雰囲気になり、誰もが互いに対して寛容にもなります。

 あなたは「無礼な人」でしょうか。それとも「礼節のある人」でしょうか。自信を持って「礼節がある」と言えない人に、ぜひ読んでいただきたいのが、『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』です。

 本書は10万部突破のベストセラー。無礼な態度がいかに大きな損害をもたらすか、そして礼節ある態度がいかに大きな利益をもたらすかについて、20年もの研究結果とともにまとめられています。

 また「会社の礼節を高めるための4つのステップ」や「無礼な人間とともに働くことになってしまった人が、その状況にどう対処すべきか」など、職場でも具体的な実践方法も記されています。

 「自分は周囲の人にとってどんな存在でありたいか」「周囲にどんな影響を与えられたら嬉しいと思うか」と、自分に問いかけながら読んでみてください。



無礼な人がもたらすデメリット

 無礼な人は、会社に以下のようなコストをもたらします。

  1. 同僚の健康を害する。
  2. 会社に損害をもたらす。
  3. まわりの思考能力を下げる。
  4. まわりの認知能力を下げる。
  5. まわりを攻撃的にする。

①同僚の健康を害する

 無礼な態度は、人の健康に悪影響をおよぼすことが最近の科学的研究によって明らかになっています。

 人の免疫システムを害することがあり、そのせいで循環器系の病気、ガン、糖尿病、潰瘍などにかかる恐れがあります。

 また職場に友好的でない人がいると、死亡リスクが高まることもわかっています。たとえば、中年と呼べる年齢の会社員の場合、同僚が友好的でない人は、友好的な人に比べ調査期間だけで約2.4倍の人数が死亡しているそうです。

②会社に損害をもたらす

 無礼な人間は、企業の利益や社員を失わせるといった損害をもたらします。

 しかもその多くは目に見えないため、誰にも気づかれない可能性があります。誰かのひどい態度のせいで仕事を辞める決心をした人の多くは、雇用主に本当の理由を言わないからです。

 離職者が多いと、それに伴うコストが跳ね上がります。特に辞めるのが能力が高い社員である場合は、その人の年収の4倍ものコストがかかる場合もあるといいます。

 アメリカ心理学会(APA)の試算によれば、職場のストレスによってアメリカ経済にかかるコストは1年に5000億ドルにものぼるそうです。

③まわりの思考能力を下げる

 ある研究によると、無礼な態度をたった一度、体験しただけでも、そしてそれがたとえさほど酷いものでなかったとしても、被験者の集中力は低下し、思考能力が下がってしまうことがわかっています。

 また自分以外の人間への無礼な態度を目にしただけでも、認知のための資源が奪われてしまい、作業の能力も創造性も下がってしまいます。

 たとえ最大限の力を発揮したいと望んでも、無礼な態度に注意を奪われ、心を乱されると、それができなくなってしまうのです。

④まわりの認知能力を下げる

 ここまでの話を聞いて、「そんなのはよくあることなんだから、乗り越えなくては」と思う人もいるかもしれません。

 しかし本書では、意志の力だけで無礼を「乗り越える」ことは不可能だと断言します。ある実験によって、無礼さは、本人も気づかないうちに注意力を奪い、頭の働きに影響を与えてしまうことがわかっているからです。

⑤まわりを攻撃的にする

 無礼な態度が与える影響は、その時だけのものではありません。無礼さはウイルスのように伝染し、次の無礼を生みます。

 集団の中にひどい態度、無礼な態度を取る人間が1人でもいると、それによって生じた悪感情は集団内に広がり、態度の悪い人が増えていきます。人は一度侮辱的な発言をされると、頭に否定的な思考が染みついてしまい、それが否定的な行動へと変換されてしまうからです。

 また理不尽な扱いを受けた人はどうしても、その後、集中力、注意力をそがれてしまい、自分の持てる力を最大限に発揮するのは難しくなります。しかも、直接理不尽な扱いを受けた本人だけではなく、それを見ていた周囲の人も悪影響を受けます。無礼な態度は、あらゆる人たちから大事なものを奪い取ってしまうのです。

 幸い、礼儀正しい態度の伝染力も同じくらいに強いといいます。著者が実施したある調査によると、一部の社員がほんの少し礼儀正しい行動を取るだけで(たとえば思いやりのある言葉をかける、微笑みかける、話をしている時に途中で遮らないなど)、相手の社員もすぐに同様のことをするようになるとわかりました。そして短時間のうちに、全体に礼儀正しい行動が広まっていったそうです。

 礼儀正しく思いやりのある態度に接すると、そのあとには優しさ、喜びが周囲の多くの人に広がっていきます。あなたが礼儀正しい態度を取ることで、周囲の人たちも礼儀正しくなるという好循環を産むことができるのです。

 たとえばルイジアナ州の大病院、オクスナー・ヘルス・システムでは、礼儀正しい態度の影響力を重視し、それを最大限に活かすために「10/5ウェイ」という病院公式の「ガイドライン」を策定しました。

 このガイドラインには、誰かと10フィート(約3メートル)以内に近づいたら目を合わせ、微笑みかけること、5フィート(約1.5メートル)以内に近づいたら「こんにちは」と声をかけることが定められています。

 実際に運用され始めると、病院内にはすぐに礼儀正しい態度が広まり、患者の満足度も向上。「この病院がいい」という推薦を受けてくる患者も増えたそうです。

無礼な態度とはどういうものか?

 では、どのようにすれば無礼な態度をとらないようになれるのでしょうか。まず「無礼な態度」とはどんな態度を指すのかを理解する必要があります。

 本書では、「礼節チェックテスト」として、合計32個の項目を挙げています。たとえば以下のようなものです。

  • 人に何かをしてもらう時、してもらった時に「よろしくお願いします」「ありがとうございます」と言わない。
  • 他人を見下したような態度を取る(舌打ちをする、鼻で笑う、など)。
  • 他人を、また他人の努力を認めようとしない。
  • 他人に対し無愛想な話し方をする
  • 無礼、不躾なメールを送る。
  • 自分と意見が違う人に対し無礼にふるまう。
  • 他人の話を途中で遮る。
  • 自分と違うからといって他人を批判する。

 少しでもこうした態度や振る舞いをしている自覚のある方は、ぜひ本書を読んで改善に努めてください。

 といっても、単に無礼な態度をとらないだけでは不十分です。ただ中立的なふるまいをし、ただ誰も傷つけていないというだけでは「礼節ある人」とはみなされません。

 礼節ある人になるには、他人を尊重し、また品位を感じさせる丁寧で親切な態度で、周囲の人たちの気分を良くしなくてはなりません。

礼節ある人がもたらすメリット

 無礼な人が多くのデメリットを与える一方、礼節がある人は、以下の3つのメリットを得ることができます。

  1. 仕事が得やすい。
  2. 幅広い人脈が築ける。
  3. 出世の可能性が高まる。

 組織としては、

  1. 礼節ある上司のチームは高い業績をあげる。
  2. 礼節ある経営者は従業員に安心感を与える。

といったメリットもあります。

 だからこそ個人が心がけるだけでなく、組織としても礼節の高さを評価する仕組みや、礼節ある人を見極める採用システムを作るなどして、会社の礼節を高める努力するべきです。本書ではその方法も解説されています。

 では、礼節ある人は具体的にどのような態度をとっているのでしょうか。

礼節がある人が守る3つの原則

①笑顔を絶やさない

 笑うことは自分自身の気分を高揚させ、周囲から感じの良い人間と思われやすくなるというメリットがあります。また免疫システムを活性化させ、ストレスを軽減し、血圧を下げ、心臓発作を起こす危険性を低下させるとも言われています。さらには、笑うことには寿命を延ばす効果もあるとされています。

 しかしほとんどの人は、自分で思っているほど日常生活で微笑んでいません。子どもは平均して、1日に400回くらい笑うと言われる一方、大人になるとその回数は激減。笑う回数が1日に20回を超える大人は全体の30%ほどで、1日にたった5回も笑わない大人が14%もいるそうです。
大多数の人は、平均で1時間に1回も笑っていないと言われています。

 笑顔が良いとわかっても、常に笑顔でいることは簡単ではありません。そこで著者は「インサイドアウト・アプローチ」という方法を紹介しています。

 これは外からの刺激に頼るのではなく、自分の心の中を変えることで、行動を変えるという手法です。ふつうは何か外からの刺激があって、それに反応して笑顔になりますが、それとは逆に、意識して明るい感情を持つようにすることで、笑顔が生まれるようにするのです。

 「自分が自然に笑顔になるのは、どういう時か」を知り、そのことを意識的に考えるようにすれば、自然と笑顔が生まれるようになるでしょう。

②相手を尊重する

 2つ目は、相手の存在を認め、尊重することです。

 自分と考えの違う人や属性が異なる人、自分より結果を出せていない人や年下の人などに対して、無意識のうちに無礼な態度をとってしまっている人は多いのではないでしょうか。

 特に、上に立つ人間は、下の人間への態度に注意する必要があります。たとえ自分より地位が下の人間であっても、その存在を認め、尊重しなくてはなりません。

 人の存在を認めるには、まずその人が誰かを知ることが重要です。相手がどういう人で、どういう仕事に取り組んでいるのかを詳しく具体的に知り、理解を深めようとする姿勢自体が、相手を尊重することになります。

③人の話に耳を傾ける

 3つ目は、人の話をしっかりと聞くことです。人の話をよく聞くことは人間関係を築き、維持し、深める上で絶対に必要なことです。

 話を熱心に聞けば、その人のことを気にかけ、大事にしていること、人間関係を保ちたいと思っていることが伝わります。

 たとえば以下は「無礼な態度」に該当します。

  • 相手がまだ話しているのに、遮って自分が話し始めてしまう。
  • 相手の話を聞くことよりも自分のことを話して優位に立とうとする。
  • 割り込んで、誰も求めていない助言をすることもある。
  • 聞いているふりだけして、実際には聞き流しているということもあり得る。
  • 最後まで聞かずにこういう話だろうと勝手に決めつけ、あとは自分が次に何を言うかを考える人もいる。

 話をよく聞くというのは、ただ受け身で聞いていればいいという意味ではありません。相手のどこが自分と同じで、どこが自分と違っているかを見極められるよう、能動的に聞くことが大切です。

 人間というのは、自分の方を見てくれて、話を聞いてくれ、自分を理解してくれる人と関係を築きたいと思うもの。話をよく聞いていれば、それだけ重要な情報、アイデアが手に入りやすくなるというメリットもあります。

 以上3つの基本動作を実践していれば、他人はあなたのことを、周囲に気配りができ、積極的に関わろうとする人間だとみなしてくれるようになるでしょう。

 同僚であれ、部下であれ、とにかく相手を尊重して、良好な関係を築いていく。それが礼節ある態度の核となります。

無礼な態度をとらないために

 最後に、無礼な態度をとらないようにする方法をご紹介します。

 いくら礼節ある態度を取ろうと心がけていても、誰もが無意識の偏見のもと、他人への態度を決めてしまい、知らず知らずのうちに誰かに無礼な態度をとってしまう恐れがあります。

 無礼な態度を取らないようにするためには、「無意識の偏見」を自覚し、それを取り除かなければなりません。

 たとえば老人に会うと、記憶力、創造性に乏しいはずだと思い込んでしまったり、ミニバンに乗る女性を見て、その人がどこかの企業の重役かもしれないとは考えなかったり。

 実際には誰にでも無意識の偏見があるし、その偏見を些細な態度、行動に出してしまうことがあります。

 こうした偏見から逃れる術はないのでしょうか。

無意識の偏見を鎮める方法

 「無意識の偏見を抑制するには、相手と自分の共通点に注目することが有効である」と社会心理学者のジェイ・ヴァン・バヴァル、ウィル・カニンガムは述べています。

 自分と同じグループに属する人に対して良い感情を持つのは、人間として自然なこと。たとえば「子供をもつ親である」「同じ街に住んでいる」「同じスポーツチームのファンである」といった共通のアイデンティティ、グループを見つけることで、その人に対する態度は変わっていきます。

 もし偏見や思い込みからネガティブな感情を抱いてしまう人がいたら、「その人と何か共通のアイデンティティがないか」を探してみましょう。

まとめ

 本書では、「礼節あるメールの作法」や「礼節ある会社になる4つのステップ」「無礼な人に狙われた場合の対処法」など、あなたやあなたの職場の人間関係の問題を解決するための具体的な方法がたくさん紹介されています。

 仕事をしていると人間関係のストレスはつきものですが、それを我慢し続けるとパフォーマンスが悪くなるだけでなく、精神的に参ってしまうこともあります。

 もしかしたら、あなた自身が、周囲に無礼な態度をとってストレスを与え、チームの生産性を下げる原因となっているかもしれません。

 気になる方は、ぜひ本書の「礼節チェックテスト」に取り組んでみてください。




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