「TSUTAYA×美女読書フェア」、5冊目にご紹介するのは『フェイスブック 不屈の未来戦略』!
「日本ではフェイスブックよりLINEが浸透しているってニュースで見ることもあるけれど、世界的に見たらどうなんだろう?」ーーそんな興味を持って読み始めた本書でしたが、まずはその規模の大きさに驚きました。
フェイスブックは2017年に月間アクティブユーザー19億人、株式時価総額は48兆円を達成しています。世界の全人口が70億人ですから、ユーザー数はなんと人口の約3割を占めていて、時価総額は世界の企業の中でも5位に位置する規模に成長していたのです!(ちなみに、日本で最大規模のトヨタ自動車の時価総額はフェイスブックの半分。約24兆円です)
本書は、その成長の軌跡を詳細に記録している一冊です。2010年に公開された映画『ソーシャルネットワーク』の原作である『facebook 世界最大SNSでビルゲイツに迫る男』が、フェイスブックの「0から1の成長記録」とすると、本書は「1から10への成長記録」と言えるでしょう。
著者のマイク・ホフリンガーは、インテルのゼネラルマネージャーとして経験を積んだのち、2009年にフェイスブックに参画、同社の広告ビジネスに貢献した人物です。
本書には、フェイスブックがどのように大きな困難を乗り越え、月間アクティブユーザー19億人という驚異的な規模のサービスにまで成長できたのか、多くのエピソードとともに記されています。
それでは、フェイスブックの成長要因について、本書から得られた示唆をみなさんにもお伝えしたいと思います。
グロースため3つの達成要因とは?
フェイスブックの成功は定められた運命でも、「それを作ればやってくる」といった夢物語でもない。フェイスブックの成功は、最初から継続的なグロース(ユーザー数の伸び)を目指し、ひたすらたゆまぬ努力を費やした結果なのだ。
著者はこのように述べています。
ハーバード大学内で学生がオンライン上つながる場所として産声をあげたフェイスブックは、2006年に誰もが使えるサービスとなりました。しかしその後、5,000万ユーザーを突破した2007年後半からグロースが停滞し始めたそうです。
そこで、ザッカーバーグはユーザー数の獲得を目指すグロースチームを結成しました。チームリーダには AOLインスタントメッセージやICQで経験を積んでいたピリハピティヤを任命します。
分析に分析を重ね、彼のグロースチームは重要なグロースの達成要因を考えました。
- プロダクトの北極星:注目すべき指標
- マジックモーメント:最も重要となる瞬間
- コア・プロダクトバリュー:プロダクトの利用価値
プロダクトの北極星
「北極星」とは言い換えればKPIです。何を持って目標が達成できているのか、指標を決めてモニタリングをする。たとえばAirbnbであれば宿泊数、Uberであれば乗車回数、WhatsAppであれば送信されたメッセージ数に該当します。
フェイスブックでは、まず月間アクティブユーザー(MAU)と北極星と定めました。そこから次々と洗練させ、日次アクティブユーザー数(DAU)、さらには月間アクティブユーザーにおける日次アクティブユーザー数の割合(DAU/MAU)と進化させます。
現在はユーザーを年齢、接続端末、趣味趣向などでグループを細分化し、それぞれのグループで北極星が右肩上がりなのか分析を行っているそうです。
マジックモーメント
「マジックモーメント」は、プロダクトを使う上で最も重要な瞬間のことです。Airbnbでは素敵な宿泊先に着いた瞬間ですね。
フェイスブックのマジックモーメントは、ユーザーが初めてニュースフィードで友人の姿を見る瞬間です。だからこそ、登録したてのユーザーができる限り早く50人と繋がることを目標に定め、友人ネットワークをフェイスブック上ですぐに築けることを重要視しています。
コア・プロダクトバリュー
「コア・プロダクトバリュー」は、どうしたらユーザーのロイヤリティを獲得できるか、即ちユーザーに提供できている最大の価値は何かということです。
フェイスブックでは、ニュースフィードを中核として、常に友人とつながっている感覚を与えることがそれに当たります。
ユーザー登録してもらうこと、できるだけ早くマジックモーメントを体験してもらうこと、その後はできるだけ頻繁にコア・プロダクトバリューを届けること、この3つにフォーカスしてグロースチームは活動していきました。
その結果、18ヶ月で当時最大のユーザー数を誇っていたマイスペースのユーザー数を抜き、1億2,000万ユーザーまで成長。「プロダクトの北極星」「マジックモーメント」「コア・プロダクトバリュー」を定義し、それにフォーカスして活動することで、停滞していたグロースを再び上昇気流へ乗せることができたのです。
フェイスブックのビジネスモデルの秘密
「グロースできて良かったね」で終われれば楽なのですが、営利企業である以上、フェイスブックは持続的な収益を上げていかなければなりません。
みなさんは、フェイスブックって何で利益を上げているかご存知ですか?
それは広告です。しかも売上の97%を広告収入で得ているといいます。(出展:Visual Capitasit)
ほぼ全てが広告収入であるということは、安定した収益を上げ続けるためには、効果がある広告をたくさん出せる場所を作らなければならないということです。
それはユーザーにとっては広告で不快な体験をすることがなく、広告主にとっては、広告のおかげで効果的にユーザーの購買活動を促すことができなければなりません。
この難題に取り組んだのが、ザッカーバーグが直接誘ってCOOに就任したシェリル・サンドバーグです。
2008年にサンドバーグが着任してからの数年は、iPhoneの出現で急速にモバイルシフトが起きており、フェイスブック内部ではコア・プロダクトバリューである「友人と常につながっている感覚が得られる」最大の機能として、ニュースフィードが成長した時期でした。
一見すると、収益を上げるためには、モバイルでも使いやすいニュースフィードに広告を出すことが有効そうです。しかし、フェイスブックの最重要機能であるニュースフィードに広告を表示することは、ユーザーが離れてしまうリスクも高いため、なかなか実装に踏み切れませんでした。
検討を重ね、ザッカーバーグ、サンドバーグを中心とした広告事業チームは、ユーザーから得られる様々なパーソナルデータを元にユーザーを詳細なグループに分け、特定のユーザーに対し興味がある可能性の高い広告をピンポイントで表示できるアルゴリズムを開発します。
そして広告枠をオークション形式で販売することで、適切な広告内容が届いたかどうかを評価し、ユーザーからの評価が悪い広告主にはオークション時に割高な価格設定をするという仕組みを導入しました。
このように念には念を入れた準備を行った上で、ついに2012年にニュースフィードへの広告を解禁に踏み切ったのです。
結果は上々で、アンケートでも広告はユーザー体験に些細な影響しか与えないことが分かりました。サンドバーグが参画してから4年後、ついに大きな収益が見込めるビジネスモデルを導入できたのです。
小さなサービスが大企業になるまでの教訓
フェイスブックが成長できた大きな要素としては、前述した「愚直にグロースを追いかけたこと」と、「コア・プロダクトバリューを毀損しない広告モデルを導入したこと」だと言えます。
本書では、これらを含む成長要因を「10の教訓」としてまとめています。
- 最後の仕事とは何か
- 機能の引き算は価値の足し算
- 北極星、マジックモーメント、コア・プロダクトバリュー
- すべてのカスタマーに価値を提供できるなら、みんなが喜べる
- 早さは価値
- 最大の防御は先にキャズムを超える事
- 誰かが革命を起こす前に自身を改革せよ
- 盤石なビジネスがあれば未来のために投資できる
- 社員のエンゲージメントが全て。人材の強みだけに光をあてる
- 誰より真剣にミッションを追求する
最後の教訓、「誰より真剣にミッションを追求する」を継続した結果、フェイスブックは、2017年に創業時からのミッション「世界をよりオープンにつなげる」を「世界のつながりをより密にする」に変更しました。(出典:IT Media News)
世界の3割の人が使うプロダクトに成長した今も、おごらず、軸をぶらさず、ミッションを追求し、変化を厭わない、そんなフェイスブックという企業にこれからも注目したいと思います。
モデルプロフィール
ご協力いただいたお店
- 店名:ケニック カレー
- 住所:東京都渋谷区道玄坂2-25-7 プラザ道玄坂 5F
- 営業時間:
【土日祝】11:30~16:00(L.O 15:45)
【月火木金】11:30~15:00(L.O.14:45) - 定休日:水曜日