テレビCMの注目度を計測する方法!
テレビの視聴率がどのように計測されているか知っていますか?
簡単にいうと、視聴率調査を行っているビデオリサーチ社によって、無作為に選ばれたモニター世帯に専用の測定機器が設置され、そこから得られる視聴データを基に算出されています。
しかしこの測定機器は、テレビをつけてから、リモコンにある視聴者を特定するボタンを押すことで計測される仕組みになっています。
その際、誰が視聴しているかは、本人がリモコン操作することで申告できますが、実際にどれだけ注視されているかまで測ることはできません。
つまり視聴率とは、テレビが「ついている」という状態を示す数値でしかなく、視聴者がテレビの前にいるか、ちゃんと画面を注視しているかといった視聴実態、つまり視聴の「質」については計測できていなかったのです。
実際は、テレビがついていてもスマホを見ていて目を向けていない場合もあるし、むしろつけっぱなしでテレビの前にさえいない場合もあるでしょう。
従来はこれ以外の計測方法がなかったので、長らくこのやり方が採用されてきました。しかし最近は、センサー技術の進化によって、より具体的にテレビの視聴実態を解明することができるようになっているといいます。
テレビにセンサーカメラを設置することで、
- テレビの前に家族の構成員の誰がいるのか
- どの程度テレビ画面を注視しているか
- どんな表情をしているのか
- 誰と誰でみているのか
など、これまで把握できなかった視聴実態を調べられる仕組みが登場しているのです。
センサーはテレビの上に簡単に設置でき、現在の視聴率測定と違って、視聴者にいっさいの操作を要求しません。また顔認識技術を活用することで、1秒ごと、最大6人までのデータを取得可能だといいます。もちろんプライバシーに配慮して、取得データはすべて「0」「1」データのみ。画像、映像はいっさい取得されません。
そんなに細かくテレビ視聴の様子なんて計測されたくないという人もいるかもしれませんが、事前調査でも1000世帯を越す視聴者が設置に前向きと返答しているそうです。
こうしたセンサー技術によって視聴実態を科学的に計測し、「視聴率」だけではなく「視聴質」と掛け合わせることでデジタルマーケティングを最適化することの重要性を説いているのが、本書『届くCM、届かないCM』です。
著者は、まさにこの新しい仕組みを提供しているデジタルインテリジェンスの代表取締役・横山隆治さんを始めとした3名。
本書は、広告主や広告代理店、制作会社をターゲットとした本ですが、「視聴質」の計測によって明らかになった年代別、男女別のテレビCMの視聴実態のデータは、Webメディアや動画メディアのマーケティング担当者にとっても非常に参考になります。
ここでは、本書で紹介されている実測データから分かった年代別、男女別の視聴実態の違いについてピックアップします。
年代別のテレビCMの視聴実態の違いは?
センサーカメラによってテレビ画面注視率(アテンション・インデックス=AI値)を測定すると、性別、年代別によってテレビの視聴実態が大きく異なることが分かります。
たとえば15秒のテレビCMの視聴質データで、毎秒のAI値に注目すると、次のような傾向が見えてきたといいます。
- シニア層に近づくほどAI値が高く、しかも最初から最後までフラットに高さを維持していることが多い。
- 一方、若年層は毎秒の上下が大きく、安定していないことが多い。
- 40代以上の層では、より女性において「テレビを見続ける傾向」が強くなる。
- 30代までは逆に男性の方がAI値が高い。
- 毎秒AI値の上下の大きさが特に顕著なのは、20代の女性や10代の男女。
こうした世代や性別でのアテンションの違いは、家事や育児に注意を払わざるを得ない属性なのか、スマホやタブレットといったデジタル機器を同時に使うマルチタスク習慣を持った属性なのか、といった日常的な生活行動の違いと大きく関連しています。
テレビを通じたユーザーとのコミュニケーションを考える場合、こうした傾向が一般的に見られることについて理解しておくことは非常に重要です。
というのも、毎秒AI値が大きく上下する(=15秒間注視を続けない)若者をターゲットとしたCMが、40代以上の女性のような「テレビを見続ける傾向にある人」に向けたクリエイティブだと、肝心のターゲットにはほとんど注目されずに終わってしまう結果になりかねないからです。
アテンション・インデックスは、CMクリエイティブを最適化するために極めて有効な指標といえます。
テレビCMへのアテンションの男女差とは?
1秒ごとのAI値を計測できるということは、CMのどの部分に反応しているのか、あるいは反応しなかったのかというデータも、男女別、年代別で把握できるということです。
これが非常に面白い。本書では、実際に測定したデータを読み解き、CMに対する男女のアテンション傾向の違いを説明しています。
たとえばあるドラマ性の高いCMについて、男性は、以下のような「事実ベースで解釈の余地がない端的な情報」に対して、高いアテンションを示す傾向があることがわかりました。
- 冒頭のタイトル
- 商品のキャッチフレーズ
- 商品カット
一方の女性は、こうした広告的な説明のパートではアテンションが落ち続け、演者の表情や心象的なシーンのように、「解釈や共感」を求められる表現に対して高い反応を見せました。
また10代になると若干様相が変わり、パッケージカットなどの直接的な「広告的」要素では、反射的に目線を外してしまうケースが多くなるといいます。
タレントがカメラ目線で視聴者に呼びかけるようなストレートな広告訴求よりも、同様の内容を2人の登場人物のやり取りの中で、セリフに織り込んでキャッチボールするCMの方がアテンションが高くなったというデータも出ています。
こうして見ると、年代はもちろん、男女双方が共通して高い注目を集めるCMを作るというのは、なかなか成立しないことがわかります。
しかしその一方で、それぞれの属性に対して、注目されやすいクリエイティブとはどのようなものなのかというのもデータによって明らかになっています。
本書では、こうしたデジタルデータをもとに、CMクリエイティブのあるべき姿について具体的に分析しています。
これからのクリエイターに求められること
データを駆使して科学的にクリエイティブを最適化させようという発想に対して、データに引っ張られるとアイデアの幅が狭まり、つまらない広告表現ばかりになってしまうのでは、と懸念する人もいるかもしれません。
しかし本書では、「データはアートする方向を定め、クリエイターの能力を成果につなぐ手段である」として、これからはデータを味方にできるクリエイターが「強いクリエイター」になると説いています。
クリエイターの「勘」や「センス」頼みではなく、科学的に根拠のあるデータを武器にした「ビッグアイデア」で勝負できるクリエイターこそ、重宝される時代になっているのです。
この視点は、テレビCMや動画制作に関わる人だけでなく、全てのクリエイターが心に留めておくべきポイントではないでしょうか。
モデルプロフィール
・名前 :生田佳那
・生年月日 :1991.12.18
・出身 :長野県
・職業 :タレント、モデル、タクシー運転手
・Twitter :@12181242
・Instagram :@ikutakana
撮影にご協力いただいたお店
・店名 :nu dish Mousse Deli & Café
・住所 :東京都中央区銀座4-8-4 三原ビル1F
・TEL ::03-3561-0730(ディナーのみ予約可)
・営業時間:【平日】11:30~22:00
【土日祝】11:30~20:00
・定休日 :不定休