平均身長、平均点、平均年収…私たちのものの考え方や価値観には、「平均」を基準に据えることが深く染み付いています。
「平均的であること」に安心感を覚えたり、「平均を上回ることに」に優越感を覚えたり、「平均」を基準に自分の評価を下してしまいがちです。
この「平均思考」が個人の成功に対していかに大きな障害となりうるかを説くのが、『平均思考は捨てなさい』です。
「平均」ではなく「個性」に注目せよ!
著者であるトッド・ローズ氏は、ハーバード教育学大学院で「個の科学」プログラムを推進する心理学者。
個人を理解するためには「平均」ではなく「個性」に正しく注目するべきだとして、個性を発揮して成功するための原理を解説しています。
平均思考がもたらす障害としてわかりやすいのは、「平均より下にいる自分に成功などできるはずがない」とか「平均的な能力しかない自分には並外れた結果など出せるはずがない」といった思考に陥り、自分の可能性を不当に過小評価する元凶となってしまうことが挙げられます。
例えば「平均」をもとに割り出される数値の代表格である「偏差値」は、文字通り平均値との「偏差」の度合いを表す値です。
学生時代に、偏差値が(平均値と等しい)50前後、もしくはそれより下回るようなら、「自分は周囲より優れた人間ではないんだ」と思い込み、その後の人生の大半を自己評価が不当に低いまま生きることになってしまいます。
実際は、学力が平均以下にしか評価されない子どもでも必ず何かに秀でているはずで、自分の個性を生かす道を見つけて歩んでいけば、誰もが成功を手にできる可能性があるにもかかわらず、です。
わかりやすい実例として思い浮かんだのは、「祭りくじ動画」で一躍話題になったYoutuberのヒカルさんです。
今やチャンネル登録数200万人を超え、動画を公開するたびに再生回数100万を軽く突破、月収数千万円を稼ぎ出すトップユーチューバーのヒカルさんは、「自分は高卒で、勉強も全然できなかったけど、しゃべりには自信があったからそれを生かせる道を選んだ」と話しています。
実際、彼のトークは非常にテンポが良くて切れ味も鋭く、必要な情報を端的に伝えてくれるので聞いていて飽きません。人目を引くようなトリッキーな企画をしなくても、トークだけで何百万ものビュー数がとれる珍しいYoutuberなのです。
子どもの頃、学校の成績は平均以下だったとしても、それで自己評価を落とすことなく、自分が得意なことや、絶対的自信を持っている分野で努力すれば大きな成功につながる道が開けるということを、ヒカルさんの事例は物語っています。
要は「システムに自分を合わせる努力」ではなく「システムを自分に合わせる工夫」をすることが成功の要因と言えるでしょう。
「個性」を発揮するための原理とは?
平均ではなく個性に注目し、それを大いに発揮する道を歩むためには、本書で紹介されている3つの原理を理解する必要があります。
- バラツキの原理:人間の能力にはバラツキがあり、人によって優れている能力や劣っている能力は異なるということ。
- コンテクストの原理:人間にはいろいろな顔があり、環境(コンテクスト)次第で見せる顔は異なるということ。
- 迂回路の原理:目標に至るまでの道はひとつではなく複数の経路が存在するため、かならずしも「平均的な道(多くの人が通る道)」を歩む必要はないということ。
これらの原理を理解し、自分の最もユニークな部分を見つけて真の能力を発揮すれば、誰もが人生で優位に立てるようになります。
平均思考にとらわれてしまうと、みんなと同じ行動ができないだけで、取り残された気分になってしまいます。しかしAIやロボットが人間の仕事を代替していくこれからの世の中では、「いかに平均から脱して、人と違う存在になれるか」が生き残るためには必須の考え方となります。
2,200円(税別)とちょっとお高めですが、あなたの「自分観」と「価値観」を根本から覆す重要な学びが、多くの歴史的経緯や最新の研究、具体的な事例をもって語れている一冊です。
「出る杭を伸ばす個の科学」というサブタイトルに惹かれたら、ぜひ手にとって読んでみてください。