クリステンセン『ジョブ理論』要点まとめ!イノベーションの創り方とは?

クリステンセン『ジョブ理論』要点まとめ!イノベーションの創り方とは?





 「TSUTAYA×美女読書フェア」、1冊目にご紹介するのは『ジョブ理論』

 著者のクレイトン・M・クリステンセン氏はハーバード・ビジネス・スクールの教授で、『イノベーションのジレンマ』に代表される「破壊的イノベーション理論」で世界的に知られています。

 本書では、顧客が解決したい用事や仕事を「ジョブ」と表現し、商品はそれを片づけるために「雇用(ハイア)」されるというユニークな視点から、イノベーションを予測可能なものにする「ジョブ理論」を提唱しています。

 ぶ厚く骨太な本書の中から、ビジネスに携わるすべての方にお伝えしたい、「ジョブ」とはなにか、そして「ジョブ」を見つける方法についてご紹介します。



ミルクシェイクを買う人が解決している
「ジョブ」とは?

 著者が「片づけるべきジョブ」に着目するようになったのは、あるファストフード・チェーンのプロジェクトがきっかけだといいます。

 ミルクシェイクの売上を上げたい企業は、来店した客へ「味」や「容量」などの改善点についてリサーチを繰り返し、ミルクシェイクのイノベーションを試みました。しかし数ヶ月の努力によっても、売上は変動しませんでした。「どんな点を改善すればミルクシェイクはもっと売れるか?」を調べても、答えは得られなかったのです。

 著者を含む調査チームは視点を変え、「なぜ顧客はミルクシェイクを買うのか」を探るために、店舗の開店から閉店までの18時間、来店客を観察しました。その結果、「午前9時前」に「一人で来店」した客にミルクシェイクが多く売れていることわかりました。しかも客の多くは、店内でミルクシェイクを飲まず、車でテイクアウトしていたのです。

 これらの客に「なぜミルクシェイクを買うのか?」と尋ねると、ミルクシェイクが朝の通勤時間の手持ち無沙汰を解決してくれるからだと分かりました。「運転中なので手を汚したくない」「飲みづらく運転時間に飲み干したくない」「ほどほどの空腹感を満たしたい」ーー顧客はこうした「ジョブ」を解決するために、ミルクシェイクを「雇用」していたのです。

 当然、ミルクシェイクが売れるのは朝だけではありません。つまり時間帯や状況下、顧客の属性によって、雇用する理由は異なります。

 だからこそ、「ひとつですべてを満たす」万能の解決策を探そうとすると、イノベーティブな発見には至らず、結果的に「何一つ満たさない」答えを出すことになってしまうのです。

 では、こうした顧客の「ジョブ」はどのように見つければ良いのでしょうか?



ジョブを見つけ出す5つの方法

 「ジョブ」を見つける方法は決して難しいものではありません。それゆえ「運任せ」のイノベーションから脱し、「予測可能」なイノベーションを創ることができるのです。

 ジョブを発見する方法として、以下の5つが紹介されています。

  1. 生活に身近なジョブを探す
  2. 無消費者と競争する
  3. 間に合わせの対処策
  4. できれば避けたいこと
  5. 意外な使われ方

 それぞれ簡単にご説明しましょう。

①生活に身近なジョブを探す

 「人々の生活を注意深く観察し、彼らの望みを直感する」という方法です。ソニー創業者の盛田昭夫氏は、「日々音楽を聞きたい」という自らの直感を信じ、ウォークマンを世に送り出しました。

 録音機能がなく、イヤホンがわずらわしくて反対された製品でしたが、結果は世界的なヒット商品となりました。

②無消費者と競争する

 「無消費」とはジョブを満たす解決策が見つけられず、何も雇用しない道を選ぶことを指します。この「無消費」はこれまでになかった消費だけに、見つけるのは困難です。それゆえ、見つけ出せれば大きな市場があります。

 たとえばキンバリー・クラーク社では、もともと成人用紙おむつを提供し、大きなシェアを獲得していましたが、そこには「無消費」がありました。乳幼児用の紙おむつのパッケージと形や大きさ、使用感がそっくりだったことで、雇用せずに我慢している人が大勢いたのです。

 実際、同社の調査によると、50歳以上のほぼ40%が失禁や尿もれの悩みがあることが分かりました。にも関わらず、紙おむつを使うぐらいなら外出せずに自宅に引きこもることを選ぶ人が多かったのです。

 この人たちにとっての「片づけるべきジョブ」は「楽しい生活を取り戻す」ことです。これを発見してから、同社は見た目、使用感、パッケージが通常の肌着と変わらない成人用おむつを開発し、大ヒット商品となりました。

③間に合わせの対処策

 既存のサービス事業者が重視しない領域からジョブを見出す方法です。たとえば子どものお小遣いを預けるには、既存の金融機関のサービスはラインアップが多すぎて、かつ手数料が高すぎました。

 そこでオンライン・バンクのINGダイレクトは、サービスを「貯蓄口座」と「定期預金」と「ミューチャルファンド」(米国の投資信託)のみに絞って売り出し、最低預入金額を1ドルにしました。

 これによって、世の中のお父さんが持つ「目標に向かって貯蓄することのたいせつさを子どもに教え、自分が良い父親だと感じたい」というジョブを片づけ、自宅に作られた「お父さん銀行」の貯蓄をINGダイレクトに移すことに成功したのです。

④できれば避けたいこと

 「できれば避けたいこと」は「ネガティブジョブ」と呼ばれます。CVSミニッツ・クリニックの創業者は、子どもの喉の痛みを抑える薬を処方してもらうために、数時間を病院で過ごした体験から、「医者には行きたくない」というネガティブジョブを発見しました。

 それを解決するために、日常的な疾患に対する処方をドラッグストアで、予約なしで提供できるようにしたのです。(ぜひぜひ、日本に進出してほしいです。インフルエンザの時期に、風邪薬をもらうために病院へ行くことの億劫さやリスクは世界共通のはず!)

⑤意外な使われ方

 「意外な使われ方」は、パンを焼くときに欠かせない材料である「重曹」の話がいい事例です。メーカーであるチャーチ&ドワイト社は、購入者が料理以外にも洗濯用洗剤に加えたり、歯磨き粉に混ぜたり、カーペットに巻いたりと、さまざまな使い方をしていることに気づきました。

 そこでカーペット専用洗剤や消臭スプレー、脱臭剤などの新製品を次々と投入し、成功させます。いまでは料理用の重曹の売上は全体の7%にも満たないほどだと言います。意外な使われ方に目を向けたことで、新しいプロダクトが巨額の収益を生んだのです。

 このように顧客の生活や行動に注目すれば、次々と「片づけるべきジョブ」が見つかります。しかし企業の多くは、ジョブではなく、製品やサービスの性能にばかりに視線が行きがちです。

 ジョブを見いだせる企業は、どこが違うのでしょうか?

ZOZOTOWNの進化にみる「ジョブ理論」

 本書を読んでいて、「ジョブ理論」を実践している日本企業としてスタートトゥデイが思い浮かびました。

 当初、「ZOZOTOWN」はさまざまなファンションブランドを取り扱うECサイトでした。その後、ユーザーのコーディネートを投稿する「WEAR」というサービスを投入し、どう着こなせば、よりファッションの価値を高められるかのヒントを提供します。

 また最近では、採寸ボディースーツ「ZOZOSUITS」の提供をスタート。体のサイズを瞬時に採寸できるため、

  1. 服のオーダーメイド
  2. 最適なコーディネートの提案
  3. ECサイト上でサイズのあったものだけを表示させる

 ことが可能になります。(ただし、あまりに人気でなかなか入手できないようです)

 ECサイトの使い勝手をよくしたり、取扱いブランドを増やすといったプロダクトの最適化ではなく、「カッコよく見せる服を選ぶ」という顧客のジョブを解決するために自らイノベーションを起こし続けているように映ります。

 スタートトゥディの企業理念は「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を」です。ユーザー視点で言えば「自分をカッコよく見せる」というジョブを解決してくれる企業なわけです。

 世の中の広告を見ていると、製品の機能の豊富さやスペックの高さ、もしくは価格の安さを訴えるものが多いことに気づきます。競合他社と比較され続けるなかで、顧客への視点が足りなくなっているのかもしれません。

 本書は、自分たちの商品・サービスをいかに売り込むかではなく、顧客の「片づけるべきジョブ」に注目して、今のビジネスにイノベーションを起こすことができる最高の一冊です。



モデルプロフィール

  • 名前     :新倉のあ
  • 生年月日   :1998.9.10
  • 出身     :北海道
  • 職業     :女優,モデル,アイドル
  • Twitter   :@NOAlSM
  • Instagram  :@nnoaism

ご協力いただいたお店

  • 店名:ケニック カレー
  • 住所:東京都渋谷区道玄坂2-25-7 プラザ道玄坂 5F
  • 営業時間:
    【土日祝】11:30~16:00(L.O 15:45)
    【月火木金】11:30~15:00(L.O.14:45)
  • 定休日:水曜日

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