「決められたレールからはみ出して生きよう!」と言われると、常識外れでフツウの人には到底マネできないような無茶をする「出る杭」のような人物をイメージするかもしれません。
しかし『人生をはみ出す技術』の著者、枡野恵也さんは、「はみ出す」というのは変わった職業に就くとか、自分の会社を立ち上げるということだけを指すのではなく、「組織の歯車」や「決められたレールの上」から自分の意思で外れることだと説いています。
つまり「はみ出す」というのは、人生の主導権を自分で握り、「自分らしさ」を活かして生き抜くことだということです。言葉だけ聞くと至極当たり前のように感じますが、だからこそ「レールからはみ出して生きる」というのは、特別な才能やセンスを持った人だけでなく、誰もが手に入れられる生き方なのです。
東大法学部卒でマッキンゼーに入社し、その後レアジョブやライフネット生命の立ち上げ期を経て、現在は「TOOT」という世間的にはまだ無名なパンツメーカーの社長に就任した枡野さんは、正に「レールからはみ出した」異色のキャリアの持ち主と言えます。
今回は、本書から「自分らしさ」を活かして働くための方法について紹介します。ポイントは「遊び」にコミットすること。その理由も合わせて見ていきましょう。
「自分らしさ」を活かす5つのポイント
①「それまでの自分」をいったん否定する
「自分らしさを活かした仕事」というのは、社会に出てからすぐだとなかなか通用しないものです。なぜなら、目の前の仕事に必要なスキルがない状態では、自分らしさを発揮する余地などないからです。
「自分らしさ」を受け入れてもらうためには、まずは「自分らしさ」を引っ込めて、その職場環境に合わせて必死に取り組むことが第一歩となります。
自分に自信がある人ほど、「自分を否定する理由なんてない」と思うかもしれません。ただ、その自意識のせいで自分らしいキャリアを歩めなくなっているのであれば、まずは「それまでの自分」を否定することから始めることが重要だと枡野さんは言います。
世界中からトップクラスの人材が中途入社してくるマッキンゼーでは、入社した社員に「アンラーニング」という試練を課しているそうです。
どんなエリートでも、前職での「常識」に縛られ、視野を狭めてしまうことのないよう、まずは今までの仕事のやり方をいったんすべて忘れることが求められるんですね。
②グチを言うより結果を出すまでやり抜く
グチを言うばかりで結果を出さない人が、思い通りのキャリアを歩めるはずはありません。
結果が出ないことを他人や環境のせいにしてしまう人は、自分の甘さを徹底的に否定して目の前の仕事を全力で取り組み、結果が出るまでやり抜くことからはじめましょう。
幸い、ビジネスは1回の結果がすべてではありません。まだ結果が出せていない人や、前回の挑戦が失敗に終わってしまった人でも、諦めさえしなければ、結果が出るまで何度でも挑戦することができるのです。
今の不満や疑問はひとまず飲み込んで、圧倒的なアウトプットを出すことで周囲にアピールしましょう。
③遊びにもコミットする
キャリアに「自分らしさ」をプラスしていくためには、「仕事」だけでなく、「遊び」にもコミットすることが重要です。
実際、仕事とプライベートを完全に分けて、仕事中は「自分らしさ」を封印しているという人は少なくないでしょう。しかし仕事は人生の大半の時間を占めるものですから、自分らしさを生かして働けた方が圧倒的に楽しく、充実するはずです。
そのためには、目の前の仕事にコミットし、結果を積み重ねていくのと同時に、何でもいいのでプライベートでも本気を出して徹底的に取り組んでみることを勧めています。
たとえば結婚式の準備のようなプライベートのプロジェクトでも、本気でコミットすれば、仕事にも役立つマネジメントスキルを磨く効果があります。
仕事とは違ったメンバーや条件、制約のもと、プロジェクトを動かして形にする経験をすれば、視野が広がって仕事にも良い影響が生まれることは間違いありません。またそうした経験を通して、仕事で活かせる「自分らしさ」というものが見えてくるのです。
④何でもいいから本気になる
今の仕事に「熱量」が持てない人は、「何に対してなら熱く打ち込めるのか」を考えてみましょう。
学生の頃、何かに心から打ち込んだ経験はありませんか? 過去の経験から「本気の熱量」を思い出してみることで、今の心理状態に変化が現れるかもしれません。
なぜ熱量を持って打ち込めるものが重要かというと、嫌々ながらやっている仕事と比べて、「当事者意識」や「主体性」において大きな違いが現れるからです。
これは「オーナーシップ」や「リーダーシップ」と言い換えることができます。本業の仕事に主体的に取り組めていない人は、遊びでもいいから熱くなれるものを探してみましょう。
オーナーシップを発揮する経験を積むことで、自分の人生についても、当事者意識をもってコントロールできるようになります。
⑤「自分らしさ」を武器にする
①〜④を通して、仕事のスキルが身につき、自分が熱くなれるものに打ち込むことでオーナーシップのとり方がわかるようになると、ようやく「自分らしさ」を活用できる段階に入ります。
コンサルタントの仕事でも、ある段階から先は、自分の個性を仕事に活かさないとクライアントにさらなる価値を提供できないと言います。
①でいったん否定した自分の個性ですが、今度はそれすらも仕事で結果を出すための「ツール」の一つとして使いこなすことが求められます。
自分らしさをうまく活用すれば、仕事の満足度が上がるだけでなく、社会に新たな価値を提供できるようになります。
組織の歯車として、ただ言われたことをこなしているだけでは生まれないような付加価値を、あなたらしさを生かした仕事をすることで生み出しましょう。
自分の個性を武器の一つとして使いこなせるようになれば、スキルの幅も広がり、「はみ出す生き方」の選択肢も広がっていくはずです。