落合陽一が描く『日本再興戦略』とは?「トークンエコノミー化」が切り札となる理由

落合陽一が描く『日本再興戦略』とは?「トークンエコノミー化」が切り札となる理由




 今年に入ってから一番楽しみにしていたのが、落合陽一さんの新刊『日本再興戦略』が届くことでした。

 本書が発売されることは何ヶ月も前から決まっていたので、「美女読書」編集室でも発売前に書評を書きたい人を募集しておりまして、ソッコーで3名の枠が埋まってしまうくらい期待度の高い一冊だったのです。先日手元に届いたので、早速サロンメンバーにお送りしました。

 私も拝読し、大変刺激を受けまして。せっかくの新刊ですので、一番乗りでレビューをしたいと思います!

 本書はタイトル通り、落合陽一さんが「日本を再興するための新しい戦略」について著した一冊です。今、これほど日本の未来に希望を与えてくれ、いますぐ自分も行動に移そうと思わせてくれる本は他にないでしょう。

 なぜなら、教育者、経営者、研究者、アーティストという専門分野を持ち、経済・教育・文化・デザイン・テクノロジー、すべてに見識の深い人物というのは日本にはほとんどおらず、そんな落合さんこそだからこそ書ける一冊になっているからです。

 個人的に一番興味深かったのは第4章。人口減少・少子高齢化が進む日本における「グランドデザイン」について記された、いわば日本再興戦略の総論部分です。

 第5章以降では、経済、仕事、政治、国防、教育、メディア、リーダーなどさまざまな切り口から、日本再興戦略の各論が語られています。

 この記事では、落合さんが示す日本再興のグランドデザインについて簡単にご紹介したいと思います。

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人口減少・高齢化がチャンスである理由

 日本の現状と未来を語る上で、人口減少と少子高齢化は避けては通れないテーマです。日本ではこの2つの言葉がネガティブなトーンで語られることが多いですが、落合さんはこの認識自体が間違いであり、むしろ日本再興のための稀有なチャンスであるといいます。

 その理由は次の3つ。

①自由化、省人化に対する「打ち壊し運動」が起きない。

 人が減って、かつ高齢化で働ける人が減っていく日本においては、機械化・ロボット化は社会正義となり、ネガティブな圧力がかかりにくくなります。

 もし人口が増加し、人が余っている状況で強引に機械化を進めると、産業革命のときに労働者が機械を破壊したような「打ちこわし運動」が起こってしまいます。

 かつての日本では人が増え、さらに余っていたので、従業員を減らして機械化に踏み切ることが困難でした。しかし人口減少時代の今であれば、他国に先がけて機械化、ロボット化を推進することが可能です。これは国際競争力を高めることに直結します。

②輸出戦略による「逆タイムマシンビジネス」が可能になる。

 日本は、人口減少・高齢化が早く進む分、高齢化社会に向けた新しい実験をやりやすい立場にあります。

 これから中国を筆頭に世界中が高齢化していく中で、日本のロボット技術によって人口減少と少子高齢化へのソリューションを生み出すことができれば、それは「最強の輸出戦略」となると落合さんは言います。

 これまでの日本は、欧州や米国などで生まれたビジネスを時間差で日本に輸入する「タイムマシンビジネス」が主流でしたが、今後は、日本で生まれたビジネスを海外に輸出する「逆タイムマシンビジネス」が可能になるのです。

③教育投資を大きく増やせる。

 人口減少・少子高齢化することは、相対的に大人の数が多くなり、子どもの数が少なるということです。そうなれば「子どもは少なくても貴重なのだから大切にしよう」という考えが広まり、社会全体として、子どもに投資しても不平が出にくくなります。

 つまりこれからの日本は、子どもに対して教育コストをかけることが社会善となり、人材の教育コストを多くかけることができる国になるのです。

 落合さんが人口減少と少子高齢化はチャンスであると説くのは、この3つの視点があるからです。

 では具体的にどのような行動を起こせば、日本を再興できるのでしょうか。その切り札として挙げられているのが「ロボット」「自動運転」そして「ブロックチェーン」です。



日本再興の切り札は「トークエコノミー」

 特に注目したいのが、ブロックチェーン技術によって実現する「トークンエコノミー」です。

 落合さんは「これからの日本はすべてをブロックチェーンにして、あらゆるものはトークンエコノミーであるという考え方にしていかなくてはならない」と述べています。

 本書の表現を借りると、ブロックチェーンとは「あらゆるデータの移動歴を、信頼性のある形で保存し続けるためのテクノロジー」のこと。しかも「誰かが一元的に管理するのではなく、全員のデータに全員の信頼をつけて保っていくことができる、非中央集権的なテクノロジー」です。

 要は、国が管理するような中央集権的な仕組みではない上に、信頼性やセキュリティを担保することができるテクノロジーということです。

 その典型がビットコインに代表される仮想通貨に関わる技術であり、仮想通貨によって生まれる経済圏のことを「トークンエコノミー」と言います。

 すべてのものにトークン(仮想通貨)で価値づけを行い、その価値を信用する人だけで成立するトークンエコノミーが普及すれば、非中央集権的にさまざまな経済圏をつくることができるようになります。

 これがなぜ日本再興の切り札となるのか。それはこの方法を使えば、会社だけでなく、個人やプロジェクト、市や県、国が上場し、自給自足的に投資資金を集められるようになるからです。

地方自治体はICOで新たな財源が手に入る。

 たとえば地方自治体が、自らトークン(仮想通貨)を発行してICOによって資金調達すれば、地方活性化のための新たな財源を得ることができます。ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、IPO(Initial Public Offering:新規株式上場)の仮想通貨版のようなものです。

 具体的には、沖縄県が沖縄トークンを発行し、「みなさんのお金を使って、沖縄をこんなふうにつくり変えて、こんなふうに経済を成長させます」という説得力のあるビジョンを描けば、その期待に対してお金が集まる状況を作ることができます。

 トークンの購入には、現金でなく仮想通貨が用いられるため、日本人の可処分所得だけでなく、世界の人々のお金が財源になります。今は世界に投機マネーが余っているので、そのお金を引き付けて、ロボット、自動運転、5Gといったテクノロジーに投資すれば、日本全体をアップデートしていくことができるのです。

 トークンエコノミーが広がると、魅力的なビジョンを打ち出した自治体ほど、お金が集まるようになります。会社の株価と同じように、独自性のある、優れたビジョンと戦略と実行力のある自治体ほど株価が上がるのです。十分に投資家を引き付けられれば、10年、20年という長期計画のための投資資金を集めることもできるでしょう。

 落合さんは、トークンエコノミーのことを「将来価値を現在価値に転換する仕組み」と表現し、若い市長や知事の手で多くの自治体がICOをしていけば、トークンエコノミーは一気に盛り上がるはずだと予想しています。

 こうした自治体が増えてくると、事実上、財源的に中央政府から自立することができます。中央政府は、日本全体の国家戦略や国防に予算を集中し、他の仕事は地方に任せた方が日本全体にとって効率的なのは、誰の目にも明らかでしょう。

 トークンエコノミーは、これからの新しい「国の形」をつくるための切り札となる戦略なのです。しかもこれは、その気になれば10年以内に実現できるかもしれないと言います。

シリコンバレーによる搾取を終わらせる。

 もう一つ、トークンエコノミーによって実現しうるのが、シリコンバレーによる搾取からの脱却です。

 我々がデジタル化社会で苦しんでいる最大の理由は、ソフトウェアのプラットフォームを取れなかったことが原因です。今やデジタル商品のほとんどがシリコンバレーのプラットフォーム経由で扱われており、たとえば、iPhoneやAndoroid経由でアプリに課金した場合、その3割は自動的にアップルやグーグルに抜かれてしまいます。

 現在、シリコンバレーに吸い取られている3割のマネーがすべて日本の懐に入ることを考えたら、どれだけ豊かになるでしょうか。

 自らトークンを発行してローカルな経済圏を作ることができれば、こうしたグローバルなプラットフォームによる搾取を防ぐことができるのです。

 シリコンバレー発のプラットフォーム社会を超えていかない限り、我々は、永遠に裕福になれません。だからこそ、日本はトークンエコノミー化を今すぐに進めていくべきだと落合さんは説いているのです。

まとめ

 「トークンエコノミー」という言葉は耳にしたことがありましたが、その意味や本質についてはまったく理解できていませんでした。

 本書を読んで、トークンエコノミーの持つポテンシャルをまざまざと知ることができ、また日本の未来についてもワクワクするビジョンを見ることができました。

 落合さんの描く日本再興戦略に触れると、自分も新しいテクノロジーを学び、今すぐ行動に移さなければダメだと思わされます。

 「ロボット、自動運転、ブロックチェーン、トークンエコノミーといった新しいテクノロジーを武器として、今のうちから、人口減少・高齢化社会に対応した社会に移行できれば、日本は世界より20年先に行ける」ーーこの言葉を聞いて、心動かされない人はいないのではないでしょうか。

 日本の未来に希望が持てず悲観的になっている方、変化のスピードについて行けずにこれから進むべき道を見失っている方、ぜひ本書を読んで日本再興戦略を理解し、いま自分にできること、すべきことを見出し、行動に移してみてください。

 間違いなく、本書はそれだけのモチベーションとエネルギーを得られる一冊です。

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