「教養」とは何か? 今身につけるべき「リベラルアーツ 」の学び方

「教養」とは何か? 今身につけるべき「リベラルアーツ 」の学び方




 最近、「教養(=リベラルアーツ)を学ぶことの重要性を説いたビジネス書が増えてきています。

 変化のスピードが激しい現代においては、目の前の事象に翻弄されることなく、その背後に流れる、物事の本質を捉える目こそ重要であり、それを磨くことができるのが教養だからです。

 そんな教養を身につけるためのブックガイドとしておすすめなのが、「NewsPicks Book」の第一弾の書籍、『リーダーの教養書』です。

 本書では、NewsPicks編集長の佐々木紀彦さんによる序文と、出口治明さん、楠木建さんによる冒頭の対談によって、教養とは何であって何ではないのか、それを身につけることにどんな意味があるのかについて、非常にわかりやすく解説されています。

 その上で、11名の選者によって、進化生物学、コンピュータサイエンス、医学、数学といった理系科目から、歴史学、日本近現代史、哲学、宗教といった文系分野まで、教養人が知っておくべき11分野に関する推薦本が、計130冊紹介されています。

 本書を読むと、教養とは学者や研究者のような知識人が身につけている特別なものではなく、ビジネスパーソンこそ身につけるべき重要な知識であることを思い知らされるでしょう。

 ここでは、教養とは何なのか、そしてなぜ身につける必要があるのかについて解説します。

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教養とは何であって、何ではないのか?

 教養とは、明治期に翻訳されて定着した日本語で、もともとは「リベラルアーツ」。直訳すれば「自由の技術」のことを言います。

 ここでいう「自由」とは、その反対である「奴隷の状態」からの「自由」のこと。つまり教養とは、「自分以外の誰かによって決められた価値基準への従属を強制されている状態」から解放されて、自由になるための技術であると、楠木さんは説明しています。

 現代に生きる私たちからすると「奴隷の状態からの自由」と言われてもあまり実感が湧かないかもしれません。しかし自分の頭で考えることができず、他人の意見をそのまま鵜呑みにしたり、盲信したりしてしまうようでは「奴隷の状態」と変わりありません。

 教養とは、自分の頭で考え、自分の言葉でものを言えなくなってしまう「不自由」な状態から解放されるために身につけるべきものなのです。

 楠木 僕にとって一番しっくりくる教養の定義は、人が他者に強制されず、自分自身でつくりあげていく独自の「価値基準」を持っているということです。人はいろいろな物事に囲まれて生きているわけですが、その中で自分の価値基準に照らして初めて、その人なりの意見や考え方が出てきます。自分が関わっている事象について、自分が自由に考えるための基盤となるもの、これが教養という理解です。(P.12)

 これに対して出口さんは、「教養は、自らの選択肢を増やしてくれるもの、あるいはワクワクして楽しいもの」だと付け加えています。

 教養とは、嫌いだけど仕方なしに学んだり、生きるために必要に駆られて学んだりすることではなく、自分が好きだから学ぶもの、そして自分自身の人生の選択肢を増やしてくれるものなのです。



教養とは何の役に立つのか?

 では、教養とは具体的に何の役に立つのでしょうか。そしてなぜ、ビジネスパーソンが身につける必要があるのでしょうか。

 教養というのは、何らかの事象に対して具体的な答えを与えてくれるものではありません。そのため学んだからといってすぐに仕事の成果に結びいたり、役に立ったりはしません。

 しかし抽象度が高いからこそ汎用性が高く、何か具体的な事象が起きたときでも、その物事の本質が何であるかを見抜くことができるようになります。

 ビジネスは日々の変化が激しい世界ですが、変わっているのは「氷山」の上に出ている部分だけで、その根底にある目に見えない部分は、実は普遍的なものです。

 表面だけを見て、「今は激動期だ、これまでのやり方は通用しない」と言ってみても、変化に振り回されるばかりで、なんら有効なアクションは打てません。

 表面に出てくる様々な変化に直面したときに、「要するにこういうことだよね」という本質を捉えた言葉が出てくる人こそ、教養がある人だと楠木さんは説きます。

楠木 自分の言葉で対象をつかみ、自分の頭で考えることができない人ほど、目先の現象だけですぐに大騒ぎをする。これが先ほど申し上げた「自由でない状態」ですね。現象や対象に自分が隷属してしまっている。(中略)状況変化の中で、不変の軸足になるのが教養だと思います。

なぜリーダーには教養が求められるのか?

 たとえば歴史を学ぶことは、過去に起きた事象のパターンを多く知るということです。

 歴史に関する教養がある人は、このパターン認識の引き出しが豊かであるため、いくらビジネス環境がめまぐるしく変化していても、「これはどこかでみた現象と似ているな」と気づくことができます。

 楠木 優れたリーダーは、新しい出来事に直面しても、「いつかどこかで見た風景」「いつか来た道」として捉えているフシがありますね。俗に言う「ブレない」というのは、こうしたパターン認識の豊かさに依拠しているのだと思います。(P.31)

 だからこそ、経営者や経営者やプロジェクトのトップを担うようなリーダーは特に教養が求められるのです。

 逆に教養がなく、目の前の事象に振り回されてしてしまう上司だったら、部下は上司が騒ぐたびに混乱してしまうでしょう。

「時代性×普遍性」がヒットの方程式

 教養のビジネス的な有効性について、佐々木紀彦さんが序文で非常にわかりやすい例を出してくれています。

 『君の名は。』を筆頭に、『電車男』『告白』『怒り』など数々のヒット作を生んできた、映画プロデューサーの川村元気さん。彼が「ヒットの法則」として掲げるのが、「時代性×普遍性」という方程式です。

 時代性というのは言わば、その時代のニーズやトレンドのようなもの。今、人々が求めているテーマやコンテンツとは何かを、徹底的なリサーチやフィールドワークによって、嗅ぎ取っていきます。

 一方、普遍性というのは、文字通り例外なくすべての物事に通じるものです。これは人間の本質に根ざしているため、万人に受け入れられるアイデアを生み出すための根幹となります。

 この普遍性を知るために欠かせないのが、教養なのです。

 普遍性と時代性を掛け合わせることこそ、どの時代であっても、万人に受け入れられるコンテンツを作ることができる方程式だということです。

 業界にかぎらず、勝負に勝ち続けて、世の中をリードし、何か偉大なものを残せる人間は、「普遍的なもの」を自分の中に持っているということだ。「普遍」のストックを自分の中に多く備えておけば、それと時代性を掛け合わせることにより、無数のアイディアが湧いてくる。しかも普遍に基づいたものは、人間の本質に根ざしているだけに、持続性と爆発力のあるアイディアであることが多い。一方、「普遍」を持たない人間は、つねに「時代性」という名の「今」に振り回されてしまう。(P.6)



 佐々木さんは、「今の多くの日本人ビジネスパーソンは、目の前の仕事や、短期的なROIを気にしすぎるがゆえに、「ジャンクフードとしての知」に頼りすぎている」と指摘し、それこそが日米エリートの差であると言います。

 世代や国や分野を超えたビジョンや理念を生むためには、普遍を理解することが必要であり、そのために教養は不可欠なものなのです。

 これまで美女読書で紹介してきた本は、まさに佐々木さんの言う「ジャンクフードとしての知」に偏ったものばかりでした。今後は、本書で紹介されている本も含め、教養書も積極的に紹介していきたいと思います。

 「教養とは何か」をわかりやすく解説し、「教養を身につけることの重要性」を説いた上で、それを身につけるためのブックリストを用意してくれている本書は、すべてのビジネスパーソンにとって必携の一冊です。

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