Emotional Agility(EA)とは何か?「感情」と向き合い望む人生を築く方法

Emotional Agility(EA)とは何か?「感情」と向き合い望む人生を築く方法




 先月、30歳の誕生日を迎えた。ずいぶん生きたものだと思っていたら、最近は「人生100年」だという。あと70年。うむむ。この先、わたしはどう生きたいんだろうか。このところ、そんな壮大な人生哲学にふけっている。

 具体的にはまだ浮かばないが、1つ変えたいことがある。メンタルだ。わたしは些細なことで、奈落の底も抜けるほど深く深く落ち込んでしまう。こんな調子でこれから70年過ごすのか。いや、変わりたい。感情をコントロールできるようになりたい。

 そんな思いから『EA ハーバード流こころのマネジメント』という本を手にとった。

 本書のテーマである「Emotional Agility(EA)」とは、直訳すると「感情の敏捷性」。つまり日々の状況に適切に対応できるよう、湧き上がった考えや感情を柔軟に調整する力のことだ。

 わたし達は日々、羞恥心や罪悪感、怒り、不安といった煩わしい感情のせいで、自分の望む人生を築けずに悩んでいる。

 こうした扱いづらい感情を、エネルギーや独創性、洞察力の源泉に変えるための、新たな行動指針を与えてくれるのが本書である。

 EAとは面倒な感情を無視したり、思考をコントロールしたり、前向きな思考を強制したりするものではない。様々な心の動きを受け入れることで、価値観や目標に沿った生き方・行動を貫き、予測不能の人生を思い通りに生きるためのスキルなのだ。

 どうやら感情とはコントロールすべきものではなく、意識的に向き合い、受け入れ、折り合いをつけるもののようだ。

 EAを身につけるためのステップは以下の4つ。

  1. 向き合う
  2. 距離を置く
  3. 理由を考えながら歩む
  4. 前進する

 今回は、これら4つのステップについて紹介する。



1. 向き合う

 まず第1ステップは、感情や考えと「向き合う」ことだ。わたし達は絶え間なく考えたり、喜んだり怒ったり、様々な心の動きをしている。しかし普段、それらを意識することはあるだろうか?

 「わたし怒り狂ってる」と思いながら怒ったり、「泣くほど嬉しがるわたしがいる」と思いながら泣いて喜んだりする人は稀だろう。だが、EAの第一歩はまさにここなのだ。

 感情や考えと「向き合う」とは、それらを認識することだ。しかし今まで意識していなかったものをいざ認識するといっても、なかなか難しい。

 そこで役立つ例を1つ紹介したい。とある禁煙プログラム。ここでは禁煙までの道のりを、自動車で旅をするイメージで説明する。参加者はドライバー。最終目的地は「禁煙」だ。しかしこの車には、厄介な同乗者がいる。それはドライバー自身の様々な考えや感情である。それらは後部座席に乗り、弱気な発言をしたり、誘惑したりと、きりがない。しかし下ろすことはできない。彼・彼女らを乗せたまま、ドライバーは目的地「禁煙」へとひた走る。

 さてここで、自分をドライバーに当てはめてみたらどうなるだろう。どこか大切な場所へ向けて車を運転している最中に、後ろから「もう運転やだー」やら「チョコ食べたーい」やら、いろんな茶々が入る。そんな横やりを「はいはい、わたし疲れてるんだね」とか「チョコ食べたいね」とか、言葉で表しながら認識してみる。

 自分の感情や考えを、後部座席にいる別人格と思うと、感情に「向き合う」という感覚が理解しやすくなるだろう。



2. 距離をおく

 次のステップでは「距離をおく」。感情や考えから少し離れ、どんなものか観察するのだ。

 そのためには、書くことが役に立つという。そこで「ペネベイカーによる記述のルール」を紹介したい。

ペネベイカーによる記述のルール

 次の1~4を数日続けてみる。

  1. タイマーを20分にセットする。
  2. ノートかパソコンに向かい、タイマースタート。
  3. 先週、先月、または昨年に経験した感情的な出来事について書く。文章のうまさもルールも気にしない。評価を加えず、心のままに書く。
  4. 時間が終わったら、紙は捨てるか保存せずに終了する。望むならブログや出版エージェントを探してもいい。好きに取り組んでよい。

 思っていること、考えていることを自由に書く。そうすると「考える自分」と「考え」、「感情」と「感情を抱く自分」のあいだに距離ができる。

 つまり感情や考えを外側から客観的に眺められるようになるのだ。

3. 理由を考えながら歩む

 第3ステップ「理由を考えながら歩む」では、感情や考えに流されず、自分自身の価値観や目標に沿って行動することをめざす。

 やや漠然としているので、最初にあげた禁煙プログラムの例で説明しよう。

 たとえばドライバーが後部座席の声に流され、1本くらい…と吸ってしまったり、ちょくちょく休憩したりしていては、いつ目的地に着くかわからない。後部座席から「1本くらい大丈夫だって。吸っちゃえよ」などと誘惑の声が聞こえたとき、まず「いま煙草吸いたい欲がある」と認識し、自分と欲求を切り離す。

 そのうえで「欲求」と「自分の価値観や目標」とを客観的に天秤にかけ、「いや、禁煙したいからここはぐっと我慢しよう」と、価値観に沿った行動を選ぶというのが、「理由を考えながら歩む」ということだ。

 自分の価値観を知り、ふだんからそれに従って生きていれば、自分という存在に対しても満ち足りた気持ちになるはずだ。

 では、自分が大切にしている価値観、あるいは目標とはどのように知ればよいのだろうか。著者が紹介しているエクササイズが簡単なので、今晩からでもぜひチャレンジしてほしい。

  1. 毎晩寝る前に自分に問いかけ、答えを書く。
  2. 今日を振り返って、自分がしたことの中で本当に時間をかける価値のあることは何だったか? と問いかける。何週間か過ぎてもこの答えが浮かばないなら、質問を次のものに変えよう。

  3. 毎朝起きた時に自分に問いかける。
  4. 今日がこの世を過ごす最後の日だとしたら、それにふさわしい日にするにはどうすべきか?

 こうして見つけた大切な価値観は、あなたがいつも正しい方向に進むようにう導いてくれる「羅針盤」となる。

4. 前進する

 ここまでくれば準備は万端。あとは目的地を見据えて進むのみ。ラスト第4ステップは「前進する」だ。

 とはいえ、最初から大きなことにチャレンジすると失敗する可能性が高く、心が折れやすい。はじめは「スモールステップ」が肝心だ。小さな変化の積み重ねでも、それが自分の価値観に基づいていれば、人生を大きく変える可能性があるという。

 そしてそれを意識的に習慣化すれば、努力せずとも価値観と結びついた行動を継続できるようになる。ここでおすすめしたいのが、すでにある習慣にプラスすることだ。

 たとえば、健康的な食生活のために毎朝フルーツを摂りたい、という目標に対して、朝食はパンとコーヒーというシンプルな人が「毎朝フルーツスムージーも作るぞ!」と意気込んでも、三日坊主で終わりかねない。それよりも、パンとコーヒーにバナナでもプラスする方が、ハードルはぐんと低くなるし継続しやすい。今ある習慣にプラスする方が、定着の可能性が高まるのだ。

 しかし一方で、すべてが型通りの習慣となって能力が有り余る状態になると、そこに挑戦や喜び、発見はなくなってしまう。

 EAの目的は、人生を前向きに生きることだ。そのためには「困難だが達成可能であり、明快な目標」に向かって、「自分の限界に挑む」ことも必要である。

 もちろん「過剰な挑戦」は望ましくないし、他人よりも秀でていなければならないという強迫観念から目標を選択するのも誤りだ。そうした状況ではストレスが強くなるため、創造性を発揮することも、自分を成長させることも困難である。

 本当の目的は「自分が望む人生を築くこと」なのだから、「なぜ、どのようにして自分の限界に挑戦するのか」を意識することを忘れてはならない。

 そのうえで、自分ができる範囲のちょっと先の、「慢心する余裕はないけれど、圧倒されるほど歯が立たないわけではない」、そんな場所に身を置き、挑戦していくことが重要だという。

 ただし「現実的なこと」を選びながら。挑み続けることも大切だが、明日を生きていくことも同じくらい大切だ。ドリーミー過ぎる挑戦になってないか、自分の現在地と照らし合わせながら進むことも求められる。

まとめ

 この4つのステップ、一朝一夕でできるものではなく、わたし自身、いまだ1か2の間をうろついている。

 EAは、理想を見据え、今の自分を変えていく力だ。どう生きるか迷うこの100年ライフの時代、欠かせない能力だと思う。地道に努力して伸ばしていきたい。






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