絵本としては異例の37万部以上を売り上げた『えんとつ町のプペル』。
国内最大1万2,000人超えの会員数を誇るオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」。
クラウドファンディングでは合計支援者数が1万5,000人を超え、合計支援額は1億円を突破。
そして現在、新刊3冊3ヶ月連続リリースの真っ只中。
さまざまな偉業を打ち立てる芸人、キングコング西野亮廣さん。
今回ご紹介する著書『革命のファンファーレ』では、自らの著書の販売、クラウドファンディング、オンラインサロンなどを題材に、今の時代に沿ったビジネスの展開のさせ方が語られています。
そこには、これまでの常識を覆す数々の考え方がありました。
- 意思決定の舵は「脳」ではなく、「環境」が握っている。
- ニュースを出すな。ニュースになれ。自分の時間を使うな。他人の時間を使え。
- 踏み出す勇気は要らない。必要なのは「情報」だ。
西野さん独自の視点で語られる、奇抜な言い回しのオンパレード。こうした言葉が、妙に記憶に刷り込まれるのです。中でも、特に僕が引き込まれた2つのトピック、「信用を稼げ」と「ネタバレを恐れるな」についてご紹介します。
「信用持ち」は現代の錬金術師だ
「お金を稼ぐな。信用を稼げ」ーーこの考え方は、本書の中でもメインになる部分だと感じます。
西野さん自身もこのように言っております。
うるさいぐらい「信用」の獲得手段について語る。それぐらい今は「信用」がモノを言う時代だ。
この「信用を稼ぐ」という考え方を理解すれば、よく耳にする「お金は後からついて来る」という言葉の意味が腑に落ちるはずです。
信用を稼ぐとはどういうことなのか、詳しく解説していきます。
マネタイズのタイミングを後ろにずらして、可能性を増やせ。
西野さんは「信用通帳」なるものを作っているそうです。この通帳に信用が貯まっている状態でないと、いくらビジネスの施策をおこなっても、大きなマネタイズ(収益化)は見込めないと言います。
ではどのように信用を貯めるのかというと、前段階で「圧倒的な価値提供」を行うのです。先に圧倒的な価値を提供し、信用が貯まった段階で次なる仕掛けを行い、大きなマネタイズを狙う。
本書では、絵本『えんとつ町のプペル』の2度目のクラウドファンディングが例として挙げられています。
まず、西野さんはクラウドファンディングを行う前に、単独のトークイベント「西野亮廣独演会」を実施。5,000〜6,000円で提供しなければもとが取れないイベントを2,000円で提供し、お客さん4,500人を集めました。一時的には赤字になりますが、お客さんは「こんなに素晴らしい公演を2,000円で聴けるなんて!」と感激し、西野さんに対する信用度が上がります。お客さんがファンへと変わる瞬間ですね。
こうして4,500人の信用を得たあとに、クラウドファンディングを実施します。そのプロジェクトには6,257名の支援者が集い、合計4,637万円の資金が集まりました。これは当時の国内歴代最高支援者数となり、その話題がニュースで取り上げられ、今まで『えんとつ町のプペル』や西野さんの活動について知らなかった人たちにまでリーチしました。
クラウドファンディングで資金が集まっただけでなく、さらなるマネタイズにつながる可能性がある「潜在顧客」が増えたということです。こうなればあとは、ファンや潜在顧客に対してサービスを提供していくことで、いくらでもマネタイズが可能になります。
このように、最初に「信用を稼ぐ仕掛け」を施すことで、後の大きな可能性につながっていくわけです。
ネタバレを恐れるな
人が時間やお金を割いて、その場に足を運ぶ動機は、いつだって「確認作業」で、つまりネタバレしているものにしか反応していない。
そうおっしゃる西野さんは、『えんとつ町のプペル』をWeb上で全ページ無料公開しました。・紙の絵本としての目的は「読み聞かせ」にあり、「スマホで読み聞かせはしない」と踏んだのです。
こうしてWeb上で惜しみなくネタバレをした結果、37万部という驚異的な数字を記録することができたのです。
ここで言う「ネタバレ」とは「判断材料」と言い換えることができ、そもそも十分な判断材料がなければ購入に踏み込むことができないというのが西野さんの考え方です。
本文を読みながら「なるほどなぁ…」と納得した僕は、ふと、ある体験のことを思い出しました。それはショッピングサイトのAmazonで、アパレル系商品を購入した時のことです。
リアル店舗であれば試着してサイズを確かめることができますが、Webで購入する場合は、実際のサイズ感というものがわかりません。それで僕はどうしたかというと、十分にネタバレしている商品しかチェックしなかったのです。ネタバレしていない商品は全部無視。
ここでいう「ネタバレ」は、サイズの記載だけでは不十分です。例えば、口コミをチェックして「私は身長170センチ、体重70kgで、普段選んでいるLサイズを購入したが、少しキツめ。ワンサイズ上の方がよかった」などの詳細な説明がされていたり、あるいは商品ページで身長、体重を公開したモデルが「Lサイズを着るとこんな感じですよ!」といったイメージ画像が載っている商品だったり。
このようにネタバレしている商品じゃないと、まず購入の選択肢にすら入ってきません。しかし、商品検索をしていると十分にネタバレしているものはごくわずか。これは多くの店舗が機会損失しているといえます。逆に言うと、十分にネタバレをしてあげるだけで、信用を稼ぐことができ、売上を伸ばすことにつながるはずなのです。
もちろん商品の種類によっては、ネタバレすると売り物にならないケースもあると思いますが、戦略をもってネタバレを行えば、売上アップに大いに貢献することでしょう。
後悔の可能性を片っ端から潰せ
「お客さんを動かすには『後悔の可能性』を取り除いてあげることが重要」という西野さん。後悔の可能性を取り除くことで信用が生まれ、行動につながるということです。
これも先ほどのアパレルの例で解説ができます。ネットで服を買った時にする後悔といえば
- サイズが合わなかった
- 色合い、質感が違った
- 着たときのシルエットがイメージと違った
などです。こうした後悔の可能性は、先ほど説明した「ネタバレ」を十分に行えば取り除くことができるでしょう。
また、合わせて気をつけるべきポイントは「誇大表現」を使わないようにすることです。
商品をキレイに見せようとするあまり、イメージ画像を修正して実際の商品よりもキレイに見せてしまう。一時的にはそれで売上があがるかもしれませんが、購入したお客さんは「思ったものと違った…」と後悔するでしょう。
その後悔が深ければ、口コミで悪評をつけられることになり、信用度が下がってしまいます。これは後悔したお客さんだけでなく、その口コミを見たお客さんの信用までも下げることになります。結果、売上を落とすことになって本末転倒。
しかしネタバレの段階で正確な情報を提示しておけば、購入者の後悔の可能性は減り、信用度が上がって、良い口コミにつながったり、リピーターになる確率が上がったりします。
目先の利益に目を向けるのではなく、長期的に考え、後悔の可能性を潰して信用を稼ぐ。そうすれば、お金はいくらでも後からついてくるということです。
過去の常識にしがみつくな!
このように西野さんが提示する考え方のもと自分の体験を振り返ってみると、納得のいくことが山ほど出てきました。
そして自分が世の中の当たり前に対して「なぜだろう?」「本当にそうなんだろうか?」といった疑問をいかに投げかけてこなかったか気づかされました。
- 「お金ってそもそも何なんだろう」
- 「絵本は一人で作らなければならないのだろうか」
- 「このゴミを売ることはできないだろうか」
西野さんは、つねに今ある常識に対して疑問を呈し、自ら仮説と検証を繰り返しながら、自分の中で答えを見つけてきたのだと思います。だからこそ裏表のないストレートな口調で本質を語ることができ、その言葉が読者の心に突き刺さります。
本書の内容は、さまざまな分野にそのまま応用可能なものばかりです。しかし本当に学ぶべきことは、こういった西野さんの世の中に対する「姿勢」ではないでしょうか。この姿勢があってこそ、常識を覆すことが可能になり、革命のファンファーレを鳴らすことができるのです。
あなたも本書を読んで、新たな革命のファンファーレを鳴らしてほしいと思います。