起業家たちの成功・失敗事例を学ぶ一冊!
日本でも一昔前に比べて起業がしやすい環境が整ってきたこともあり、起業やスタートアップに興味をもつ若者が増えてきているように感じます。
しかし起業する上で参考になるリアルな情報というのは世の中にほとんどありません。あるとすれば、起業家たちの華々しい成功物語ばかり。
「日本の起業環境を育むには、もっと参考となるような事例が必要だ」という考えのもと、アメリカ出身のヘッドハンターである著者が、20人の日本人起業家のインタビューについてまとめたのが本書『未来をつくる起業家~日本発スタートアップの失敗と成功 20ストーリー~』です。
これまでなかなか知り得なかった起業家たちの失敗談や、成功へと導いた「具体的な何か」について詳しく記されています。
今回は、起業の第一歩ともいえる「仲間集め」について、BizReach、Cinnamon、エニグモの創業者である3名の起業家のエピソードを紹介します。
「自分の担うべき役割を見極める」 –BizReach創業者&CEO 南壮一郎
南さんは、投資銀行や楽天イーグルスでの勤務経験を経て、2009年にオンラインの人材プラットフォーム「BizReach」を創業。自身が転職活動をした際に感じた不便さや非効率さを、インターネットの力で変えたいという思いから起業に至ったといいます。
2015年には「採用費ゼロ革命!」を掲げて、完全無料のクラウド型採用サービス「スタンバイ」をリリースするなど、人材業界に大きな変革をもたらすゲームチェジャー的存在として注目されています。
そんな南さんは、自分のことを「起業家」とは思っておらず、「プロデューサー」という言葉の方がしっくりくるといいます。プロデューサーとは、「働き方や業界、場所や時代、チームや事業の大きさとは関係なく、様々なビジネスシーンでゼロから価値を創出する」仕事です。
一般的なスタートアップのイメージだと、創業社長が先頭に立って、自らが率先して事業を創り、それを周りの仲間が支えていく、というものが多いかもしれません。そのためIT起業であれば、創業者自身がプログラミングスキルを持っている場合も多いでしょう。
しかしビズリーチの場合は、社長である南さんがシステム設計や開発のみならず、インターネットサービスがそもそもどのような仕組みで運営されているかすら分かっていなかったため、最初からチームで事業の立ち上げたという意識が強く、自分はチームの中の一つの役割を担ってきたに過ぎないという考えがあるそうです。
「インターネットの力で世の中を変えたい」と思いつつも、そのための知識が一切なかった南さんは「自分は何の役割を担うべきか?」を考え、IT業界出身の優秀な創業メンバーを集めることを最初の仕事としました。そして彼らを支えながら、こぼれたボールをひたすら拾うという「プロデューサー」の立ち回りに徹したのです。
最初はたった一人でビジョンを掲げ、ゼロから新しい部活やサークルの仲間を募っていくように、1人目を見つけ、2人目を巻き込んでいきました。そうして集まった創業メンバーは7人。うち5人は、当初1年間はそれぞれ別のフルタイムの仕事を掛け持ちしていたそうです。
皆との約束としては、創業1年以内に、1億円以上の資金調達ができなければ、そのまま事業を解散させようということでした。ありがたいことに、創業10ヶ月目にしてジャフコさんから2億円の資金調達ができたので、その後7人中6人が正式に社員として参画してくれました。これは他社とはだいぶ違うやり方だと思いますが、当時の自分にとっては、一番しっくりくる、仲間に対するリスクをもっとも軽減するやり方でした。
南さんのお話からは、たとえ自分が起業したい分野について知識や技術がなかったとしても、それができる仲間を集め、彼らがバリューを発揮しやすい環境を整えれば、事業を前に進めることができるということがわかります。
自分には専門的なスキルはないし起業なんてできないと諦めている人にとっては、勇気がもらえるエピソードではないでしょうか。
「4人での起業は多すぎた」 –Cinnamon創業者&CEO 平野未来
平野さんは東京大学でコンピューター・サイエンスの修士号を取得し、大学の友人たち4名でネイキッドテクノロジーを創業。その後会社をミクシィに売却し、2012年にはシンガポールで新会社Cinnamonを立ち上げています。
平野さんはネイキッドテクノロジーの創業を振り返って、4人での起業は多すぎたと感じたそうです。創業時のメンバーが多いと、船頭多くして船山に登ってしまうという状況に陥りやすく、事業の方向転換のような重要な意思決定にも時間がかかりすぎてしまったからです。
1人での起業はかなりの自律心が必要とされるし、孤独な戦いになります。3人だと、関係性がすべてイコールということにはなりづらく、仲の良い2人ができてしまった場合に残りの1人が疎外感を味わってしまうといったリスクもあります。
そのため平野さんは「会社をはじめるには2人が一番成功しやすい」と考えています。Cinnamonの立ち上げも、ネイキッドテクノロジーの設立メンバーでもあり、学生時代から10年以上の付き合いがある信頼のできるメンバーとの2人で行っています。
2人で起業すると助け合えるし、相手に対しても責任を感じます。(中略)1人から2人になった瞬間、物事が進みはじめるんです。
ちなみに、「シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」と呼ばれるベンチャーキャピタル、「Yコンビネータ―」の創立者であるポール・グレアムは、「創業者がひとりだけのスタートアップには出資しない」というルールを定めていたといいます。(参考:『Yコンビネーター』)
なぜなら、「共同創業者がいないという事実そのものが、友人たちの信頼を得られなかった証拠」だと言えるからです。(※後にこれを少し緩めて、創業者が並外れていると思われるときには、時々例外を認めるようになったようです)
『Yコンビネータ―』には、「創業者は必ずふたり人以上必要だが、多すぎてもいけない」「YCの経験から言って創業者は4人は多すぎる、意思決定が煩わしすぎる」とも書かれています。
平野さんの体験から出た言葉とそのまま重なっていることがわかるでしょう。
「博報堂時代の同僚と2人CEO体制で起業」 –エニグモ創業者&CEO 須田将啓
須田さんは、博報堂時代の同僚である田中禎人さんと2人で2004年にエニグモを創業。誰もがバイヤーになれるファッション通販サイト「BUYMA」を誕生させ、2012年には東証マザーズへの上場を果たしました。
田中さんとは会社員時代から一緒で仕事の進め方に慣れていたし、お互いに意見を言い合える関係だったため自然と一緒に組むことになったそうですが、須田さん自身は「2人で起業をするとたいていの場合うまくいかない」と考えていたようです。
実際、エニグモの2人CEO体制を参考に会社をつくった起業家は、もの別れしてしまったパターンも多かったといいます。ただ表面的に「2人CEO体制」を敷くのではなく、信頼できるベストパートナーを見つけることがいかに重要かよくわかるエピソードではないでしょうか。
田中とだったら良いディスカッションができるし、良いチームができると思ったので、他のチョイスは考えられませんでした。1人でやるよりは2人でやった方が、頭も2倍で勢いも2倍になります。トラブルがあっても前向きに考えられますし、会議もできます。
いまでこそ世界110ヶ国6万にのバイヤーによって年間300万商品が紹介されている「BUYMA」ですが、開始当初は1ヶ月間何も売り買いされない状態が続くこともあったといいます。
リリース2ヶ月目にようやく商品が売れて、入ってきた手数料は480円ほど。それまでに1億円くらいのお金を使っており、役員や株主の間では続けられるかどうか真剣に議論されていたようです。
その後ソネットから6億円調達ができて、赤字を出しても多めに見てもらえるという合意を得られたものの、黒字になるまで3年かんはずっと胃が痛かったといいます。
世間から注目を浴びる起業家は、とかく「成功談」の部分ばかり取り上げられがちですが、現実は一足飛びに成功した事例などまずなく、その背景には、こうした「胃が痛い」思いをしながらも歯を食いしばって、成功軌道に乗せるまで耐え続けた苦しい経験があったことわかります。
まとめ
本書を読むと、「失敗するのが怖いから起業なんてできない」と考えるのではなく、失敗することを前提として、それをいかに乗り越えていくかという発想をもつことが重要であることがよくわかります。
なぜなら本書に登場する20人の起業家には、全員に「失敗談」があるからです。どれだけ優秀で才気に溢れた起業家であっても、絶対に失敗経験をもっている(むしろ失敗経験があったからこそ成功に到達できている)という事実は、起業意欲をもっているすべての人に勇気を与えてくれることでしょう。
起業する際の人数に、もちろん”正解”はありませんが、こうした実例を知ることで、自分に合った起業スタイルについてイメージを持ちやすくなるはずです。起業を考えている人は、ぜひ先輩起業家たちの成功・失敗談から多くの学びを得て下さい。
モデルプロフィール
・名前 :鎌田紘子
・生年月日 :9/18
・出身 :東京都
・職業 :グラビア
・Twitter :@hirokokamata12
鎌田紘子さんと美月リカさんによる2人組女性バンド「宗教法人マラヤ」の記念グッズはこちらのページをチェック! TシャツとiPhoneケースが人気のようです!